【専門家が解説】バウムテスト(樹木画テスト)
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バウムテストとは?
バウムテストは、投影法という検査になります。検査を受ける方が意図が分からない方が、本人の無意識の部分が検査に表れやすくなります。ですから、検査を受ける前の方はお読みにならない方がよいです。ご興味ある方は、主治医にお申し出ください。
バウムテストとは、スイスの心理学者で産業カウンセラーのKoch,K.が1945年に創案した心理検査になります。投影樹木画法という心理検査で、カテゴリーは描画検査法の中に入ります。
検査方法は非常にシンプルで、1本の実がなる木を書いていただくだけになります。その中に投影される情報を、専門家が読み解いていく心理検査になります。
自由に書いてもらった「一本の木」から、
- 全体的印象
- 樹木の形態
- 鉛筆の動き
- 樹木の位置
の4つの側面から、60項目あまり(全体的所見、風景および付属物、地平、根元、根、幹、枝、冠、果実・花・葉など)から判断し、その人の持つものの考え方、思考のくせ、言葉で表現しにくい内面の気持ち、深層心理などを知るために役立てます。
また紙の上に描く木の位置や空間スペース、地面との関係などから、家族関係や環境や世界とのつながりなどを判断することができます。
描画検査法の中では、日本では多く使われている検査の一つになります。
バウムテストの目的
バウムテストは一本の木を描くことによって、その人の心の内面を判断することを目標に作られた検査です。
バウムテストは紙と鉛筆、そして身近な題材である木を描いてもらうので多くの人ができる描画投影法になります。
投影法は、その人の無意識を探っていく検査になります。ですから、なるべく先入観をなくして自由に描いていただきます。質問紙法とは異なり、バウムテストなどの投影法は意図がわかりにくくなっています。
このようにバウムテストの目的は、言葉では表現されることのない精神的な内面をとらえることにあります。
バウムテストは、木という身近な題材と紙と鉛筆があれば実施できますので、幼児から成人まで検査を実施することができます。
バウムテストの料金
バウムテストは保険の適応が可能な検査になります。バウムテストは、認知機能心理検査に分類されます。
心理検査には操作が容易なもの・操作が複雑なもの・ 操作と処理が極めて複雑なものの3段階に分かれています。
バウムテストは検査自体は単純ですが、その結果の解釈には専門的な知識と経験が必要になります。このため、操作が複雑なものにカテゴリーされています。
点数は280点になります。3割負担として計算しますと、窓口で支払うお金は840円になります。
医師が自由診療で検査をする場合やカウンセラーが独自でカウンセリングをしているような機関では、心理検査は自費になります。
バウムテストの検査をする際の注意点
バウムテストは、投影法という無意識を探るための心理検査になります。ですから検査を受ける際には、なるべく自由に思いつくままに描いていただくことが望ましいです。
バウムテストの結果の解釈には一定の理論があるのですが、解釈する人によっても違いが出てきます。主観的な検査ですので、必要に応じて他の心理検査も組み合わせながら行っていきます。
このような心理検査はあくまで補助的な役割であり、実際には問診や医師との診察などの中で病名や治療方針を決めていきます。
バウムテストは木を描く検査ですが、絵の上手、下手は関係ありません。また、深層心理がわかるといっても、すべてがわかるわけではありません。あくまで思考や状態などを把握する補助にすぎず、診療に生かしていくために行います。
木を描いてその中に現れた心の状態を判断するのが、バムテストになります。
バウムテストの検査・採点方法
バウムテストは、絵の描けるようになっていれば、3歳くらいから成人まで幅広く検査することができます。
A4の用紙1枚と鉛筆1本、消しゴムを用意します。
「実のなる木を一本描いてください。」とだけお伝えしますので、ご自由に木を描いてください。紙の方向、消しゴムの使用は制限がありません。時間の制限もありません。
もし実のなる木が描けないならば、どのような木でもかまいません。注意しておきたいことは、写生をしないようにしてください。クリニックの中にある木や窓の外の木を写生してしまっては、心の内面が見えなくなってしまいます。バウムテストでは、自分の心の木を描いてください。
テストの判定は、
- ①樹木の形ー形態分析(発達テスト的側面)
- ②鉛筆の動きー動的分析(性格テスト的側面)
- ③紙面における樹木の位置ー空間象徴の解釈
の3つの側面から判定していきます。
バウムテストでわかること
バウムテストではまず、描かれた絵を全体的特徴でとらえます。全体的な特徴を捉える際には、Grüwaldの空間象徴理論の考え方を参考に解釈していきます。
そして木や幹といったそれぞれの特徴から、投影されている情報を読み解いていきます。ここでは、バウムテストの解釈の例をご紹介していきます。
木の位置や場所
【木を見る視点】
- 木を見上げた状態の視点の場合:へりくだる、謙虚、
- 木を見下ろした状態の視点の場合:自信過剰、いばりんぼう
【木の大きさ】
- 大きな木の場合:自信に溢れている、積極的
- 普通の大きさの木の場合:バランスが取れ、協調性がある
- 木が小さく低位:何事にも自信がない、引っ込み思案
【木の位置】
- 紙の真ん中:情緒が安定
- 紙の右側:自己肯定感が強い、他者支配
- 紙の右上:何事も計画を立てる、慎重
- 紙の右下:ナルシスト、
- 紙の左側:現実逃避、内向的
- 紙の左上:空想家、引きこもりがち
- 紙の左下:過去を気にしている、前に踏み出せない
- 紙の上側:飽きっぽい、空想しがち、夢見がち
- 紙の下側:現実主義、実直、堅実
木
木は無意識の自画像が表れるとされていますが、近しい関係の人を表現しているとも解釈されます
- 測ったような左右対称な木:抑うつ的、自尊心低下、不安
- 左右非対称で崩れた木:気分が不安定、いら立ちが強い
- 写真のような木:神経質、完璧主義
- 木が2本:自身の過去を苦々しく思っている
- 木が3本以上:自分の価値観が揺らぎ、選べない状態
- 木が描かれていない:秘密主義、殻に閉じこもっている
- 右から風が吹いている木:社会的、外的圧力にがんじがらめ
- 左から風が吹いている木:無理にやらされている
- 全体的に押しつぶされたような木:上からの圧力に押しつぶされているような状態
幹
幹は、本来持っている生命力を表します。
- 幹がまっすぐ:頑固で意地っ張り、負けず嫌い
- 幹が右曲がり:断れない、お人よし、人から嫌われたくない
- 幹が左曲がり:引っ込み思案、人と打ち解けるのが苦手
- 幹が太い:元気いっぱい、生命力にあふれている
- 幹が細い:疲れている、頑張れない
- 幹が黒く塗られる:自己嫌悪、自己否定、自尊感情が低い
- 幹に模様が描かれている:他人の評価を気にしがち
- 幹が一部が折れている:挫折感がある、
- 幹だけで、枝や根がない:抑うつ傾向、元気がない
枝
枝は、知性や情緒を表します。
- 枝がたくさん描かれている:高揚感、空想家、
- 枝を大きく広げて描く:寛容、あけっぴろげ、ドジ
- 枝が曲がっており、四方にまたがっている:執着型、没頭型
- 尖った枝:批判的、攻撃性が強い
- 枝を描かない:引きこもり型、変身願望、今の自分に不満足
葉
葉は、気分や感情を表します。
- はっきりした葉を描く:社交的、人懐っこい
- 葉が小さく形も曖昧:はにかみ屋、内向的
- 葉がとがっている:他者排他的、論理的、
- 葉を1枚づつ描く:完全主義、承認欲求が強い
- 葉が舞っている:自意識過剰、自己顕示欲が強い
- 落ち葉を描いている:大きな挫折体験がある
- 葉を描かない:孤独、仲間がいないと考えている
根
根は、現在の生命力を表します。
- 根がしっかり張る:気分安定、落ち着いて物事に取り組める
- 根を描かない:不安、緊張が強い
地面
地面は、他者との人間関係を表します。
- 地面が平坦:人間関係に問題がなく、支えたり支えられたりを実感している
- 地面が歪んでいる:人間関係に問題がある、手助けを得られていないと感じている
- 塗りつぶされた地面:人間不信、裏切りを恐れている
- 石で地面を覆っている:臆病、用心深い、他人を信用しない
- 木を覆う柵がある:自分中心、周りの目を気にしない。
- 地面を描かない:孤独を感じたことがない、周りに人がいるのが当たり前
- 地面に草が生えている:癒しを必要としている、人間関係に疲れ果てている。
実
実は、希望や目標を表します。
- 枝に実がついている:目標を持ち実行している最中
- 枝から実が遠く離れている:目標はあるのに何らかの理由で阻まれている
- 実の種類がバラバラ:誇大妄想的な夢を抱いている
- 落ちた実が描かれている:目標をあきらめたことがある。
木以外
- 左に太陽、右に影:やる気があり希望に溢れている
- 右に太陽、左に影:自己を顧みて、新しい自分を模索しようとしている
- 雲や雨:秘密がある、後ろめたいことがある
- 真上に並木道:気持ちが前向き、新しいことを始めようとしている
- 右上に並木道:目標を見据えている、努力をしている
- 左上に並木道:決別を決めている、振り切りたいことがある
- 巣の中に鳥の卵がある:家族を作ろうとしている、家族的なものを求めている
- 空っぽの鳥の巣:喪失感、何か大事なものが手から離れたと感じている
- 巣箱:他力本願、自分で物事を決定するのが苦手
- 飛んでいる鳥:開放的、目の前が開けたような明るさ
- 小さな昆虫:他者依存傾向、未熟、子供っぽい
- 絡まったつた:女性的な思考が強い
- 絡まった蛇:親が煩わしい、親子間に問題を抱えている、過干渉にされている
- 山:親に依存している、自立心が芽生えていない
- 多くのの花や生き物:目立ちたがり屋、スポットを浴びたい
描き方
用紙の使い方、筆圧や描き上げるスピード、描いている順番などからも分かることがあります。
【用紙の使い方】
- 横向きの場合:現状の状態に満足していない。
- 縦向きの場合:現状に特に不満はない
【筆圧】
- 強い場合:積極的、行動力がある、自己中心的
- 弱い場合:消極的、無気力、不安を抱えている
- 筆圧が安定しない場合:情緒不安定、逸脱行為の恐れあり(絵の部位や箇所で使い分けている場合は問題なし)
【絵を描く早さ】
- 早く描きあげようとする場合:せっかち、短気。
- ゆっくり描きあげようとする場合:おっとり、慎重。
【絵を描く順番】
- 木が最初の場合:基本は安定だが、急な不安を感じやすい
- 葉が最初の場合:虚栄心が強い、見栄を張りがち
- 地面が最初の場合:他人に依存しがち、自立心が低い
【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。
診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:心理検査 投稿日:2019年5月14日
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