過呼吸・過換気症候群の原因とは?パニック障害との関係
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過呼吸の原因は精神?身体?
吸っても吸っても息が苦しく、不安から呼吸数がどんどん増えていく「過呼吸」は、不安やストレスからおこる過換気症候群の代表的な症状です。とくに、パニック障害の患者さんにはよく認められています。
ですが、ときに身体の方が原因で生じる過呼吸もあるため、病院で過呼吸の原因を調べてもらうことも必要です。
過呼吸の原因には何が考えられるのでしょうか。精神疾患と関連した過呼吸は、どのように改善していけばいいのでしょうか?
身体が原因の過呼吸とは?
過呼吸は、多くが精神的なストレスや不安からおこります。とは言っても、時には身体の病気が原因で過呼吸になっていることもあるので、
- 最初に過呼吸を経験したとき
- 持病のある方、高齢者の方
などの場合は、救急や内科で原因をきちんと調べてもらいましょう。
息苦しさの原因となる身体の病気には、
- 呼吸器疾患(肺炎・喘息・COPD・気胸・肺血栓塞栓症・肺水腫など)
- 心疾患(心不全)
- 糖尿病(糖尿病ケトアシドーシス)
- 甲状腺機能亢進症
- 脳腫瘍
などがあります。
過呼吸の原因をちゃんと調べておかないと、「落ち着いて」と言われても不安は高まってしまいますよね。まずは過呼吸が本当に過換気症候群(精神的ストレスが原因)なのかを、見極めておくことが大切です。
例えば喘息の患者さんでは、いつ喘息発作が起こるかわからない不安から、パニック障害が合併しやすい(6~38%)ことがわかっています。
病院で検査をし、過呼吸の原因となるような病気の可能性が除外されれば、ストレス性の『過換気症候群』と診断されることになります。
そうなれば、過呼吸がおきたときにはむしろ慌てず、患者さん自身も周囲の方も、
- 過呼吸は精神的な原因によるものと理解すること
- 気分を落ち着けること
- 吸うより吐くことで呼吸を整えること
を意識し、落ち着いて対応することが望まれます。
※過呼吸への対処について詳しくは、『過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?紙袋は使うべき?』をお読みください。
精神的な原因の過呼吸(過換気症候群)の種類
精神的なものからおこる過呼吸の患者さんは、大きく2つのタイプに分けることができます。
- 急性型過呼吸:精神的な緊張によって単発で生じる過呼吸
- 慢性型過呼吸:日頃から不定愁訴や疲労感が認められ、慢性的に生じる過呼吸
急性型過呼吸
急性型過呼吸は、様々な精神的ストレスが原因となります。ストレスから解放された安心感がきっかけになることもあります。それ以外にも、
- 発熱
- 入浴
- 激しい運動
- 注射
などで発症することもあります。
慢性型過呼吸
一方、慢性型過呼吸は、パニック障害などの精神疾患と関連が深いです。パニック障害以外にも、自分にとって嫌な状況になった時に発症する転換性障害(ヒステリー)の過呼吸もあります。
過呼吸(過換気症候群)の原因とパニック障害の関係
過呼吸は、パニック障害だけに限定された症状ではありませんが、パニック発作と過呼吸発作は、どちらも「このまま死んでしまうのではないか」というほどの強烈な恐怖に襲われるという点で共通しています。
このため、パニック障害の患者さんには過呼吸が認められることが多いのです。
- パニック障害患者さんのおよそ半数は、過呼吸を経験したことがある
という印象です。
通常のパニック発作では、過呼吸とまでいかず、息苦しさ(呼吸困難感)だけのことが多いです。過呼吸は、「息が吸えないこと」へのとらわれが強い方におこりやすいようです。
また、パニック障害と過呼吸に共通していることとして、
- 10~30代の若い女性に多い
ことがあげられます。どちらも女性と男性の比率が、2:1といわれています。
※パニック障害について詳しくは、『パニック障害の症状・診断・治療』をお読みください。
過呼吸(過換気症候群)の症状が発展していく原因
過換気症候群による過呼吸では、息苦しくなるだけでなく、様々な症状が認められます。
- ふらついて立てなくなる
- 頭痛・めまい・動悸
- 手足がしびれる
などの状態にもなります。このような症状が出てくると、ますます不安になって過呼吸が強まってしまいます。
このような過呼吸の症状の原因は、大きく2つあります。
- 過呼吸による過換気(二酸化炭素不足)
- 不安による交感神経の過活動
この2つが増幅して、身体にも様々な症状を引き起こしていきます。詳しくは、『過呼吸・過換気症候群でみられる症状とその原因』をお読みください。
過呼吸(過換気症候群)の本質的な原因を治療する
過呼吸(過換気症候群)を繰り返す患者さんでは、精神疾患が本質的な原因であることが多いです。
過換気症候群が原因での過呼吸は、あくまで一時的な症状にすぎません。呼吸と不安が落ちついてくれば、自然と症状はよくなっていくのです。
しかしながら、何度も過呼吸になる場合、その背景には何らかの精神的な原因が隠れています。その本質的な原因を治療していかないと、なかなか過呼吸は改善されません。
不安が過呼吸やパニックを呼ぶ悪循環
過呼吸になると、「また過呼吸になったらどうしよう」という不安が強くなります。このような不安があると、再び過呼吸になりやすくなってしまいます。
例えばパニック障害では、広場恐怖症という「逃れられない場所」に対する恐怖心があり、
- 電車やバス
- 人ごみ
- 美容院や歯医者
などを苦手とします。
人込みの中で過呼吸になってしまったとしたら、「また人込みで過呼吸になったらどうしよう」という不安が強くなります。そうすると、人ごみをできるだけ避けたいという気持ちが働きます。
不安から人ごみを回避したことで、本来やりたかったことができなくなっていき、ますます苦手意識が強くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
過呼吸が繰り返してしまう場合には、その本質的な原因に目を向ける必要があります。根本の病気や心理背景に目を向け、薬物療法や精神療法をしっかりと行っていくことが大切なのです。
まとめ
はじめて過呼吸がみられたり、何らかの持病がある方では、本当に過換気症候群なのか検査して診断することが必要です。
様々なストレスが原因で一過性に過呼吸になることはありますが、パニック障害など精神疾患と関係が深いのは、慢性的な過呼吸です。
パニック障害の患者さんのなかでも、「うまく呼吸すること」に対するとらわれが強い方に、過呼吸(過換気症候群)が多いようです。
パニック障害以外にも、精神的な問題で不安や緊張が強まっていると、過呼吸をくり返しやすくなります。改善のためには、根本的な原因に目を向け、しっかりと治療していくことが大切になります。
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カテゴリー:パニック障害 投稿日:2023年3月23日
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