【医師が解説】ヒステリー球(咽喉頭異常感症)の症状・診断・治療

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ヒステリー球(咽喉頭異常感症)とは?

ヒステリー球の症状診断治療について、精神科医が詳しく解説します。

咽喉頭異常感症は、主にストレスやこころの葛藤によって喉(のど)から胸にかけての違和感・異物感・圧迫感などが生じる病気です。

「のどに球が詰まっているようで苦しい」と訴える人が多いことから「ヒステリー球」と呼ばれることも多いです。

「からだ」に症状があれば「身体に原因があるはず」と考えるのが普通ですが、ストレスなどの影響で自律神経・ホルモンのバランスが乱れ、身体に様々な症状をおこすことはよくあることなのです。

自律神経失調症や更年期障害、軽症うつ病・不安障害・ストレス性障害などの症状の一つとして、ヒステリー球が現れることもあります。

もちろん、実際にのどに腫瘍などができているケースもありますから、とくに中年以降の方であれば、まずは耳鼻咽喉科や内科で症状から疑われる病気の検査を受けることも大切です。

そこで異常が見つからず、それでも症状が続き苦しい。むしろ症状はひどくなっている気がする。症状が気になって日常に集中できない。不安が高まったり、抑うつ状態になったりしている。

原因や治療法を求めて様々な病院をめぐるけれど結局は何も見つからず、薬などの効果も感じられない。

そんなときは、「こころ」や「からだ」に過度な負担がかかり、心身のバランスが乱れているサインかもしれません。

ヒステリー球は、心療内科や精神科で治療ができる病気です。

この病気は更年期(40代~50代)の女性に比較的多く見られますが、性別年齢問わず心身にストレスがかかりやすいに発症しやすい傾向があると言われています。

咽喉頭異常感症の種類

ヒステリー球と呼ばれる咽喉頭異常感症は主にストレスや無意識のこころの葛藤から生じるとお伝えしましたが、のどの違和感は「からだ」の病気・異変からおこることもあります。

実は、『咽喉頭異常感症』と呼ばれる状態は大きく分けて2つの種類があります。

  1. 「こころ」や自律神経の乱れに主な原因がある→ヒステリー球(真性咽喉頭異常感症)
  2. 「からだ」の病気や異変が原因にある→(症候性咽喉頭異常感症)

①は、上でご紹介したヒステリー球と呼ばれる咽喉頭異常感症です。身体の検査によって異常が見当たらない状態です。

稀に身体の検査でわからないレベルの微弱アレルギーなどがかかわっているケースもあると言われていますが、多くがストレス・無意識のこころの葛藤などから生じているヒステリー球だと考えられています。

一方②は、実際に「からだ」の問題から症状が生じているケースです。例えば、

  • のどに腫瘍(できもの)がある
  • のどに傷や異変がある
  • 何か異物が引っかかっている
  • のどに炎症がある
  • のどが乾燥している
  • 胃酸が逆流していて食道やのどが荒れている
  • 胃に不調がある
  • のどの両横にある甲状腺が腫れている

などが考えられます。貧血や糖尿病など全身的な病気から、のどに違和感が生じることもあります。

それらは病的なもののこともありますし、乾燥や老化、食事の影響など病的ではない場合がありますが、いずれにしても違和感の原因が「からだ」に無いかどうかを耳鼻咽喉科や内科で検査することが必要です。

耳鼻咽喉科や内科にのどから胸の不快を訴え受診する人のうち、4~5割程度は原因が不明と言われています。

そのなかにはかなりの割合で、ヒステリー球の人がいると考えられています。ヒステリー球は心療内科や精神科で治療を行います。

また、のどに小さな病変や加齢による変化は認められるものの、その程度からして本人が感じる苦痛が強すぎる場合も、心療内科・精神科での対応が有効なことがあります。

ヒステリー球の症状

のどの違和感・不快感の訴えは人によって様々ですが、

  • のどに何かが詰まった感じがする
  • 何かが引っかかっている気がする
  • のどが締め付けられるように感じる
  • 圧迫感があって苦しい
  • 飲み込みにくい感じがする
  • イガイガする、のど内部がゴロゴロする
  • のどが腫れている気がする
  • 胸がつかえる

などがあります。

詰まっている感じから、吐き気をもよおす場合もあります。

そして、これらの症状がヒステリー球によるものか、身体の病気による症候性咽喉頭異常感症によるものかを判別するためには、

  • 検査を受けても症状の説明がつくような異変が見つからないこと
  • その症状から精神的苦痛や生活の支障が生じていること
  • 呼吸や食事の機能には障害がおよんでいないこと

の3点が基準になります。

のどの異物感は身体の異変がかかわっている可能性もあるため、不安なときはまず、耳鼻咽喉科や内科で検査を受けることが必要です。

耳鼻咽喉科や内科で症状に応じた検査を行い、とくに原因が見当たらないときは精神的なストレスや自律神経の乱れなどが原因の可能性がありますが、のどの違和感があることでとくに支障を感じていないのなら無理に治療を受ける必要はありません

ただし、それがストレスサインの可能性はあるため、普段の生活で心身へ過度の負担がかかっていないかを振り返ってみましょう。

けれど、

  • 症状がとても辛く感じる
  • 症状が気になって日常に集中できない
  • 症状によって眠りづらい
  • 抑うつ状態になっている
  • 何か難しい病気が隠れているのではと不安が高まっている
  • いつも違和感に気をとられている
  • 原因や治療法を求めてドクターショッピングをくり返している

など、原因のよくわからない症状によって生活や精神状態に何らかの支障が見られるときは、ヒステリー球として治療が勧められます。

これらの状態では症状のことが気になって生活が妨げられ、心身の苦痛や不安が高まることでストレスも大きくなり、さらに症状が強まって症状にとらわれてしまう悪循環におちいります。

ヒステリー球は適切な治療を受けることでかなりの方に改善が見られる病気ですので、辛いときは我慢せず、心療内科や精神科への相談を検討してみましょう。

ヒステリー球の検査・診断

心療内科や精神科で扱う咽喉頭異常感症(ヒステリー球)の診断では、

  • 喉から胸にかけて何らかの違和感・不快感がある
  • 違和感の原因を調べたが身体に異常が見つからない
  • その違和感によって生活や精神状態に支障がある

この3つの要素が必要です。

のどや食道に違和感があるとき、多くの人は「何かが引っかかっている?」「何か出来物がある?」「消化器官の病気?」など心配になると思います。

実際に腫瘍や傷ができていたり、胃腸の不調から違和感が生じることもあるため、不安があるときはまず身体の検査が必要です。

どこの科を最初に受診するかは症状によりますが、基本は耳鼻咽喉科です。胸つかえや吐き気などもともなうときは内科を受診するのが一般的です。

検査の内容は症状にもよりますが、

  • 喉頭ファイバー

を行うことが多いです。その他にも症状によって、

  • CTや超音波(副鼻腔や頸部)
  • 頸部レントゲン写真
  • 上部消化管内視鏡

などがあります。首の腫れがあれば甲状腺ホルモンの検査をしたり、全身状態を確認するための血液検査を行うこともあります。

のどの違和感の原因となる病気としては、

<耳鼻咽喉科・外科領域の病気>

  • 咽喉頭腫瘍
  • 副鼻腔炎
  • 咽頭・口腔がん
  • 喉頭蓋の形態異常
  • 喉のアレルギー
  • 頸椎やのどの形態異常

など

<内科領域の病気>

  • 逆流性胃腸炎
  • 食道炎
  • 胃潰瘍
  • 風邪や感染症
  • 食道がん、胃がん
  • 甲状腺腫、バセドー病、甲状腺がん
  • 貧血

などがあります。

これ以外に、

  • 小骨などがのどに引っ掛かっている
  • 刺激物の飲食でのどや食道が荒れている
  • 老化や外気の影響でのどが乾燥している

など生理的な原因も考えられます。

ヒステリー球の原因

身体の方で原因が見つからないヒステリー球では、心身のストレスや、無自覚のこころの葛藤などが関わっていることが多いと考えられています。

発症するのは主に、

  • 精神的なダメージを受けたとき
  • 過労や睡眠不足が続いているとき
  • 不安や緊張が高まっているとき
  • 無自覚のストレスや感情が抑圧されているとき
  • 向き合いたくない現実問題から逃げているとき

などが多いようです。

不安や緊張は交感神経の働きを過度に高めます。

交感神経には筋肉を収縮させる働きがあるため、食道付近の筋肉が締め付けられて「詰まった感じ」「苦しい感じ」「圧迫されている感じ」が発生することがあります。

また、交感神経の高まりは唾液の分泌も少なくします。そのため喉が乾燥しやすくなり、イガイガとした感じや飲み込みづらさなどを感じることもあります。

無自覚のストレスや抑圧された感情などが身体に症状をおこす病気転換性障害といい、様々なタイプがありますが、ヒステリー球もその1つと考えられています。

ヒステリー球の治療

ヒステリー球の治療では、症状に合わせたお薬を使うとともに、原因になっているストレスの対処や、生活習慣の改善や思考のクセの改善などにもアプローチしていきます。

不安や緊張に対するリラクセーション法なども有効です。

この病気の治療では「こころ」と「からだ」の両面からアプローチし、自律神経のバランスから心身の全体を整えていくことが大切です。

ヒステリー球の症状が続くと不眠、不安、うつ状態などが見られることも多いため、そのときはお薬で心身の苦痛を緩和させていきます。

症状へのとらわれがひどい場合には、抗うつ剤などを使用します。

お薬は症状に合わせて、

  • 抗うつ剤
  • 抗不安薬(精神安定剤)
  • 睡眠薬

などが使われます。

症状が軽いときや、からだの要素が強いときには漢方薬を用いることもあります。

これら以外に、状態に応じて抗精神病薬や気分安定薬などが使われることもあります。

ヒステリー球に使われる漢方薬(半夏厚朴湯)

ヒステリー球の治療では漢方薬が用いられることもあります。漢方は西洋薬のように即効性がなく効果に個人差が大きいですが、合う人には良い効果が認められます。

効果がでるときも2週間~2カ月くらい飲まないと実感が得にくいため、不安感や症状が強いときや即効性が必要なときは西洋薬の方が向いています。

漢方は比較的症状が軽い人や、からだの要素の強い人、症状がある程度落ち着き西洋薬を減らすとき、副作用で西洋薬が飲めないときなどに有効です。

ヒステリー球でとくによく使われるのは、

  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

という漢方薬です。「こころ」と「からだ」の両面に作用し、ヒステリー球の症状を緩和させる効果が期待されます。

半夏厚朴湯は、気うつを改善する代表的な漢方薬になります。

「こころ」に対してはおだやかな理気作用(抗うつ作用)、鎮静作用があり、不安や落ち込みを改善し精神を安定させます。

「からだ」に対しては制吐作用(吐き気止め)・健胃作用・鎮咳作用(咳止め)などを持ち、のどの詰まりによって吐き気をもよおしたり、食欲が落ちた人にも有効です。

漢方は体質によって相性が分かれ、飲み合わせもあることから、自己判断での飲用はあまりお勧めできません。

合わない種類を飲めば漢方薬にも副作用があります。

西洋薬の方が確実な効果が期待できて有用なことも多いため、主治医と相談の上で使うようにしましょう。

漢方の処方では、患者さんそれぞれの「証」を見ます。体質によって向き不向きが分かれるため、体質と症状を合わせた独特の診断法が用いられているのです。

西洋医学の病院で詳しい漢方的な診察は困難ですが、患者さんそれぞれの全体像から証を判断し、これまで治療で得られた効果なども合わせて適すると考えられるものを選びます。

主にみるのは、

  • 身体全体の反応(陽証と陰証)
  • 体力の充実(実証と虚証)
  • 病気の性質(寒証と熱証)
  • 症状の原因(気血水)

の4つです。

半夏厚朴湯は、

  • 陰陽:中間証
  • 虚実:虚証~中間証
  • 寒熱:寒証~中間証
  • 気血水:気うつ(気滞)の改善

の傾向がある人に適していると考えられています。

体力は並~虚弱で、冷えやむくみなどがおこりやすく、気分の落ち込みや不安などみられる人によく使われます。

漢方では、ヒステリー球は主に「気うつ(気滞)」によっておこるとされています。

気のめぐりが悪くなることでのどの違和感や胸の詰まりなどをおぼえ、抑うつ気分の他、圧迫感や飲み込みづらさ、吐き気、上腹部の張りなどを感じるようになると考えられています。

半夏厚朴湯は、1日2~3回に分けて飲みます。空腹時(食前・食間)が基本ですが、飲み忘れが多くなったりする方は食後でも構いません。

漢方薬は空腹時に服用することで、作用の強い生薬の刺激が胃酸によっておだやかになり、その他の生薬は腸に到達するのが早くなるため吸収がよくなります。

半夏厚朴湯は強い作用のお薬ではないので、空腹時に飲んで胃を荒らすことはなく吸収が良くなります。

半夏厚朴湯以外には、

  • 柴朴湯
  • 甘麦大棗湯
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯

などの漢方薬が用いられることもあります。

ヒステリー球と心理療法

ヒステリー球を発症する人は、ストレスを抱えやすい考え方や性質のことも少なくはありません。

そのため、認知行動療法などの心理療法でストレスに対応しやすくしたり、無意識の葛藤があるときは洞察的な精神療法を地道に重ねることで、より症状は落ち着いていきます。

心理療法は、医師ではなく臨床心理士が専門家となりますが、時間や費用の面から難しいときは医師が診察の範囲内で少しずつアプローチを積み重ねていきます。

心理療法は状態によって向いているものが異なり、認知行動療法、カウンセリング、対人関係療法、森田療法など様々なものがあります。

ストレスと疾病利得

ヒステリー球の心理療法にあたっては、「疾病利得」という心理的な働きを理解することも重要です。

ヒステリー球のような症状を作り出していくは背景には、心理的に2つのメリットがあると考えられます。

  • 症状に意識が向くこと
  • 無意識にメリットが得られること

のどの違和感にとらわれることで、本当のストレスから目を背けることができるという側面があります。

また無意識ではあるものの、症状があることで「仕事や学校を休める」「周囲が心配してくれる」といったことは、本人の現実的なメリットとなります。

このため症状は確かに存在して苦しいものの、本来の行動を変えてしまうと、ときにストレス対処法として強化されてしまいます。

からだに大きな原因がないことで安心し、楽観的に考えることも大切です。

この点でも、体の検査をして異常がないことを確認すること(バイオフィードバック)にも意味があります。

ストレスを振り返る

ヒステリー球の治療では、自分のストレスを振り返るということが大切です。ストレスは、自分で意識し整理できると負担が軽減します。

ストレスは避けることができません。生活するうえで嫌だけれど避けられないことはたくさんあります。

仕事や学校だけではなく、家族・友人・ご近所などの付き合いでもストレスを感じることはあります。

病気の原因がストレスにあると聞けば、「ストレスを減らそう」「ストレスを発散させよう」と考える人が多いかもしれません。

もちろん可能なものは減らしたり発散したりするのも良いのですが、一番大切なのは「ストレスと上手に付き合えるようになること」です。

現実的に解決できそうなものは1つずつ対処することが大切ですが、解決できないものも多いため、自分でストレスを意識し、言語化し、上手く付き合えるようになることが大切です。

そうでなければ、お薬や治療で症状が改善しても、また再発したり、今度は他の病気として現れてしまう可能性があるのです。

ヒステリー球の患者さんでは、自分のストレスに気づきにくい傾向がある方も多いです。

このような性格傾向はアレキシサイミアといいますが、ヒステリー球に限らず心身症になりやすい性格の代表です。

そのようなストレスが積み重なってしまうと自律神経に乱れが生じ、「からだ」の症状として現れてきます。

「身体は正直」と言われるように、ストレスが自覚されていないときは、なおさら身体に強く症状が出ることがあります。

医師や心理士のアプローチのもと、自分のストレスに意識を向けて自覚し、言語化することでストレスは軽減していきます。

ストレスへの対処(コーピング)

治療でもストレスへのアプローチを行っていきますが、普段の生活でも「無意識にストレスを抱え込んでいないか」を意識して振り返ってみましょう。

何がストレスかに気付くだけでも症状が緩和されることがありますし、人に相談したり、具体的な対応ができるものがあれば1つずつ対処することでストレスを減らすことも有効です。

例えば仕事のストレスなら、

  • 上司や同僚に相談をする
  • 可能なら環境調整をしてもらう
  • 1人で仕事を抱え込まないようにする

家庭の問題や人間関係のストレスなら

  • 信頼できる人に話を聞いてもらう

など、いずれにしても1人で抱え込んでしまったり、頑張り過ぎてしまわないことが大切です。

認知行動療法

人によって物事の受け止め方や感情のいだき方は違います。そのような物事のとらえ方のことを認知と呼んでいます。

認知は、生まれ持った性質と様々な経験が積み重なってそれぞれの個性が作られていきます。

その認知に過度なクセがあるとストレスを感じやすくなり、感情や行動に良くない影響を与えてしまいます。

ヒステリー球などの病気も下地に認知の偏りがあることが多いため、その偏りを修正し、柔軟でストレスに対応しやすい思考回路へ導くのが認知行動療法です。

神経症、不安症、うつ病などの病気にも、優れた改善効果や再発防止効果が認められている心理療法です。

ヒステリー球と生活習慣の見直し

「こころ」も「からだ」も生活習慣によって様々な影響を受けます。

ヒステリー球の改善のためにも、心身を健全に保つためにも、生活習慣の見直しも大切な治療となるのです。

睡眠・食事・運動・カフェイン・アルコールなどの生活習慣を見直してみましょう。

生活習慣が乱れていると、自律神経の働きも乱れてしまいます。

睡眠

睡眠不足の状態では交感神経が緊張し、のどの筋肉が締め付けられたり、圧迫感を生じたりしやすくなります。ストレスへの感受性やイライラ感も高まります。

また、就寝や起床の時間がバラバラだったり、昼近くまでベッドに入っているような過眠状態も自律神経が乱れる原因です。

ひごろから睡眠のリズムをできるだけ整えることが大切です。

不眠や抑うつ状態があって改善が難しいときは適切なお薬の処方を受けましょう。

食事

のどの詰まった感じは、胃腸の不調があるとさらに強まって感じることがあります。

内科で治療するほどの病気でないにしても、消化不良・胃もたれ・食べ過ぎ、過度の空腹・刺激物の摂取などがあると食道や胸がつかえたり、胃酸が食道を刺激したりすることがあります。

不安や緊張の強い交感神経優位の状態では胃腸の働きも悪くなるため、消化の良いものをよく噛んで食べるようにしましょう。

できるだけ3食のリズムを守り、早食いや過食を控えることも大切です。

運動

適度な運動習慣はヒステリー球の症状緩和のためにも、自律神経全体のバランスを整えるためにもとても有効です。

体を動かすことで不安やとらわれからも解放されやすくなります。特別な運動をする必要はありません。

負荷のかかるハードなスポーツやトレーニングより、軽いジョギングやウォーキング、ストレッチや体操など、いわゆる有酸素運動で気軽に続けられるものがお勧めです。

カフェイン

カフェインは脳を刺激し、不安や緊張を高めてしまいます。不安や緊張をかんじやすい方はできるだけ控えましょう。

アルコール・喫煙

不安が強い人やストレスを感じやすい人、症状の苦痛が強い人などはアルコールやタバコに頼ることも多いかと思います。

ですがいずれも、ホッとして感じるのはそのときだけで、抜けたあとは余計不安やイライラを強めてしまい、量が増えていく悪循環におちいりやすいものです。

また、アルコールやタバコはのどを荒らしやすく、症状を強めることにもつながります。

【参考】ヒステリー球の名前の由来

真性咽喉頭異常感症は、『ヒステリー球』『咽喉頭神経症』と呼ばれることがあります。

ヒステリーと言うと「キーっとなる感じ」「すぐイライラする人」のように捉えられてイメージがよくありませんが、この病気は必ずしもそのような人がなるというわけではありません。

「ヒステリー」は、元々「子宮」を意味するhysteriaというギリシア語に由来しています。

古代のギリシャ・ローマ時代には、子宮は体内を動き回る臓器と考えられていました。

その頃からヒステリー球のような訴えをする人は多く、それが主に女性であったことから、「子宮が上の方へ持ち上がって異物感や窒素感を与えている」と思われていたのです。

また、子宮の移動によって失声・嘔吐・眼球の上転などもおこるとされていました。

それらの症状とともに不安やイライラなど精神不安定が見られることが多く、子宮由来でおこると考えられる症状はヒステリー症状と呼ばれるようになりました。

しかし、その後医学の発展とともに子宮移動説は否定され、ヒステリー球はストレスや無意識の葛藤などが自律神経のバランスを乱し、身体に症状をおこす転換性障害の1つと考えられるようになりました。

しかしながらヒステリーの名前はそのまま残り、ヒステリー球に限らず、不安や無意識の葛藤などが引き起こす症状は今でも「ヒステリー症状」と呼ばれます。

さらに現在は、原因不明ののどの違和感には精神的な要素ばかりではなく、微弱なアレルギーなど検査でわからない身体の異常が関わるケースもあるかもしれません。

これらも総称し、身体にはっきりした異常の見つからないのどの違和感は『真性咽喉頭異常感症』と呼ばれるようになりました。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:身体表現性障害(身体症状症)  投稿日:2023年3月23日

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