『ベンゾジアゼピン系』って何?睡眠薬や抗不安薬の作用の仕組み
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『ベンゾジアゼピン』って何だろう?
心療内科や精神科で使うお薬の説明の中で、『ベンゾジアゼピン系』という言葉をよく目にされると思います。
ベンゾジアゼピン系のお薬は主に抗不安薬や睡眠薬で広く使われますが、『ベンゾジアゼピン受容体』に働くことで神経伝達物質の『GABA(ギャバ)』の作用を強め、抗不安や催眠の効果を発揮するお薬です。
即効性があって効果もしっかりとし、種類も多く、幅広い不安や不眠の治療に用いられています。
ベンゾジアゼピン系のお薬は脳でどのように作用して効果を発揮するのでしょうか?
ベンゾジアゼピン系の作用機序
ベンゾジアゼピン系のお薬は、脳の活動を抑制するGABAの働きを強め、
- 抗不安
- 催眠
- 筋弛緩(筋肉をゆるめる)
- 抗けいれん
の3つの効果を発揮します。
この作用には、脳をリラックスさせる『GABA(ギャバ)』という物質が関係しています。
それが何かはわからなくても、「何やらリラックスできる物質らしい」というイメージは持っている方が多いのではないでしょうか?GABA入りのチョコなどが売られていたりもしますよね。
食品に含まれるGABAで脳内のGABAが増やせるわけではないのですが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬はこのGABAの働きを高め、脳の働きを速やかに抑制しておだやかにする作用があるのです。
GABAとは
GABAは、脳の中での情報の受け渡しをする神経伝達物質の1種です。脳の神経細胞の活動を抑える作用があり、脳をリラックスさせる神経伝達物質としては、脳内で一番多い物質になります。
量だけでみればグルタミン酸という物質が最多なのですが、そちらはGABAと反対に脳を興奮させる物質です。ですので、脳内のリラックス系神経伝達物質としては、GABAが一番多くを占めることになるのです。
GABAが脳の高ぶりを抑える仕組み
それでは、GABAはどのようにして脳の活動を抑制するのでしょうか?それには、カルシウムイオンのCl⁻が関与しています。
脳内でGABAと結びつく『GABA受容体』は、Cl⁻の通り道(イオンチャネル)にくっついています。GABAが受容体に結びつくとCl⁻チャネルが開き、神経細胞の中にCl⁻が入っていきます。
Cl⁻は、マイナスのイオンです。細胞の中にこれが入ると、神経内部が電気的にマイナスの状態になります。神経細胞の興奮は細胞内が電気的にプラスになったときに起こりますので、GABAの影響によってCl⁻が細胞内に入ることで、細胞内がマイナス状態になって脳が興奮しにくくなるのです。
ベンゾジアゼピンとGABAの関係
上でご説明した通り、GABAは細胞内のカルシウムイオンCl⁻を増やし、細胞内を電気的マイナスにすることで脳の高ぶりを抑えます。
それでは、ベンゾジアゼピンはGABAやCl⁻とどのような関係があるのでしょうか?
GABA受容体とベンゾジアゼピン受容体は別の場所に存在しています。しかし、ベンゾジアゼピン受容体にお薬がくっついて受容体が活性化すると、その影響でGABA受容体の作用も強まる仕組みになっています。
これにより、ベンゾジアゼピン系のお薬は間接的にGABAの働きを強め、Cl⁻を細胞内に増やして脳をリラックスさせる効果を発揮できるのです。
ベンゾジアゼピン系の特徴とメリット・デメリット
睡眠薬や抗不安薬として幅広く使われるベンゾジアゼピン系のお薬は、上手く使えばとても優れたお薬です。
メリットとしては、
- 即効性がある
- 効果をある程度予測できる
- 不安や催眠だけでなく、筋弛緩作用で肩こりなどを緩和させるものもある
デメリットとしては、
- 睡眠の質が落ちる
- ふらつき、翌朝への持ち越し、健忘などの副作用がある
- 耐性・依存性がある
最大のメリットとしては、飲んですぐに効果を実感できる「即効性」で、作用時間も様々な種類があるので、使用目的に合わせた処方がしやすいお薬です。
しかしその一方、飲み続けると「耐性(慣れ)」が生じやすく、身体・精神ともに依存しやすい性質があるため、処方を守り正しく使っていくことが大切です。
※ベンゾジアゼピン系のお薬のメリット・デメリットについて詳しくは、
『ベンゾジアゼピン系睡眠薬のメリット・デメリットとは?(リンク準備中)』『ベンゾジアゼピン系抗不安薬のメリット・デメリットとは?(リンク準備中)』をお読みください。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:お薬の基礎知識 投稿日:2019年11月14日
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