【専門家が解説】障害年金

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障害年金とは?

障害年金は、身体・知的・精神の障害や長期の病気によって十分な仕事ができず、生計を立てることが困難な方に対し、一定の年金が支払われる社会保障制度です。

病気の診断から1年6カ月以上経っても症状が改善しないか、改善の見込みがないとされる障害を負い、専門医の診断書によって国の定める障害等級に該当すると認定された方が対象になります。また、初診時に年金保険料の支払い要件を満たしていること(20歳未満・60歳~64歳を除く)が条件となります。

ここでは障害年金についてまとめていますが、障害年金は要件や手続きがかなり複雑です。書類に不足があると適切な認定が受けられないこともありますので、慌てず十分な準備をしてから申請をしましょう。障害認定日から過去5年まではさかのぼって請求することができます。

障害年金の適応かどうかは、主治医の判断によるところが大きいです。障害として病状が固定していて、生活していくために経済的な支援が必要かどうかになります。まずは主治医に、障害年金の適応かどうかをご確認ください。

障害年金の手続については、1つ1つのケースで細々とした違いがあります。申請を考える際は、病院のソーシャルワーカーなどにご相談することをおすすめします。お住まいの地域の年金事務所でも相談にのってくれます。

当院では、生活カウンセリングの一環として障害年金の相談も行っています。

障害年金の種類

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生(共済)年金の2種類があります。

  • 障害基礎年金(障害1・2級対象)
    ・・・国民年金に加入している方と、初診時20歳未満の方が対象の障害年金
  • 障害厚生(共済)年金(障害1・2・3級対象)
    ・・・厚生年金・共済年金に加入している方が対象の障害年金

どちらの年金が適応されるかは、病気や障害が診断された初診時点で加入していた年金で決まります。

  • 初診時に国民年金に加入
    →障害1・2級なら障害基礎年金のみ受給、3級なら受給できない
  • 初診時に20歳未満・6064歳で厚生年金未加入
    上に同じ
  • 初診時に厚生(共済)年金に加入
    →障害1・2級なら障害基礎年金+障害厚生年金が受給できる。3級なら障害厚生年金のみが受給できる。

なお、国民障害年金と老齢国民年金・遺族国民年金は同時に受け取れません。65歳になって老齢年金の資格を満たしたら、どちらかを選択することになります。厚生年金でも同様です。

しかし、老齢基礎年金と障害厚生年金、障害基礎年金と老齢厚生年金のように、年金種別が違えば、2つを同時に受け取ることが可能です。

障害基礎年金と障害厚生年金の違い

国民年金は、20歳以上60歳未満の自営業・自由業・厚生年金に加入していない事業所の勤め人・学生・無職の方が加入する年金です。厚生年金は、一般企業の社員、役員、その扶養配偶者の方が加入する年金です。共済年金は公務員の方の年金ですが、待遇は厚生年金とほぼ同じです。

国民年金は定額制ですが、厚生年金は収入に応じ、本人と勤務先が分担して年金保険料を支払います。基本は厚生年金の方が国民年金より多くの保険料を納めることになるため、厚生年金の方がもらえる年金額も多くなり、障害基礎年金の額に厚生年金分が上乗せされる形で支給されます。

また、障害基礎年金は障害1・2級に対する保障ですが、障害厚生年金は障害3級の方でも年金を受け取ることができます。

障害年金の受給条件

障害年金を受給するためには、

  1. 初診時に公的年金に加入していたこと(初診時20歳未満・60歳~64歳の方を除く)
  2. 年金保険料の納付要件を満たしていること
  3. 初診から1年6カ月以上たち、その時点で症状が継続していること
  4. 障害等級表に該当する状態にあること

の3つの要件を満たす必要があります。

初診時に公的年金に加入していたこと

障害年金は公的な年金制度の1つですので、公的年金に未加入だと受け取ることはできません。初診時に国民年金・厚生年金・共済年金いずれかに加入していたことが絶対条件になります。

ただし、初診時に20歳未満か60歳~64歳の国内在住の方は、年金未加入でも対象になります。(20歳未満の方は、本人の所得により受給制限がかかります)

年金保険料の支払い要件を満たしていること

年金の納付要件とは、年金の払い始めから初診日の前々月までの間に3分の2以上の期間の納付していること、あるいは初診日直近1年間の間に未納がないことを言います。年金の納付状況が不明な方は、役場の年金課で確認が可能です。

厚生年金は、毎月給料から年金保険料が差し引かれていますが、国民年金の方は自分でしっかり支払いをしていなければ障害年金の対象外になってしまいます。

ただし、経済的事情などで支払いが困難で、役所へ免除申請をしていた場合は大丈夫です。障害年金に関しては、免除期間は支払った期間とみなしてもらえます。

20歳未満の方はまだ年金加入前ですので、国民年金の支払い要件は関係ありません。しかし、すでに働いていて厚生年金に加入している場合は支払い要件が発生します。

初診から1年6カ月以上たち、その時点で症状が継続していること

障害状態が認定されるのは、病気が初めて診断された日から原則1年6カ月後です。

初診から1年6カ月後の日を「障害認定日」といい、障害年金の申請には障害認定日がとても重要な意味を持ちます。

障害認定日を過ぎた後は、過去5年以内は障害認定日にさかのぼって申請することができます。

障害等級表に該当する状態にあること

障害の重症度は、『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』にもとづき審査されて決まります。

重症度によって1~3級があり、障害基礎年金は1・2級のみ、障害厚生年金は3級も受給対象になります。

障害年金の申請期間

障害認定日を過ぎてから5年以内であれば、障害認定日にさかのぼって請求申請ができます。その制度を障害年金の遡及請求(そきゅうせいきゅう)と言います。

ですので、長年該当する病気を抱えていたのに申請をのがしていたという方も大丈夫です。そこで障害が認定されれば、障害認定日からの分をまとめて受給することができるのです。ですから、ある程度のまとまったお金が入ってくる可能性があります。

この一時金は社会復帰の大きな後押しになることがあるので、障害年金の申請は焦らず、タイミングを考えて行うことが大切です。

障害年金の支給額

<障害基礎年金(年額)>

  • 1級:975,125+子の加算
  • 2級:779,300+子の加算

※子の加算は、第2子まで各224,500円、第3子以降各74,800円です。この場合の「子」とは、18歳になる年度の末日(3月31日)を経過していない子、あるいは20歳未満で障害等級

<障害厚生年金(年額)>

  • 1級:975,125円+子の加算+報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
  • 2級:779,300円+子の加算+報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
  • 3級:報酬比例の年金額(最低保証584,500円)

※3級には最低保証額があるので、1級や2級の報酬比例額が3級の584,500円より少ない可能性もあります。

※配偶者の加給年金は厚生年金のみで、額は224,500円です。

報酬比例の年金額に関しては、計算式はとても複雑です。報酬月額と被保険者期間の日数に比例します。被保険者期間については、どんなに短くても300か月(25年間)加入していたとみなして計算してくれます。若くして障害になってしまったとき、保障が少ないと困るからです。

報酬比例の年金額は、標準報酬月額40万ほどの方ですと最低で65万ほどになります。配偶者がいる平均的な労働者の方ですと、基礎年金に8090万円加えた額が目安になるかと思います。

20歳未満の所得制限について

20歳未満で初診を受けた方の場合は、年金保険料の支払い要件に関わらず対象になりますが、その場合は本人の収入所得によって支給に制限がかかります。

  • 前年の所得が3,604,000円以上半額停止
    (※扶養者がいるときは3,604,000円+380,000×扶養者数)
  • 前年の所得が4,621,000円以上全額停止
    (※扶養者がいるときは4,621,000円+380,000×扶養者数)

障害年金の受給期間

障害年金は、状態によって1~5年ごとの更新があります。生涯にわたり、上記の額が受給できるというわけではありません。更新時に等級が変われば受給額は減額され、障害に満たないと判断されれば受給は打ち切りになります。更新期限がいつになるかは年金機構で判断され、本人へ通知されます。

また、65歳になって老齢年金の対象になったときは、国民年金の方はどちらかを選ぶことになります。厚生年金の方は、老齢基礎年金と障害厚生年金、障害基礎年金と老齢厚生年金などの組み合わせで、受給を続けることが可能です。(要件あり)

障害年金の等級と審査

障害年金の等級は、医師の診断書を含めた提出書類を元に、専門の審査する医師が判断します。

障害者の等級に関しては、それぞれの病気・障害に関して目安が示されていますが、どの病気に関しても、およそ以下のような目安になっています。

  • 障害年金1級:ほぼ寝たきり
  • 障害年金2級:日常生活に大きな制限がある
  • 障害年金3級:社会生活に支障がある

障害年金1級は、ほぼ寝たきりで、日常生活で常に介助が必要な方が該当します。

障害年金2級は、まずは働けないことが前提で、日常の生活にも大きな制限のある方が該当します。ごく軽い身の回りのことならできるものの、症状が強くなると身だしなみ・外出・買い物・食事・通院・服薬などが自発的に行えない方や、多くの場面で介助や助言が必要な方、ほぼ引きこもりに近い状態の方などが該当します。

障害年金3級は、一応の日常生活はできるものの、症状によっては支障があり、仕事や社会生活には慢性的な支障のある方が該当します。一般の労働は難しく、障害に対する配慮が必要な方や、症状が強くなると仕事ができなくなる方、社会生活によって症状の増悪が目立つ方などが該当します。3級は、障害厚生(共済)年金のみ受給対象になります。

精神疾患の場合は、主に以下の6つの疾患に関して障害年金が考慮されます。

  • 統合失調症
  • 気分障害(気分変調症・双極性障害など)
  • 症状性・器質性精神障害
  • てんかん
  • 知的障害
  • 発達障害

これらの病気で、生活への支障の大きさで判断していきます。どの等級に認定されるかは、医師の診断書をもとに判断されます。診断書の裏面に日常生活能力の程度を記載するところがありますが、そこが主な等級判定の参考基準になっています。

障害等級の審査

障害年金の障害等級は、『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』に基づいて判定されています。提出された診断書・書類をもとに、認定医と呼ばれる専門の医師が審査をします。

しかし、精神障害・知的障害の認定においては、地域によって判定にかなりの格差が生じていることが指摘されてきました。地域性や認定医によっても判定にばらつきがあり、同じような症状でも等級が違ってしまうことも珍しくありませんでした。

その指摘を踏まえ、地域間での障害年金受給の格差解消を目指し、厚生労働省が『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』を策定し、20169月1日から実施されることになりました。

このガイドラインの対象は、てんかんを除く精神障害・知的障害・発達障害となっています。以下をご参照ください。

国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン

(日本年金機構ホームページより)

障害年金の障害認定日とは?

障害年金の申請では、「障害認定日」が重要な意味を持っています。その名の通り、年金の対象となる障害が認定された日です。

基本的には初診日から1年6カ月経過した日が障害認定日とされます。明らかに一生背負っていかなければいけない障害を負った場合は1>年6カ月経っていなくても認定されることがありますが、精神障害の場合は、ほとんどが初診から1年6カ月経った日が障害認定日とされます。

少しややこしいのは、20歳未満に初診日がある方の場合です。20歳未満では、初診が何歳のときであっても、20歳の誕生日前日までは障害認定日になりません。ですので、

  • 18歳6か月を迎える前に初診日がある→20歳の誕生日の前日が認定日
  • 18歳6か月を過ぎてから初診日がある→1年6カ月後が認定日

となります。

知的障害で年金を申請する場合

知的障害は、生まれ持っての障害という考え方になるので、初診日が20歳前になくても、認定日は20歳の誕生日となります。

年金の納付要件はありません。

  • 20歳以上
  • 知的障害の程度が年金申請に相当すると医師が判断していること

が条件になります。

必要書類は、最寄りの市町村の年金係でもらいます。必要書類の他に、療育手帳の写しや学生時の通知表などがあると、より申請がスムーズです。

障害年金申請の必要書類

障害年金申請の必要書類は状態によって違いがありますが、基本的には以下の通りです。

  • 年金請求書

本人が書きます。形式的な内容で、不明点は年金事務所に聞くと教えてくれます。

  • 診断書

医師が記載をします。障害年金の診断書は、とても記載する事項が多いです。カルテを見返しながらまとめていかなければならず、かなり時間がかかります。そのため診断書代も他に比べて高額で、1万円ほどが平均です。

診断書については、詳しく後述します。

  • 受診状況等証明書

初診の医療機関が記載します。初診した医療機関と診断書を書く医療機関が異なるときに必要な書類です。ですから、初診から同じ医療機関にかかっている場合は必要ありません。

  • 病歴・就労状況申立書

本人が書きます。発病時から現在までの体調の変化や生活、就労能力等について記載します。

受診状況等証明書

該当症状について、初めて受診した医療機関の初診日と終診日、治療の経過などを書きます。

しかし、初診時期が古くてカルテが残っていなかったり、医療機関がつぶれてしまっていたりする場合、「受診状況等証明書を添付できない申立書」という書類を自分で記載する必要があります(書類は年金事務所でもらえます)。

そして、初診の医療機関の次にかかった医療機関で、受診状況等証明書を記載してもらう形になります。

もしそこでも記載ができなければ、同じ申立書を記載してまた次の医療機関に…と、受診状況等証明書が書ける医療機関までをたどって行きます。

しかし、それだけだと初診日を証明することができません。ですので、他の書類をできる限り添付し、初診日が正しいことを証明することが大切です。初診日を証明する書類の例としては、

  • 障害者手帳申請時の診断書
  • 保険申請時の診断書
  • 当時の検査や健康診断の記録
  • 日付入りの診察券やお薬手帳
  • 初診の病院からの紹介状
  • レセプトなど健康保険の給付記録
  • その他自身の記録(レシートや家計簿、当時の日記など)

などが考えられます。

病歴・就労状況申立書

医師の診断書はカルテに残っている内容に沿いますが、この申し立て書は本人の主張が反映されるものです。ですので、より具体的に、病気が生活にどのように支障を与えてきたかをしっかり記載しましょう。

例えば、ただ「調子が悪かった」ではなく、

  • 体が重い
  • 気持ちが落ち込む
  • 過呼吸を起こしてしまう〇〇という幻聴が聴こえる

などの具体的な内容を書き、それによってどのような状態なのかを書きましょう。

  • 電車に乗れなくなってしまった
  • 学校や仕事に行けず退学・退職することになった
  • 引きこもりがちになってしまった

など、症状がどのように生活の障害になったかを記載することが大切です。

障害年金の診断書について

障害認定日から1年以内であれば1>通で大丈夫です。認定日から3か月以内の症状について、主治医が記載します。

認定日から1年以上であっても、20歳前に初診日がある場合は、障害認定日の前後3か月以内の症状を記載した診断書でかまいません。これは20歳未満の場合は、障害年金の遡及請求はできないためです。

ですが、20歳以上で障害認定日から1年以上経過している方は、2通の診断書が必要になります。認定日から3か月以内の症状の診断書だけでなく、現在の症状の診断書も必要になるのです。障害認定日時点と通っていた医療機関が違う場合は、それぞれの医療機関に依頼しなければいけません。

しかし、障害認定日から年月が経ってしまっていると、当時のカルテが残っていなかったり、医療機関がつぶれてしまっていたりして当時の診断書は準備できないことがあります。その場合は現在の診断書1枚で年金請求することになりますが、認定日時点での診断書がないので遡及請求はできません。

障害年金の診断書①

※認定日時点の診断書が認められれば、認定日から更新日まで受給されます。

障害年金の診断書について②

※認定日時点の診断書と現在の診断書が認められれば、認定日から更新日まで受給されます。

2通の診断書によって、それぞれ障害年金が適切かどうか判断されます。

  • 認定日から現在まで5年以上経っている場合、過去の遡り額は5年分までしか支給されません。
  • 認定日の時点の診断書だけが認められた場合、認定日から現在までの年金受給のみされます。(こちらも最大5年分まで)
  • 現在の診断書だけが認められた場合や、認定日時点の診断書が準備できなかった場合は、現在から更新日までの受給のみとなります。

障害年金の様式は、以下になります。

  • 障害年金の様式(excel)(pdf

障害年金の診断書の内容と料金

障害年金の診断書は、丁寧に記載していく必要があります。記載する事項は多岐にわたりますが、その内容は大きくは3つに分けることができます。

  • 発病から現在までの病歴・初診時所見
  • 現在の病状と状態像
  • 生活能力の状態・就労状況

障害者手帳に近い内容ですが、より詳細な記載が望まれます。障害年金の診断書の中でもとくに重要なのは、「生活能力の状態・就労状況」です。具体的には以下の6つを記載していきます。

  • 日常生活状況
  • 日常生活能力の判定
  • 日常生活能力の程度
  • 現症時の就労状況
  • 現症時の日常生活活動能力及び労働能力
  • 予後

診断書の2枚目(裏面)に当たる部分になります。

障害年金の診断書の重要箇所を記載しました。

生活への支障の大きさはここで判断され、障害の等級判定が行われます。

まず日常生活状況ですが、単身なのか家族との同居なのかを記入します。単身ならばより生活への支障が大きいことが伝わります。

次に、代表的な日常活動を具体的にあげて、日常生活能力の判定を行っていきます。

  • 適切な食事
  • 身辺の清潔保持
  • 金銭管理や買い物
  • 通院・服薬
  • 他人との意思伝達・対人関係
  • 身辺の安全保持・危機対応
  • 社会性

以上の項目それぞれに対し、「自発的に(適切に)できる」「おおむねできるが援助が必要」「援助があればできる」「できない」の3段階にわけて評価をします。

1級の方では、ほとんどが「できない」に丸がつく必要があります。2級と3級の線引きが微妙ですが、「援助があればできる」が相対的に多ければ2級、少なければ3級となることが多いです。

これらの項目を総合して、日常生活能力の判定が以下の5段階で行われます。

  1. 日常生活と社会生活が普通にできる
  2. 日常生活はできるが、社会生活に援助が必要
  3. 単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要
  4. 日常生活にも多くの援助が必要
  5. 自力で身の回りのことはほとんどできない

①は精神障害者として認定されません。②は3級相当になります。は状態によって2級・3級どちらにもなり得ますが、最近は判定が厳しいので3級とされることが多いです。は2級となり、は1

診断書は記載する内容が非常に多いため、当日すぐに記載することは難しいです。当院では、その他の書類の助言も行いますので、ソーシャルワーカーがヒアリングしていきます。生活カウンセリングの一環として、助言指導させていただき、診断書を記載する準備ができたら医師に依頼をします。

診断書の料金は医療機関によって様々ですが、10,000円+税ほどが一般的かと思います。(当院の料金設定です)

障害年金の申請と手続き

  1. 年金事務所(障害厚生年金該当の方)、市町村役場の年金課(障害基礎年金該当の方)、共済の組合(共済年金に加入している方)のいずれかで必要書類を受け取ります。
  2. 書類の記載を行います。病院が記載しなければいけない書類は、病院へ依頼をします。添付書類が必要な場合はできるだけ集めるようにします。
  3. 準備した書類を該当の窓口へ提出します。

書類を提出したらあとは結果を待つだけですが、障害年金の審査はかなり時間がかかります。目安は約2~3カ月ですが、それ以上かかることもめずらしくありません。

途中で書類の訂正や問い合わせ、追加の書類提出が請求されることもあります。それらにはできるだけ速やかに対応しましょう。対応が不足すると申請が却下されることもあります。

最終の結果は、郵送で送られてきます。年金がもらえる場合は「年金決定通知」、もらえない場合は「不支給決定通知」です。不支給の場合はその理由が書いてありますが、内容に納得できないときは不服請求を申し立てることになります。

障害年金は、書類の書き方1つ、添付する書類などで審査が左右されます。とくに、精神障害は客観的な検査結果や目に見える外傷などがありませんので、書類を十分に準備して提出することが大切です。請求の際は、病院のソーシャルワーカーなどにアドバイスを受けることをおすすめします。

よくある質問

障害年金についてよく頂くご質問を、こちらでまとめていきたいと思います。

初診時に年金納付要件を満たしていない時、過去の分を追納すれば納付要件を満たすことになるのでしょうか?

あくまで初診日時点の納付状況が対象になるので、追納をしても要件を満たすことにはなりません。

申請から実際にお金が入るまでにどれくらい時間がかかりますか?

申請から受給の可否や等級が決まるまでに約2~3カ月かかります。その後に、更に約2~3カ月後に指定の口座に入金があります。長めに見積もって、申請から手元にお金が入るまでに半年ぐらいの期間かかります。

初診日とカウントする医療機関は精神科でないといけないのでしょうか?

必ずしも精神科である必要はありません。体調不良で他科に行った際、心療内科や精神科の疾患である可能性を指摘される場合もあります。病状的につながりのあるものと判断されれば、精神科以外の診療科の受診が初診日と認められる場合があります。

その場合、受診状況等証明書は他科の医療機関に記載してもらうことになります。

他科にはあまりなじみはない書類になるので、書類の記載をしてくれるかはその医療機関の判断次第になってしまいます。(残念ながら、記載していただけない場合が多いです。)

受診状況等証明書の記載を断られてしまいました。どうすれば良いでしょうか?

医療機関がつぶれてしまっていたり、カルテが残っていないなどの理由で初診日の医療機関で受診状況等証明書が記載できない時があります。そのような場合は、初診日がある医療機関の次に受診した医療機関に作成を依頼します。

その上で「受診状況等証明書を添付できない申立書」という書類を作成して、本来の初診日を自己申告します。その際には、

  • 該当機関で記載してもらった障害者手帳の診断書
  • 該当機関に記載してもらった紹介状
  • 日付入りの当時の診察券やお薬手帳
  • レシートや家計簿、当時の日記など

などの自己申告した初診日が正しいものであることを証明する証拠を、可能な限り多く添付することが大切です。

知的障害の申請を検討していますが、認定日となる20歳誕生日時点に医療機関にかかっていません。申請はできるのでしょうか?

もし診断書を記載してもらう医療機関が初診の医療機関であれば、その医療機関の初診日で申請します。

診断書を記載してもらう医療機関より前に、別の医療機関にかかっているのであれば、その医療機関を初診日にして受診状況等証明書を準備します。

もし、その医療機関から何かしらの事情で受診状況等証明書を取得できない場合は、診断書の中に該当の医療機関を受診していた旨の経過が記載してあれば、診断書を記載する医療機関の初診日で申請可能です。また、受診状況等証明書は、療育手帳の写しで代用が可能です。

知的障害は認定日が20歳誕生時点と元々決まっていて、厳密に初診日を確定させる必要がない為、上記のような対応になります。

障害年金受給中に仕事を始めました。受給は停止になってしまいますか?

仕事をしているかどうかより、病状がどうかということが判断基準となりますので、仕事を始めたからといって直ちに受給停止になることはありません。

しかし、仕事の内容や頻度も考慮した上で、「一定以上の負荷がかかる仕事ができるくらいに病状が回復している」と判断された場合は、級が下がったり、不支給になることはあります。

上記のような病状の判断は更新の際に行われますので、仮に病状が回復傾向にあっても、更新日までは年金の受給は続くことになります。

社労士に依頼したほうが障害年金は通りやすくなりますか?

障害年金の手続を社労士に依頼される患者様もいます。障害年金の申請は、資格が必要な手続きではありません。

社労士に依頼すると、およそ20%ほどの報酬を支払わなければいけません。障害年金の遡及請求が認められれば数百万円単位になることもあります。社労士に代行をお願いすることで、生活に困っている方が受け取る年金額が減ってしまいます。

当院のようにソーシャルワーカーが在籍している医療機関では、社労士に代行しなくても障害年金申請のお手伝いができます。

社労士が行うことは、病状をヒアリングしてまとめて、主治医に情報提供するだけです。時には診断書の記載のレベルまで指示されていることもあり、診断書を受け取る医師としては非常に印象が悪いです。

障害年金が通りやすくなるかといえば、記載する医師もいますが、不快に思ってしまう医師もいます。当院では患者さんに障害年金が必要かどうか判断し、経済的に苦しんでいることの多い患者様の立場に立って申請を行います。

生活保護で病気になっている場合は、障害年金を必ず申請しなければいけないのですか?

生活保護を受給されている場合、役所から障害年金の申請を強く勧められることがあるかと思います。診療をしていても、病状調査で担当の方より、障害年金の可能性を聞かれることが多いです。

ですが生活保護を受給しているからといって、必ずしも障害年金を申請しなければいけないわけではありません。生活保護は他法優先といって、他に適応となる法律があれば優先されます。たとえば、医療費が1割負担になる自立支援医療制度は、病気で通院されている場合は申請することが多いです。

しかしながら障害年金は、「病気」の症状が固定してしまって短期間に回復することが困難で、「障害」となった場合に申請できる制度です。生活保護を受給していても、病気が固定されていなければ申請要件を満たしません。

患者さんのメリットとしては、障害年金の支給額が生活保護費よりも上回る場合のみになります。下回る場合は生活保護費の減額となりますし、遡及請求の部分も過去の生活保護費の返済に充てられてしまうことがあります。

このため障害年金は、社会復帰する時期などにタイミングみて申請したほうが良いことがあります。経済的な安心をもとに、少しずつ社会復帰をしていくことができます。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:制度・サービス  投稿日:2019年5月11日

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