気分循環性障害を克服していく治療法とは?
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気分循環性障害の治療の流れ
最初に大切なことは、自分自身の性格を「持病」として認識してもらうことです。極端な気質と折り合ってどのように生きていくのか、付き合い方を考えていかなければいけません。
気分循環性障害は、気分が不安定になってしまうことで人間関係がうまくいかずに苦しむことが多いです。なかには社会的にプラスに働くこともあって、経営者やアーティストなど想像力が求められるような仕事をしている方では活躍されている方もいらっしゃいます。ですから、良い部分とのバランスをみながら、治療を考えていきます。
気分循環性障害がデメリットしかないのであれば、薬物療法も含めてしっかりと治療した方がよいでしょう。また、双極性障害(躁うつ病)につながっていく可能性が高ければ、薬物療法をした方がよいです。
そこまでの大きなデメリットがないならば、生きやすい人生を見つけたり、生活で意識していくポイントを見つけていくことで解決していくこともあります。
気分循環性障害の方が向いている仕事とは?
気分循環性障害の方は、独創的で創造的な方が多いです。気分が上向いている時は、エネルギーもあるので、世の中に評価される仕事をされる方もいらっしゃいます。このため、経営者やアーティストなどで社会的に成功を収める方もいらっしゃいます。
おそらく経営者として成功されている方は、独創的なアイデアと気分が高揚している時の活動力で、一気に成功したケースが多いと思います。中・長期的にみると人のマネージメントなどにおいて、なかなか難しい部分も出てくるかと思います。
一方で、芸術の道は向いていると思います。気分循環性障害の極端さや脆さというものも、芸術の道でしたらある程度容認されます。創造性が求められる仕事は、キッチリと仕事をこなすというだけでは評価できないものがあります。このような仕事に適正がありそうな方は、向いていると思います。
その時の体調によって休養をとることができる在宅ワークや、時間に融通の利く仕事、フレックスタイムを導入している仕事は人によります。ある程度の時間的な裁量がある仕事の方がペースをつかみやすい場合もありますが、決められた時間に出社することが生活リズムの維持につながっている場合もあります。
働き方として、夜勤や交代制勤務のお仕事は、気分の波を強めてしまうため避けたほうが良いでしょう。
自由度のある業務がよい場合と、そうでない場合がわかれます。いずれにしても生活リズムを一定にしていくコツを身に着けていく必要があります。また、専門性があって自己で完結する業務でしたら、対人関係でのデメリットも出にくいかもしれません。
お薬の治療
気分循環性障害の方には、気分安定薬という薬を中心に使っていきます。気分安定薬としては、デパケンRやラミクタール、テグレトールなどの抗てんかん薬、リーマスという炭酸リチウム製剤があげられます。これらの薬を使うと感情の起伏が抑えられて、気分は安定していきます。
ですが、とがった部分もなくなるので、良い部分で突出していたメリットが消えてしまいます。創造的な仕事についている方に、不用意に気分安定薬を使ってしまうとアイデアが浮かんでこないなどと、仕事に支障がでてストレスが強くなるので注意が必要です。ですから、症状の程度と創造性などのメリットとのバランスで薬をどのように使っていくのかを考えます。
気分循環性障害では、抗うつ剤はあまり使いません。抗うつ剤は、気持ちを持ち上げる薬です。気分循環性障害の方に使うと、気分の起伏が活発になったり、躁症状が強くなることがあります。抗うつ剤を使うかを考える時は、落ち込んだ症状が長く続き、気分安定薬ではどうしても改善ができない時だけです。
精神療法
薬を使わずに、気分の波を整えていくにはどのようにすればよいのでしょうか?気分の波には、生活リズムと人間関係の2つが大きな影響をあたえます。ここに注目した治療法をみていきましょう。
社会リズム療法(Social Rhythm Therapy)
生活リズムの乱れや社会生活での変化が、気分の波につながってしまうことがあります。社会リズム療法では、このような「社会リズムの変化」に焦点をあてて、記録紙を用いて目に見える形にして生活リズムを整えていきます。
記録をつけていくと、社会リズムと気分がどのような関わりあいを持っているのか、傾向がみえてきます。これらを意識的に防ぐことで、病状の改善をします。
社会リズム療法をしっかりと行うには、17項目について見ていきます。大変ですので、重要な5項目からやっていきましょう。
- 起床した時刻
- 人と初めて接触した時刻
- 仕事・学校・家事・ボランティアなどを始めた時刻
- 夕食をとった時刻
- 就寝した時刻
の5つの時間を記録していきます。
17項目では、さらに以下の12項目追加されます。
朝飲み物を飲んだ時刻・朝食をとった時刻・初めて外出した時刻・昼食をとった時刻・昼寝をした時刻・運動をした時刻・夜食や飲み物をとった時刻・夜のテレビのニュース番組を見た時刻・別のテレビ番組を見た時刻・活動Aをした時間・活動Bをした時間・活動Cをした時間(A~Cは任意)
対人関係療法(Interpersonal PsycoTherapy)
社会生活の中でのストレスとして一番大きなものは、やはり人間関係のストレスです。特に患者さんにとっての「重要な他者」との間の対人関係を見直していき、再構築をはかっていくのが対人関係療法です。
対人関係療法では、心理的問題は意思疎通の問題ととらえていきます。うまくコミュニケーションが取れれば、心理的なわだかまりも解消でき、自尊心も高めていくことができます。対人関係に絞った認知行動療法に近いものがあります。
認知行動療法はそれぞれの人に変化の方向性が委ねられていて、ゴールというものがありません。ですが、対人関係療法には明確なゴールがあります。誤解を恐れずに簡単にいってしまうと、「重要な他人とはお互いに良い感じになっておいて、その他の人たちはほどほどで付き合えればよい」というゴールです。
気分循環性障害の方の生きづらさは、壊れてしまった人間関係にあることが多いです。この部分にも目を向けて、少しずつ関係性の改善をはかっていきます。
対人関係社会リズム療法(IP-SRT)
上記の2つを組み合わせたものが対人関係社会リズム療法です。直接の人間関係に目を向けるというよりは、人間関係のストレスを量にして記録していきます。
社会生活を送っていく中で、どの部分での人間関係のストレスが気分に影響するのか把握できるようになってきます。それを踏まえて、ストレスの量を適切にコントロールしていくことを目指していきます。
具体的な記録は、SRM(social rhythm metric)という記録用紙を用います。
- 起床時刻
- 最初に人と合った時刻
- 仕事・家事開始時刻
- 夕食時刻
- 就寝時刻
以上の5つを記載します。その上で、対人接触の程度を0~3の4段階で記入します。最後に一日の気分を点数づけします。1週間記載がおわりましたら、SRM得点を計算します。計算方法は添付の記録用紙をご参照ください。
記録を継続することで、生活リズム、対人接触、気分の関係性がだんだんとわかってきます。自分自身でどのように管理していくことが大事か、意識していくことができるようになっていきます。その上で少しずつ、直接の人間関係にも目を向けていきます。
まとめ
メリットとデメリットのバランスをみて、薬を使っていくかを考えていきます。
芸術系の仕事が向いていることが多いです。自由度の高い仕事の方が望ましいです。
薬の治療としては、気分安定薬が中心になります。
気分の波には、生活リズムと人間関係の2つが大きく関係しています。ここにスポットをあてた、社会リズム療法・対人関係療法・対人関係社会リズム療法などがあります。
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カテゴリー:双極性障害(躁うつ病) 投稿日:2023年3月23日
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