【専門家が解説】TEG(東大式エゴグラム)
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TEG(東大式エゴグラム)とは?
TEGとは、Tokyo University Egogram(東大式エゴグラム)の略です。
TEGは東大が開発したエゴグラムということになりますが、エゴグラムはアメリカの精神科医のエリック・バーンが考え出した交流分析をもとにしています。
交流分析では、人の行動(言語・声音・表情・ジェスチャー・姿勢・行動)を5つの自我状態に分類しました。Berne,Eの弟子であるDusay,J.が、この自我状態をグラフ化し視覚的に把握できるようしました。これがエゴグラムです。
5つの自我状態とは、以下になります。
TEGはエゴグラムの考え方から、東京大学医学部心療内科TEG研究会が日本人の性格傾向やものの考え方に合わせて開発した心理検査です。
十分な統計学的処理により開発されて標準化されているため、エゴグラムの中でも信頼性の高い心理検査といえます。
近年はエゴグラムの考え方を活用した、無料でできる心理テストなども公開されています。結果の解釈がわかりやすいため、身近になってきている心理検査になります。
TEGの目的
TEGでは3つの自我のどの部分が高く、どの部分が低いかによって性格の傾向を知ることができます。
このように性格の傾向や行動パターンがわかると、その人の特徴から陥りやすい思考パターンや偏りがわかるため治療方針や心理療法などをする際の指針を決めることに適しています。
また自分自身の性格の傾向を知ることにより、周囲とのコミュニケーションの取り方や自分自身を見つめなおし、気づきを得るきっかけになったりします。
TEGの料金
TEG は健康保険の適応ができる心理テストの一つです。認知機能心理検査に分類されます。
また心理検査は、検査の複雑さによって保険点数=料金に違いがあります。TEG は簡易な検査になりますので、80点になります。80点は800円に値し、3割負担の場合は窓口で支払う際は240円になります。
簡易といっても簡単なことしかわからないという意味ではなく、検査を受ける際、特別な時間や場所などを要さず、問題用紙を読んで患者さん自らが〇を付けるから簡易となっています。
医師やカウンセラーなどが自由診療で診察をする際は、心理検査に関して別途料金はかからないケースも多いですが、ご確認いただいたほうがよろしいかと思います。
TEGの検査をする際の注意点
身体の調子が悪くなり、今までとは明らかに違う症状があれば、その症状のつらい箇所に合わせた診療科のある医療機関を受診されるかと思います。
そしてつらい箇所の症状に合わせてレントゲンや採血など、様々な検査を行っていきます。
心の病においては、画像や血液検査などで病名がわかることは、残念ながら難しいのです。そのため心理検査をすることによって、現在の症状などを客観的に評価することができます。
もちろん心理検査だけですべては決まりません。じっくりと問診を行ったり、診察を行っていくうちに診断が決まっていきますが、自分の症状を正しく認識できていなかったり、上手く伝えられないこともあります。
心理検査はそのような患者さんの症状を客観的に知り、投薬治療や心理療法を開始する上で参考にするための検査になります。
心理検査といって過度に意識せず、ありのままの状態を記入してください。
TEGは心理検査であって、心理テストではありません。点数が高いことに意味があるのではなく、それぞれの要素のバランスを見ていくことが大切です。
性格検査になりますが、その良しあしを決める検査でもありません。性格傾向を知ることはできますが、性格の善悪とは全く関係ありません。例えば、「厳格」という性格傾向は、「真面目」とも「融通が利かない」ともとれます。
TEGはグラフ化することで、ビジュアル的にも理解しやすい心理検査になります。自身の性格傾向のパターンを理解し、治療に生かしていくことができます。
こんなところに〇をしたら性格が悪いと思われたらどうしようとか、自分の理想の性格はこうだからこれに〇をつけようなどとしたら、せっかく心理検査をしても正しい治療に結びつくまでに時間がかかってしまいます。
また、TEGだけで性格の傾向や症状を決めているわけではありません。あくまでより良い治療の一助のためにTEGを活用し、症状の改善と再発防止に役立てるためにTEG検査を行います。
こんな人に思われたくない、こういう人物に思われたいなどの考えを捨て、ありのままの自分を検査用紙に記入してください。
TEGの検査・採点方法
TEGの対象年齢は15歳以上になります。かかる時間は10分くらいになります。問題数は53問です。
5つの自我(CP・NP・A・FC・AC)のそれぞれに、10問づつの設問があります。すべての設問に対し「はい」「どちらともいえない」「いいえ」のどれかに〇をつけていきます。妥当性を得るためにL尺度が3問(信頼性を検証する項目:誰でもわかる質問に正解するかどうか)設けられています。
各配点は0点から20点になります
全体のプロフィールからいくつかのパターンを類似化します。各尺度の一つが突出しているものを優位型といいます。逆に一つの尺度があまりに低い場合、低位型といいます。
次に混合型として、グラフの形から台形型、U型、N型、逆N型、M型、W型、平坦型に分類されます。
CP優位型
頑固、責任感が強い、曲がったことが嫌い
NP優位型
世話好き、優しい、自己犠牲、お節介
A優位型
頭脳明晰、クール、理性的、面白味にかける
FC優位型
天真爛漫、創造性がある、空気読めない
AC優位型
従順、協調性がある、主体性がない
台形型
優しい、理性的、計画的、自由闊達、身内びいき
N型
CP低位、N・AC優位
自己犠牲的、優しい、尽くし型、嫌と言えないため内心葛藤が強い
逆N型
CP優位、AC低位
信念がある、自己中心的、周囲と抹殺が起きやすい
M型
優しい、面倒見がよい、冗談好き、陽気、ただしAがあまりに低い場合、夢見がちで突っ走りがち
W型
責任感が強い、、義務感が強い、批判的、分析力がある、嫌と言えない、顔色をうかがう、葛藤を抱えやすい
U型
義務感が強い、周囲への気遣いをする、感情を抑え込む
平坦型
すべてにおいて優位
バランスが取れている、エネルギーがある、仕事などもできる、頑張りすぎる
平坦型においては逆にあまりにすべての点数が低い場合、エネルギーが無く自分の状態が把握できてない場合があるので注意が必要
TEGで分かること
TEGの代表的なパターンについて、例示させていただきました。このようにTEGでわかることは、性格のパターンです。
心の病という観点からみると、Aが高いタイプの人は不安障害や心身症にはかかりにくいといえます。反対にAが低いU型の人は、葛藤を抱えやすいために心身に何らかの症状が出てしまうことが多いです。
また、Aが高くFが低いN型を示す人はワークホーリックタイプなので、うつ病や心身症を引き起こしやすいといえます。
Aの代わりにNPが高いN型を示す人は、他人のことを気にしすぎて自己犠牲的に世話をするため、うつ状態になりやすいです。現在うつ状態や対人恐怖の人は、CP・A・ACが高いW型のパターンの方が比較的に多いです。
TEGは性格の傾向を見るための検査ですので、心療内科や精神科などの医療機関で使われていますが、それ以外にも他者とのコミュニケーションの取り方や考え方のくせを知るのに適しているため、企業や教育現場でも広く使用されています。
TEGは治療経過の評価にも有効
TEGは交流分析の考え方をもとにした性格の傾向を知る心理検査として医療機関だけでなく、企業や学校などで幅広く利用されている信用できる心理検査です。
性格の傾向を知ることにより、考え方の偏りや心の病にかかりやすい傾向を知ることができます。
わかったからといって、考え方をまるっきり変えたりするために利用するわけではありません。人はだれでも個性があり、ものの考え方は皆違っていいのです。
ただあまりに偏向があり、そのため心や体に症状が出ているならば、その部分を少しずつ改善していく必要はあります。
そのため結果をフィードバックし、人間関係や自分の考え方の特徴を客観的に見つめなおす必要があります。TEGはそのような傾向を知り、より良い治療に結び付けるために有用なのです。
TEGを行い性格の傾向を知り、改善するために心理治療を行っていると、少しずつものの考え方が変わることがあります。またなかなか良くならないこともあります。そのような場合に、客観的に性格の傾向を再度見直す必要があります。
TEGは客観的な治療の経過を評価し、改善点を見出すために有用です。ですから、治療の途中で再度検査をすることがあります。
改善したところなどをフィードバックしながら、客観的に自分自身をみつめていくためにTEGは使っていきます。
【参考】交流分析について
エゴグラムのもとになっている交流分析について、簡単にお伝えしていこうと思います。
交流分析とは、アメリカの精神科医エリック・バーンによって1950年代半ばに提唱されたパーソナリティー理論です。
原語はTransactional Analysis、略してT.Aと言われています。精神分析を土台とし人間心理学を取り入れた心と行動を変化し成長を促す心理療法です。
交流分析の考え方の軸は、過去を変えることはできないし、また自分が関わっている人間を自分の思うように変えようとすることはできないと考えます。
過去や他人を変えるのではなく、自分の性格の傾向やものの考え方を変えていくことによって、円滑な人間関係や自分の思い込みから脱却することです。また人生脚本という、「自分はこう生きなくてはいけない」「このような人生を歩んでいくんだ」というしがらみや思い込みを捨てることを提唱しています。
交流分析では、価値観を認めている状態をOKと表現し、
- 私はOKで、あなたもOK:健康的に自他を認めている状態
- 私はOKでないが、あなたはOK:自分に自信が持てず、卑下や回避する
- 私はOKだが、あなたはOKでない:他人に疑念をいだき、排除する
- 私はOkでなく、あなたもOKでない:自他を認められず、ひきこもる
このような4つの状態を行き来すると考えます。この状態を認識できるようにして、修正していくことを目指します。
そして、私もO.KあなたもO.Kになれる(自他肯定)ようにしていくことを目標にしています。自分と他人、双方の価値観を認めて、「一緒にやっていこう」という姿勢で問題解決にあたっていきます。
この交流分析の考え方に基づき、親・大人・子どもという自我状態にわけて考えていくのがエゴグラムになります。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:心理検査 投稿日:2019年5月14日
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