食前薬や食後薬は守らなきゃダメ?お薬と食事の関係

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お薬は飲むタイミングが大切

お薬を病院で処方されると、「食前薬」や「食後薬」などといったように、食事の前か後に服用するように指定されているかと思います。なかには、食間に服用するお薬もあります。

食後ならまだしも、食前薬や食間薬は忘れてしまいやすいですよね。「どうせ胃の中に入るんだから食後でも同じじゃないか」と思われるかもしれませんが、お薬によっては食事の影響を大きく受けるものがあるのです。

せっかく飲むお薬の効果を十分に得るためにも、用法は守っていきましょう。

「食前」や「食間」のお薬

お薬の多くでは「食後」の服用が一般的です。しかし、中には「食前」「食間」の服用が指定されているものがあります。

制吐剤や一部の糖尿病のお薬では、食事の前に効果を発揮する必要があるために食前薬となっています。食前とは具体的に、30分ほど前になります。食事の直前に服用するべきお薬は、「食直前」の用法となっています。

これらは食後に飲んでしまうことで、著しく効果が落ちてしまうため、忘れず食事前に飲むようにしましょう。(詳しくは、『食前薬は食後に飲んじゃダメ?』をお読みください)

また、食間・食前に飲むお薬の代表的なものとして漢方薬があります。漢方薬は空腹時に飲むことでアルカリ性成分の強い作用を中和し、酸性成分の作用を助け、安全性と効果を高める効果が期待されるのです。(詳しくは、『漢方薬はなぜ「食間・食前」の服用になっているの?』をお読みください。)

食事がお薬に与える影響

上でご紹介したような一部のお薬を除き、お薬は食後に服用するものが多くなっています。お薬の効果を考えるときは、基本的に食事での影響を考え、飲む量などが決められています。

食事がお薬に与える影響には、以下の3つがあげられます。

  1. 食後はお薬の吸収がゆっくりになる
  2. 胃の中でのPhで吸収率が変化する
  3. 食事中の脂肪で吸収率が変化する

順番にみてみましょう。

1.食後はお薬の吸収がゆっくりになる

食事をすると、食物は胃から少しずつ腸へ運ばれ、栄養素が小腸で吸収されていきます。

食後にお薬を飲んだときは先に食べ物が胃を満たしていますので、お薬が腸に運ばれるまでには時間がかかります。ですから、食後は基本的にお薬の吸収がゆっくりです。

そのため、一気にお薬の血中濃度は上がらず、じわじわと効果を発揮するようになります。

2.胃の中でのPhで吸収率が変化する

胃の中は酸で満ちていて強酸性です。食事をするとその酸がうすまり、アルカリ性に傾きます。

空腹時では胃液のPh(ペーハ:酸性~アルカリ性を示す単位。数値が小さいほど酸が強い)は1.2~1.8ですが、一般的な食事では3.5~5.0に上昇するといわれています。

お薬にも、酸性のものとアルカリ性(塩基性)のものがあります。酸性のお薬は胃がアルカリ性に傾くと崩れやすく、吸収が速くなります。

アルカリ性のお薬ではその逆で、食後のアルカリ性の胃内では安定しやすく、吸収がゆっくりになります。

Phの変化とイオン・分子のバランス

食事でpHが変化すると、胃の中での分子とイオンのバランスも変わります。このこともお薬の吸収率を変化させます。

お薬は、分子の形かイオンの形で存在しています。分子の形の方が疎水性(水になじまない)で、脂でできている細胞膜を通過しやすくなるのです。

3.食事中の脂肪で吸収率が変化する

食事には何らかの脂肪分が含まれています。この脂肪がお薬の吸収率に影響を与えます。

脂肪に溶けやすいお薬では、脂肪にお薬の有効成分が溶け込んでいきます。そして、脂肪が体内に吸収されるとき、お薬も一緒に吸収されていきます。

ですから、脂肪に溶けやすい(脂溶性の高い)お薬は食後に飲むことによって吸収効率がよくなります。

脂質・炭水化物・タンパク質のお薬への影響

食事には、様々な栄養素が含まれています。上でご紹介した通り、とくに脂肪分はお薬の作用に影響を与えますが、炭水化物やタンパク質もそれぞれ少しずつ影響しあっています。

脂肪とお薬の吸収

上でお話ししました通り、脂肪に溶けやすいお薬は、食事の脂肪分で吸収効率が高くなります。

吸収についてもう少し掘り下げてご説明すると、高脂肪食では小腸で脂肪を吸収するために、胆汁酸の分泌が亢進されます。これによって脂溶性が高いお薬は、吸収率が増加します。

リンパ系から直接吸収される割合も増え、全体としてお薬の生体利用率(バイオアベイラビリティ)が上昇します。

そして、血液中では、食事の脂肪分によって遊離脂肪酸が増加します。すると、これが血液中の主なタンパク質であるアルブミンにくっつき、お薬がアルブミンから離れて遊離します。

お薬の効果は、成分が遊離してターゲットである組織(脳)に届いてはじめて発揮されますので、脂肪分で効果が増強すると考えられます。

そのため、脂溶性が高いお薬は、脂肪の吸収を妨げるサプリメントや一部の医薬品によって吸収率が落ちます。逆に脂肪をとりすぎると、血液中のお薬が多く脳に移行し、副作用が出やすくなります。

炭水化物・タンパク質とお薬の吸収

ご飯・パン・麺類・砂糖などの炭水化物が多い食事では、肝臓の代謝に関係するCYPという酵素を抑制します。

そのため、お薬の代謝が進まず体内に残りやすくなります。

一方、高タンパク食ではCYPの働きを促進するといわれています。ですから高タンパク食では、お薬が分解されやすくなると思われます。

まとめ

お薬は食事によって様々な影響を受けます。

「食前」「食後」などの指定には意味がありますので、用法を守って飲むようにしましょう。

また、食事内の栄養素によってもお薬への影響が変化します。お薬を服用するときにこまごま気にする必要はありませんが、食事はバランスよく、毎日偏らないようにすることが大切です。

食事の影響を受けやすいお薬については、『食事の影響が大きいお薬とは?』をお読みください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:お薬の基礎知識  投稿日:2019年12月26日

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