新型コロナストレスでの不眠症の対策

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はじめに

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって、私たちは多くの社会生活の変化を余儀なくされ、経済的に大きな損失を受けている方も少なくありません。

その理不尽さは災害以外の何物でもありませんが、そのような状況の中で眠りが不安定になってしまっている方も少なくないでしょう。

患者さんと接していると、本当に苦しまれている方が多いのを実感します。その一方で、感染を避けるために医療機関の受診を控えるよう周知されていますので、相談もなかなかできない方もいらっしゃるかと思います。

ここでは、新型コロナウイルスによるストレスと不眠症状にフォーカスをあてて、ご自身でできる解決策と専門家に相談するタイミングなどをご紹介していきたいと思います。少しでも悩まれている方の参考になれば、私たちとしてもうれしいです。

コロナストレスでの不眠のタイプ

コロナストレスは様々な形で不眠を引き起こしています。その不眠のタイプによって、対応方法も変わってきます。大きく分けると、以下の3つの方が多いように思われます。

  • 現実的なストレスから過覚醒
  • 生活リズムの乱れによる不眠
  • 精神症状の悪化からくる不眠

ストレス環境の中で過覚醒になることは、日常でも経験されていることがあるかと思います。テスト期間中は眠気が少なかったり、徹夜をしているとむしろ目が覚めてきたり。ストレスが続くと、それに抵抗するために普段よりも交感神経の働きが高まり、過覚醒状態になります。その結果として不眠となります。

また自宅で過ごす時間が長くなると、生活リズムの乱れから不眠傾向が強まっていくこともあります。体内時計のリズムは24時間よりも少し長いといわれていて、社会生活での刺激で24時間に調整されています。ですからメリハリがなくなるとリズムがずれてしまい、その結果として睡眠がうまく取れなくなることがあります。

また不眠は、精神症状のひとつとして様々な病気で認められます。どのような病気であっても、ストレスから症状が悪化してしまうと不眠となることがあります。

原因ごとの不眠解消

不眠になる原因が異なりますので、ご自身の不眠がどのような原因からきているのかを考えていく必要があります。

  • 現実的なストレスから過覚醒
  • 生活リズムの乱れによる不眠
  • 精神症状の悪化からくる不眠

現実的なストレスが大きくのしかかっていても、日中のエネルギーが保たれている方は、過覚醒が原因である可能性が高いです。現実的な問題には向き合っていかざるを得ませんが、心身の健康を維持するためにも睡眠状態の改善は重要です。まずは睡眠により生活習慣から意識し、改善がない場合は医療機関に相談ください。お酒に頼ってしまうのだけは、絶対におやめください。

生活リズムの乱れからくる不眠の方は、ご自身で自覚されているかと思います。その場合は、起床時間を大事にしながらリズムづくりが大切です。起床時間を1時間の幅で固定して、お昼寝をするにしても短時間にしましょう。興味のあるテレビ番組をみる習慣にするなど、楽しい予定でペースメーカーが作れるとよいです。お昼寝は目覚ましをかけるか、机で寝るなどすれば短時間ですみます。

精神症状の悪化からくる不眠は、医療機関でしっかりとご相談いただく必要があります。不眠以外にも、集中力が落ちている、気力が起きない、気持ちがふさぎ込んでいるなど、他に症状がある場合は必ず医療機関にご相談ください。

寝酒は絶対に避けよう!

寝酒は絶対にさけてください。

お酒で眠ることが習慣になってしまうと、不眠の悪循環が強まってしまいます。筋肉の緊張がゆるんで酸素状態が悪くなり、トイレで起きることも増えます。睡眠の質が浅くなり、熟眠感が得られなくなっていきます。さらにはお酒は徐々に慣れてしまいますから量が増えてしまい、身体にお酒があることが当たり前になると、中止した時に不眠が悪化してしまいます。

以下の物質は、睡眠にとってはできるだけ控えた方が良いといわれています。

  • アルコール
  • タバコ
  • カフェイン

いずれも生活の一部になってしまっていることが多く、いきなりやめることは難しいかと思います。少なくとも寝る前は避けていただき、とくに寝酒は不眠症を悪化させてしまうため、絶対に控えてください。

睡眠により生活習慣を意識

睡眠により生活習慣のためには、3つのポイントがあります。

  • リズム
  • 体温
  • 自信

それぞれ具体的にみていきましょう。

リズム

リズムのメリハリをつける生活習慣としては、以下があります。

  • 起床時間ある程度一定に
  • 昼寝を短時間に
  • 朝に光を、夜に光を避ける
  • 朝食を食べる
  • 夜食を控える

体内時計は、起床時間からスタートします。できれば1時間の範囲で起床時間を固定しましょう。30分程度の短時間の昼寝は、むしろとったほうがメリハリがつくこともあります。短時間にできない方は、机でしたら寝返りがうてず、長寝をしないですみます。

そして体内時計には、光が大きく影響を与えます。体内時計にはメラトニンというホルモンが関係していますが、日中の光はメラトニンを分泌させ、夜間の光は抑えることが分かっています。

朝はしっかりと光を浴び、夜はスマホやテレビのブルーライトなどをできるだけ避けたほうが望ましいです。

朝食はからだを覚醒させるために重要で、しっかりと毎日とったほうが良いです。反対に夜食は入眠を妨げますし、睡眠薬を使う場合は効果を弱めてしまいます。

体温

冬眠を考えていただくと分かりやすいです。獲物がとれない冬はエネルギー消費を抑えるために、体温を下げて眠ることで活動を抑えているのです。

このように睡眠中は活動することもないので、体温は低くなっています。このため、体温が高い状態から低下するときに、睡眠はとりやすくなります。

このため、

  • ぬるま湯のお風呂にゆっくりつかる
  • ストレッチなどで体をあたためる
  • 日中の運動習慣をつくる(室内でも)
  • 寝室の環境をととのえる

このようなことがあげられます。

およそ40~42度くらいのぬるま湯につかることで、交感神経を刺激しすぎることなく末梢血管をひらきます。お風呂から出た後に熱が奪われていき、体温が下がっていきます。同じようにストレッチなどで優しく体をあたためることも、睡眠にはプラスに働きます。

日中の運動習慣をつくることは、体温の観点からもリズムの観点からも有効です。

寝室の環境も大切で、熱がからだから逃げていくようにする必要があります。吸汗性のよい寝具をつかったり、空気の流れを作ってあげることで熱が逃げやすくすることも有効です。

自信

睡眠には、自信も大切です。

とくに寝つきが良くない方は、ベッドに入れば寝れるという自信(認知)を作っていくことが大切になります。

具体的には、

  • 眠気を感じてからベッドに入る
  • 眠れないときはベッドから離れる
  • ベッドでゴロゴロしない

このようなことが大切です。

しっかりと眠れているという感覚を作るためには、眠れている時間の割合を高めることが大切です。ですから無理に時間を決めて寝ようとするのは逆効果で、「眠たくなったらベッドに入ろう」くらいの意識の方がよいです。

デッドラインを決めて、それまでは自然な眠気が来たら就寝していただくのが良いかと思います。

そしてなかなか寝付けないときは、あきらめて一度ベッドから出てしまったほうが良いです。オレンジ色の光でしたら刺激になりにくいので、白熱灯の下で本を読んだり、ストレッチなどして気持ちを切り替えてから寝付くことがおすすめです。

なかにはベッドの上で日中を過ごしている方もいますが、ベッドは寝るとき以外にはいないようにしましょう。リズムのメリハリの意味もありますが、ベッドは眠る場所という意識付けの意味でも大切です。

市販の睡眠薬やサプリメントの有効性と限界

病院に通院するのが怖いという方は、市販薬やサプリメントを検討される方もいらっしゃるかと思います。

まずは市販の睡眠薬ですが、その成分は大きく2つのタイプに分けられます。

  • 抗ヒスタミン系
  • 漢方薬

抗ヒスタミン系というと、花粉症や風邪薬が眠くなるのと同じメカニズムになります。このようなお薬をしばらく服用されたことがある方はご経験あるかと思いますが、はじめは眠気が強いものの、飲み続けていると慣れてきて眠くなくなるかと思います。抗ヒスタミン系のお薬は、熟眠感も増して有効ではあるのですが、連用すると効果が薄れてしまうという欠点があります。

抗ヒスタミン系のお薬の有名なものとして「ドリエル」がありますが、こちらのジフェンヒドラミンという成分は、かゆみ止めとして販売されている「レスタミンコーワ」と同一になります。第一世代抗ヒスタミン薬になり、眠気が強いアレルギーのお薬になります。

漢方系としては、経験的に気持ちを落ち着かせる効果があるといわれている生薬を配合しています。じっくりと使っていくことで体質を改善していくような位置づけになります。

市販薬の中で、「ウット」だけは使わないでいただきたいと思います。ブロモバレリル尿素という成分になりますが、医療用としてもブロバリンという睡眠薬が発売されています。依存性が高く、イソブロ(イソミタール+ブロバリン)という組み合わせで処方されていることが多かったのですが、依存が形成されてしまいます。

このように、抗ヒスタミン系のお薬であれば頓服として使っていく分には有用です。毎日使わなければ寝れなくなるようでしたら、医療機関にご相談いただいたほうが良いかと思います。漢方薬については、時間をかけて取り組める方はひとつの選択肢かと思います。

詳しくは、こちら(当院の外部サイト)をお読みください。

 

サプリメントにつきましては、特定の商品名を取り上げるのは控えたいと思いますが、睡眠薬としての即効性が期待できるのでしたら、おそらく睡眠薬として販売されているかと思います。過度な期待をされず、漢方薬のようなイメージの方が良いかもしれません。

海外でサプリメントとして発売されているメラトニンについては、多少の入眠効果があるというエビデンスがあります。メラトニンに関係する睡眠薬として、ロゼレムが発売されています。

オンライン診療は使えるのか?睡眠薬の入手方法

新型コロナウイルス感染症の流行をうけて、健康相談の無料オンラインサービスなどがあるかと思います。こちらで相談いただくと、睡眠に良い生活習慣のアドバイスを個別にいただけるかもしれません。

睡眠薬が必要な状態ですと、現状ではオンライン診療などでは対応ができなくなっています。オンライン診療による初診が認められましたが、睡眠薬をはじめとした心のお薬(向精神薬)は処方できないルールとなってしまいました。悪用されてしまうリスクがあるためです。

このため睡眠薬を処方するためには、心療内科や精神科に受診する必要があります。また不眠の背景に、精神症状が隠されていることも少なくありません。特に他の症状が認められている方は、ご相談いただいたほうが良いです。

感染に対して抵抗があるかもしれませんが、不眠から心身の健康が悪化してしまうことを避けなければなりません。ご自身で不眠の解消が難しい方は、お近くの心療内科・精神科にご相談ください。

睡眠薬について詳しく知りたい方は、睡眠薬(睡眠導入剤)のページをお読みください。
不眠症について詳しく知りたい方は、不眠症のページをお読みください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:コラム  投稿日:2020年5月10日

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