認知症で見られる怒り・妄想・徘徊を落ち着かせる方法

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認知症になると、怒りっぽくなったり、物盗られ妄想が生じたり、徘徊したりすることがあります。

これらの症状は理由が分かりづらく、対応が困難なことが多いようです。

本記事では、認知症で見られる怒り・妄想・徘徊の理由と落ち着かせる方法を解説します。

認知症で見られる対応が困難な症状

認知症になると理解力が低下したり、失敗が多くなったりして、自信を喪失し、不安や怒りを感じることが増えてきます。

自分の尊厳を守るために、状況の変化を他人のせいにして、興奮したり暴言暴力を奮ったりすることがあります。

また思い込みから物盗られ妄想・被害妄想が生じることもあります。さらに不安感から徘徊(はいかい)することもあります。

これらの症状は、周囲の人から見ると理解しがたく、対応が困難です。

認知症で見られる怒りの理由

認知症の行動・心理症状(BPSD)には以下のような症状が含まれます。

  • 怒りっぽい(易怒性)
  • 暴言暴力
  • 焦燥興奮

これらの症状は「怒り」が根源にありますので、認知症の方が怒りっぽくなる理由を解説します。

自分の考えや感情をうまく伝えられないから

失語の症状により、自分の考えや感情を表現できなくなります。そのためストレスがたまり、周囲の人に怒りをぶつけてしまうのが特徴です。

周囲の状況が分かりにくくイライラするから

認知能力の低下により、自分の周囲の状況を理解しにくくなり、苛立ちを周囲の人にぶつけてしまいます。

たとえば外出しても目的地を忘れてしまってイライラする、計算力の低下により、買い物のときにお釣りの計算ができなくなり、店員にだまされていると思い込んで怒るなどのケースです。

感情のコントロールができなくなるから

通常はイライラや怒りがあっても、なかなか表に出さないものです。認知症になると前頭葉の萎縮などの原因で、感情のコントロールができなくなり、すぐに怒りを表してしまいます。

プライドが傷つくから

誰しもプライドが傷つけられると怒りを覚えることがあるでしょう。認知症になると、今までできていたことができなくなり、プライドが傷つきやすくなります。

たとえば部屋を片付けられなくなって部屋が散らかった場合、自分のせいにするとプライドが傷つくので、他人のせいにしてしまうといったケースです。

周囲からやたらと批判されるから

認知症になると物事に対して適切な対応ができなくなり、周囲から批判されることが増えてきます。

たとえば「それは違う」「なんでできないの」「さっき言ったのに忘れたの」などとやたら批判され、イライラし、怒りを覚えるケースです。

認知症で見られる妄想の理由

物盗られ妄想の場合、失くしたものをどこに置いたかという記憶は喪失しています。

その際に認知症の症状に対する苦痛、介護生活への不満などが影響して、自分のものを盗られたと思い込むことがあります。

思い込みが強くなると、盗られたことに対してさまざまな理由を付け足し、物語を正当化するのです。

いくら説明しても聞き入れず、ますます話がこじれてきます。これが物盗られ妄想の生じる理由です。

徘徊の理由

徘徊がみられる際には、外出した理由を忘れて、行く先が分からず歩き回っているのかもしれません。

また現在の居場所が分からず、不安感が強くなり、安心できる場所を探しているのかもしれません。

さらに自宅にいるのに「家へ帰る」というのは、子どもの頃に住んでいた家を思い出しているのかもしれません。

それを「ここが自宅だ」と説明しても理解できませんし、よけいに不安が増すだけです。

認知症で見られる怒り・妄想・徘徊を落ち着かせる方法

認知症の方に怒り・妄想・徘徊が見られるときの対処法を解説します。

プライドを傷つけない

認知症のためにできなくなったことをできるまでさせようとしたり、忘れたことを思い出させようとしたりすると、相手のプライドを傷つけてしまいます。

できなくなったり、忘れたりするのは認知症のせいであり、そのまま受け入れるしかありません。

たとえば自宅にいるのに「家に帰る」という場合、まず本人の言うことに共感してください。そのうえで「お茶でも飲んでから帰りませんか」というふうに対応するとよいでしょう。

意見や行動を一方的に否定しない

認知症になると言っていることが矛盾していたり、行動が間違っていたりすることが多くなります。

それを正そうとしても解決せず、認知症の方の怒り・不安が強くなり、事態がこじれてしまいます。

認知症の方の意見や行動を一方的に否定せず、受容するように心がけてください。

たとえば盗られ妄想で「誰も盗っていない」と説き伏せても意味がありません。共感したうえで一緒に失くしたものを探すと落ち着くことがあります。

怒りや不安の理由は聞かない

認知症の方は、自分の怒り・不安の理由も認知できないことが多いようです。怒っている理由を尋ねられても答えられません。

理由を聞く代わりに、相手の言うことをおうむ返しにするのがよい方法です。

たとえば「だまされた」と言えば「だまされたの?」と答えるといった具合です。こういったやり取りをしているうちに、自然と怒りがおさまってくることがあります。

落ち着くまで距離をおく

怒りが高まり、暴言・暴力につながりそうな場合、その場を離れて落ち着くまで待つほうがよいでしょう。

そうすると自然におさまってくるものです。興奮状態のときにやたら対応すると、かえって症状が強くなります。

スキンシップでメッセージを伝える

認知症が進むと言葉でメッセージを伝えるのが難しくなります。代わりにスキンシップでメッセージを伝えるとよいでしょう。

手を握る、そっと背中をさするといった触れ合いで安心感を伝えてください。

ただし、いきなり手を握ると怖がらせるので、離れた場所から少しずつ距離を縮め、相手の表情を見ながらスキンシップをとるのが秘訣です。

まとめ

認知症になると怒り・妄想・徘徊といった症状がみられ、対応が困難になることがあります。

それぞれの症状が生じる理由を理解し、認知症の方のプライドを傷つけない、意見や行動を一方的に否定しないといった対応をすれば、少しでも認知症の方の介護がしやすくなるでしょう。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:認知症  投稿日:2023年11月3日

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