うつ病の初期症状と症状の経過

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

うつ病の初期症状とは?

「うつ病を早く見つけるには、どこに気を付けたらよいですか?」という質問をよく受けます。うつ病の初期症状はいろいろなものがあります。本当にマズイ症状はどれかという答えは、はっきりとしたものはありません。

私としては、抑うつ気分と睡眠障害が症状の始まりであることが多いです。具体的には以下になります。

  • 1週間をすぎても気持ちの落ち込みがよくならない
  • 思うように眠れない日が続く

誰しも落ち込むことはあるかと思います。ですが、しばらくすると元に戻っていき、普通の生活にもどっていきます。それでは、病的な落ち込みかどうかを見分けるにはどのようにしたらよいでしょうか?1週間をすぎても気持ちが戻ってこない時は、「おかしい」と思っていただいてよいかと思います。

私は、睡眠障害も重要視しています。睡眠がうまくとれなくなると、3つの悪循環がはじまります。

  • 健康が悪化すること
  • メンタルが不調になること
  • 集中力がおちて日中の効率が落ちること

このため睡眠障害があると、一気に症状が悪化してしまう可能性があります。また、睡眠は眠れるという自信も大切なので、早いうちの方が改善しやすいです。

このため、抑うつ気分と睡眠障害が認められた場合は、専門家にご相談いただければと思います。ストレスチェック制度が導入されるにあたって、休職につながりやすい症状が調べられました。それによると、

  • 抑うつ気分
  • 不安
  • 疲労感
  • 上記3つの合計

が一定以上のスコアの場合に、休職につながりやすいという結果になっています。

抗うつ剤を考えるべき症状

ストレスがかかると、様々な症状につながります。不安やイライラといった精神症状だけでなく、頭痛や腹痛といった身体症状まで様々です。

そういったストレスの反応で生じている症状と、ストレスによって脳の機能バランスが崩れて生じてくる症状とでは、質の違いがあるといわれています。

具体的には、

  • 自殺念慮があること
  • 精神病症状があること(貧困妄想など)
  • 精神運動抑制
  • 自己否定感
  • 2か月以上症状の改善が乏しいこと

の5つになります。上の2つについては、明らかに病的であることがわかることが多いです。それだけでなく、

  • 抑制(制止)症状
  • 過度な自責感

といった症状は、抗うつ剤などを使って治療を行っていくべきかどうかの大きな目安になります。また期間でみると、2か月以上症状が持続している場合は、うつ病としての症状が深いと考えたほうが良いということになります。

うつ症状の長期経過

うつ病といっても、その原因から症状の経過はさまざまです。症状の経過を考えていくのには、その人の背景を考えていくことが必要です。誤解を恐れずに表現するならば、「器の大きさ」というイメージで考えるとわかり易いかもしれません。

バケツに水がたまっていくのを想像してください。バケツからあふれたらうつ病になるとしましょう。バケツが大きい人は、水が少しずつたまっていって、少しずつ調子が悪くなっていきます。そして、どこかで一気に水があふれてしまいます。

ですから、時間をかけて症状が進んでいきます。そして、水を抜くのにも時間がかかりますので、よくなるまでに時間がかかります。ですが一度よくなり対処法を学べば、再発することは比較的少ないともいえます。

一方でバケツが小さい人は、すぐに水があふれてしまいます。ですから、調子が悪くなってしまうのも比較的早いことが多いです。水のたまりは少ないので、良くなるのも早いことが多いです。しかしながら、水の溜まりやすさはかわっていませんので、何かをきっかけにすぐに再発をしてしまいます。

うつ症状の1日の中での変化(日内変動)

時間がたつにつれてよくなっていくので、朝が一番つらいことが多いです。悪化すると悪い時間が増えて、1日中調子が悪くなります。

内因性うつ病は少しずつ脳の機能が悪くなって発症してしまう病気です。ですから、脳の機能が整わない朝が一番つらくなります。時間がたつにつれて少しずつ調整がされますので、少しずつ楽になっていきます。

一方で、不安が強い神経症性のうつ病は、夕方になるにつれて悪くなる傾向があります。日常生活の中での不安がストレスとなって、少しずつ調子が悪くなってしまうためです。

上述した器の大きさで言うならば、内因性のうつ病は器が大きい人が多い傾向があります。神経症性のうつ病は器が小さい人が多い傾向があります。

このような、1日の中で症状の違いを日内変動とよびます。ですが、悪化していくにつれて少しずつ調子の悪い時間が増え、1日中調子がわるくなってしまいます。

まとめ

うつ病の初期症状として、

  • 1週間をすぎても気持ちの落ち込みがよくならない
  • 思うように眠れない日が続く

場合は気を付けましょう。

抗うつ剤を考えるべき症状としては、

  • 抑制症状
  • 過度な自責感
  • 2か月以上続く症状

が挙げられます。希死念慮や精神病症状がある場合も、お薬の治療を考えたほうが良いです。

症状の経過は、器の大きさを考えるとわかりやすいです。器が大きい人は、時間をかけて悪くなり、回復にも時間がかかりますが、再発しにくいです。うつ病は、時間がたつにつれてよくなっていくので、朝が一番つらいことが多いです。悪化すると悪い時間が増えて、1日中調子が悪くなります。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:うつ病  投稿日:2023年3月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

悲哀のプロセスとは?対人関係療法で扱う喪失体験への対応

大切な人を失う体験は、人生の中でも大きなストレスイベントであるとされています。 喪失体験を乗り越えていく過程では、行き場のない感情や身体症状など多様な反応が起こります。 人生における危機の一つといえますが、時間の経過とと… 続きを読む 悲哀のプロセスとは?対人関係療法で扱う喪失体験への対応

投稿日:

認知症にならないために注意すべきポイント

この記事では、認知症にならないために、食生活、運動、社会活動、ストレス発散、質の良い睡眠、聴力低下の対策、レクリエーションにおいて注意すべきポイントを解説します。 認知症にならないために注意すべきポイントになります。 認… 続きを読む 認知症にならないために注意すべきポイント

投稿日:

認知症の中核症状と周辺症状の違い・覚え方・対応策

認知症の方には、さまざまな症状が見られるため、介護する際に困惑することが少なくありません。 その際に、認知症の症状を中核症状と周辺症状に分類してとらえると理解しやすいです。 この記事では、認知症の中核症状と周辺症状の違い… 続きを読む 認知症の中核症状と周辺症状の違い・覚え方・対応策

投稿日:

人気記事

デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

デエビゴ(レンボレキサント)とは? デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。 覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬… 続きを読む デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

投稿日:

睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

投稿日: