【専門家が解説】LSAS-J(リーボヴィッツ社交不安尺度)
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LSAS-J(リーボヴィッツ社交不安尺度)とは
LSAS-Jは、Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版の略になります。Michael R. Liebowitzによって考案された社交不安障害の尺度の日本語版となります。
社交不安障害とは、人から注目を浴びるような状況に対して、過度な恐怖や不安を感じてしまう病気です。その程度には個人差があり、プレゼンや発表といった人前に出るときだけを苦手とする方から、対人関係の全般に及んでしまっている方まで様々です。
LSAS-Jは、人から注目をされているような場面や、不安や恐怖から回避してしまうような典型的な場面を想定して、恐怖感や不安感の程度、回避の割合を客観的に数字て評価していきます。
このような心理検査であるため、社交不安障害の診断の参考にもなりますし、重症度の評価に使われています。また、不安階層表を作成して認知行動療法をすすめていくにあたっても、有用な心理検査になります。
LSAS‐Jの目的
LSAS-Jでは、社交不安障害の軽度から重度までの重症度を検査で客観的に数字で表すことができます。
社会不安障害は人見知りや引っ込み思案など、性格の問題と思われがちな病気です。思春期に発症することが多く、なかなか病気として治療につながりにくいために、人生の選択にも影響してしまうことが多いです。
また、うつ病やアルコール依存症を併発してしまうことも少なくなく、早めの治療が求められています。
LSAS-Jは診断にあたっての重症度を評価するためだけでなく、自分自身がもしかしたら社交不安障害かもしれないと感じている方に実施していただき、スクリーニング目的でも活用されています。
LSAS-Jは簡便で、問題数も24項目になります。このため負担がなく答えることができ、また自分のペースで質問紙に記入していくので、負担を感じずに検査を受けることができます。
また点数化することにより困っている点を客観化でき、治療に当たっての認知行動療法も計画しやすくなります。
LSAS‐Jの料金
LSAS‐Jは、健康保険が適応できる心理検査ひとつになります。
心理検査は保険請求の際、点数に差があります。料金の差は検査の複雑さに関係しています。LSAS-Jは簡易検査に分類されますので、80点(800円)になります。
簡易といっても粗末とか簡単なことしかわからないという意味ではなく、検査を受ける際、特別な時間や場所などを要さず、問題用紙を読んで患者さん自らが〇を付けるから簡易となっています。
患者さん自らが質問を読み、〇をつける形式になりますので、社交不安障害の方にありがちな初対面の人への過度な緊張がある場合でも、検査が受けやすいため、より信頼性の高い検査になります。
LSAS-Jは800円の検査料になりますが、3割負担の場合、実際の窓口で支払う金額は240円になります。
LSAS‐Jの検査をする際の注意点
LSAS-Jは、人から注目を浴びるような状況に対して、恐怖や不安を感じる程度や、回避をしてしまう頻度について検査します。
社交不安障害では、恐怖や不安のあまりに発汗や動悸などの身体症状が出てしまったり、人とかかわる場面を極端にさけるため、日常生活に支障が出てきてしまったりします。
LSAS-Jは検査の点数によって社交不安の程度、またはカットオフ値から社交不安を病気とみなすレベルかどうかを判断する参考にします。
LSAS-Jによって診断ができるわけではなく、あくまで診断の参考にしていきます。診断にあたっては、専門家が問診を行っていくことによって判断していきます。
落ち込みが強くなってくると、社交場面にも不安を感じやすくなります。社交不安障害の背景に、うつ状態が影響していることなどもあるのです。
LSAS‐Jの検査・採点方法
LSAS-Jには年齢制限はありませんが、設問は明らかに成人向けです。実際に社交不安障害の疑いを持ち、診察を受けようと思われるのは成人期になってからが多いので、成人向けの検査と言えます。
自己評価式検査になりますので、検査を受ける本人が質問用紙に〇をつけていきます。採点は検査の担当者が行います。制限時間を設けてはいませんが、大体10分くらいが妥当だといえます。
24の設問に答えていく形式で、
- 行為状況:他人の前で何らかの動作をする状況
- 社交状況:他人から注目を浴びる可能性のある状況
がランダムに設問されています。
過去一週間の自分自身のことを振り返り、当てはまる数字に〇をつけます。もし
そのような状況に置かれる機会がなかったならば、想像でつけてください。恐怖感/不安感について、4段階の中で当てはまるものに〇をつけます。
- 0:全く感じない
- 1:少しは感じる
- 2:はっきりと感じる
- 3:非常に強く感じる
隣の欄に回避の程度が4段階に分かれて記載されていますので、当てはまるものに〇をつけます。
- 0:全く回避しない
- 1:回避する(確率1/3以下)
- 2:回避する(確率1/2程度)
- 3:回避する(確率2/3以上または100%)
恐怖感/不安感と回避の合計得点から、社交不安を点数化します。評価のめやすは、以下のようになっています。
日本語版を作成する際に行われた研究で、症例群30例と健常対象群60例と比較した結果、上記のカットオフとすることが妥当性が高いとして基準となっています。
LSAS‐Jでわかること
LSAS-Jは、社交不安の程度を測定するための検査です。
設問の中には行為状況と社交状況が混ざっており、症状が出現してしまう状況が偏らないように作成されています。
社交不安障害には、
- 行為状況に対する恐怖や不安
公共の場での食事、人が見ている前で話をするなど - 社交状況における恐怖や不安
権威のある人との話、人の注目を浴びるなど
のの2種類があります。
LSAS-Jは、どちらもバランスよく検査ができます。また社交不安障害の人が、自分にとって苦痛な場面を回避してしまう頻度や割合についても知ることができます。
代表的な状況を網羅的に確認できるため、診察の際に伝えることが出来なかった症状や不安についても評価することができます。
またLSAS-Jは、治療の過程で治療の効果を知るのにとても役立つ検査です。検査結果の評価を点数化し視覚化することにより、最初の頃より症状がどのように変化するか理解することができるからです。
そして治療を進めていくにあたっては、認知行動療法を行っていくことが必要になります。苦手な状況に対して段階的に慣れていき、少しずつ克服していく必要があります。そのために不安階層表を作成することがありますが、LSAS-Jは不安階層表を作るにあたって、参考にすることができます。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:心理検査 投稿日:2019年5月14日
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