自律神経失調症に効果的な漢方薬とは?

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

自律神経失調症に効く漢方薬って?

「こころ」と「からだ」の両方に様々な症状がおきる自律神経失調症。その治療には全身のバランスを整える漢方薬が助けになることがあります。

一般的には「からだ」の治療に使うイメージのある漢方薬ですが、なかには不安や緊張など「こころ」の症状を和らげる効果が期待できるものもあるのです。

病院やクリニックで自律神経失調症の治療に使う漢方薬には、どのような種類があるのでしょうか。

漢方薬を治療に使う時の注意点

「自律神経失調症にはこの漢方が効くらしい」と聞くと、すぐにでもそれを試してみたくなる方もいるかもしれません。

しかしながら、漢方薬は体質や病状の出方によって合うものが異なり、どれが効果的かには個人差があります。「自律神経失調症には○○という漢方薬」と決まっているわけではなく、患者さんそれぞれの状態に応じて選ぶことがとても大切です。

また、漢方薬には副作用がないと誤解されていたりするのですが、普通のお薬と同じで副作用や飲み合わせ、禁止事項などもあります。

本来、漢方薬は漢方独自の「証(体質や身体の反応などの状態)」に合わせて処方をするものです。

一般的なクリニックや病院では、本格的な証の診断は困難とはいえ、「証」の考え方を下地にして患者さんを診るかどうかで、効果的な処方ができるかどうかも違ってきます。

体質に合わない漢方薬は逆効果になってしまうこともあるため、注意しましょう。

※「証」について詳しくは、『漢方の「証」について』をお読みください。

自律神経失調症に効果のある漢方薬

上でお伝えしたとおり、漢方薬の相性は人それぞれで、「自律神経失調症にはこの漢方!」というものがあるわけではありませんが、自律神経失調症で使われることの多い漢方薬、とくに「こころ」の症状に強いものをご紹介します。

①桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

  • 適応:体質の虚弱な人で疲れやすく、興奮しやすいものの諸症
  • 証:陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(中)・気血水(気逆)

ストレスによって神経が高ぶったり、消耗している状態に効果のある漢方薬です。自律神経失調症のなかでも不安が強く、神経衰弱している患者さんによく使われます。

②柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)

  • 適応:体力が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸や息切れがあり、神経過敏のものの諸症
  • 証:陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気うつ・気逆)

柴胡桂枝乾姜湯は、不安へのとらわれが強く、動悸が激しい自律神経失調症の患者さんに使われます。体力が低下している方に向いていて、身体を温めることで体力を補います。

③柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

  • 適応:精神不安があって、動悸、不眠などを伴う諸症
  • 証:陰陽(陽)・虚実(中~実)・寒熱(熱)・気血水(気うつ・気逆)

柴胡加竜骨牡蛎湯は、漢方薬の中では効果の強いものになります。比較的体力がある方に用いられる漢方薬で、虚弱体質な方には向きません。神経が過敏になっていて、動悸や不眠が強い自律神経失調症の患者さんに使われます。

④半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

  • 適応:気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う諸症
  • 証:陰陽(中)・虚実(虚~中)・寒熱(寒~中)・気血水(気うつ)

半夏厚朴湯は、気がとどこおる「気うつ」の代表的な漢方です。何かが使えた感じがする時に効果的で、とくにヒステリー球とよばれる喉の違和感に使われます。息苦しさがあったり、胸や喉につかえがあるような自律神経失調症の患者さんに使われることが多いです。

⑤加味逍遥散(かみしょうようさん)

  • 適応:体質虚弱な婦人で、肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある諸症
  • 証:陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(血虚・瘀血・気逆)

加味逍遥散は、女性に使われることが多い漢方薬です。不安や緊張、イライラを鎮めるだけでなく、血の巡りを改善する作用があるため、月経トラブルや更年期障害にもよく使われています。体力が低下していて冷えのある、女性の自律神経失調症の患者さんに向いています。

⑥加味帰脾湯(かみきひとう)

  • 適応:虚弱体質で血色の悪い人の諸症
  • 証:陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(中)・気血水(血虚・気虚)

加味帰脾湯は虚弱な体質を改善して、貧血や心身疲労を改善させる作用があります。また、不安や緊張、イライラや抑うつなどを抑え、寝つきをよくしてくれます。疲労感が強い自律神経失調症の患者さんに使われる漢方薬です。

⑦抑肝散(よくかんさん)

  • 適応:虚弱な体質で神経がたかぶるものの諸症
  • 証:陰陽(中間)・虚実(虚~中間)・寒熱(中間)・気血水(血虚・気逆)

抑肝散は、イライラや興奮を抑える代表的な漢方薬です。神経の高ぶりを抑えてくれるだけでなく、筋肉の緊張もゆるめてくれます。自律神経失調症の患者さんでは、発作的な落ち込みや怒りによって興奮が強い方に使われます。

⑧黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

  • 適応:比較的体力があり、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらする傾向のある諸症
  • 証:陰陽(陽証)・虚実(実証)・寒熱(熱証)・気血水(水毒・気逆)

黄連解毒湯には、神経が過敏な状態を鎮める効果が期待できます。比較的体力のある人が、イライラして不安や不眠が認められる時に使われます。

⑨桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

  • 適応:比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴える諸症
  • 証:陰陽(陽証)・虚実(実証)・寒熱(中間)・気血水(気逆・瘀血)

桂枝茯苓丸は、女性ホルモンの関連する自律神経失調症によく使われます。身体を温め、気と血の巡りをよくしてくれることで、筋肉の緊張を緩和し気持ちも落ち着かせます。比較的体力がある人に向いている漢方薬です。

⑩当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

  • 適応:筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの諸症
  • 証:陰陽(陰証)・虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(血虚・水毒)

当帰芍薬散は、女性ホルモンのバランスの乱れによる自律神経失調症に対して効果が期待できます。血の巡りをよくして、余計な水分を整えることで効果がみられ、妊娠中の抗不安薬として使われることも多い漢方薬です。

まとめ

自律神経失調症には、漢方薬が強みを発揮してくれることがありますが、体質や病態に合ったものを使うことが大切です。また、副作用や飲み合わせなどもありますので、飲むときは医師や薬剤師さんに相談してください。

※漢方薬の副作用について知りたい方は、『漢方薬の副作用について』をお読みください。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:自律神経失調症  投稿日:2023年3月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

高齢者のうつ病の症状とは?家族の対応4つをわかりやすく解説します

「親の表情がくらい」「親がふさぎこんでいる」このような悩みはありませんか? これは高齢者のうつ病かもしれません。 仕事の退職や大切な人との死別などのライフステージの変化により、うつ病を発症するリスクが高まります。 高齢者… 続きを読む 高齢者のうつ病の症状とは?家族の対応4つをわかりやすく解説します

投稿日:

うつ病の原因は家族かも?治療法ややってはいけないことをくわしく解説します!

「うつ病の原因は家族かも」「家族が原因だった場合はどうしたらいいの?」と悩んでいませんか? 家族が原因でうつ病になる場合があります。 本記事では、うつ病の原因が家族にあるときの治療法や、やってはいけないことをくわしく解説… 続きを読む うつ病の原因は家族かも?治療法ややってはいけないことをくわしく解説します!

投稿日:

うつ病の中高生が親に言えないときの対処法4つ!メリットやデメリットも解説

「うつ病かもしれないけど親には言えない」「親にうつ病かもしれないと言った方がいいの?」 このようなことで悩んでいませんか? うつ病になった場合、親に伝えることで、 治療を早くはじめられる 病状が理解され、サポートしてもら… 続きを読む うつ病の中高生が親に言えないときの対処法4つ!メリットやデメリットも解説

投稿日:

人気記事

デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

デエビゴ(レンボレキサント)とは? デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促す新しいお薬です。 オレキシン受容体拮抗薬に分類され、脳と体の覚醒… 続きを読む デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

投稿日:

睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

投稿日: