アルツハイマー型認知症の段階別の症状
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アルツハイマー型認知症では、認知機能が低下し、生活に支障をきたします。認知症に対する根本的な治療法は見つかっていません。
しかし認知症の前段階であるMCI(Mild Cognitive Impairment)の段階で対策を講じることにより、認知症への移行を防げる場合があります。
この記事では、アルツハイマー型認知症の段階別の症状を解説します。この段階は、ニューヨーク大学薬学部のバリー・ライスバーグ博士によって考案されたものです。
これを読めば認知症の方がどの段階にいるのかが分かりやすくなります。認知症の方の介護をする際に役立ててみてください。
段階1:認知機能の障害なし
認知機能に障害が見られない段階です。
段階2:非常に軽度の認知機能の低下
アルツハイマー型認知症の前兆がみられる段階で、MCI (Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれます。ただし加齢による正常な変化の場合もあります。
よく見られる症状は以下のとおりです。
- 度忘れしたように感じる
- 慣れている言葉、名前を忘れる
- 鍵、メガネなど日常品の置き場所を忘れる
日常生活には支障をきたさず、大抵は「としのせい」と考えてしまいます。家族や知人は気づかないことが多く、健康診断でも見つかりません。
しかし放っておくと高い確率で認知症になってしまいます。適切な対策を講じることで認知症への移行を防げる場合があるため、注意が必要です。
段階3:軽度の認知機能の低下
初期段階のアルツハイマー型認知症の一部にあたり、以下のような症状がみられます。
- 新しく知り合った人の名前が覚えられない
- 文章を読んでもほとんどの内容を覚えていない
- 価値のあるものを失くす
- 時間、日付、曜日が分かりにくくなる
- 意欲が低下して、面倒くさがるようになる
- 計画したり整理したりしにくくなる
これらの症状により日常生活に支障をきたすようになり、家族や知人も本人の変化に気づき始めます。
- 言葉、名前を思い出しにくくなっているのに気づく
- 任務遂行能力の低下に気づく
認知症の検査で記憶・集中力の低下が見つかることがあります。
段階4:中等度の認知機能の低下
初期段階のアルツハイマー型認知症にあたり、以下のような症状が見られます。
- 最近の出来事が覚えられなくなり、食事したことを忘れることがある
- 難しい暗算(100から7ずつ引いていくなど)ができなくなる
- 複雑な作業能力が低下し、食事の計画、支払の管理などができなくなる
- 自分の生い立ちを忘れる
- 社交的な場面において引っ込み思案となる
日常生活に支障をきたし、支援が必要な状態です。認知症の検査で明らかな障害がみられます。
段階5:やや重度の認知機能の低下
中期段階のアルツハイマー型認知症にあたり、以下のような症状が見られます。
- 記憶障害がめだつ
- 現住所、電話番号、出身校などを思い出せない
- 場所、日付、曜日、季節などが混乱する
- 簡単な暗算(40から4ずつ引くなど)ができない
- 季節に合った服装を選べない
ただし自分の名前、配偶者・子どもの名前は覚えていることが多いようです。日常生活に介護が必要になりますが、大抵は食事・トイレ使用の手助けは必要がありません。
段階6:重度の認知機能の低下
段階5よりもさらに進行した中期段階のアルツハイマー型認知症で、以下のような症状が見られます。
- さらに記憶障害が進む
- 最近の出来事を認識できない
- 自分の名前は覚えているが生い立ちは全く思い出せない
- 配偶者や介護者の名前を時々忘れる(知り合いと知らない人の区別はできる)
- 着る順番がわからなくなり着衣に介護が必要
- 睡眠のリズムが乱れる
- トイレの使用時に水を流さない
- 尿失禁、便失禁が増える
- 性格の大きな変化がみられる
日常生活に大幅な介護を必要とする状態です。盗られ妄想・幻覚・強迫的行為がみられることがあります。また徘徊(はいかい)し道に迷うこともあるので注意が必要です。
段階7:非常に重度の認知機能の低下
後期段階のアルツハイマー型認知症にあたり、以下のような症状が見られます。
- 会話したり、体を動かしたりする能力を失う
- 単語や文章を口にすることはある
- 手助けなしに座ったり、正面を向いたりできなくなる
- 異常な反射反応をしめすことがある
- 体が硬直して、えん下困難になる
- 寝たきりになることもある
日常生活全般に介護が必要な状態です。
まとめ
アルツハイマー型認知症の段階について解説しました。各段階で特徴的な症状が見られます。特にMCIの段階では、本人も家族も気づかないことが多いようです。
しかしMCIを放置していると、高い確率で認知症に移行してしまいます。MCIの段階で適切な対策を講じれば、認知症への移行を防げる場合があります。
対策について詳しく知りたい方は、以下のリンクページをご覧ください。
厚生労働省 軽度認知障害「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:認知症 投稿日:2023年6月3日
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