認知症高齢者の日常生活自立度をわかりやすく解説

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認知症になると記憶力・理解力などが低下し、日常生活に支障をきたします。個別の日常生活自立度によっては、周囲のサポートが必要です。

この記事では、認知症高齢者の日常生活自立度について解説します。これを読めば、認知症高齢者がどの程度自立して生活できるかが分かるでしょう。

介護者が認知症高齢者の介護計画を立てるときに役立ててみてください。

認知症高齢者の日常生活自立度とは

認知症をもつ高齢者の日常生活における自立度の程度を表す指標です。

厚生労働省により判定基準が設けられています。どの程度自立して生活できるかを評価するものです。

介護保険制度において、以下のようなケースで利用されます。

  • 認定調査・主治医意見書の作成
  • コンピューターによる要介護認定の一次判定
  • 介護認定審査会の審査判定における参考資料
  • 看護計画・リハビリテーション計画を立てるとき
  • ケアプラン・通所介護計画を立てるとき

認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準(厚生労働省)

厚生労働省により判定基準が設けられ、ランクⅠ~Ⅳ、Mに分類されます。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは別ものですので注意してください。

ランクⅠ

  • 何らかの認知症がみられる
  • 日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立

一人暮らしが可能なレベルです。

ランクⅡ

  • 日常生活に支障を来すような症状、行動・意志疎通の困難さが多少みられる
  • 誰かが注意していれば自立できる

一人暮らしは困難な場合もあり、在宅介護サービスの利用が望まれます。

ⅡA

家庭外で上記Ⅱの状態がみられるケースです。以下のような症状がみられます。

  • たびたび道に迷う
  • 買い物・金銭管理などのミスが目立つ
ⅡB

家庭内でも上記Ⅱの状態がみられるケースです。以下のような症状がみられます。

  • 服薬管理ができない
  • 電話の対応ができない
  • 家庭への訪問者に対応できない

ランクⅢ

  • 日常生活に支障を来すような症状、行動・意志疎通の困難さがときどきみられる
  • 部分的に介護を必要とする

一時も目を離せない状態ではありません。ただし一人暮らしはやや困難であり、在宅介護サービスの利用が必要です。

ⅢA

日中を中心として上記Ⅲの状態がみられるケースです。
以下のような症状がみられます。

  • 食事・着替え・トイレ動作がうまくできない
  • やたらにものを口に入れる
  • ものを拾い集める
  • 徘徊
  • 失禁・不潔行為
  • 大声・奇声
  • 火の不始末
  • 性的な異常行為など
ⅢB

夜間を中心として上記Ⅲの状態がみられるケースです。内容はⅢaと同じです。

ランクⅣ

  • 日常生活に支障を来すような症状、行動・意志疎通の困難さがひんぱんにみられる
  • 常に介護を必要とする

みられる症状はランクⅢと同じです。

家族の介護ならびに在宅介護サービスのもとに在宅生活を続けるか、老人保健施設・特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用するかの検討が必要です。

ランクM

  • 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患がみられる
  • 専門医療を必要とする

以下のような症状がみられます。

  • せん妄・妄想・興奮
  • 自傷・他害行為など

精神科病院、老人保健施設などの認知症専門棟で治療が必要です。

認知症高齢者の日常生活自立度の覚え方(フローチャートを利用)

判定基準を覚えるコツをご紹介します。
まず以下のフローチャートを覚えてください。

認知症・自立度

Ⅱで症状が日中にみられるとⅡa、夜間にみられるとⅡb

Ⅲで症状が日中にみられるとⅢa、夜間にみられるとⅢbです。

その後1~Ⅳ、Mの個別の症状を覚えます。

認知症高齢者の日常生活自立度判定を受けた方が入れる施設

  • 特別養護老人ホーム:要介護3以上が入所条件であり、ランクⅢ以上相当です。
  • サービス付き高齢者向け住宅:一般型と介護型があり、ランクⅡ以上の方は介護型が望まれます。
  • グループホーム:要支援2~要介護5が入所条件です。
  • 有料老人ホーム:施設により入居条件が異なります。

まとめ

認知症高齢者の日常生活自立度は、ランクⅠ~Ⅳ、Mに分類されます。

認知症はあるが、ほぼ自立しているⅠ、誰かが注意していれば自立できるⅡ、部分的に介護が必要なⅢ、常に介護が必要なⅣ、入院や認知症専門棟で治療が必要なMの5ランクです。

認知症高齢者の日常生活自立度を参考にして、家族の介護ならびに在宅介護サービスのもとに在宅生活を続けるか、老人保健施設・特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用するかの検討が必要でしょう。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:認知症  投稿日:2023年10月17日

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