認知症の周辺症状とは?種類・対応策・原因・治療法を解説
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認知症には脳の機能の低下によって起こる中核症状の他に、中核症状を原因として2次的に起こる周辺症状がみられます。
周辺症状は多種多様であり、対応に苦心することが多く、介護者の頭を悩ませる症状です。
この記事では周辺症状の種類と対応策・治療法を解説します。認知症の方を介護する際に役立ててみてください。
認知症の周辺症状とは?
中核症状を原因として二次的に起こる症状です。別名「行動心理症状」BPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれます。
周辺症状は、症状の現れ方・程度の個人差が大きいのが特徴です。
認知症の中核症状と周辺症状の違い
中核症状は脳の機能低下によって直接発生します。それに対し、周辺症状は残った脳神経細胞が外界に反応しておこる症状です。
中核症状は大抵の認知症の方にみられますが、周辺症状は個人差があります。
認知症の周辺症状の種類(ガイドラインを中心に解説)
周辺症状はおよそ以下の4つに分類されます。
- 活動亢進が関係する症状
- 精神病様症状
- 感情障害を関係する症状
- アパシーが関係する症状
活動亢進が関係する症状
物忘れを自覚し、不安・焦りが生じると、イライラして不機嫌となり、以下のような症状を起こします。
暴力・暴言
もどかしさ・不安・いらだちから暴力・暴言をふるったり、人が変わったように暴れたりすることがあります。
イライラ
認知症のために、できないことが増えてイライラします。
徘徊
行く先や時間や場所が分からなくなり、焦ってあちこち当もなく歩き回ります。
介護拒否
介護の意味を理解できないこと、異性に介護されることへの羞恥心などから介護拒否をおこし、介護者をてこずらせる症状です。
精神病様症状
せん妄・幻覚・妄想といった精神病症状を起こします。
せん妄
体調や環境によって見当識障害・幻覚が出現し、イライラ・興奮が強くなります。
幻覚
存在しないものを存在するかのように体験する症状です。幻視・幻聴・幻臭・幻味・幻触がみられます。
盗られ妄想
自分が置き忘れた記憶がないため、「人に盗られた」と取り繕う症状です。違うと説得しても聞き入れられません。
感情障害を関係する症状
不安・うつ状態などの感情障害を起こします。
不安
周囲の状況が理解できず不安感がつのります。
睡眠障害
睡眠時間が短くなり、不眠傾向がみられます。睡眠のサイクルが障害されて昼と夜が逆になるのが「昼夜逆転」です。
帰宅願望
ひんぱんに帰宅を欲求したり、実際に帰宅したりしようとすることがあります。不安や孤独感が原因となることが多いようです。
収集癖
不安を解消するために。多くのものを集める習慣がみられます。また「もったいない性分」で集めたり、ものがあったことを忘れて集めたりすることもあります。
アパシーが関係する症状
自発性・意欲が低下し、情緒の欠如、不活発、興味の低下が現れます。うつ状態との違いに悩むことがありますが、アパシーは本人が自覚していないことで鑑別できます。
認知症の周辺症状の対応策
周辺症状は適切なケアによって改善させられます。周辺症状の改善に伴って介護者に余裕が生まれ、それによって周辺症状が改善するのが特徴です。
逆に周辺症状が悪化すると、対応が困難になり、さらに中核症状が進行していまいます。
暴言・暴力
感情のコントロールができず、過度に攻撃的になる状態です。介護者も感情的になると、さらに事態が悪化します。
介護者は認知症の人の話に傾聴、受容的に接するようにしてください。
どうしても耐えられないときは距離をおくとよいでしょう。時間がたつと、落ちついて話しやすくなることがあるからです。
大声・奇声
認知症の人は自分の気持ちを相手にうまく伝えられないため、イライラして大声をだします。
こういった際には、介護者を変えてみるとか、落ち着ける環境に移動するとかしてみてください。本人の置かれた立場を見直すことも大切です。
性的異常行動
みだらなことを話す、異性の体を触るといった行動がみられることがあります。これは家族からもっと愛されたいという気持ちの表れかもしれません。
介護者は普段から手を握るなどのスキンシップを取り、本人の気持ちを落ち着かせておくとよいでしょう。
性的行為に及んだときは、他のことに気をそらすようにしてください。
認知症の周辺症状の原因
周辺症状は残った脳神経細胞が外界に反応しておこりますが、性格・生活環境・人間関係が影響します。
認知症を起こす病気は以下のとおりです。
原因となる主な病気
- アルツハイマー病、ピック病、パーキンソン病などの神経変性疾患
- 脳梗塞などの脳血管障害
- 脳挫傷などの外傷
- 脳腫瘍
- 髄膜炎などの感染症
- 甲状腺機能低下症などの内分泌性疾患
- 肝性脳症などの代謝性疾患
- アルコール脳症などの中毒性疾患
- その他
認知症の周辺症状の治療
周辺症状は改善できることに注目してください。治療法として、薬物療法と非薬物療法があります。
認知症の周辺症状に効く薬
周辺症状に対して、以下のような薬を使って治療することがあります。
- 抗精神病薬・抗てんかん薬:興奮などに対して効果あり
- 抗うつ薬 :抑うつ・意欲低下に対して効果あり
- 認知症治療薬:アルツハイマー病に対して効果あり
- 抑肝散 :幻覚・興奮・イライラ・異常行動に対して効果あり
非薬物療法
薬以外に、以下のような治療法があります。
- ストレスの少ない環境づくり
- 睡眠覚醒リズムの維持
- 音楽療法
- 絵画療法
まとめ
認知症の周辺症状には、活動亢進が関係する症状、精神病様症状、感情障害を関係する症状、アパシーの低下が関係する症状がみられます。
対応が困難なことも多く、介護者の頭を悩ませますが、薬などの治療を行えば、症状を軽くできますから、まず専門医に相談してみてください。
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カテゴリー:認知症 投稿日:2023年6月3日
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