うつ病での休職から復職を目指す5つのステップ
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休職中はどのように過ごせばよい?
うつ病がひどくなってしまうと、一度仕事を休んでしっかりと治療をしたほうがよいことがあります。
責任感や不安感から無理をしてしまうと、思考力や集中力が低下して日中の業務効率が落ちて悪循環となってしまいます。そんな時はしっかりと休んで、その悪循環を断ち切った方がよいのです。
自分からもう限界だ…と思って休職される方もいれば、ドクターストップで納得できずに休職となった方もいらっしゃるでしょう。
休職のことをどのように考えればよいのでしょうか。休職した時はどのように日々を過ごすことが回復の近道なのでしょうか。
ここでは、うつ病で休職した方がどのようなことを意識しながらすごすことがよいのか、5つのステップにわけてご紹介していきたいと思います。
①休職することを受け入れる
うつ病になる方は、真面目で律義な方が多いです。うつ病で仕事を休むときには、罪悪感を抱えている方が多いです。
「職場のみんなに迷惑をかけてしまった」
「家族にも負担をかけてしまう」
「自分はなんてダメな人間なんだ」
このように自分を責めてしまって、悲観的になったり、不安や焦りに包まれてしまいます。病気で休んでしまうことの罪悪感から、「早く病気を治して立ち直らなければ」と焦ってしまうのです。
ですがこれでは、心は全く休まりません。むしろ休んでいることがストレスになってしまいます。休職の目的は、「しっかりと心身を休めること」です。そのためには、うつ病で休職するということを受け入れる必要があります。
体の病気では折り合いも付くのですが、心の病気はなかなか折り合いがつきません。その理由は2つあります。
- 心の病気は見えないから
- 心の病気を認められないから
心の病気は目に見えるものではありません。足を怪我したとか、肝臓の数値が悪いといったものではないのです。だからこそ、自分でも心の病気を認められないのです。まずはちゃんと、心の病気を受け入れることから始めましょう。
休職に当たっては現実的な不安もあると思います。
※詳しく知りたい方は、『うつ病での休職が不安な方に伝えたいこと』をお読みください。
②まずはゆっくり休む
次のステップは、ただただ休むことです。あれこれ考える必要はありません。だいたいの生活リズムだけ守って、しっかりと心身を休めましょう。
- 「休むことがあなたの仕事」
このように考えていただいてもよいと思います。病院から処方されたお薬があればしっかりと服用し、ただしっかりと休んでください。うつ病は、しっかりと休養することで少しずつ回復していきます。お薬が回復を早めるサポートをしてくれます。
うつ病は、エネルギーが低下してしまっている状態です。まずは十分に充電をしなければいけません。少しエネルギーがたまったからといって無理をしてしまうと、すぐに空になってしまいます。
この記事を読めている方は、まだそこまでうつ病がひどくはない方です。不安や焦りを感じてしまうだけの余力があるのですが、自分に言い聞かせてしっかりと休みましょう。
本人が読める状況になく、家族が心配されて読まれている方もいらっしゃるかと思います。ご家族の方は温かく見守っていてください。ある程度回復していくまでは、ただ休むことが一番の回復につながります。
うつ病はしっかりと休養して治療していくことで必ず良くなっていきます。仕事のことはもちろん、できるだけ深く考えずにゆっくり休みましょう。
③生活習慣を整える
休職し始めたころは、何もする気力もでないほどの方も多いです。しっかりと休養することで、少しずつ身の回りのことができるようになってきます。
少しずつ回復してきたら、生活習慣を整えることを意識していきます。うつ病の症状がそこまでひどくない方は、最初から生活習慣を整えることを意識しながら休むこともあります。
生活習慣を整える上で大切なこととして、以下の3つがあります。
- 起床時間を整えて昼寝を減らす
- 食事は3食、規則正しくとる
- 少しずつ外出して習慣的な運動にしていく
順番に見ていきましょう。
起床時間を整えて昼寝を減らす
休職して少しずつ回復してくると、いままで生活の中心になっていた仕事が亡くなったことに戸惑う方もいらっしゃいます。予定がなくなってしまって陥りやすいのが生活リズムの乱れです。
いつもは〇〇時に出社しなければいけないというルールの中で、身体の体内時計が出来上がっていました。自宅でやることがないと、生活リズムがずれてしまいます。
「朝起きて、夜は寝る」という当たり前のリズムを大事にしてほしいのです。太古から人間は太陽に合わせた生活リズムで生きてきたので、それに従って体内時計のリズムが出来上がっています。体内時計とずれた生活をすると、うつ病の回復も遅れてしまいます。
生活リズムを整えるためには、2つのことが大切です。
- 起床時間を一定にする
- 昼寝を減らす
生活リズムは、起きる時間から始まります。早く起きればその分夜も眠くなります。起床時間を一定にすることが大切です。
うつ病の患者さんでは不眠になる方が多いので、寝る時間に関してはあまり意識をし過ぎない方がよいです。薬でしっかりと眠れているのでしたら、時間を決めて服薬するようにしましょう。〇〇時には寝ようと意識しすぎてしまうと、なかなか寝付けなくなってしまうこともあります。
昼寝を減らすことも大切です。やることがないと、ついつい眠くなってしまうものです。また、うつ病治療で使われるお薬は眠気が起こりやすいものも多く、予定がないと眠気が強くなります。
しかしながら昼寝をしてしまうと、生活リズムが乱れてしまいます。夜に眠れなくなってしまい、朝も起きれなくなってしまうことがあります。
食事は3食、規則正しくとる
うつ病の方は、食欲がなくなってしまう方が多いです。お腹がすかないばかりか、「おいしい」という感覚もなくなっていることも多いです。食べ物に対する興味が失われているのです。
食欲がわかない時に無理に食事をとりたくないという気持ちになるかもしれませんが、毎日の食事を規則正しく3食とることも大切です。特に朝食は大切で、朝に胃腸に食べ物が入るという刺激が体内時計を整えます。生活リズムを整えることにもつながるのです。
量は少しでも良いのです。食べられるだけの量で結構なので、おおよその時間を決めて食事をとるようにしましょう。
食事の内容に関しては、そこまで大きく気にする必要はありません。かたよりのない食事を心がけていれば、大きく栄養素が欠乏することはありません。緑茶やヨーグルトを積極的に摂取するくらいの意識でよいかと思います。
少しずつ外出して習慣的な運動にしていく
うつ病になると、倦怠感や疲労感が強くなりやすいです。意欲や気力も落ちてしまうので、身体を動かすのがおっくうになってしまいます。
ですが少しずつ回復してきたら、できる範囲から身体を動かしていくのも回復の近道です。運動とまでいってしまうと重たく感じるかもしれませんが、はじめは身体を動かす程度のものからはじめてください。
晴れた日にだけ散歩をするといったことからでも構いません。身体を動かす時間も、自分の疲労感と相談しながら10~30分程度でも大丈夫です。
睡眠や生活リズムのことも考えると午前中の方がよいですが、外出しやすい時間帯で大丈夫です。通勤しているサラリーマンを見かけない時間帯の方が、気持ちは楽かもしれません。近所の目などが気になってしまうこともあるので、気楽に外出できるところから始めていきましょう。
運動をすることは、心と体の両面にいい影響があります。
- 気持ちの変化につながる:『うつ病に有効な行動活性化療法とは?』
- 脳の機能的にもよい方向の変化がある:『うつ病への運動療法の効果とは?』
う気持ちの変化と脳の機能的な変化をもたらします。
晴れた日に散歩をして気持ちがよかったとすると、「意外と行動してみると良いものだ」という気持ちになれるかも知れません。行動から考え方が前向きな方向に変わっていき、少しずつ気持ちが楽になっていくことがあります。
運動することによって脳の機能もよい方向に変化することが分かってきていて、国によっては運動療法が治療ガイドラインで推奨されています。運動が有効とする報告は多く、副作用もないので治療にとってもプラスになります。
疲れすぎないことを目安にして、少しずつ運動量を増やしていってください。
④集中力のリハビリ
生活習慣が規則正しくなっていき、生活リズムがしっかり整ってきたら、今度は集中力のリハビリをしていきます。
身体を動かさないと体力が落ちてすぐに疲れてしまうのと同じで、頭を動かさないと集中力が落ちてすぐに疲れてしまいます。ですから復職に向けて、少しずつ集中力のリハビリをする必要があります。
集中力のリハビリとしてお勧めするのは、図書館です。図書館まで通うことが運動にもなりますので、生活リズムにとってもよいのです。
- 楽しいと思う本やマンガを読む
- 自分のタメになると思える本を読む
- 自分の仕事に関する本を読む
まずは楽しい本から始めて、少しずつタメになるものを読み進めていきます。読書をする時間も少しずつ伸ばしていき、図書館にいる時間も少しずつ伸ばしていきます。
近所の目が気になって図書館に通えない方は、家事などでもよいかも知れません。得意な家事から、少しずつ苦手な家事もやっていくようにしましょう。家族も喜んでくれますし、回復を近くで感じてくれると思います。
⑤これまでの振り返り
集中力が十分になってきたら、復職に向けて休職のことを振り返っていきましょう。
- どうして不調になってしまったのか?
- どのようにすれば防げたのか?
- これから仕事にどのように向き合っていくのか?
このようなことを整理していきます。主治医とも相談しながら進めていきましょう。紙に書きながら整理していくことが大切です。頭で考えていると考えが定まらないので、書くことで形にして整理していきましょう。
リワークプログラムを行っているクリニックや病院もあります。リワークプログラムでは、グループワークを通して、集中力の回復と同時に内省を深めていきます。プログラムによっても方法が異なりますが、認知行動療法と作業療法を行っていることが多いです。
私が多くの方の復職に関わらせていただいて重要と考えるのは以下の2つです。
- 何とかなると思えているか
- これからの未来に向けた価値観の整理ができているか
ひとつは、復職しても何とかなると思えていることです。自己効力感(self-efficacy)といったりしますが、気持ち的に楽観的に捉えられていることはストレス耐性を高めてくれます。
そして、未来に向けた価値観の整理ができているかも大切です。休職する前と後では、人生の歩み方が変わってしまうことも多いです。「できるところまで出世したい」と考えていた人にとって見れば、昇進や昇給が遅れるという現実的なデメリットに直面します。
置かれている現実をそのまま受け止めて、これからの人生をどのように生きていくのか、その価値観の整理が大切です。仕事で成果を出すことがすべてではありません。誠実に仕事をして相手に感謝されること、周りの人から頼りにされること、家族を大事にすること、趣味を大事にすることなど、大切なことはいろいろあります。
うつ病を患って休職をしたこと、それだけをみればデメリットに感じるかもしれません。ですが、休職した人にしかわからない世界の見え方があります。本当に大事なものに気づけることもあります。
休職して失ったものに目が行きがちですが、得られたことに目を向けていけば、人生の彩となるかもしれません。
まとめ
うつ病によって休職を余儀なくされてしまった方が、どのようにして休職期間を過ごして回復していくのかをまとめました。
- 休職することを受け入れる
- まずはゆっくり休む
- 生活習慣を整える(生活リズム・食事・運動)
- 集中力のリハビリ
- これまでの振り返り
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カテゴリー:うつ病 投稿日:2023年3月23日
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