【専門家が解説】病歴・就労状況等申立書(障害年金)
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障害年金の病歴・就労状況等申立書とは?
病歴・就労状況等申立書(以下、申立書)は、障害年金を申請する際に必要な書類の一つです。
医療機関に記載を依頼する診断書などの書類と違い、ご自身で記載をする書類になっています。
情報量の多さや書き方の分かりづらさなどから、申立書の記載ができずに年金の申請を諦めたり、十分に記載ができていない状態での提出になってしまうこともあります。
ここでは、精神疾患で年金申請する際の申立書の書き方を説明していきます。
※あくまで記載方法の一つであり、この通りに記載しないと申請が通らなくなるということではありません。
障害年金について詳しく知りたい方は、障害年金のページをご覧ください。
障害年金の病歴・就労状況等申立書
両面刷りの用紙となります。表面は、
- 傷病名
- 発病日
- 初診日
- 発病から現在までの経過(5つの記載欄あり)
を記載します。
裏面は、障害認定日と現在それぞれについての
- 就労状況
- 日常生活状況
を記載します。
また、
- 障害者手帳の取得の有無と請求者のサイン
- 日付の記載
をします。
発病から現在までの経過が5つの記載欄に収まらなかった場合には、以下の続紙を使います。両面刷りの用紙となり、全部で11個の経過記載欄があります。
病歴・就労状況等申立書の書き方
病歴・就労状況等申立書には、以下のような記載事項があります。
- 傷病名
- 発病日
- 初診日
- 発病から現在までの経過
- 就労状況
- 日常生活状況
- 障害者手帳の有無
- 日付と請求者
このうち、
- 発病から現在までの経過
については記載が難しいため、別の項目でお伝えします。
それぞれの項目の書き方をお伝えしていきます。
傷病名
主治医の先生に、傷病名はどのように書けばいいか確認しておくことをおすすめします。
主治医が作成する年金診断書に記載される診断名と、申立書に記載される傷病名は同じになっている方が整合性が出ます。
普段、主治医から伝えられている診断名がある場合でも、念の為に確認しておきましょう。
障害年金は、症状が固定されてしまって改善の見込みが少ない方のための制度です。このため傷病名も重要になります。改善が期待できる病名では、障害年金の認定が難しい場合もあります。
発病日
分かる範囲で記載をします。
精神科の病気の場合、ケガなどのようにいつを境として発病日というのかを特定しづらいケースが多々あります。
その場合は、「平成29年1月頃」や、「平成29年頃」といった記載でも構いません。
初診日
年金を申請する疾患について、初めて医療機関にかかった日を記載します。
初診日は「~頃」といった表記は認められず、正確な年月日の記載が求められます。
就労状況
障害認定日時点と現在の、それぞれの時期についての就労状況を記載をします。障害認定日時点の年金申請を行わない場合は、現在の記載だけで問題ありません。
就労をしていた場合は、
- 職種
- 通勤方法
- 出勤日数
- 仕事中や終わった後の身体の調子について
の項目を記載します。
それぞれの記載例を見てみましょう。
- 職種
→飲食店のホール。 - 通勤方法
→電車と徒歩で片道約40分。 - 仕事中や終わった後の身体の調子について
→接客の際に少し動悸が起きたり、冷や汗をかくことがあった。業務後は体が怠く、疲れが抜けないことも多かった。
記載欄が小さいので、簡単な内容で問題ありません。
就労していなかった場合は、その理由について選択します。
- ア 体力に自信がなかったから
- イ 医師から働くことを止められていたから
- ウ 働く意欲がなかったから
- エ 働きたかったが適切な職場がなかったから
- オ その他(理由を自分で記載)
の中で当てはまるものに丸をつけます。1つを選ぶわけではないので、当てはまるものには全て丸をつけます。
日常生活状況
障害認定日時点と現在のそれぞれの時期について記載をします。障害認定日時点の年金申請を行わない場合は、現在の記載だけで問題ありません。
着替え、トイレ、食事、炊事、掃除、洗面、入浴、散歩、洗濯、買い物の10項目について、
- 1→自発的にできた
- 2→自発的にできたが援助が必要だった
- 3→自発的にできないが援助があればできた
- 3→できなかった
の3段階で評価して、該当番号に丸をつけます。
評価をする際には、単身生活を想定します。「自発的」にできたか否かは、自ら進んで行う意思があったかどうかで考えます。「援助」の意味は広く、直接作業や行為を手伝うこと以外にも、助言や促し等の声掛けも含まれています。
例えば、自ら進んで入浴できていなかった人が、職場の上司に臭いを指摘されて入浴することを促されて入浴した場合や、たまたま連絡してきた家族に促されて入浴した場合などは、
- 3の「自発的にできないが援助があればできた」
と判断できます。
その他、日常生活で不便を感じたことがあったら記載をします。
どんな体調不良で、どのように日常生活に影響が出ていたかは、後ほどお伝えする「経過の項目」でも記載していると思います。必ずしも新しい内容を書く必要はないので、すでに記載した日常生活の不便さについて改めて記載するのでもOKです。
障害者手帳
交付を受けているか否か、申請中かの項目を丸で囲みます。
また、もし交付を受けている場合は、
- 障害者手帳の種類
- 障害者手帳の等級
- 交付年月日
- 障害名
を記載します。
日付と請求者
最後に、申立書を記載した日付と請求者、代筆した人がいる場合は代筆者について記載します。請求者本人が署名をする場合は、押印は不要です。
申立書記載日は日付を空けておいて、障害年金申請の為の書類が全て揃って、年金事務所に申請をしに行く段階になった際に日付をいれるようにします。
障害年金の申請は煩雑です。書類を集めたり、医師に診断書などを記載してもらうのに時間がかかる場合もあります。
申立書の完成が早かった場合、申立書の完成日と申請日の間に開きができてしまうので、日付を申請日に合わせておくことをお勧めします。
発病から現在までの経過
この項目については5つの記載欄が設けられており、
- 発病したときから初診までの間の経過
- 初診から現在に至るまでの経過(医療機関に通院していなかった期間も含む)
について記入していきます。
ここで記載する日付や医療機関名は、可能な限り詳細にしていきます。可能であれば、今まで受診してきた医療機関に連絡をとり、初診日と終診日を確認しておくことをお勧めします。
1つの医療機関に長期で受診をしていた場合や、医療機関にかかっていない期間が長期に渡ってあった場合は、3~5年ごとに経過を区切って1つの記入欄に書きます。
転院による予約日待ち等で、数日~1カ月ほど通院していない期間ができてしまった際などは、特にその間の経過を書く必要はありません。数カ月通院していない期間ができてしまった際は、その間の経過も書いておいた方が安心です。
日付の記載方法
発病したときから初診までの経過を書く際の日付の書き方は、以下の通りになります。
【例】
発病日が平成18年10月頃で、初診日が平成18年11月1日の場合
→1つ目の記載欄に「平成18年10月頃から平成18年10月31日まで」と記載して、「受診していない」に丸を付けます。
発病日から初診日の前日まで医療機関にかかっていない形になるので、このような記載の仕方になります。初診から現在に至るまでの経過を書く際の日付の書き方は、以下の通りになります。
【例】
A病院に平成18年11月1日から平成19年11月15日まで受診
平成19年11月16日から平成20年11月26日まで受診なし
B病院に平成20年11月27日から平成28年12月14日まで受診
C病院に平成27年3月3日から平成27年6月28日まで入院
D病院に平成29年1月6日から現在まで通院中。
上記のような経過を辿った方の場合。
→2つ目の記載欄にA病院の名称と受診期間を記載して、「受診した」に丸をつけます。
3つ目の記載欄に受診していない期間を記載して、「受診していない」に丸をつけます。
4つ目の記載欄にB病院の名称と受診期間を記載して、「受診した」に丸をつけます。
この際、B病院は8年近くに渡り長期の受診をしているので、期間を区切って記載します。
3~5年ごとであれば、書きやすいところで区切ってしまって問題ありません。
もし半分の3年で区切る場合は、平成20年11月27日から平成24年11月27日と記載します。
5つ目の記載欄にB病院の名称と残りの受診期間を記載して、「受診した」に丸をつけます。
この場合は、平成24年11月28日から平成28年12月14日と記載します。
5つの記載欄が埋まってしまったので、ここからは申立書(続紙)の記載欄を使います。
1つ目の記載欄にC病院の名称と入院期間を記載して、「受診した」に丸をつけます。
2つ目の記載欄にD病院の名称と受診期間を記載して「受診した」に丸をつけます。
経過の記載方法
基本的には、症状と状況について記載をします。しかし、年単位での話になってくるので、経過を全て辿って書く必要はありません。
該当期間の中で調子が悪かった時の症状やそれを引き起こした状況、医師からの指示(退職や休職を勧められたなど)などをピックアップして記載します。また、状況については、詳細にすべてを記載する必要はありません。
よく見かけるのが、状況の記載に終始してしまっている申立書です。例えば、職場での人間関係から調子崩した人が、人間関係が崩れていく経過を詳細に記載している場合などがあてはまります。申立書において、どんなふうに人間関係が崩れていったのかはあまり重要ではありません。
それよりも、症状についてより具体的に記載することが重要です。よく、「調子が悪かった」とだけ記載する方がいますが、「どんな風に」調子が悪かったのかを記載していきます。
その際には、
- 自分の状態
- なぜ、その状態になるのか
- どんな時にその状態になるのか
- その状態になるとどのようになってしまうか
- その結果として、生活にどんな影響が出たか
ということを意識すると書きやすくなります。
また、発病から初診日までの経過を書く際は、最後にどのような経緯で受診をすることにしたかを簡単に付足すと分かりやすいです。
入院した経過について記載する時は、「〇月×日~△月□日まで〇〇病院に入院」と入れて、外来通院ではなかったことを示しましょう。
一つ例文を作ってみましょう。
- 自分の状態
→混乱してしまう。 - なぜ、その状態になるのか
→周囲の視線が気になってしまうから。 - どんな時にその状態になるのか
→人が多い時や、電車に乗っている時。 - その状態になるとどのようになってしまうか
→過呼吸・動悸・眩暈が起きてしまい、立っていられなくなり、その場にしゃがみこんでしまう。 - その結果として、生活にどんな影響が出たか
→電車に乗れなくなり、仕事(学校)を休みがちになり、休職や退職(退学)することになってしまった。それ以降、後悔の念から自身を責めることが続き、落ち込みがちになり、一日中家で布団から出られなくなり、家事もろくにできなくなった。
このような方がいた場合、文章に直していくと以下のようになります。ここでは文章にしていますが、箇条書きなどの形で書いても大丈夫です。
人が多い時や電車に乗っているときに、周囲の視線が気になってしまい、混乱してしまうことがあった。混乱すると、過呼吸・動悸・眩暈が起きてしまい、立っていられなくなり、その場にしゃがみこんでしまうということが度々起きた。このまま死んでしまうのではという恐怖や周囲に迷惑をかけてしまう申し訳なさから、電車に乗れなくなり、仕事を休みがちになり、休職を経て退職することになってしまった。それ以降、後悔の念から自身を責めることが続き、落ち込みがちになり、一日中家で布団から出られなくなり、家事もろくにできなくなってしまっている。
もし、発病から初診までの経過であれば、文の最後に「上記のような状況をみた両親に勧められて心療内科の受診をすることにした」「このままではいけないと思い、心療内科の受診を決めた」などの文章を付け加えると、どうして病院の受診に至ったのかが分かりやすくなります。
よくある質問
障害年金の病歴・就労状況等申立書についてよく頂くご質問を、こちらでまとめていきたいと思います。
経過を記載する際に枠内に収まらなくなってしまいました。どうすればいいでしょうか?
枠内に書ききれなくなった場合は、続きを別紙に書き、それを張り付けるなどします。
別紙の様式に特に指定はありませんが、予め申立書の原本のコピーを取っておいて、経過記載用の欄の部分を切り取っておくのがお勧めです。
幅も一緒なので、張り付ける際に綺麗に仕上がります。
書き損じをしてしまいました。どう修正すればいいでしょうか?
該当部分に二重線を引いて、訂正の印鑑を押して頂ければ大丈夫です。
注意点として、裏面の請求者記載欄に押印している方は、訂正で使った印鑑と請求者記載欄に押す印鑑を同じものに合わせて頂く必要があります。
知的障害で申請をしたいのですがどう記載すればよいでしょうか?
知的障害での申請の場合は生まれ持っての障害の扱いになるので、以下の各項目の記載方法が変わります。
- 発病日、初診日
→出生日を記載します
- 発病から現在の経過
→幼稚園や保育園・小学校低学年・小学校高学年・中学生・高校生
上記のように時期を区切って、日常生活や学校生活での状況を記載してください。
受診していた場合は受診期間と医療機関名を記載して、「受診した」に丸をつけます。他の子と比べて苦手としていた部分や、生活を送るうえで不便であったこと、困ったことなどを中心に書いていきます。
- 障害認定日
→20歳の誕生日が認定日となります。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:制度・サービス 投稿日:2019年5月11日
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