気分循環性障害はどのように診断されるのか

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

気分循環性障害が診断されるまで

気分循環性障害は、なかなか病気として自覚しにくいです。自分からこの病気を疑って病院に来られる方は、ほとんどいらっしゃいません。落ち込みが強くなっている時に受診されて、治療をしていく中で気分の波が大きいことがわかってきます。その波の大きさが躁うつ病(双極性障害)とまではいかないと判断した時に、気分循環性障害を考えます。

ですから、年単位での治療の中で少しずつわかってくる病気といえます。本人はつらい思いを抱えていたり、社会生活で損をすることも多いです。ですが日常生活は何とかやっていけるので、本人も周りも「性格」と考えてしまうことが多いのです。

もしも気分の波が大きすぎて生きづらさを抱えているのでしたら、この病気のことを疑ってみてください。特に大きな理由もなく気分がよくなったり悪くなったりするような方は、気分循環性障害かもしれません。病院で付き合い方を相談していきましょう。

気分循環性障害の診断基準

気分循環性障害の診断は血液検査の結果のように、目で見てわかるものではありません。このため、「一定の診断基準を設けてそれに当てはまるか当てはまらないか」といった観点から診断を行っていくことで、診断に客観性をもたせようとしました。

このような診断基準には、アメリカの精神医学会が作成した「DSM」とWHOが作成した「ICD」のふたつが存在します。

DSM-Ⅴ

アメリカの診断基準であるDSMを紹介します。DSMは、順番にチェックしていくと誰でも同じように診断ができるように意識した診断基準になります。

  • 少なくとも2年間、軽躁症状やうつ症状はあるが、軽躁やうつというには不十分な期間が多数存在する。
  • 2年間で、少なくとも半分は軽躁かうつがあり、何もない期間は2か月以下。
  • うつ・躁・軽躁エピソードを満たさない。
  • 統合失調症関連の病気ではない。
  • 物質によるものではない。
  • 本人が苦痛を感じ、社会・職業面などで障害がある。

※子供や青年は1年間

この診断基準によると、気分循環性障害の生涯有病率は約0.4~1%と報告されています。

ICD-10

WHOの診断基準としてICD‐10があります。この診断基準も症状のチェックができるようになっていますが、典型的なケースを意識して症状が記述してあります。病気のイメージも大切にしている診断基準といえます。

「本質的な特徴は持続的な気分の不安定さであり、軽い抑うつや軽い高揚の期間が何回もみられるが、いずれも双極性障害や反復性うつ病性障害の診断基準をみたすほど重症であったり遷延したりしない」

というのが、ICDでの気分循環性障害の病気の特徴になります。

スペクトラムという考え方

従来、気分障害は単純に、うつ病か双極性障害かに分けて考えられてきました。この両極端の状態で分類していくことに疑問を呈したのがアキスカルです。その両極端の状態には連続性があって、より細かくとらえる必要があると考えました。これが双極性スペクトラムという考え方です。気分循環性障害もこの双極性スペクトラムの中に組み込まれています。

重要なのは、気分循環症も気分の波がある病気として治療を進めていく必要があるということです。双極性障害の症状の軽いものというとらえ方もできます。

ここでは、アキスカルの分類した双極性スペクトラム障害に関して、参考までにまとめておきます。気分循環性障害は、Ⅱ1/2型に分類されています。

  • 1/4型:反復性うつ病
  • 1/2型:統合失調感情障害
  • Ⅰ型:双極性障害Ⅰ型
  • Ⅰ1/2型:軽躁が長引いたうつ病
  • Ⅱ型:双極性障害Ⅱ型
  • Ⅱ1/2型:気分循環症
  • Ⅲ型:抗うつ薬による躁転
  • Ⅲ1/2型:お酒などで躁転したうつ病
  • Ⅳ型:発揚気質のうつ病
  • Ⅴ型:軽躁状態が混在するうつ病
  • Ⅵ型:認知症によるうつ病

まとめ

病気と認識しにくいですが、気分の波に生きづらさを抱えているのでしたら、病院で相談してみてください。

程度は軽いものの、うつや軽躁の症状が長期間にわたって続いていると診断されています。気分の不安定性が病気の本質です。

気分循環性障害は双極性スペクトラムの中の一つと考えられています。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:双極性障害(躁うつ病)  投稿日:2023年3月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

適応障害の症状・診断・治療

適応障害とは? こころみクリニック―公式YOUTUBE 適応障害とは「環境の変化に適応できず、そのストレスによって心身に何らかの症状がおき、生活に支障がでる病気」です。 環境が大きく変化したときには誰にでも起こり得る身近… 続きを読む 適応障害の症状・診断・治療

投稿日:

うつ病で寝れない理由を解説!今日からできる対処法も紹介します

「寝れない日が続く」「寝ても疲れがとれない」このような症状で困ってませんか? これはうつ病による不眠症かもしれません。寝れない日が続くと、体調が悪くなり日常生活に支障をきたす可能性があります。 そこで本記事では、うつ病で… 続きを読む うつ病で寝れない理由を解説!今日からできる対処法も紹介します

投稿日:

悲哀のプロセスとは?対人関係療法で扱う喪失体験への対応

大切な人を失う体験は、人生の中でも大きなストレスイベントであるとされています。 喪失体験を乗り越えていく過程では、行き場のない感情や身体症状など多様な反応が起こります。 人生における危機の一つといえますが、時間の経過とと… 続きを読む 悲哀のプロセスとは?対人関係療法で扱う喪失体験への対応

投稿日:

人気記事

デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

デエビゴ(レンボレキサント)とは? デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。 覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬… 続きを読む デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

投稿日:

睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

投稿日: