リラックスする呼吸法とは?
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「呼吸」は一番手軽なリラックス法!
日常生活の中でも、深呼吸をして気持ちを落ちつかせることがあるかと思います。
呼吸は、自律神経の中では唯一自分でコントロールすることができます。ですから呼吸によって自律神経に働きかけ、心身をリラックスさせることができるのです。
けれど、ただ深く息を吸うだけではリラックス効果はありません。本当にリラックスのできる呼吸法とは?その方法やメカニズムをご紹介していきます。ストレスや不安、緊張を感じやすい方には、とくに有効ですので、ぜひ生活に取り入れてみてください。
呼吸とリラックスのつながり
- 呼吸は、意識的にコントロールできる唯一の自律神経系です
私たちは常に呼吸をして生きています。普段はほとんど意識せず、何気なく息を吸って吐いているだけと思いますが、実は呼吸は、私たちの心身の状態と深い関係があるのです。
私たちの生活の中で、意識しないで勝手に調整されている働きはたくさんあります。呼吸もそのひとつですし、体温、免疫、食べ物の消化や心臓の動きなどは、『自律神経』が自動的にバランスを保ってくれているのです。
自律神経が調節している働きの中で、自分の意志でコントロールができるのは呼吸だけです。ですから、呼吸を通して自律神経に働きかけ、リラックスを図ることができます。
どのような呼吸法がリラックスに有効?
- いわゆる腹式呼吸が、リラックスできる呼吸になります
一般的に、深呼吸をすると落ち着くといわれていますね。けれど、ただ深く息を吸うだけではなく、『腹式呼吸』を意識することがリラックスのポイントです。
森林の中できれいな空気を胸いっぱい吸いたいとき、手を広げてふか~く息を吸いこみたくなりますよね?ですが、これはリラックスする呼吸とはいえません。
そのような深呼吸は、『胸式呼吸』と呼ばれます。胸の筋肉が大きく働いて肺を大きくすることで息を吸いこみますが、リラックス効果はありません。
リラックスするための呼吸で重要なのは、『腹式呼吸』なのです。腹式呼吸法はひとことで言うと、下腹部を膨らませたりへこませたりして呼吸をする方法です。決して難しい方法ではなく、一度身につければいつでもどこでも行うことができます。
リラックスする呼吸法~腹式呼吸のやり方~
①身体の力を抜いたまま、おへその下あたり(丹田)に手をあて、長くゆっくりと息を吐きます。口をすぼめるようにして息を吐くと、時間をかけて息を吐くことができます。お腹の中の空気を全て吐き切るイメージをしましょう。
②吐ききって下腹部が限界まで凹んだら、次は下腹部に空気を入れて膨らませるイメージで息を吸っていきます。このとき、できるだけ自然に鼻から空気を吸うのがポイントです。
③めいいっぱい息を吸いこんだら、3秒ほど少し息を止めて、再び息を吐いていきます。
以上を5~10分ほど繰り返し行います。呼吸に合わせて身体の緊張がほぐれていくイメージを頭に浮かべながら行うことで、実際のリラックス効果も高まります。
東洋で古くから知られているヨガや気功、その他各種の武道において、腹式呼吸は重視されてきました。腹式呼吸が心身の集中力や活動を高めることが、経験的にわかっていたのだと思います。
腹式呼吸にリラックス効果がある理由
腹式呼吸では、最初にゆっくり深く息を吐き切ります。このときに胃腸などが詰まっているお腹のスペースは小さくなります。
息を吐くうちにお腹のスペースが小さくなると静脈が圧迫され、血液が心臓に戻ってこなくなります。すると、血液を回すための交感神経にスイッチが入ります。
ここでお腹をゆるめて息を吸うと、交感神経の働きで一気に血液が心臓に戻ってきます。そこで身体があわてて副交感神経を活性化させ、バランスをとろうとします。その流れによって結果的に、副交感神経の働きが強まっていきます。
詳しくお伝えすると、以下のようなメカニズムになります。
- 息を止める
- 胸腹腔内圧が上昇する(お腹のスペースが小さくなる)
- 大静脈が圧迫されて血液が戻りにくくなる
- 心拍出量が減少し、血圧が低下
- 交感神経が活性化し、末梢血管が収縮し頻脈に
- 息を止めるのをやめると、静脈から一気に血液が心臓へ
- 心拍出量が増加し、血圧が上昇
- 副交感神経が活性化し、末梢血管が拡張し徐脈に
この流れがリラックス効果をもたらすので、まずは「十分に息を吐ききること」を意識することが重要になります。
過呼吸の対処法としても腹式呼吸は有効
リラックスとは真逆の呼吸として、『過呼吸』があります。
過呼吸は多くの場合ストレスや不安から発生し、浅く早い呼吸がエスカレートした状態です。不安が強くなってくると、息苦しさが出てきます。その切迫感から早く息を吸わなければと焦り、十分に息が吐けないままに呼吸の回数がドンドン増えて息苦しさが加速する悪循環がとまらなくなってしまいます。
このときにも、腹式呼吸を意識すると自分で落ち着けることができます。
※過呼吸への対処法について詳しくは、『過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?袋は使うべき?(リンク準備中)』をお読みください。
呼吸を意識して心身を整えていきましょう!
ストレスや不安を感じて緊張している状態のとき、呼吸は浅くなり、スピードも普段より速くなります。反対に、リラックスしているときには深く、落ち着いたリズムでの呼吸をしています。
つまり、浅く速い呼吸は不安を生み、深くゆっくりとした呼吸はリラックスを生じるのです。ストレスや不安を感じているときは、呼吸の方から心身の状態にアプローチし、自分自身で心身を落ち着かせてあげることができます。
『腹式呼吸』は、日常の中で気軽にできるリラックス法です。ストレスや不安や緊張を感じやすい方にはとくに有効で、抗不安薬などを減らしていく手助けにもなってくれます。ぜひ、実践してみてください。
※呼吸法以外にも、自分でできるリラックス法があります。知りたい方は、『薬に頼らずに不安を解消する4つの方法』をお読みください
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:セルフケア 投稿日:2019年9月24日
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