精神科・心療内科クリニックの選び方とは?
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心の治療の良し悪しは見えにくい
みなさんは、「愛想がよいけど腕はヤブの医者」と「腕はいいけど愛想が悪い医者」のどちらがよいでしょうか?
この質問をすると、多くの方が後者を選びます。身体の病気では、症例数○○件とか先生の経歴などから、医者の「腕」がある程度わかります。
心療内科や精神科では、目に見えない心の症状を治療するので、治療の過程や結果が分かりにくいです。ですから、どの医者が腕がよいのかがわかりません。そして心の治療は、治療の相性のようなものがあるのも事実で、どのように頑張っても治療が難しい患者さんがいらっしゃるのも事実です。それこそ長い治療での付き合いを通して、少しずつ糸口を見つけていくことも少なくないです。
その中で大切なことは、あきらめずに誠実に考え続けることと、同時に治療者としての限界を認める謙虚さだと私は考えています。医療機関の倫理観も様々ですが、
- 治療に対して極端な勧奨をする(薬NGやTMSのみ)
- 初診の時間を確保しない
ところは、営利的な要素が強いように感じています。
ここでは、精神科・心療内科の選び方について、私が思うところをお伝えしたいと思います。心が疲れてしまって、心療内科や精神科を探されている方の参考になればと思います。
精神科・心療内科クリニックを選ぶ上でのポイント
どこの精神科・心療内科にしようかなぁを迷われている方も多いと思います。通院で治療できる場合に、どのようなことを判断基準にすればよいのか、そのポイントをお伝えします。
まず一番最初に見抜けることとして、
- 主治医制であるかどうか
になります。
主治医制でなければまともな治療ができないのは、精神疾患という特性を考えれば明らかです。
主治医制でないところは便利で都合がよいクリニックに多いのですが、自分のためにも、主治医制のクリニックを選択するようにしてください。
主治医制でないクリニックは精神科医ですらないことが少なくなく、本当に人生がかわってしまいます。
クリニックを探している多くの方が、「自分の治療を任せられる医師かどうか?」に関心があるかと思いますが、そもそもクリニック自体にしっかりと通えて、適切な治療を提供できるのかが大切です。
どんな医師かは実際に診察をうけてみないとわからない部分が大きいですが、クリニックのハード面やソフト面はホームページなどからもわかります。医師の見分け方は後ほど述べますが、まずは医師以外のポイントを見ていきましょう。
- 週に1回でも通える距離にあるクリニックか?
- 診療時間が自分の生活リズムとあっているクリニックか?
- カウンセリングが必要な場合、臨床心理士がいるクリニックか?
- 施設や制度を紹介してくれるクリニックか?
- 自分の病状にあったクリニックか?
※何科を受診してよいかお悩みの方は、「精神科と心療内科はどのような違いがあるのか」をお読みください。
週に1回でも通える距離にあるクリニックか?
精神科や心療内科の通院治療では、週に1回の通院間隔になることも多いです。
とくに初診後しばらくは、薬が身体にあうかどうかや心の治療を一緒にすすめていくためにも、週に1回の通院間隔になることも少なくありません。また、調子が悪くなったら、通院間隔は短くしていく必要があります。あまりに遠いクリニックは適切ではありません。
診療時間が自分の生活リズムとあっているクリニックか?
診療時間もチェックしましょう。仕事が遅くなる方では、夜遅くまで行っているクリニックがよいですね。
土日に診療しているクリニックもあります。多少の生活上のイレギュラーがあっても対応できる診療時間のクリニックにしましょう。
カウンセリングが必要な場合、臨床心理士がいるクリニックか?
精神科や心療内科というと、「カウンセリングをしてくれる」「話をきいてくれる」と思っている方も多いです。
ですがクリニックでの治療は薬物療法が中心になります。医師の精神療法は、物事の考え方や悩みへのちょっとしたヒントをくれたり、背中を押してくれるイメージでいただいた方がよいかと思います。
じっくりとした心理治療をうける必要があるなら、臨床心理士によるカウンセリングができるクリニックがよいでしょう。パーソナリティ障害や摂食障害など、心理的な治療が不可欠な病気では、カウンセリングができるクリニックがよいでしょう。
施設や制度を紹介してくれるクリニックか?
施設や制度をしっかりと紹介してくれることも大切な要素です。
例えば自立支援医療制度など、条件を満たせば医療費が1/3になる制度もあります。
また、必要に応じてデイケアや作業所などの施設を紹介してくれるクリニックがよいです。ソーシャルワーカーが相談にのってくれるクリニックでは心配ないでしょう。ここに力をいれているクリニックは、いい医療機関であることが多い印象です。
自分の病状にあったクリニックか?
そして、自分の病状にあったクリニックかも大事です。このクリニックがよいかも知れないと思ったら、ホームページをよくみてください。
クリニックの特徴が自分にあったほうがよいです。口コミがよいからと無理して合わないクリニックにいっても、よいことはありません。よい先生ほど、できることとできないことは明確にしています。
相性の良い精神科・心療内科医を見つけるポイント
つぎに、相性が良い精神科医や心療内科医を見つけるためのポイントを考えていきましょう。
こればっかりは実際にお会いしてみないとわかりませんし、患者さんによっても相性があります。ですから、「いい医者≠相性の良い医者」です。こと心の治療においては、最低限の知識や技術は必要ですが、相性というのも重要だと思います。この先生と一緒に治療していきたいと思るかどうかは大きいのです。
主治医を考える時に、クリニックの大きな違いとしては以下の2つがあります。
- 院長が中心で行っているクリニック
- 複数の医師で行っているクリニック
院長先生が一人でやっているクリニックでは、その先生と合うか合わないかになります。ですが院長が元気な限りは診療をしてくれますので、一度いい先生に巡り合えれば安心ですね。
複数の医者がいるクリニックでは、事情によっては主治医を変更してくれます。ただ、すぐには変更してくれないことが多いです。これは、治療的な意味もあるのです。というのも、医師は患者さんに対して、ときに嫌なことも言わなければいけません。そのたびに担当を変えてしまうと、治療にならなくなってしまいます。
そうなると、クリニックを選ぶ段階で判断できることは、医師の経歴や口コミ、ホームページになります。
外来の精神療法は、元々もっているコミュニケーション能力も含めて、医師の「センス」の部分も大きいです。知識や経験、資格が多ければよいというものではありません。ある程度の知識や経験があれば、親しみやすい先生がよいかと思います。
あとは実際に診察を受けてみないと分かりません。その先生との相性の問題もあるので、受診してみての印象を一番大切にしていただければと思います。自分の病気とちゃんと向き合ってくれているかをみてください。
口コミ
口コミを参考にするときは、強烈な悪口は無視した方がよいです。精神科や心療内科の患者さんの中には、反感をもつと非常に攻撃的になる方もいます。
少数の強烈な口コミよりも、大多数の意見を大切にされたほうが良いと思います。少なくとも、感情的な口コミは参考にしない方が良いかと思います。
私自身もネガティブな口コミを書かれることがありますが、だいたい書いた方がわかります。そして悲しいかな、多数をしめる満足してくださっている方は、口コミは書いてくださらないです。
ホームページ
ホームページをみてみると、院長のメッセージや動画があったり、ブログを書かれている先生もいらっしゃいます。本音と建て前という部分はもちろんありますが、人柄などがわかることもあります。
名医の紹介本
本は、今や自費出版によって広告に使われる時代です。町の名医を紹介する雑誌も、広告料を払えばのせてくれます。
私のところにも何度も営業がきましたが、一度も載せたことがありません。
また当院は情報発信を積極的に行っているので、ちょくちょく民放テレビ局や雑誌の取材依頼が入ります。意図しない形で編集加工されてしまうことが多く、ほとんどお断りしています。
医師の経歴
多くのクリニックや病院では、医者の経歴がホームページなどに公表されているかと思います。
それをみると、大病院や有名病院での勤務歴があったり、すごい肩書がついている先生もいます。論文をたくさん書かれている先生や、本をたくさん出版されている先生もいます。
これらの先生がみんな名医かというと、残念ながらそんなことはありあません。外来での治療ということに関しては、病院や大学での勤務歴や論文や本といったことは、あまり関係がありません。
ですがどの分野でも、一つの道を究めている方は、尊敬できる方が多いのは事実です。
では年をとっていると良い先生かというと、そこも何とも言えません。精神科の薬物療法は、2000年に入ってから急激に進歩しています。
それでは経歴の中で、どこをみていけばよいのでしょうか?
資格としては、
- 指定医
- 専門医
の資格のどちらかをとっていることは、ひとつの目安になります。この2つの資格は、少なくとも3年間は精神医療を行っていないと取得できない資格です。
病院での入院症例に基づく資格なので、治療の能力とは関係ありませんが、少なくとも基本的な精神疾患への素養があることの証になります。
入院が必要なら精神科病院へ
入院の可能性があるならば、街の心療内科や精神科のクリニックではなく、精神科病院に相談しましょう。
精神科病院への入院を検討しなければいけないのは、以下のようなケースです。
- 死にたいという気持ちが強く、自分自身を傷つける可能性がある場合
- 興奮や衝動性が強く、他人を傷つける可能性がある場合
- 患者さん本人が病気の自覚がなく、家族がみきれない場合
このような時は、患者さんを保護しなければいけませんし、クリニックでは治療を十分に行うことができません。精神科の病院は、なかなかベッドが空いていないこともあります。というのも、精神科はどうしても入院期間が長くなり、退院する患者さんが少ない病院が多いからです。
精神科病院で受診すれば、必要があれば入院の調整は病状によって融通を利いてくれます。心療内科や精神科のクリニックから入院の依頼をかけるときは、近隣の様々な病院に声をかけてベッドが空いている病院を探すことになります。状況によっては、なかなか病院が決まらないこともあります。
あなたが自分自身を傷つけてしまったり、他人を傷つけてしまう恐れがあるならば、入院することもできる病院で治療をうけるべきです。いきなり入院とならなくてもいつでも入院の相談ができるように、大きな病院で相談しましょう。
患者さん本人が病気の自覚がない場合も、入院施設のある精神科病院の方が選択肢が広がります。
まとめ
心の病気の治療は、中長期にわたることも少なくありません。医療機関への通いやすさも、選び方のポイントとしては重要です。
相性のよい医師の見分け方は難しいですが、実際のところは診察を受けてみないとわかりません。一緒に治療を進めていけそうだと感じる主治医が見つかりましたら、信頼して治療を進めていただければ幸いです。
入院の可能性もある場合は、クリニックではなく病院での通院をお勧めします。
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診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。
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医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:精神科について 投稿日:2020年8月9日
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