心因反応とは?心因反応にみられる症状と治療

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心因反応とは?症状診断治療について、精神科医が詳しく解説します。

診断書をもらうと、病名に「心因反応」と書かれていることがあるかと思います。

心因反応は、実は正式な診断基準として存在する病名ではありません。心因反応とは、心理的なきっかけが原因として生じた症状(反応)のことをひっくるめた表現になります。

このため非常に多くの病気が含まれていて、心理的なきっかけがある病気はすべて含まれるのです。

このように非常にあいまいな病気なのに今なお診断書などに使われるのは、心因反応が医師にとって使い勝手のよい言葉だからです。

ここでは、心因反応と診断されるときはどのようなケースなのかを考えていきましょう。そしてストレス性障害としての心因反応の症状と治療について、考えていきたいと思います。

 

1.心因反応とは?

心因反応は、何らかの心理的なきっかけによって症状が認められる状態をさします。基本的には適応障害などのストレス性障害、軽症のうつ病(反応性うつ病)のことをいいます。

まずは心因反応とはどういう病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

心因反応とは、何らかの心理的なきっかけ(心因)によって症状(反応)が生じる病気をひっくるめたものです。その症状はどのようなものでもよく、不安や不眠、うつや躁、幻覚や妄想でも構いません。ですから、不安障害不眠症うつ病双極性障害統合失調症など様々な病気が含まれます。

心因反応とは、心因という原因で病気をみた考え方になります。従来から日本では、原因によって精神疾患を分けて考えてきました。外因性・内因性・心因性の3つに大きく分けて分類していました。

  • 外因性:身体疾患や薬物などの物質が原因となる病気
    ex)器質精神病(脳腫瘍や脳血管障害)・症状精神病(SLEや甲状腺機能異常)など
  • 内因性:遺伝や素因が原因で、脳に機能異常がある病気
    ex)双極性障害・単極性うつ病・統合失調症など
  • 心因性:何らかの心理的なきっかけが原因となる病気
    ex)適応障害・多くのうつ病・不安障害

このうちの心因性にあたる病気を心因反応と診断することが一般的です。ですから心因反応と診断された患者さんは、多くが適応障害などのストレス性障害反応性うつ病ともいわれる軽症のうつ病などかと思います。

しかしながら、内因性の病気でも心因反応と診断することがあります。これには、社会的・治療的な理由があります。続けて、内因性疾患で心因反応と診断されるケースについてみていきたいと思います。

2.心因反応と診断される特殊なケースとは?

心因反応という診断は、時間経過を見ていかないと判断がつかない場合や、診断をすることが治療的でない場合に、暫定的に診断されることがあります。

心因反応とは、基本的にはストレス性障害や軽症のうつ病を指すことが多いです。しかしながら病気とは関係なく、社会的・治療的な理由で心因反応と診断されることもあります。

心因反応は、あいまいであるがゆえに非常に便利な診断名でもあります。というのは、診断をハッキリとつけられないときや、ハッキリつけない方が良いときがあるためです。

そのようなときに、とりあえずつける病名として心因反応はとても便利です。最近では心因反応だけでなく、適応障害もこのように使われることがあります。

それでは、このようなケースはどのような時でしょうか?大きく2つがあります。

  • 診断するのに時間経過を見ていく必要があるケース
  • 診断することが治療的でないケース

①診断に時間経過が必要なケース

心の病気は、「一回の診察ではわからない」ことが多いです。ですから、「あなたは〇〇病です」と断定できないことはよくあります。

どうしてわからないのでしょうか?それには以下の2つがあげられます。

  • 過去の記憶は患者さんに頼らざるを得ない
  • 現在はあくまで長い経過の一時点にすぎない

心の病気を診断するためには、これまでの経過は非常に重要になります。しかしながら過去のエピソードは、患者さんから語られることから推測しなければなりません。もちろん本当のことをうまく聞きだすのも精神科医・心療内科医の技術なのかもしれませんが、それでも限界があります。

そして心の病は、一時点で判断できるものでもありません。病気によっては症状が動揺したりするものもあります。例えば認知症などは、どのような症状も前駆症状になりえるとまで言われます。経時的に見て、その症状の変化をみていかなければ診断ができないのです。

 

②診断することが治療的でないケース

もう一つの理由としては、本当の診断をするのが治療的でないことがあります。

もちろんいずれは自分の病名を正しく知って、それを受け止めたうえで前向きに治療をしていく必要があります。しかしながら心の病気では、その病名を受け止められない方も多いのです。そのような方に病名を伝えても、治療的ではなくなってしまいます。

  • 社会での病気のイメージの悪さ
  • 本人が病気を受け止められない

病気によっては、怠けもの、自分勝手、未熟者、わがまま、といったようなネガティブなイメージがつきかねないことがあります。うつ病ですら、悪いイメージを抱かれてしまうことも少なくありません。ただでさえ精神疾患は腫れ物に触るように対応されることも多いのに、このレッテルが社会復帰を妨げることもあります。

また、本人が病気を受け止められないこともあります。自分の本当の姿と向き合うことには、非常に大きなエネルギーを必要とします。症状が悪いときに伝えて も、その大きさに耐えられません。さらに調子が悪化してしまいます。

病名を告げる時は、本人が直面化に耐えられる状況でなければいけません。ですから精神科医は、少しずつその状況を探りながら本当の病名を伝えていくのです。

そのようなケースでは、心因反応というのは非常に診断として便利なのです。どのような病気であっても、精神疾患にはストレスが大きく関係しています。それらのストレスに対する心因反応というのは、嘘ではないのです。

詳しく知りたい方は、「なぜ精神科や心療内科では、病名や診断が告げられないのか」をお読み下さい。

 

3.心因反応の原因と症状とは?

心因反応では、本人の要素が大きい人もいれば環境の要素が大きい人もいます。

それでは心因反応ではどのような原因で生じるのでしょうか?

心因反応という病気自体が幅広いため、患者さんによっても様々です。しかしながら心因反応では、何らかのストレスが直接的な原因となります。

失恋や失業、事故や災害、人間関係のトラブル、家族や親しい人の死など、あらゆることがきっかけとなります。ですが同じストレスを受けても、人によって受け止め方が異なります。このためその原因として、

  • 環境の要素
  • 本人の要素

のざっくり2つに分けることができます。少し乱暴な表現になってしまいますが、バケツ(本人の器)水(ストレス)を考えるとシンプルです。

バケツがいくら大きくても、とんでもない水の量が注がれれば溢れてしまいます。あふれた水が心因反応となります。それに対して、バケツが小さければ、ちょっとした水の量でも溢れてしまいます

ドイツの精神科医シュナイダーは、前者を外的体験反応、後者を内的葛藤反応と呼びました。

前者ではストレス状況を改善できれば、心因反応による症状も次第におさまっていきます。それに対して後者では、本人の思考パターンや行動パターンに問題があることが多いのです。心因反応が収まっても、本人の要素に目を向けていかないと繰り返してしまいます。

 

4.心因反応の症状とは?

心因反応では、あらゆる症状が認められる可能性があります。心因性発作として、発作的に興奮や不穏がみられることもあります。

心因反応の症状としては、これまでもお伝えしてきた通り、どのような症状でも起こりえます。

心因反応といわれるのは、診断基準にあてはめると適応障害などのストレス性障害や軽症うつ病(反応性うつ病)が多いです。それだけではなく、躁症状が認められることもあれば、幻覚や妄想(反応精神病・短期精神病性障害)が認められることもあります。心因性発作といったように、発作的に興奮や不穏がみられることもあります。

つまり心因反応では、あらゆる精神症状が認められるのです。精神症状だけでなく、身体症状も認められます。ストレスがかかると、自律神経系や内分泌系免疫系などに影響があります。

例えば自律神経は、全身の臓器や血管に分布しています。このため自律神経のバランスが崩れてしまうと、あらゆる症状が認められてしまうのです。

具体的な自律神経症状を一覧表にしました。心因反応では、以下のような症状が認められます。

自律神経失調症(心身症)の症状について

 

5.心因反応の治療とは?

心因反応の治療は、症状がひどい場合はまずは薬物療法で症状を抑えていきます。その後、精神療法や環境調整を行っていきます。

それでは、心因反応の治療はどのようにしていくのでしょうか。細かくは病気や症状によっても異なります。ですが大きく見ると、心因反応では3つの治療アプローチがあります。

  • 薬物療法
  • 精神療法
  • 環境調整

薬物療法は、症状の程度によって異なります。内因性の病気の場合は何らかの脳の機能異常があるため、お薬で整えることが重要になります。心因性の病気では、症状を緩和するためにお薬を使っていくことが多いです。

先ほど心因反応の原因のところで、バケツ(本人の器)と水(ストレス)の考え方をご紹介しました。これは心因反応の治療方針を考えるうえでも重要です。

バケツがいくら大きくても、とんでもない水の量が注がれれば溢れてしまいます。それに対して、バケツが小さければ、ちょっとした水の量でも溢れてしまいます。

つまり前者では、水の量を調節してあげれば心因反応は次第に収まっていきます。このため、環境調整や休養が必要になります。

それに対して後者では、水の量というよりも本人の要素に目を向ける必要があります。思考パターンや行動パターンを少しずつ変えていくために、精神療法が必要になっていきます。

治療としては、後者の精神療法の方が時間がかかります。人はそんなにすぐには変われません。それに対して前者は、環境調整によって比較的早く良くなっていきます。

この治療期間の違いも考慮すると、前者では即効性のあるお薬が求められ、後者では長期での安全性の高いお薬が求められます。不安症状を例にしてあげると、前者ではベンゾジアゼピン系抗不安薬などを使うことが多く、後者では抗うつ剤を使っていくことが多くなります。

 

まとめ

心因反応は、何らかの心理的なきっかけによって症状が認められる状態をさします。基本的には適応障害などのストレス性障害、軽症のうつ病(反応性うつ病)のことをいいます。

心因反応では、本人の要素が大きい人もいれば環境の要素が大きい人もいます。

心因反応では、あらゆる症状が認められる可能性があります。

心因反応の治療は、症状がひどい場合はまずは薬物療法で症状を抑えていきます。その後、本人の要素が大きい人は精神療法、環境の要素が大きい人は環境調整に力を入れていきます。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:適応障害  投稿日:2023年9月15日

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