認知症の中核症状と周辺症状の違い・覚え方・対応策
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認知症の方には、さまざまな症状が見られるため、介護する際に困惑することが少なくありません。
その際に、認知症の症状を中核症状と周辺症状に分類してとらえると理解しやすいです。
この記事では、認知症の中核症状と周辺症状の違い、中核症状の覚え方、それぞれの対応策について解説します。
認知症の方を介護する際に役立ててみてください。
認知症の中核症状と周辺症状の違い
認知症の症状には中核症状と周辺症状の二種類があります。
中核症状は脳の障害により直接引き起こされるものです。
周辺症状は中核症状に性格・生活環境・人間関係などが関係して二次的に起こります。
それぞれの内容を解説します。
中核症状
たいていの認知症で見られる症状で、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、失語、失行、失認を含みます。
記憶障害
覚えることができなくなる障害ですが、もの忘れとは異なります。
たとえば、もの忘れでは食べた料理を忘れますが、記憶障害は食べたこと自体を忘れます。
見当識障害
時間や場所が分からなくなることです。
今が何月何日なのか、トイレがどこにあるのかなどが分からなくなります。
理解・判断力の低下
理解するまでに時間がかかったり、適切な判断ができなかったりする障害です。
たとえば横断歩道を信号に従って渡るとか、自動販売機で買い物をするとかができなくなります。
実行機能障害
何かを計画して実行できなくなる障害です。
たとえば料理の献立を考えて買い物をし、段取りに従って料理することが難しくなります。
失語
言葉を失ってしまう障害です。
たとえば読む・書く・話すといったことが困難になります。
失行
今までは普通にできていたことができなくなる障害です。
たとえばテレビをつける、服を着替えるといったことができなくなります。
失認
ものや人物を認識できなくなる障害です。
たとえば家族を見ても、それが家族だと分からなくなります。
周辺症状(行動・心理症状)
中核症状に性格・環境・人間関係などが関係して起こる症状です。
行動・心理症状は英語でBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaといい、BPSDという略語で呼ばれます。
BPSDは個人によって症状が異なるのが特徴です。
行動障害
- 暴力・暴言:感情をコントロールする前頭葉が萎縮し、感情抑制ができなくなり、ちょっとしたことで暴言・暴力を奮うことがあります。
- 徘徊:外出して道が分からなくなったり、自宅を知らない場所と認識して自宅を探しに外にでてしまったりして、あちこちさまようこともあります。
- 介護拒否:自分が介護される意味が分からなかったり、被害妄想で介護者を恐れたりして介護を拒否することがあります。
精神障害
- 妄想:実際にはありえないことをかたくなに思い込んでしまう症状です。たとえば介護者に財布を盗られたと思い込む「盗られ妄想」などが見られます。
- 幻覚:実在しないものが見えたり聞こえたりすることです。たとえば壁紙のしみが人に見えるとか、聞こえないはずの声が聞こえるとかの症状が見られます。
感情障害
- 不安:今までできていたことができなくなると不安になります。
- 抑うつ:抑うつ状態になることがあります。
意欲の障害
- 意欲低下:無気力・無関心になることがあります。
- 意欲亢進:逆に意欲が高まり過ぎることもあります。
認知症の中核症状と周辺症状の対応策
中核症状と周辺症状の対応の仕方を解説します。
中核症状の対応策
認知症による記憶障害・見当識障害・理解判断力の低下などは、改善するものではありません。
忘れてしまったこと、できなくなったことを無理に取り戻させようとしたり、叱ったりするのは禁忌です。
心ない対応は、認知症の方のストレスとなり、周辺症状を引き起こします。
中核症状を受容し、本人の気持ちに寄り添うように対応してください。
周辺症状の対応策
周辺症状に対応する際のポイントとして、認知症の方の心を理解する、急な環境の変化を避ける、周辺症状の理由を理解する、自己肯定感を持たせるなどがあります。
認知症の方の心を理解する
認知症になると、昔はできていたことができなくなり、悔しい思いをします。
さらに周囲の人から、できないことを指摘されたり、注意されたりすると、しだいに自信を喪失します。
こういった認知症の方の気持ち・心を理解して対応しましょう。
急な環境の変化を避ける
身の周りの環境が変わると、大きなストレスとなり、精神状態が不安定になります。
そして周辺症状が強く現れるようになるのです。
生活環境・生活リズムを急に変えないように注意してください。
周辺症状の理由を理解する
認知症の方が一軒理不尽な行動をとったとしても、本人なりの理由があります。
記憶障害・判断力の低下によって、ちぐはぐな言動が見られることもあるでしょう。
その際に間違いを指摘されたり、叱られたりすると、つらい気持ちをいだき、ストレスがたまります。
認知症の方の言動を理解して受容してあげましょう。
自己肯定感を持たせる
「自分が存在するには意味がある」といった自己肯定感を持たせることは重要です。
これがなくなると、暴言・もの盗られ妄想などが現れます。
本人が「自分は大切な人間だ」と感じられるように対応してください。
まとめ
認知症の症状には中核症状と周辺症状の二種類があります。
中核症状は脳の障害により直接引き起こされる症状です。
周辺症状は中核症状に性格・生活環境・人間関係などが関係して二次的に起こる症状です。
中核症状は改善しませんが、心ない対応をすると認知症の方のストレスとなり、周辺症状を引き起こします。
中核症状・周辺症状を受容し、本人の気持ちに寄り添うように対応してください。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:認知症 投稿日:2024年3月29日
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