過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?紙袋は使うべき?

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息が苦しい!過呼吸の正しい対処法とは?

ストレスや不安から息苦しさがおこり、それがさらに不安を強めて過呼吸に発展し、しびれやめまいなど様々な症状がおきてしまう。そんな過呼吸をくり返す状態は、

  • 『過換気症候群』

になります。『過呼吸症候群』とよばれることもあります。

過呼吸がおきれば「このまま死んでしまうのではないか」とまでの恐怖に襲われ、周りの人も慌てふためいて、救急車を呼ぶことも少なくありません。

ですが、不安からくる過呼吸は時間がたつと自然と落ち着いてきますので、

  • あわてず対処すること

が大切です。

かつては紙袋を使ったペーパーバック法が行われていましたが、現在ではむしろリスクが高いとされています。では、具体的にどのような対処をすればいいのでしょうか?

まずは「過呼吸(過換気症候群)」を理解しておくことが大切

過呼吸(過換気症候群)は、多くの場合精神的ストレス・突然の恐怖や強い不安などが原因です。そこで慌てないためには、

  • あくまで症状は一時的で、精神的なものからおこっている

ということを理解しておくことが大切です。その上で、

  • 気持ちを落ち着かせること
  • 呼吸を整えること

を意識しましょう。

ただし、過呼吸は身体の病気からおこることもあります。

  • 初めて過呼吸がおこったとき
  • 持病がある方・高齢の方

などの場合は病院を受診し、過呼吸の原因が身体にないかをきちんと調べてもらうことが大切です。

過呼吸(過換気症候群)の正しい対処法

精神的なものが原因の過呼吸(過換気症候群)では、

  • 気持ちを落ち着かせること
  • 呼吸を整えること

の2点を意識することが重要です。

以前は紙袋を使ったペーパーバック法(紙袋を口にあてて呼吸する方法)が一般的に知られていましたが、現在では推奨されていません。

紙袋が本人の呼吸困難感をあおってしまうこともありますし、酸素がいかなくなるなどのリスクもあります。

では、具体的にどのような対処をすればいいのでしょうか?

  1. 会話する・アメをなめる(注意をそらす)
  2. うつぶせに寝る・座って前かがみになる
  3. ゆっくり息を吐く
  4. 頓服(とんぷく)薬をのむ
  5. 焦らずに落ち着くのを待つ

①会話する・アメをなめる(注意をそらす)

ストレスを大きく感じたり、過呼吸になりそうな予感がした時に、意識的に代わりの何かを行うことでしのげることがあります。

例えば会話をしたり、アメをなめたりしてみましょう。そちらに注意が向いて息を何回も吸うことができませんから、過呼吸に発展しなくてもすむことがあります。

ただし、呼吸がコントロールできなくなってきたら、アメはすぐに口から吐き出しましょう。

②うつぶせに寝る・座って前かがみになる

過呼吸に発展してしまったときは、「胸式呼吸」をしていることがほとんどです。息を吐き切らずにすぐに吸ってしまうので、十分に息を吸えていないという呼吸困難感を感じやすくなっています。

そこで、「腹式呼吸」を意識してお腹で息を吸うようにすれば、息がしっかりと吐けるので呼吸困難感は薄れていきます。

うつぶせで寝たり、前かがみに座ると、胸で息を吸うことがしづらくなり、自然と腹式呼吸をしやすくなります。

③ゆっくり息を吐く

過呼吸発作は、呼吸の回数が増え過ぎておこります。呼吸がゆったりと落ちつけば、自然とよくなっていきます。

呼吸を落ちつかせるためには、

  • 吸うより吐く方を意識すること

が大切です。

みなさん、息を吸って吐いてみてください。息を吸うのは一瞬ではありませんか?一方で、吐くのは時間がかかります。

過呼吸の時は「息を吸わなきゃ」という気持ちが強くなってしまい、息を吸うのは一瞬なのでどんどんと回数が増えてしまうのです。

ですので、過呼吸のときは、息を吐く方に意識を切り替え、ゆっくりと吐き出すようにしてください。

余裕がある段階では

  • 口をすぼめて息を吐く

ようにしましょう。

ひどくなってしまったら、

  • 吸う:吐く=1:2となるように「吸って・吐いて・吐いて」のリズムを意識して呼吸

してください。

④頓服薬をのむ

過換気症候群による過呼吸は、精神的ストレスが原因となって生じています。ですから、

  • 気持ちを落ち着ける抗不安薬を頓服(とんぷく=症状があるときだけ使うお薬)として服用

するのも方法です。

これは過呼吸になってからではなく、なりそうな不安を感じたときの予防的な対処法です。

過呼吸の頓服として使われるお薬は、

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬

が中心です。即効性があり、不安や緊張を速やかに落ちつけてくれます。なかでも、

  • ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
  • ソラナックス/コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
  • デパス(一般名:エチゾラム)
  • レキソタン(一般名:ブロマゼパム)
  • リボトリール/ランドセン(一般名:クロナゼパム)
  • リーゼ(一般名:クロチアゼパム)

このようなお薬を使っていきます。

急に不安におそわれた場合は、

  • お薬は水なしで噛んで服用しても問題ありません。

やや苦いお薬も多いですが、そちらの方が早く効きます。

ワイパックスは噛んでも甘みがあり、舌の下からの吸収率も高まると考えられています。

これらの頓服薬は、お守りとしてもっているだけでも安心感につながります。

⑤焦らずに落ち着くのを待つ

過呼吸は、しばらくすると自然と落ち着いていきます。後遺症などもないので、焦らずに落ち着いて待ちましょう。

ほとんどの場合、

  • 15分~30分くらいで落ち着きます。

このようなときに、無理にお薬を使う必要もありません。お薬が効き始めるよりも前に、自然と過呼吸が落ち着くことが多いです。

過呼吸と周囲の方の対処法

突然誰かが過呼吸になってしまうと、周囲の方もかなり慌ててしまうと思います。とくに、家族や友人に過呼吸(過換気症候群)の傾向があるときは、その接し方を頭に入れておきましょう。

  1. まずは冷静に
  2. 話しかけて安心させる
  3. 落ち着いたところに移動する

①まずは冷静に

持病がなく、ストレス性の過換気症候群だとわかっているときは、家族や友人の方も冷静に対応することが大切です。

「過呼吸はかならず落ち着く」ことを理解し、安心感を与えてあげましょう。

過呼吸は、恐怖がどんどんとエスカレートしてしまうことで発展していきます。

周りの家族や友人までが慌ててしまい、周囲にたくさん人が集まったとしたら、患者さんは「大変なことが起きているに違いない」という思いをますます強くしてしまいます。

②話しかけて安心させる

過呼吸の時は、安心させてあげることがとても大切です。ですからそばに寄り添って、背中をさすりながら話しかけてください。

「何かあっても私がついているから大丈夫だよ」「落ち着いて呼吸をしたら必ずよくなるから大丈夫」などと、低いトーンでゆっくりと声をかけてあげましょう。

まだ過呼吸発作になる前で会話をする余裕があれば、話しかけてみましょう。過呼吸の正しい対処法でもお伝えしましたが、会話をすることで呼吸の回数が抑えられます。

③落ち着いたところに移動する

過換気症候群による過呼吸は、苦手な状況がきっかけになっていることがあります。

たとえばパニック障害では、

  • 逃げ場がない状況
  • 助けが得られない状況
  • 電車やバスなどの公共機関
  • 歯医者や美容院
  • 人込みの中

などで不安が高まります。

閉塞感のない落ち着いたところに移動してあげることで、不安が落ち着くこともあります。

過呼吸発作がひどいときには無理をすることはありませんが、できるならば落ち着いた場所に移動させてあげましょう。

過呼吸がおこるメカニズム

強い恐怖や不安などのストレスがかかると、呼吸が浅くなって息苦しくなります。すると、「もっとたくさん空気を吸わなければ」という焦りがおこり、必死で息を吸おうとして呼吸数が増えていきます。

しかし、

  • この息苦しさは酸素が足りないわけではなく、恐怖や不安によるもの

です。ですから、いくら呼吸数を増やしても息苦しさは改善はせず、さらに焦って呼吸が速くなる悪循環におちいっていしまいます。

  • 呼吸が速くなってくると、肺では過換気状態になります。

身体から過剰な二酸化炭素が空気に逃げていき、血液から酸がぬけてアルカリにバランスが傾いていきます。

その状態では、身体は酸素がたくさんある状態なのだと勘違いしてしまい、

  • 血管を収縮させて血流を低下させます。

脳血流が低下すれば、

  • めまい
  • ふらつき
  • 頭痛

などが生じます。心臓の血流が低下すれば、

  • 動悸
  • 胸痛

がおこります。

さらには、神経の働きに重要な役割のあるカルシウムイオン(Ca2+)のバランスが崩れ、

  • 手足がしびれる
  • 筋肉が痙攣する

などの状態にまでなってしまったりします。

精神的なものからくる過呼吸でおこるこれらの身体症状は、

  • 恐怖で呼吸が速くなっていることが原因

です。そのため、安心感を与えて呼吸を整えていけば、自然と症状は落ち着いてくるのです。

※過呼吸(過換気症候群)の症状について詳しくは、『過呼吸(過換気症候群)でみられる症状とその原因』をお読みください。

ペーパーバック(紙袋)法のリスク

かつては、過呼吸と言えば、口に紙袋をあてて中で呼吸させるペーパーバック法がよく知られていました。そのイメージを今でも持っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、

  • 現在ではむしろ間違った対処法とされています。

ペーパーバック法は、自分が吐いた息を再び吸うことで、過換気で逃げた二酸化炭素を増やし、症状を落ち着かせると考えられて実践されてきました。

たしかに、この方法をすることで、血液のバランスは整って症状は多少軽減されるかもしれません。それによって気持ちが落ち着いてくる方もいるかと思います。

しかし反対に、

  • 紙袋をあてて呼吸することの圧迫感で、ますます不安が高まってしまう

方もいます。それだけならまだよいのですが、このペーパーバック法には

  • 酸素がうまく脳にいかなくなってしまうリスクがある
  • 身体の病気が原因の時に、致命的になることがある

という大きな2つのデメリットもあります。紙袋で呼吸をした状態で過呼吸が続いていれば、だんだん紙袋内での酸素濃度が低下し、本当に酸素が足りなくなってしまうリスクもあるのです。死亡例も報告されています。

また、万が一身体の病気が原因で過呼吸が起こっている時は、過呼吸によってバランスをとっていることもあります。それが崩れてしまうと致命的になってしまうこともあるのです。

過換気症候群による過呼吸は、しばらく時間がたてば落ち着いていきます。リスクのともなうペーパーバック法は行うべきではないというのが、今の主流となっています。

身体に原因が無いかを調べることも大切!

過呼吸は、多くの場合はストレスが原因の『過換気症候群』と呼ばれるものでおこります。

しかし、上でもお伝えした通り、なかには身体の原因によっておこることもありますので、

  • 過呼吸が初めて
  • 何らかの持病がある方・高齢の方
  • 普段とは違う感じがするとき

などのときは、救急科や内科ででその原因を調べてもらいましょう。過呼吸がおこる可能性がある身体の病気には、以下のようなものが考えられます。

  • 呼吸器疾患(肺炎・喘息・COPD・気胸・肺血栓塞栓症・肺水腫など)
  • 心疾患(心不全)
  • 糖尿病(糖尿病ケトアシドーシス)
  • 甲状腺機能亢進症
  • 脳腫瘍

このような身体の異常が認められなければ、ストレスが原因の『過換気症候群』と診断されます。パニック障害に合併することが多いですが、そればかりではありません。

元に精神疾患があるときは、そちらの治療をしっかり受けることが大切です。

まとめ

過換気症候群による過呼吸は、精神的ストレスが原因で症状がでています。あくまで症状は一時的で、気持ちを落ち着かせて呼吸を整えられたら、自然と落ち着いていきます。

しかしながら、はじめて過呼吸がみられたり、何らかの持病がある方では、身体の検査もした上で診断することが必要です。身体に原因がないとわかっても過呼吸がくり返すときは、心療内科や精神科で治療を受けましょう。

ペーパーバック法は、現在ではむしろ間違った対処法とされています。

  • 気をそらす
  • うつぶせに寝る・座って前かがみになる
  • ゆっくりと息を吐く
  • 頓服薬を飲む
  • 焦らずに落ち着くのを待つ

周囲の方は、

  • 冷静に対応する
  • 話しかけて安心させる
  • 落ち着いたところに移動する

ことを意識して対処していきましょう。

※精神疾患と過呼吸については、『過呼吸・過換気症候群の原因とは?パニック障害との関係』をお読みください。

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カテゴリー:パニック障害  投稿日:2023年3月23日

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