お薬を服用するにあたってのお酒の対処法
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お薬を飲んだらお酒が飲めなくなってしまうの?
日頃の診察の中で、「お薬を服用中はお酒が全くのめなくなってしまいますか?」というご質問をよくいただきます。
「できれば避けてほしいですが、付き合い程度のお酒は飲み方に注意していただければ大丈夫ですよ」とお伝えすることが多いです。しかしながら習慣的な飲酒は避けたほうがよく、そしてなるべくならばアルコールは控えたほうが良いです。
しかしながら現実的には、「付き合いで断れない」「楽しみがなくなってしまう」といった方もいらっしゃるかと思います。
アルコールの最大の問題は、コントロールができなくなる可能性があることです。ですから習慣的な飲酒は避けたほうがよく、節度ある付き合い方ができない場合は、断酒をしなくてはなりません。
ここでは、現実的なお酒の対処法についてみていきたいと思います。
※アルコールの薬への影響について知りたい方は、『アルコール(お酒)の薬への影響とは?』をお読みください。
付き合いを断れない場合の対処法
抗うつ剤を飲みながら仕事や家庭生活をしている方はたくさんいらっしゃいます。
お酒に誘われる機会は公私にあるかと思います。どうしても断れない・・・そんな時もあるかもしれません。そのような時はどうすればよいでしょうか?
お酒を飲めない口実を作る
お酒を飲まなくてすむならば、それに越したことはありません。お酒を誘われたら断る口実をあらかじめ考えておくと、上手く断れることもあるかと思います。
ありのままに抗うつ剤を飲んでいることや、病気のことなどを伝えられるならば、相手も無理に誘ってこないかと思います。ですが、なかなかカミングアウトしづらいので、隠しながら生活している方も多いかと思います。
事情を知らない方に飲みに誘われると困ってしまいますね。うまく逃れている患者さんは、身体の病気のせいにしていることが多いです。
「肝臓が悪いから医者に絶対ダメと言われた」でも、「血圧やコレステロールの薬をのみはじめて医者から酒はダメと言われた」でも大丈夫です。すべては医者のせいにしてしまって、薬を飲めないことを伝えてみましょう。
お酒の飲み方に注意する
どうしても付き合いで飲まなければいけない時、抗うつ剤でしたら相互作用も少ないので、飲み方の工夫をすれば影響は小さいです。どのようなことに注意すればよいのかを考えていきましょう。
まず、お酒と一緒に薬を飲んでしまうと、薬の吸収が一気にあがってしまうので注意しなければいけません。薬とお酒が胃腸で同時に吸収されないように、少しだけ時間をあけるようにしましょう。
薬のピークをずらしても違いはあまりないので、大きくずらす必要はありません。夕食後に服用する予定でしたら、夕方ごろとかでも構いません。昼食後にしても大丈夫です。
そして注意していただきたいのが、お酒の飲み方です。一言で言ってしまえば、お酒に酔いやすくなるのです。アルコールが身体に残りやすくなってしまっているので、いつもより酔いが早くなってしまいます。ですから、ゆっくり飲むことを心がけてください。そして、お酒の量もいつもの半分程度にしておきましょう。
お酒の習慣がなかなかやめられない場合の対処法
お酒が好きで、なかなかやめられない方もいらっしゃるかと思います。飲酒が習慣になってしまっている方は、どのようにしてお酒と向き合っていくべきでしょうか?
その最大のポイントは、冒頭で申し上げた通り、お酒をコントロールできるかどうかです。アルコールには3つの性質があります。
- 耐性:アルコールが体に慣れて効果が薄れてくる
- 身体依存:アルコールが抜けると体に症状がでる
- 精神依存:アルコールがないと落ち着かない
この3つが相まって、アルコールはコントロールを失ってしまいやすいのです。アルコールも脳に影響を及ぼす物質と考えれば、お薬と同様になります。
ですからアルコールの場合、
- 節酒して適正飲酒を目指す
- コントロールできないなら断酒
となります。
節酒して適正飲酒を目指す
自分である程度の量に抑えることができる方は、節酒からはじめていくこともできます。まずは休肝日を作って、少しずつ一日のお酒の量を減らしていきます。
そのサポートになる薬として、
- レグテクト(一般名:アカンプロサート)
- セリンクロ(一般名:ナルトレキソン)
が発売されています。
アルコールを慢性的に取り続けると、グルタミン酸が上昇するといわれています。グルタミン酸は興奮に働く脳内伝達物質です。
レグテクトは、このグルタミン酸を抑えることで、飲酒欲求が抑えるお薬となっています。お酒を飲まないとイライラしたり、何だか落ち着かなくなるような方には、効果が期待できます。
副作用としては、腎臓での排泄が中心になりますので、腎機能に影響があると考えられています。また、吐き気を訴える方も多いですが、全体的にみて安全性は高いです。
そして2019年に、飲酒欲求を抑える薬としてセリンクロも発売となっています。この薬は脳内麻薬の受容体とくっつくことで、その作用を低下させます。その結果、多幸感が薄れるためアルコールによる快感を少なくします。頓服的に飲酒欲求が高まってきたら服用します。結果的に飲酒してもプラスの面が薄れ、飲酒量は減少することが示されています。
副作用としては、吐き気やめまいが認められることがあります。お守りとしてもっていることで飲酒を抑えられる方もいらっしゃいます。
コントロールできないなら断酒
お酒の量を自分でコントロールできない方は、断酒をした方がいいです。ほっておくとアルコール依存症になりかねません。精神科の病気を抱えている方は、アルコール依存症になりやすいといわれていますので注意が必要です。
「日によってお酒の量が変わってしまう」「もうやめなきゃと思ってもやめられない」、そんな方は断酒を考えましょう。断酒は生半可な気持ちではできません。これまで、お酒のコントロールを失って損をしていることはたくさんあるはずです。それをしっかりと思い出してください。そして、周囲に断酒を宣言して背水の陣をしきましょう。
意思が固まれば、嫌酒薬を病院で処方することもあります。嫌酒薬というとお酒が嫌いになるお薬のように思いますが、そ少し誤解が生じてしまうかもしれません。簡単に作用をお伝えすると、お酒に極端に弱くなってしまう薬です。お酒を少し飲んだだけで、頭痛、吐き気、顔面紅潮、動悸、めまいなどが起こりやすくなります。
嫌酒薬は、アルコールを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素を邪魔します。すると、アセトアルデヒドがたまってしまって、お酒が弱い方の症状が出てしまうのです。嫌酒薬は断酒の意志を固めてから、さらに覚悟を決めるために使います。だまし討ちで使うお薬ではありません。
嫌酒薬としては、2種類があります。シアナマイドとノックビンです。前者は、即効性があって効果が持続しますが、肝障害のリスクがあります。効果の持続は、体内の酵素が入れ替わるまでの1~2週間ほどあります。後者は、液剤で冷凍保存が必要という不便さがありますが、薬効が短いために安全性が高いです。
まとめ
飲酒習慣はやめた方がよいですが、機会飲酒は注意点を守りましょう。どうしてもお酒をやめられない方は、主治医にちゃんと伝えてください。
基本的には、お酒と薬を一緒にのんではいけません。様々な要因で、薬とアルコールの血中濃度が不安定になります。
付き合いで飲まなければいけない方は、飲まない口実を作れればそれに越したことはありません。難しければ、薬を飲む時間を少しずらしてください。お酒はゆっくり、いつもの半分くらいの量にしておきましょう。薬の服用をとばすことはやめてください。
お酒を飲むのが習慣になっている方は、量をコントロールできていない方は断酒、できている方は節酒をしましょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:アルコールについて 投稿日:2020年7月30日
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