【専門家が解説】SCT(文章完成法)

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SCT(文章完成法)とは?

SCTとは、文章完成法といわれる投影法の心理検査になります。

文章完成法といわれる検査は色々とありますが、今回は日本で最も活用されているSCTである「精研式 文章完成法テスト」を例に取り上げます。

慶応義塾大学の教授であった佐藤勝男先生によって考案されました。昭和30年ごろから世に出て、現在でも使われている心理検査です。

言語連想検査から派生した心理検査で、元々は知的な面を評価する検査でしたが、現在では性格検査の一つとして用いられています。

あらかじめ「私の父は___」「私はよく___」など、未完な文章の続きを書いてもらいます。そして完成された文章の構成や書き方などから、知能や性格、意欲や興味・関心、生活史や人生観、心の安定性を含めたトータルな人間像を総合的に把握していきます。

SCTの目的

SCTは文章完成という手法を取った投影法の一つであり、文章を書いてもらうことによりその人のパーソナリティー全体を推測していく心理検査になります。本人に実際に書いてもらうことから、字の書き方、筆跡や行間などから印象を得て判断することもできます。

またほかの投影法の検査、例えばロールシャッハなどに比べると実施が容易で、他の心理検査とのバッテリーが組みやすくなります。

また文章を書くという行為には、本人の性格、生まれ持った性格や環境によって影響を受けます。つまり本人の思考やこだわり、家庭環境、社会的な環境などを要因とした自己意識が見えやすいことから、パーソナリティのトータルした姿が反映されます。

そのため最近では、医療機関などでの検査以外でも、会社の面接や教育機関でも使用されることもあります。

SCTの料金

SCTは保険で請求できる検査になります。認知機能心理検査に分類されます。

心理検査には操作が容易なもの・操作が複雑なもの・ 操作と処理が極めて複雑なものの3段階に分けられています。それによって料金も異なります。

SCTは検査そのものは決して面倒でも複雑でもありませんが、判断をするには採点をする人が学習をし、また経験も積んでいないと正しい判断がつけられない検査になります。ですから、採点に経験と時間がかかる検査になるのです。

そのため、複雑なものにカテゴリーされます。このため、点数は280点(2,800円)になります。3割負担として計算しますと、窓口で支払うお金は840円になります。

医師が自由診療で検査をする場合やカウンセラーが独自でカウンセリングをしているような機関では、心理検査は料金設定の中に組み込まれているケースが多いですが、別途かかる場合もございます。

SCTの検査をする際の注意

SCTは採点はしますが、点数化はしません。答えがない検査なのです。

国語のテストなどでは答えがあり、正答すれば点数がもらえ、誤答すれば点数はつきません。そして正答が多ければ試験に通ることが出来ますが、誤答が多い場合は試験では通りません。

しかしSCTでは文章を書いてもらうことにより、文章を書いた本人の知能、性格、意欲、興味・関心、生活史、人生観、心の安定性なども含めた、トータルな人間像を把握することに意味があるため、文章に点数はつけません。個々人の性格に合否があるわけではなく、良し悪しを判断する検査ではないのです。

例えば自分は中々自分の意見が言えず、リーダーシップが取れないことが欠点だと思っていても、周りの人は控えめで謙虚だと高評価を下している場合もあります。その逆に意見をしっかり言い、行動力があると自分では思っていても、暴走しがちだとか、人の意見に水を差すなどと思われている場合だってあるのです。

このように性格は誰にとっても良いということもありませんし、このような性格なら高得点、などはないのです。SCTはあくまで、文章に投影される本人の人間像を把握するために用いられるのです。正答がない検査なのですから、自分の思うことを書いてください。

SCTの検査・採点方法

SCTは文章完成法という形式の検査ですので、対象年齢は小学生から成人までになります。

小学生でも最初に書かれている短文の意味が分からないと文章は書けませんので、学校で作文は習っているくらいの学齢からが良いといえます。

所要時間は40~60分位を設定しています。

問題問題は全部で60問になります。例としては、「私の父は___」「私はよく___」などの刺激文が描かれており、それに続く短文を作成します。刺激文は30問ずつに分かれています。

採点判定は、採点判定者が読んで解釈するもので、ある程度の学習と経験が望まれます。その解釈には、判定者によってもバラツキは少なからず出てしまいます。

SCTの評価方法

採点方法としては、文章を書いてもらったものを解釈していきます。

大きくわけて、

  • 形式分析
  • 内容分析

の2つがあります。それぞれについて、簡単にご紹介していきます。

SCTの形式分析

まずは文章の内容ではなく、どのような書き方をしたかという形式分析から説明します。

  • 反応の長さ

文章が長文か短文であるかをみます。短文を書く人に多い傾向としては、あまり自分のことを話したがらない防衛機能が高い、もしくは早とちりで粗雑な傾向。

  • 反応時間

一つの文章にかかる時間です。熟考するタイプだと長くなる傾向があります。

  • 文法的な誤り

一つの文章に対して文法の間違い、文として読みやすいものを書いているかなどをみます。知的な問題もありますが、注意深いタイプの人は正しい文章を書く傾向があります。

  • 筆跡

字の大きさや筆圧などからもパーソナリティーの特徴は表れます。字が大きい人はおおらかですが、線や用紙からはみ出す人は自己中心的。

これらは一例です。実際には多くの分析と解釈が必要です。

内容分析

SCTを採点し評価する際には、刺激文に対し本人の人間像をトータルに評価する必要があります。内容分析について、簡単にご紹介していきます。

  • パーソナリティ

【知的側面】

刺激文に続く文章が年齢相応、時間的・空間的見通しが出来ているか、自分や環境に対して客観的に書けているか分析します。

【情意的側面】

書かれた文章から、本人の性格の特性を見ていきます。

【指向的側面】

本人が好きなものや将来についてを問う刺激文をピックアップし、本人がどのようなことに価値を置き、目指して生きているかを分析します

【力動的側面】

コンプレックスや心的葛藤、不安、攻撃性について分析します。

  • 決定要因

【身体的要因】

容姿や健康、体力についての分析になります

【家族的要因】

育ってきた家族の雰囲気、家庭内での人間関係、今の家族との関係などを分析します。

【社会的要因】

対人関係、友人や社会での環境などを分析します。

SCTでわかること

SCTでは、これまでの自分、今の自分、これからの自分、などをどのように意識し、本人を形成しているかを推察することができます。そして本人を形成するにいたった身近な環境をどのように意識しているかを知るために、自己意識を基にした60の刺激文から導き出した本人の文章を情報として、トータルパーソナリティーの把握をしていきます。

把握したパーソナリティーから、医療機関では心理療法を行っていく参考にしていくことが多いです。評価者によって解釈にバラツキはでますが、カウンセラー自身が評価者となれば、より有意義にカウンセリングを進めていくことができます。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:心理検査  投稿日:2019年5月14日

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