アトモキセチン(ストラテラ)の効果と副作用

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アトモキセチン(ストラテラ)とは?

アトモキセチン(ストラテラ)は、脳のノルアドレナリンの働きを強めるタイプのADHDのお薬です。
ADHDの主な症状である不注意・多動・衝動性は、ドパミンだけではなくノルアドレナリンの働きも関係しています。
アトモキセチンは、脳内にノルアドレナリンを増やし、脳の働きを円滑にしてくれるお薬になります。
アトモキセチンは、

  • 集中力の低下
  • 過活動
  • 衝動性
  • 日中の眠気
  • 疲労感
  • 抑うつ状態

などを緩和させる効果が期待されています。

アトモキセチンはコンサータと違って流通が管理されていないため、どこの医療機関でも処方が可能なお薬です。

アトモキセチンは、先発品としてストラテラカプセルとして発売されました。

発売から年月もたっており、ジェネリック医薬品として一般名(成分名)のアトモキセチン錠・カプセルが発売となっています。

※以下では「ストラテラ」として、アトモキセチンの効果や副作用をお伝えしていきます。

ストラテラの特徴

<メリット>

  • どこの医療機関でも処方してもらえる
  • 依存性が少ない(注:コンサータと比較して)
  • ジェネリックが販売されている

<デメリット>

  • 効果がマイルド(注:コンサータと比較して)
  • 速効性が期待できない
  • 吐き気の副作用がある
  • 先発品はカプセル剤のため服用が難しい場合がある

それではストラテラの特徴を、

  1. 効果
  2. 副作用
  3. 剤型と薬価

に分けてみていきましょう。

ストラテラの効果

ストラテラは脳内にノルアドレナリンを増やし、脳の働きを円滑にしてくれるADHD治療薬になります。
効果が出てくるのに時間がかかり、有効用量に達してから約2~3週間で心身の変化が期待できます。
ストラテラは、

  • 集中力の低下
  • 過活動
  • 衝動性
  • 日中の眠気
  • 疲労感
  • 抑うつ状態

などを緩和させる効果が期待されています。
ストラテラはコンサータと違って流通が管理されていないため、どこの医療機関でも処方してもらうことが可能なお薬です。

ストラテラの副作用

ストラテラは、ADHD治療薬であるコンサータと比べると依存性は少ないです。
ただ、小児ADHD患者さんは頭痛、成人ADHD患者さんは吐き気の副作用がコンサータより多い報告となっており、特に吐き気が副作用としては目立ちます。
注:ストラテラ・コンサータは6歳以上に使用可能

小児ADHD患者におけるストラテラ・コンサータ服用時の副作用(承認時までの集計)

頭痛 食欲減退 傾眠 悪心(吐き気)
ストラテラ 22.3% 18.3% 14.0% 9.7%
コンサータ 8.3% 42.1% 報告なし 5.6%

成人ADHD患者におけるストラテラ・コンサータ服用時の副作用(承認時までの集計)

悪心(吐き気) 口渇 食欲減退 傾眠 頭痛
ストラテラ 53.6% 18.7% 16.9% 13.3% 10.8%
コンサータ 16.5% 14.7% 39.7% 1.1% 10.7%

ADHD治療薬の中でのストラテラ

ADHD治療薬としては、成人では3つのお薬が承認されています。

ストラテラとその他のお薬を比較してみましょう。

  コンサータ ストラテラ インチュニブ
即効性 即効性が強い 穏やかな効果 ある程度の即効性
持続性 持続しにくい 持続しやすい 持続しやすい
覚醒度 覚醒しやすい 覚醒しにくい 鎮静作用がある

ADHDでは、シグナルノイズ比(S/N比)が低下しているといわれていて、情報が雑音にぼやけている状態となっています。

ドパミンが低下すると雑音(ノイズ)が強まり、ノルアドレナリンが低下すると情報(シグナル)を弱めてしまいます。

これに対してストラテラは、ノルアドレナリンを強まることでシグナルを強くしていきます。インチュニブも同様のメカニズムです。

ですからストラテラでは、全体的な音量がアップするようなイメージで自然と情報に注意が払えるようになっていきます。

患者さんの実感として、メモリーが増設された感覚と表現された方もいらっしゃいました。

一方でドパミンの働きを強めるコンサータは、ノイズが減少してシグナルに集中できるようになります。

このため、やや自然さがない改善に感じる方もいらっしゃいます。

ストラテラの剤型と薬価

ストラテラのお薬としての特徴についてみていきましょう。
ストラテラの先発品としては、

  • カプセル(5mg・10mg・25mg・40mg)
  • 内用液0.4%

の2剤型が販売されています。
ストラテラはADHD治療薬としてニーズが高いため、後発品であるジェネリック医薬品が様々な会社から発売されており、一般名である「アトモキセチン」の名称となっています。
また、先発品はカプセル・内用液の2剤型ですが、ジェネリックでは錠剤もあわせた3剤型が販売されています。
それぞれの薬価をみていきましょう。

剤型・規格 5mg 10mg 25mg 40mg 内用液
先発品(カプセル・内用液) 134.2円 159.6円 205.3円 240.6円 102.2円
ジェネリック(カプセル・内用液) 57.9円 66円 82.4円 88円 48.8円
ジェネリック(錠) 57.9円 66円 82.4円 88円

※:ジェネリックの薬価は一番安いものを掲載
※:2023年4月現在

薬価に自己負担割合(1~3割等)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
また、各種医療制度を利用されている患者さんは、請求額が変わってきます。(こども医療費助成・自立支援制度等)

ストラテラの用法と効果のみられ方

ストラテラの用法は、以下のようになっています。

  • 開始用量:0.5mg/kg(18歳未満)・40mg(18歳以上)
  • 最大用量:1.8mg/kgまたは120mgの少ない方(18歳未満)・120mg(18歳以上)
  • 用法:1日2回(18歳未満)・1日1~2回(18歳以上)

ストラテラは吐き気の副作用を考慮して、25mgを1回もしくは20mgを2回に分けてスタートすることが多いです。

40mg、80mgと、吐き気への慣れ具合を見て増量していきます。最高用量は120mgになります。

治療効果はおよそ3週間くらいで見えてくるといわれており、少しずつ違いを実感していくお薬になります。

ストラテラの半減期

お薬の効き方を見ていくにあたっては、

  • 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
  • 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間

が重要になってきます。
ストラテラは、

  • 半減期(T1/2):約3.4~4.2時間(10・40・90・120mgの単回投与)
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):約1.0~1.7時間(10・40・90・120mgの単回投与)

となっています。
ストラテラは服用後1時間ほどでピークになり、そこから4時間ほどで半分の量になるということになります。

ストラテラの副作用と対処法

ストラテラの副作用としては、

  • 吐き気(悪心)

がよくみられます。

ストラテラと吐き気

ストラテラの最も多い副作用が、吐き気になります。

抗うつ剤のSNRIに似た部分もあり、胃腸に働いてしまって気持ち悪さを誘発します。

このためガスモチンや、時には吐き気止めとしてプリンペランなどと併用しながら、慣れるのを待ちます。

少しずつ慣れてくることがほとんどですが、違和感やもたれ感が残ってしまうこともあります。

小児ADHD患者のストラテラ・コンサータ・インチュニブ服用時の副作用(承認時までの集計)

頭痛 食欲減退 傾眠 悪心(吐き気)
ストラテラ 22.3% 18.3% 14.0% 9.7%
コンサータ 8.3% 42.1% 報告なし 5.6%
インチュニブ 12.2% 2.8% 57.5% 2.4%

成人ADHD患者のストラテラ・コンサータ・インチュニブ服用時の副作用(承認時までの集計)

悪心(吐き気) 口渇 食欲減退 傾眠 頭痛
ストラテラ 53.6% 18.7% 16.9% 13.3% 10.8%
コンサータ 16.5% 14.7% 39.7% 1.1% 10.7%
インチュニブ 4.8% 30.9% 0.9% 41.3% 3.9%

ストラテラの運転への影響

ADHD治療薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
ストラテラの添付文書でも同様に、「眠気、めまい等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」という表現となっています。
ADHDでも、症状がコントロールできていれば運転免許は取得することが可能です。
ですがほとんど全てのお薬で運転禁止とされているのが実情です。運転ができないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、

  • はじめて使ったとき
  • 他のお薬からの切り替えをしたとき
  • 量を増減させているとき
  • 体調不良を自覚したとき

は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。

ストラテラの妊娠・授乳への影響

ストラテラの妊娠への影響を見ていきましょう。ストラテラのお薬の添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」このように記載されています。
動物実験では、推奨用量の20倍近くのストラテラを投与したときに、胎盤通過性が認められたという報告があります。
しかし、胎児組織の曝露量は母動物の組織と比較し少なかったとも報告されています。

継続の可否については産科や心療内科の先生とよく相談しましょう。

次に、ストラテラの授乳への影響をみていきましょう。ストラテラのお薬の添付文書には、「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。」このように記載されています。
動物実験で>乳汁への移行が確認 また、「Medications & Mothers’ Milk」(2021年版、授乳期における薬と母乳に関するベストセラーリファレンス)では、「悪影響を与える可能性あり:児や乳汁産生にリスクがあるという明らかな証拠があるが、授乳婦の有益性が児へのリスクを上回る場合は許容」という記載となっています。
継続の可否については産科や心療内科の先生とよく相談しましょう。

ストラテラのジェネリック医薬品

ストラテラは、2009年に販売されたお薬になります。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、販売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発医薬品)
ストラテラのジェネリックは、この特許が切れた後に発売されました。(ジェネリック医薬品)
ジェネリックの名称は、以前は製薬会社ごとに様々でしたが、近年は薬の一般名がつけられます。
ですからストラテラのジェネリックとしては、ストラテラカプセル・内用液・錠として統一されています。
ジェネリックになると、様々な製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
しかし、先発品から変更した場合、効果の違いを実感する方がいるかもしれません。
それだけでなく、お薬が先発品から変化することに心配になってしまう方もいます。そのような場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。

【参考】ストラテラの作用機序

ストラテラは脳内のノルアドレナリンの働きを強めます。
具体的には、次のようにストラテラが作用すると考えられています。

  1. ストラテラが脳の前シナプスのノルアドレナリンのトランスポーターに結合する
  2. ノルアドレナリンの再取り込みが阻害され、脳内のノルアドレナリン濃度が増加する
  3. 実行系の脳機能(※)が活性化する

※実行系の機能:自分に向かって計画を立て、それを実行する機能

ストラテラの作用機序

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:ADHD治療薬  投稿日:2024年3月19日

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