精神科訪問看護は大変そう?どんなイメージ?

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精神科訪問看護ステーションについて、精神科医が詳しく解説します。

精神科訪問看護の経験がない看護師さんは、精神科訪問看護にどのようなイメージを持っていますか?
「よくわからないけど、何となく難しそう…」「怖そうなイメージがある…」という人もいるかもしれません。
今回は精神科訪問看護になぜそのようなイメージがあるのか考えていきたいと思います。
また、実際に精神科訪問看護師として働いている人が感じた困難事例や解決へのヒントについてもご紹介します。

精神科訪問看護が大変そうに感じる理由

精神科訪問看護が大変そうと感じるのは、以下の理由があるのではないかと考えられます。

1.精神疾患のイメージ

精神疾患をもつ人といえば、幻覚・妄想等の症状が強く、時には危険行動がみられるような急性期の状態を想像する人がいます。
そのようなイメージが先行して「大変そう」「怖そう」というイメージに繋がっているのかもしれません。
しかし、実際精神科訪問看護の対象になる利用者は、慢性期の人や、病状が安定して退院してきたような人がほとんどです。
利用者の精神症状が再燃しないよう介入したり、社会復帰の援助をしたりするのが、精神科訪問看護師の役割と言えます。

2.精神科訪問看護師としてのスキルが乏しい

精神科訪問看護では、利用者とのコミュニケーションが重要な看護のひとつです。
利用者との信頼関係を構築する、利用者の行動変容を促す等目的によって様々なコミュニケーションスキルがあります。
しかし、精神科での経験自体がないと、それらのスキルが乏しいこともあります。
その為「精神科訪問看護は難しい」という印象を持つ看護師さんがいます。

精神科訪問看護師が感じた困難事例

ここからは、実際に精神科訪問看護師として働く看護師が感じた困難と感じた1事例と、その解決策について紹介していきます。

Case.なかなか心を開かない利用者への関り

利用者Aは、B訪問看護師が訪問すると、自宅には迎え入れてくれはするものの、B訪問看護師の質問や声掛けに対して、全く反応を示しません。他の訪問看護師に対しては、笑顔を見せることもあるようです。B訪問看護師にのみ無反応なことがわかり、B訪問看護師は利用者Aの訪問に行くことが徐々に憂鬱になっていきました。

その後の対応

B訪問看護師は、他の看護師が利用者Aとどのような関りをしているのか訊ねてみました。すると、利用者Aは学生時代野球部に所属しており、他の看護師が訪問している時には、野球の話をとても楽しそうにしていることがわかりました。
そこでB訪問看護師も利用者Aに野球部の話を訊ねると、初めて会話をしてくれ、そこからB訪問看護師の声掛けにも返答してくれるようになりました。
振り返ると、B訪問看護師は、今まで利用者Aの症状や体調のことばかりを聞き、利用者A自身のこと何も聞こうとしていなかったことに気づきました。

解決のヒント

精神科訪問看護では、利用者との信頼関係を構築することが重要です。その為には「利用者自身のことを知りたい」「自分のことを知ってもらう」という姿勢をもって利用者と関わることが大切です。
つい、利用者の問題点や精神症状にばかり目がいってしまいますが、「利用者自身はどのような人物なのか」「今までどのような人生を歩んできたのか」等利用者自身について目を向けてみましょう。
ただし、いつまでもこのケースのような状態が続く場合、利用者にとっても、訪問看護師にとっても良いこととは言えません。
そのような場合には、担当看護師の交代を検討する場合もあります。

悩んだ時にはどうしたらいいの?

精神科訪問看護師として働くと、やりがいを感じる一方で、悩みや不安は誰にでも出てきます。
悩んだ時には、次のような方法を試してみましょう。

1.管理者や先輩訪問看護師に相談する

悩んだ時には、ひとりで抱え込まず、管理者や先輩訪問看護師に相談してみましょう。
きっと先輩も同じような経験をしているはずです。
また、訪問看護師が困難と感じることは、利用者にとっての問題点や課題であると捉え、皆で検討していくことが大切なケースもあります。
場合によっては、先輩に訪問同行してもらい、自分の悩みをフィードバックしてもらうのもひとつの方法です。

2.自己研鑽する

精神科訪問看護師になりたての場合、精神疾患への理解や精神科訪問看護の技術が不足していることで感じる不安も少なくありません。
精神科訪問看護師としてスキルアップすることで、自信をもって利用者と関わることができます。
書籍による自己学習だけではなく、日本看護協会や日本精神科看護協会等で研修を開催しているので、定期的にチェックして、自分に必要な研修を受けてみましょう。

3.チームで関わっていることを意識する

地域で生活する利用者を支えるのは、訪問看護師だけではありません。利用者の家族や主治医、その他様々な職種のスタッフが利用者に関わっています。
訪問看護師だけでは解決できないことでも、他の職種と連携することで解決する問題もあります。

まとめ

いかがだったでしょうか。
精神科訪問看護を経験したことがない人にとっては、精神科訪問看護が大変そうというイメージの方が強い人もいるかもしれません。
確かに、働いていると大変なこともありますが、それ以上にやりがいや魅力があるのも精神科訪問看護です。
少しでも精神科訪問看護に興味のある人は、私たちと一緒に精神科訪問看護師として働いてみませんか?

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:訪問看護  投稿日:2023年11月3日

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