特発性過眠症の症状・診断・治療
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特発性過眠症とは?
この過眠症は十分な睡眠時間は取れているにもかかわらず、日中に強い眠気が生じてしまう睡眠障害です。
特発性過眠症では日中に眠気が続くため、学校や職場での集中力や意欲が低下し、本人が辛いのはもちろんのこと、周囲に「やる気がないやつだ」と思われ評価が悪くなってしまうこともあります。
主に10代~20代の若い人に発症しやすく、学生や新社会人の時期に特発性不眠症にかかると大きな社会的ダメージを受けることもあります。
睡眠時間は取れているため「睡眠障害」と認識されにくいのですが、原因は覚醒・睡眠中枢の異常にあると考えられており、気合いで治すことはできません。1つの病気ですので、適切な治療が必要になります。
特発性過眠症の症状
特発性過眠症の中心の症状は、
- 夜間の睡眠時間は十分にもかかわらず、日中の活動に支障を及ぼすほどの眠気が続く
ことです。
「10時間以上睡眠をとっても眠気が残ること」を線引きとすることが多いです。
この眠気は仮眠をとっても改善されず、一度眠ってしまうとなかなか目覚めることができません。
無理に起こされると意識がもうろうとしていることもあります。
眠気のほか、
- 頭痛
- めまい
- 胃の痛み・腹痛
- 動悸
などの自律神経症状がともなうこともあります。
これらの症状により、
- 集中力の低下
- 活動力の低下
- 意欲の低下
などがおこり、
- 仕事でミスが多くなる
- 授業中に寝てしまい成績が落ちる
- 遅刻が増える
- 対人関係が悪くなる
などの支障がおよんでしまいます。
特発性過眠症の診断
特発性過眠症の診断は、診察での問診を進めながら慎重に行います。
この病気を疑うポイントとしては、
- 睡眠時間は正常か正常以上
- 眠気を誘う原因(病気・薬・環境など)が見当たらない
- 日中の強い眠気・居眠りしてしまうことが毎日続く
- 仮眠をとっても眠気がとれない
- 情動脱力発作は見られない
これらは、国際的な診断基準を参考に、医師が患者さんの様子を聞き取りながら判断していきます。主に使われるのは、アメリカ睡眠医学会のICSD-3という診断基準です。
外来での聞き取りだけで判断が難しいときや、他の病気の可能性が疑われるときは、詳細な検査を検討することもあります。
検査は大きな病院で入院をし、睡眠状態、脳波の状態などを調べます。主な検査は、以下の2つになります。
- 反復睡眠潜時検査(MSLT)
- 24時間睡眠PSG(ポリソムノグラフィ)
反復睡眠潜時検査(MSLT)
反復睡眠潜時検査(MSLT)は、日中の眠気の程度を確認する検査です。
前夜に十分寝た上で、翌日の日中に脳波をみる機械をつけ、2時間おきに4~5回眠ります。
この検査で、レム睡眠の特徴や、入眠までの時間を調べます。
24時間睡眠PSG(ポリソムノグラフィ)
24時間睡眠PSGは、24時間脳波を確認する機器をつけて過ごし、1日のうちでどのくらい寝てしまうかを確認します。
特発性過眠症では、24時間の内で少なくとも11時間、多くは12~14時間ほども眠った状態がみられます。
特発性過眠症の原因
特発性過眠症のはっきりとした原因は分かっていません。
『特発性』は、原因がよくわからないという意味です。
病因の解明研究は進められているものの、詳細はまだまだ未知の状態です。
推定されている原因としては、
- 脳を覚醒させておくシステム(覚醒中枢)
- 睡眠を調整するシステム(睡眠中枢)
に何らかの異常が生じていると考えられています。
特発性過眠症の治療
特発性過眠症の治療の中心はお薬になります。
この病気は、脳の覚醒中枢や睡眠中枢の異常により脳の覚醒する力が下がっていると考えられているため、脳を覚醒させるようなお薬が主に使われます。
具体的には、
- ベタナミン(ペモリン)
- モディオダール(モダフィニル)
- コンサータ・リタリン(メチルフェニデート)
などがあります。
ベタナミン(ペモリン)は特発性過眠症の治療薬として健康保険が適応されます。
コンサータ・リタリン(メチルフェニデート)はADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬として認められていますが、特発性過眠症の治療薬としては保険適用外になります。
これらは体や脳へおだやかな働きになるように調整されていますが、特徴としては覚せい剤と同じ仕組みです。
とくにベタナミン(ペモリン)は肝臓にも負担をかけやすいため、
- 用法・用量をしっかり守ること
- 専門医の指示の下で使うこと
などの注意が必要ですが、適切に使えば特発性過眠症の辛い眠気を緩和し、生活の質を上げるために有効なお薬です。
睡眠環境の見直しも重要です。
特発性過眠症は脳の問題で生じると考えられているため、睡眠環境の見直しだけで治せるわけではありませんが、睡眠の質が下がっていると余計日中の眠気を強めてしまいます。
お薬の使用とともに、夜中の睡眠環境を快適にすることも症状の緩和に役立ちます。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:過眠症 投稿日:2023年3月23日
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