妊婦さんにインフルエンザ予防接種と治療薬は安全?

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妊婦さんにインフルエンザワクチンは安全?

ワクチンには、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類あります。生ワクチンはウイルスを弱らせたもの、不活化ワクチンはウイルスの死骸のようなものです。

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンになりますので、妊娠への影響はないだろうと考えられています。実際に、インフルエンザワクチンと奇形との関係はないとする報告もあります。保存剤にチメロサールなどの添加物が混じっていることがありますが、妊娠には影響がないと考えられています。

ワクチンを接種する目的は、敵を身体に覚えさせることです。身体の免疫は、一度戦った敵のことを覚えます。メモリーB細胞という免疫細胞に記憶しておくのです。そして、次に同じ敵が来た時に、すぐに見つけて一気に攻撃体制を整えます。

世界各国でも、日本の産婦人科学会でも、妊娠中のインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。特に、妊娠4か月をすぎた妊婦さんにはインフルエンザワクチンを接種した方がよいと言われています。

予防を徹底すれば、確かに大丈夫かもしれません。ですが、上のお子さんがいる場合は徹底できるでしょうか?ご主人も含めて予防をきっちりできるでしょうか?予防を徹底することも大切ですが、インフルエンザワクチンも受けておいた方がよいと思います。

ただし、インフルエンザワクチンを作る時に卵を使いますので、卵アレルギーのある妊婦さんには摂取は注意が必要です。

インフルエンザワクチンについて詳しく知りたい方は、『インフルエンザワクチン』をお読みください。

インフルエンザにかかったら胎児には影響あるの?

インフルエンザにかかってしまったら、胎児には影響はないのでしょうか?妊娠にはどのような影響があるのでしょうか?心配になるかと思います。

いろいろな病原体によって、胎児への感染のしやすさはかわります。結論からいうと、インフルエンザウイルスは、胎児へは感染しないだろうと考えられています。胎児に感染するとしたら、胎盤を通じての感染です。インフルエンザウイルスが母体の血液から胎盤に感染し、そこから胎児の血液に入っていくことで胎児に感染します。インフルエンザに感染した方を調べた結果、胎児への感染は確認できなかったと報告されています。

むしろ、発熱や咳などによる母体への負担の方が大切です。あまりに状態が悪くなると、切迫早産などに繋がってしまうことがあります。妊婦さんがインフルエンザにかかると重症化しやすいです。ですから、インフルエンザを早くみつけて治療をしていくことが大切です。

出産の1週間をきってからインフルエンザになってしまった場合、母体の体液から赤ちゃんが感染してしまう可能性があります。感染がわかってすぐにお母さんの治療をはじめていきます。出産したら個室で管理して、赤ちゃんの状態の変化に注意していきます。

インフルエンザの予防を意識!

妊婦さんには安全といわれていてもお薬は使いたくないものです。ですから、インフルエンザにならないように予防することが何より大切です。ワクチンは必ず予防できるわけではありませんので、インフルエンザの流行シーズンには予防を大切にしましょう。

インフルエンザの予防としてできることは5つあります。

  1. 人込みに出ない
  2. 正しい手洗い・うがい
  3. マスクを着用
  4. 適度な湿度
  5. 口呼吸を改善

人込みにでなければ、インフルエンザにもらうこともありません。人が密集するところは、12月~3月の流行時期は避ける方がよいです。

また、正しい手洗い・うがいをしっかりしましょう。手洗いは、洗剤をつけてすぐ洗い流していませんか?せっかくやっても正しくできていなければ、インフルエンザウイルスはやっつけることができません。また、妊婦さんはイソジンでうがいをしてはいけません。ヨードは身体にたまってしまい、赤ちゃんに影響が出てくる可能性があります。水でしっかりとうがいをしましょう。

マスクは、人に移さないために重要ですが、保湿効果もあるので感染予防としても大切です。また、室内の湿度も意識しましょう。50~60%程度が理想的といわれています。乾燥しすぎると、ウイルスの感染力が上がってしまいますので気を付けましょう。

口呼吸の方は、鼻呼吸にかえてみましょう。鼻には免疫のために効果的な働きがたくさんあります。ですから、口呼吸から鼻呼吸にかえることで、免疫はあがります。

妊婦さんに使えるインフルエンザ治療薬

インフルエンザの治療は、

  • インフルエンザウイルスの感染の広がりを抑えてくれるインフルエンザ治療薬
  • 発熱・頭痛・咳・鼻炎などの症状を抑えるための風邪薬

の2種類に分かれます。風邪薬については、症状に合わせて使っていきます。

詳しく知りたい方は、「妊娠中にも使える風邪薬とは?」をお読みください。

インフルエンザの治療薬としては、現在5種類(タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタ・ゾフルーザ)あります。昔からあるのがタミフルとイナビルです。その後、吸入薬のイナビル、点滴薬のラピアクタ、経口薬としてゾフルーザが発売されています。

タミフルは今のところ、奇形をもたらすリスクはないと考えられています。リレンザやイナビルは吸入薬です。ですから、吸入された薬のほとんどはその場で作用するだけで、血中に移行するのはごくわずかです。このため、胎児への影響はほとんどないと考えられています。

ラピアクタは、動物実験では胎盤を通過することは確認されているものの、データ不足ではっきりしたことはわかっていません。ゾフルーザも同様ですが、ウサギに莫大な量を投与した時に流産の増加や肋骨の奇形の報告がありました。どちらも大きな問題はないと考えられていますが、有益性が上回る場合とされています。

このようにインフルエンザ治療薬は比較的安全といわれています。症状がひどくなって母体に負担がかかる方がリスクかと思われます。このためインフルエンザに妊婦さんがかかってしまったら、インフルエンザ治療薬を使っていくことが多いです。より安全にという観点では、吸入薬が良いかと思われます。

まとめ

インフルエンザワクチンはン妊婦さんでも安全といわれていて、接種が推奨されています。

インフルエンザに罹患しても、胎児への影響はないと考えられていますが、妊婦さんは重症化しやすいといわれています。

インフルエンザの予防としては、人込みに出ない・正しい手洗いうがい・マスクの着用・適度な湿度・口呼吸改善などを意識しましょう。

基本的にインフルエンザ治療薬は安全と考えられていますが、吸入薬のリレンザ・イナビルはより安全性が高いと思われます。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:妊娠・授乳について  投稿日:2020年8月23日

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