脂質異常症(高脂血症)の症状・診断・治療
脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪の値が高くなったときに診断される病気です。
以前は高脂血症と呼ばれていましたが、現在は脂質異常症で統一することとなりました。
善玉コレステロールは低いことが問題となるので、コレステロールや中性脂肪が高値であることを示す高脂血症という言葉では違和感があると考えられたためです。
また、脂質異常症は糖尿病や高血圧と同じく動脈硬化を引き起こし、心臓や脳に重篤な病気を発症することもあります。
そのため、自覚症状がなくても治療することが重要です。
脂質異常症の症状と合併症
脂質異常症はほとんど自覚症状が現れません。
脂質異常症の発症で問題となるのは動脈硬化による合併症です。
動脈硬化が進行すると、次のような合併症を引き起こします。
- 脳梗塞
- 脳出血
- 心筋梗塞
- 狭心症
これらは命にかかわることもあるため、症状がなくても予防的に治療を行うことが必要です。
脂質異常症の診断
脂質異常症の診断に必要な項目は以下の通りです。
- 総コレステロール(TC)
- トリグリセリド(TG)
- 善玉コレステロール(HDL)
- 悪玉コレステロール(LDL)
動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、次のような診断基準を公表しています。
悪玉コレステロール(LDL)は採血で数値が出ないので、Friedewald式にて算出します。
TC-HDL-TG/5=LDL
また、脂質異常症は空腹時に採血を行うのが一般的です。
食後に採血すると、トリグリセリド(中性脂肪)の数値に影響が出たり、悪玉コレステロール(LDL)の数値にも誤差が生じやすくなる可能性があるためです。
そのため、Friedewald式はTGが400以下であった場合に適用していきます。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療は「食事療法」と「運動療法」を行うのが基本です。
それでも改善できなかった場合は薬物療法も検討します。
どれくらいの数値で治療が必要となるかは、動脈硬化性疾患ガイドライン2022年版で公表されている管理目標値を参考にしてみてください。
リスクが低い方の場合は、LDLコレステロール値が180オーバーの場合は薬物療法を検討していきます。
また、心筋梗塞や狭心症を発症している方は動脈硬化が進行している可能性が高いため、LDL100以下を目標とします。
冠動脈疾患以外に次のような病気も動脈硬化の要因となったり、動脈硬化の進行によって発症した可能性もあるので注意が必要です。
- 糖尿病
- 慢性腎不全
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
これらの病気も動脈硬化の進行リスクが高くなることからカテゴリーⅢに分類され、積極的にLDLを下げることが重要です。
脂質異常症はこういったリスク因子を考慮しつつ、治療方針を決定します。
食事療法
脂質異常症の食事療法は以下の5項目に注意することが必要です。
- 食事の量を減らす
- コレステロールを上げたり多く含む食品を控える
- 甘いものや炭水化物を控える
- 塩分の少ない食事
- 節酒
必要以上にカロリーを摂りすぎると、肝臓で余分なエネルギーをトリグリセリドへ合成するため、食事量を減らすことが最も重要であると考えられています。
また、アルコールの摂取量は1日に20~25gが推奨されていますが、飲んでもいい量がわからないという場合は以下を参考にしてみてください。
- 日本酒:1合(180ml)
- ビール:中ビン1本(500ml)
- ウイスキー:ダブルで1杯(60ml)
- ワイン:グラス2杯(200ml)
- 焼酎:0.5合(90ml)
運動療法
脂質異常症の運動療法では有酸素運動を推奨しています。
日常生活の習慣にしやすい有酸素運動は次のようなものがおすすめです。
- ジョギング
- 早歩き
- 水泳
- サイクリング
心拍数が110~120回ほどであれば血圧の上昇も少なく、疲労物質の蓄積も抑制できるとされています。
心拍数が110~120回の運動強度で取り組むには、脈拍を計測しながら上記の運動を30~60分、週に3回のペースで行ってみましょう。
薬物療法
脂質異常症の薬物療法では「高LDL血症」と「高TG血症」でお薬を使い分けます。
高LDL血症の場合は悪玉コレステロール(LDL)を下げるスタチン系のお薬を使用します。
スタチン系のお薬は以下の6種類です。
効果の強いストロングスタチン:クレストール(一般名:ロスバスタチン)・リピトール(一般名:アトルバスタチン)・リバロ(一般名:ピタバスタチン)
効果がマイルドなスタンダードスタチン:メバロチン(一般名:プラバスタチン)・ローコール(一般名:フルバスタチン)・リポバス(一般名:シンバスタチン)スタチン系で十分な効果が得られない場合は、悪玉コレステロール低下の相乗効果が約6%とされているゼチーアを併用することが多いです。
その一方で、高TG血症である場合は以下の2種類を使用します。
フィブラート系:ベザトール(一般名:ベサフィブラート)・トライコア・リピディル(一般名:フェノフィブラート)・パルモディア(一般名:ぺマフィブラート)
EPAやDHA(魚の脂):エパデール(一般名:EPA)・ロトリガ(一般名:EPA+DHA)しかし、薬物治療を始めたからといって安心するのではなく、食事の管理や運動もしっかり行っていきましょう。
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