漢方薬は自律神経失調症に効果的?病院での漢方治療と注意点

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一般的な病院やクリニックで漢方薬はどのように使われる?

病院やクリニックでは、自律神経失調症の治療で使う漢方薬に健康保険の適応が認められています。

全身のバランスを根本から整える漢方薬は、不安や興奮など「こころ」の症状の緩和を含め、自律神経失調症の改善の助けとなるケースもたしかにあるのです。

けれど、その使い方を誤れば逆効果になることもあるため、注意が必要です。

一般的なクリニックや病院での漢方薬の位置づけは、どのようになっているのでしょうか?

自律神経失調症での漢方の位置づけ

一般的な病院での自律神経失調症の治療では、まずはお薬によって辛い症状コントロールし、落ち着いてきたところで、原因となるストレスや生活習慣を振り返っていきます。

使うお薬は、基本的に抗うつ剤や抗不安薬が主流なのですが、自律神経失調症の場合は漢方薬が活躍することがあります。

自律神経失調症には複数の「不定愁訴(はっきりとした原因のわからない様々な心身の不調)」が認められます。漢方薬は身体のバランスを根本から整えていくことで効果を発揮するものなので、不定愁訴の多い自律神経失調症の治療にも適しているのです。

ただし、西洋薬のように、症状に対しピンポイントで効くわけではありません。一般的に効果はマイルドで個人差が大きくなります。そのため、適応できるケースにも限界があり、主に以下のような目的で使われています。

  • 軽症の自律神経失調症
  • 自律神経失調症の不定愁訴
  • 抗うつ剤などによる副作用の軽減

自律神経失調症に漢方が使われるケースについては、『自律神経失調症で漢方薬が使われるケースとは?』をお読みください。

自律神経失調症の治療に漢方薬を使う時の注意点

漢方は自律神経失調症に有効なことがあるとはいえ、実際に飲むときには注意が必要です。

漢方薬は人それぞれの「証(体質や状態など)」を意識して選ぶ必要があり、人によって相性があります。「自律神経失調症だったらこの漢方薬」というものが決まっているわけではありません。

自分の体質や状態に合わない漢方薬を選んでしまえば、むじろ逆効果になってしまうことも考えられるのです。

漢方では、体質・身体の抵抗力、身体のバランスの崩れ方などを「証」として診断していきます。それに基づいて生薬を配合し、漢方薬として処方します。

本格的な漢方病院や漢方薬局では、独自に生薬を配合したりもしますが、普通の病院で使う漢方薬は「エキス剤」という代表的な生薬の配合ごとに名前がつけられたものです。

それらがどのような体質の方に合っているのか、どの症状や病気に効くのか、ザックリとはわかってはいるのですが、漢方での「証」のことなどは一切考えず、体質に合わない処方がされてしまうケースも少なくはないようです。

患者さんからも「○○という漢方がいいと聞いたから処方してください」と言われることがあるのですが、漢方薬の効果は体質や病状の現れ方によって異なります。相性は人それぞれであるということを理解していただければと思います。

「証」について詳しく知りたい方は、『漢方の証について』をお読みください。

漢方からみた自律神経失調症の原因

漢方における自律神経失調症は、

  • 気や血の異常がある状態

と考えます。体質やその他のバランスの異常も考えながら、適切な漢方薬を選んでいくのです。

「気」の異常

「気」とは生きていく上で必要なエネルギーのことで、生命の根源ともいえます。気が異常となる状態としては、

  • 気うつ(気滞)
  • 気虚
  • 気の上衝(気逆)

の3つがあります。その中でも、自律神経失調症には気うつや気虚の状態が関係しているとされています。

気の異常 気うつ(気滞) 気が上手く流れない状態
気虚 気の足りない状態
気の上衝(気逆) 怒りやストレスで気が上昇する状態

それぞれの異常で生じる症状は以下のようになります。

気うつ 抑うつ気分・呼吸困難・喉頭部違和感など
気虚 意欲低下・疲労感・だるさ・食欲低下・下痢など
気の上衝 頭痛・めまい・発汗・のぼせ感・イライラなど

「血」の異常

「血」は、私達を構成する水分のうち、赤い液体を表します。つまり血液および血液が運んでいる栄養分のことです。血が異常となる状態としては、

  • 瘀血
  • 血虚
  • 血熱

の3つがあります。自律神経失調症には主に瘀血や血虚が関係していると言われています。

の異常 瘀血 冷えなどで血のめぐりが悪い状態
血虚 血が足りない状態
血熱 血に熱が入り、血行が加速している状態

それぞれの異常で生じる症状は以下のようになります。

の異常
(血液)
瘀血 頭痛、月経異常、肩こり、遷延する抑うつなど
血虚 貧血、めまい、動悸、不安、健忘など
血熱 不安、焦燥、のぼせ、イライラなど

まとめ

漢方薬には、不安や緊張、興奮を和らげる効果が期待できるものがあります。このため、自律神経失調症の治療にも適してはいますが、体質や病状を考えて処方することが大切です。

一般的に漢方薬は効果がマイルドで効果に個人差が大きいため、メインのお薬の補助や、副作用対策、病状安定期や軽度の方の治療に用いるなど、うまく組み合わせることで効果を発揮してくれるものです。

漢方薬も西洋薬と同じで飲み合わせ・副作用・禁忌などがありますので、飲むときは医師や薬剤師さんに相談してください。

自律神経失調症の治療に使う具体的な漢方薬については、『自律神経失調症に効果的な漢方薬とは?』をお読みください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:漢方について  投稿日:2020年8月12日

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