薬に頼らずに不安を解消する4つの方法
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「不安」と上手に付き合いましょう
- 『不安』は人生につきものです。
もし、不安という感情がいらないのであれば、進化の過程で消え去っているはずです。不安を今でも人が感じるのは、生きるために不安が必要だからです。
不安を感じるから人は準備をする、警戒する、慎重に行動することができます。ですが過度に不安を感じてしまうと、それが生きていく上で足かせになってしまいます。
過度な不安に対しては、抗うつ剤や抗不安薬などのお薬もありますが、「できればお薬は使いたくない」という方も多いと思います。
そんなとき、どのような方法で不安を落ち着ければいいのでしょうか?
不安解消法①-リラックスする呼吸法
- しっかりと時間をかけて息を吐き、腹式呼吸をすると不安がしずまります。
呼吸は、人が唯一意識的にコントロールできる自律神経系です。ですから、呼吸によって、自律神経を安定させることができるのです。
深呼吸をするとリラックスできると言われていますが、本当にリラックスするためには、腹式呼吸を意識することが大切です。
腹式呼吸では、まず時間をかけてしっかりと息を吐き切ります。すると、自然に肋骨とお腹の境目にある横隔膜(おうかくまく)が広がって息を深く吸いこむことができます。
横隔膜を広げて息を吸い込むことで肺がお腹の方に膨らんで、胃腸がつまっている腹部のスペースが小さくなり、このことが結果的に副交感神経の働きを強めてくれます。その結果として、不安をやわらげてあげることができるのです。
※腹式呼吸についてさらに詳しく知りたい方は、『リラックスする呼吸法とは?』をお読みください。
不安解消法②-リラクゼーション(漸進的筋弛緩法)
- 漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)とは、リラクゼーション法の一種です。筋肉の状態を知り、リラックス状態をつくりやすくしていきます。
不安があれば人の身体は自然と力が入ってしまい、「リラックスしろ」といわれてもなかなか難しいものです。
しかし反対に、意識的に筋肉を緊張させてから力を抜くと、脱力しやすくなります。そんな筋肉の特徴を利用し、リラックス状態を身に着けていく方法がリラクゼーション(漸進的筋弛緩法)です。
この方法では、一つずつの筋肉を意識して、緊張と弛緩を繰り返していきます。呼吸法を意識しながら、吸うときに力を入れて、吐くときに力を抜きましょう。
これを継続することでリラックス状態をつくりやすくなり、自分の緊張状態に気づけることで、不安や恐怖へのとらわれが薄れます。
※具体的なやり方などは、『リラクゼーション法(漸進的筋弛緩法)とは?』をお読みください。
3.不安解消法③-自律訓練法
- 自律訓練法とは、リラックス状態を自己暗示することによってつくり上げていく方法です。
自律訓練法を患者さんにお伝えしていくと、4割くらいの方に何らかの効果がありました。自律訓練法には大きな副作用はありませんので、どなたでも行えます。
まずは、呼吸を整えていきます。時間をかけて吐くことを意識しながら、腹式呼吸をして呼吸を整えましょう。
呼吸が落ち着いてきたら、人がリラックスしている時に感じる感覚を自己暗示していきます。「手足が重たい」や「手足が温かい」といった感覚を心の中で唱えながら、自己暗示をかけていきます。
それと同時に身体の声に耳を傾けて、その感覚を味わい、身体にリラックス状態をしみこませていきます。リラックス状態を十分に体感できたら、最後に忘れずに消去動作を行いましょう。不眠の方は、そのまま寝落ちしてもかまいません。
最初は難しい方も多いですが、続けていくことで自己暗示が少しずつ上手くなります。
※詳しく知りたい方は、『自分でできる!自律訓練法の効果』をお読みください。
不安解消法④-生活習慣の改善
普段何気なく行っている生活習慣に少し気をつけることで、不安を解消することができます。とくに、
- カフェインを控える
- 規則正しい生活リズム
- 適度な運動
が大切です。
カフェインを控える
まず、カフェインの摂取をできるだけ避けるか、量を抑えるようにしてください。
カフェインを含むものとしてよく知られているものといえば、コーヒーです。一日の中でコーヒーを飲むことが習慣化している人も少なくないと思います。
眠気覚ましに飲まれることからも分かるように、カフェインは興奮物質の一種です。交感神経が刺激され、脳内を緊張状態に保つ働きがあります。
カフェインを摂取するとおよそ30分で覚醒効果が現れ、2~4時間後にその効果はピークを迎え、その後個人差はありますが7時間程度持続するといわれます。
コーヒー以外にも、緑茶、紅茶、ウーロン茶、チョコレートやココア、栄養ドリンクなどにもカフェインは含まれます。
これらのものを完全に断つことはなかなか難しいですが、飲食物を買うときにはカフェインの有無を確認し、できるだけ量を抑えるようにしましょう。
規則正しい生活リズム
食事や睡眠などの一日の生活リズムも、不安に大きく影響します。規則正しい生活サイクルを守ることで、身体や心へのストレスを軽減することができます。
私たちの身体には体内時計とよばれるものがあり、睡眠と覚醒のリズムに限らず、自律神経およびさまざまな身体の機能を調整してくれています。
毎日決まった時間に食事を取る、早寝早起きを心がける、などの規則正しい生活を送ることで、この体内時計のリズム自体を整えることができます。
適度な運動
適度な運動は脳内のセロトニン神経の働きを促進します。毎日少しずつ、ウォーキングなどの軽い運動でもいいので継続して行っていると、セロトニンの代謝が向上することも確認されています。
セロトニンは脳をリラックスさせる作用のある物質なので、不安の解消に効果があります。
地道な積み重ねで不安のコントロールを
呼吸法、リラクゼーション、自律訓練法、生活改善はどれも地道な積み重ねが大切です。けれど、どれも継続すれば効果が現れますし、不安に限らず、心身の健康を全体的に保つために有効です。
過度な不安があまりに強いときはお薬の力も必要ですが、ここでご紹介した方法も積極的に取り入れ、不安と上手に付き合っていきましょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:セルフケア 投稿日:2019年10月1日
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