うつ病って何?
うつ病とは?
うつ病は、気分障害のひとつです。
気分障害を大きく分けると、下記の3つに分類されます。
- 大うつ病性障害
- 双極性障害(躁うつ病)
- 持続性気分障害(気分変調症)
まずは、これらの症状と違いについて簡単に説明していきます。
① 大うつ病性障害
ストレスが原因で脳の機能障害が起こり、心身のエネルギーが低下する病気です。
気分の落ち込みや意欲低下などの精神症状の他、眠れない・食欲がないなどの身体症状が2週間以上続くことが、うつ病の基本的な診断基準となっています。
② 双極性障害(躁うつ病)
躁(過度な高揚)とうつ状態(低機能)状態を、安定した時期を挟みながら繰り返す病気です。
うつ病と誤診される場合も多く、「うつ病の治療を始めて数年後に、やっと双極性障害と診断がついた」という方も存在します。
③ 持続性気分障害(気分変調症)
気持ちの落ち込みや意欲の低下が、慢性的に続く病気です。
病気を自覚することが難しく、ご自身の性格と考えてしまう方も珍しくありません。
一般的に「うつ病」と言うと、「大うつ病性障害(定型うつ病)」を指すことが多いでしょう。本記事でも、大うつ病性障害を「うつ病」と表記して解説していきます。
一時的に治療効果が見られても、うつ病の症状を何度も繰り返す場合は「反復性うつ病性障害」と呼ばれます。症状に波がある点では、双極性障害とよく似ています。
うつ病の原因
うつ病の原因は、まだハッキリと解明されていません。
現在の日本では、感情や意欲をコントロールする脳の働きに不調が起きていると考えられています。
不調を引き起こす理由は、主に「外因性」「心因性」「内因性」に分類できます。
① 外因性
外からの影響が原因のうつ病は、外因性うつ病と呼ばれます。
- 脳の機能障害を引き起こす、その他の病気を発症した
- 頭の外傷や薬物により、脳の機能低下を引き起こした
② 心因性
ストレスが原因で発症するうつ病は、心因性うつ病と呼ばれます。
ストレスの種類を一概にまとめることはできませんが、昇進や結婚など一般的には喜ばしい内容がストレスとなり、うつ病を発症する可能性もあります。
③ 内因性
①②のどちらにも当てはまらないものの、うつ病になりやすい素因(気質・性格・認知)が大きくて発症した場合は、内因性うつ病と呼ばれます。
- 物事に集中できなくなった(思考抑制)
- 周囲から責められている気がする(過度な自責感)
上記を強く感じる場合は、内因性うつ病の可能性が高いと言えるでしょう。
うつ病の症状
うつ病の症状は、精神症状と身体症状に分けることができます。
精神症状(こころの不調)
- 気分が落ち込む
- 自分を過度に責めてしまう
- 集中力が落ちた
- 物事に興味が持てない
- 物事を悪い方向に考えてしまう
- 「死にたい」「消えたい」と感じる
身体症状(からだの不調)
- 眠れない
- 食欲がない
- 動悸がする
- 吐き気や下痢が続く
- 体重が減少する
- 性欲がなくなる
うつ病は、ご本人が自覚しにくい病気です。
「表情が暗くなった」「身だしなみに構わなくなった」「お酒の量が増えた」など、身近に変化を感じる方がいれば、医療機関に相談してみるのをおすすめします。
また、近年では、従来のうつ病とは異なる症状が出る「非定型うつ病」と診断される方も増えてきました。
インターネットやテレビなどで見聞きするようになった「新型うつ病」「現代型うつ病」も、この非定型うつ病に括られることが多いでしょう。
うつ病になりやすい人
うつ病のみならず、どんな病気も「これをしたら発症する!」と言い切ることはできません。
うつ病に関しても、発症の原因は人によってさまざまです。
日本では、100人に約6人がうつ病にかかると言われています。
「自分が弱いから」とご自身を責める方も時折見受けられますが、決してご本人の弱さが原因ではありません。
それをふまえて、ストレスの受け止め方について見ていきましょう。
ストレスが脳の機能障害を引き起こす可能性がある以上、「ストレスをこまめに解消する人」より「ストレスを我慢する人」のほうが、自分を追い込みやすいと言えるでしょう。
- 「まだ大丈夫」と、ギリギリまで頑張ってしまう
- 「こうあるべき」という考えが強く、気持ちに余裕を持てない
- 物事の切り替えが苦手で、熱しやすく冷めにくい(執着気質)
上記の思考は、日本人に広く見られ、いわゆる国民的な気質とも言えます。
ストレスを感じやすい性格だとしても、性格自体が否定されるわけではないことは理解しておきましょう。
うつ病の治療法
うつ病の治療法は、休息と薬物療法で症状を安定させてから、主に再発予防を目的として精神療法を加えていくケースが多いでしょう。
休息
休息とは、ご自身が居心地のいいように、生活環境を整えることです。
- 休職、退職を検討する
- 人間関係を見直す
- 住環境を整える
- 睡眠時間を確保する
心身が休まる環境には個人差があるため、ご自身の体と心と向き合いながら、少しずつ調整していくことが大切です。
薬物療法
抗うつ剤を用いて、心身の安定を目指す治療法です。
抗うつ剤には多くの種類があり、診察時の症状や状態に合わせて、医師が薬を選択します。
抗うつ剤の副作用は年々少なくなっていますが、薬の飲み始めなどは、副作用が出てくる可能性もあります。
抗うつ剤の副作用は、主に下記の通りです。
- 便秘、下痢
- 吐き気や胃の痛み
- 体重の増加
- 眠れない、または眠気が強まる
- 口が乾く
- めまい、ふらつき
心身が休まる環境には個人差があるため、ご自身の体と心と向き合いながら、少しずつ調整していくことが大切です。
精神療法
精神療法では、臨床心理士などの専門家と会話を重ねながら、抱えている困りごとの解決を目指します。
症状が重いときは、精神療法が苦痛になる可能性もあります。
まずは薬物療法などで状態を安定させてから、再発予防を目的として精神療法に取り組むのが一般的です。
お薬を用いない「TMS治療」
TMS治療とは、専用の機器を使用して脳の一部分を刺激する治療法です。うつ病の新しい治療法として、近年注目を集めています。
お薬を使用しないため体への副作用が少なく、「薬物療法の副作用がつらい」「運転するので薬を飲みたくない」などの希望を抱えた方にも選ばれています。
保険適用が認められている治療法ですが、適応条件が厳しいため、TMS治療を希望する場合はクリニックでの自費診療が現実的と言えるでしょう。
TMS治療のメリット
- 脳の一部分のみを刺激するため、体への副作用が少ない
- 短期集中治療の場合、最短2週間で治療効果が期待できる
- 症状が寛解してからの、再発率が低い
当院は、TMS治療の専門クリニック「東京横浜TMSクリニック」と併設しています。TMS治療をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
うつ病の治療をお考えの方へ
本記事では、うつ病の症状や治療法について解説しました。
うつ病に関する研究が進む中で、うつ病の原因や症状は多様化しています。
人によって適切な治療法が異なるため、心身に不調を感じた場合は、速やかに医療機関を受診することが回復への近道と言えるでしょう。
当院では、こころの臨床経験が豊富な精神科医が診察を行います。
なにかお困りごとがある場合は、些細なことでも遠慮なくご相談ください。
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うつ病の症状・診断・治療執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了