抗うつ剤の減薬・断薬の方法
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抗うつ剤を適切に減薬していくために
抗うつ剤をやめていく時には、注意しなければいけません。急に減薬をしてしまうと、離脱症状が出てしまうことがあります。
無理をして薬を減らして調子が悪くなってしまうと、以前よりも薬の量が増えてしまう方もいらっしゃいます。
抗うつ剤を減らしたいと思われたら、必ず主治医に相談してください。
お薬に頼らないことをかかげ、減薬を極端にすすめる医療機関や医師がいますが、そういったところは精神科医でないことが少なくありません。
悪質な場合はサプリメントや自費診療などをすすめ、営利的なケースもあるため、ご注意ください。
それでは、抗うつ剤を減らしていくには、どのようにすればリスクが少ないでしょうか?また、調子が悪くなってしまったら、どのようにすればよいでしょうか?
ここでは、抗うつ剤の減薬や断薬の方法をお伝えしていきたいと思います。
※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。
薬を減らして調子が悪くなる3つの理由
お薬を減らして調子が悪くなってしまうのは、大きく3つの場合があります。
- 症状の再発・再燃
- 離脱症状
- 薬が減ったことへの不安感
お薬を減らして調子が悪くなると、多くの方が①の症状の再発・再燃を心配されます。
ですが、多くの場合が②の離脱症状や、③の薬への不安感であることが多いです。
離脱症状とは、慣れていたお薬が身体から急になくなることで起こる症状です。
薬をしばらく継続して使用していると、薬の量を減らしたり服用を中止したりすると、身体が慣れずに様々な不調が出てくることがあります。
薬を減らして1~3日ころから2週間の間にみられることが多いです。
薬がなくなってしまうこと自体で、不安になってしまって調子を崩してしまうことも少なくありません。
長くお薬を服用していると、お薬が減ってしまったという変化が不安になってしまうのはやむを得ないことです。
少しずつ自信をつけていくことが大切になります。
もちろん、症状の再発・再燃の可能性もあります。
十分に病気が落ち着いていない時にお薬を減らしてしまうと、支えがなくなってしまって調子が悪くなってしまうことはあります。症状の経過をみながら、どちらが原因かを考えていきます。
減薬のタイミングは大丈夫ですか?
この記事をお読みの方のなかには、自分の意志で減薬をしようと思われている方もいらっしゃるかと思います。
ですが焦ってはいけません。本当に減薬しても大丈夫なタイミングでしょうか?主治医の先生に確認してください。
まだお薬を減薬するには早い段階で減薬してしまうと、再び症状が悪化してしまって、治療が長引いてしまうこともよくあります。
お薬を減らしたい気持ちはよくわかるのですが、本当に減薬しても大丈夫なタイミングで減薬するようにしましょう。
一般的には、調子の底を脱して、元の調子に戻ってきたら「寛解」といういい方をします。
この意味は、「全治とまでは言えないけれども、病気が落ち着いて穏やかなこと」を意味します。
ここから「回復」といわれるまで病気が安定するには、およそ6か月~1年ほどかかります。長い方では数年になります。
抗うつ剤などの抗うつ剤は、セロトニンを整えることで効果を発揮します。
元の調子に戻ってきてからも、脳内のセロトニンのバランスが落ち着くまでには時間がかかります。
また、日常生活でのいろいろなストレスから守ってくれます。
治りたての時期は余裕があまりありませんので、本当に自分の力でストレスをやり過ごせるようになるまでは、お薬は支えになります。
抗うつ剤はどれくらい続ければいいの?
どれくらい服用を続ければよいのかということについて、明確な答えはありません。
どのような病気であっても、少なくとも良くなってから半年ほどは続けたほうが良いかと思います。
その後は、「何とかなる」という本人の感覚を大事にしています。
この感覚は、「セルフエフィカシー=自己効力感」といったりしますが、これがあるかどうかはとても大切です。
また不安が強い方は、長く治療を続けた方がよいことが多いです。不安はなかなか拭えません。
しっかりと根底から不安を消し去るには時間がかかってしまいます。
- 落ち着いてから半年以上
- 「何とかなる」という感覚がある
このような時は、減薬を検討してもよいかも知れません。
減量のペースはゆっくりと
減薬をしていく時は、「ペースをゆっくり」が基本です。
症状の再発を防ぐという意味では、少しずつサポートを減らしながら様子を見ていった方が確実です。
もともと心配性であったり、不安が強い方は、ゆっくりとお薬を減らすようにしましょう。
離脱症状に関しても、身体から薬が減っていくスピードがゆっくりであればあるほど、離脱症状は生じにくくなります。
身体が慣れる時間を稼げるのです。ですから、離脱症状のことを考えても、ゆっくりと減薬をしていった方がよいです。
少量ずつ薬を減らしていって順調で、いざ最後の薬を止めようとするとなかなかやめられない方もいらっしゃいます。
そのような方は、以下をお読みください。
抗うつ剤を断薬するための4つの方法
お薬の減薬は比較的スムーズにいく方が多いです。いけるところまで減薬して、「さぁ、最後のお薬をやめましょう」となると、調子が悪くなってしまう方もいらっしゃいます。
この最後の1錠がどうしてやめられないのでしょうか?これには、「プラセボ効果」が関係しているでしょう。
どのお薬も、発売されるまでに臨床試験を行います。その試験では、偽物の薬と本物の薬をわからないようにしてデータをとります。
その上で差が出たら、科学的に間違いなく効果があったと分かります。
このような試験をすると、偽物の薬でも3~4割くらいの方には効果がでてきます。
お薬を飲んでいるという安心感が、気持ちの安定につながるのでしょう。このような効果を、「プラセボ効果」といいます。
自分では意識していなくても、プラセボ効果が働くことはあります。それではどのようにして断ち切ればよいのでしょうか?
飲まない日を少しずつ増やしていく
抗うつ剤を半錠まで減ると、そこからさらに1/4などと減薬してもあまりかわりません。
それよりは少しずつ飲まない日を増やしていって、自信をつけていく方が断薬できます。まずは1日おきで服用してみるようにしましょう。
その後に、2日とばし、3日とばし・・・と増やしていって、1週間に1回だけ服用するなどにしてみましょう。
ここまでの過程で自信がついて、断薬できる方がほとんどです。難しい場合は、調子の悪いときだけ頓服にしてもよいです。
生活習慣や自律訓練法などを意識する
お薬に頼らない方法を見つけるのも手です。生活習慣を意識することで、心身の状態はよくなります。
睡眠・食事・運動などから見直していきましょう。
- 6時間以上睡眠はとれていますか?
- 起きる時間はずれていないですか?
- 食事は規則正しくとっていますか?
- 運動習慣はありますか?
また、自律訓練法などの自己暗示のリラックス方法を身につけるのも手です。
身体の緊張状態とリラックス状態を知って、自分でリラックス状態を作れるようにしていきます。
このように、抗うつ剤だけでないもう一つの柱をみつけていきましょう。
※自律訓練法について詳しく知りたい方は、『自分でできる!自律訓練法の効果』をお読みください。
漢方薬に置き換える
漢方薬に切り替えていくのも方法です。漢方薬は生薬ですので、抵抗が少ない方も多いかと思います。
身体にあう漢方薬をみつけて、まずは抗うつ剤と併用して試していきます。
よい実感があれば、抗うつ剤から漢方薬に置き換えてしまいます。漢方薬でしたら、減らしていく時も負担が少ないです。
抗うつ剤を使っている方は、うつや不安の方が多いと思います。
体質などを考慮しながら、加味逍遥散や加味帰脾湯、当帰芍薬散や抑肝散、補中益気湯などに置き換えることが多いでしょうか。
やさしい安定剤に置き換える
やさしい安定剤に切り替えるのも方法です。
例えばセディールは安定剤の分類がされますが、セロトニンを増やす作用があります。
抗うつ剤と似た働きがあります。それでいて副作用がとても少なく、安定剤のなかでも最も副作用が少ないです。
このように、やさしい安定剤に置き換えてやめていくこともあります。
離脱症状が出てしまったときの対処法
離脱症状には、「めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り」といった身体症状、「イライラ・不安・不眠・ソワソワ感」といった精神症状などが認められます。
また、抗うつ剤などのSSRIに多いですが、「シャンビリ感」といって、金属音のようなシャンシャンという耳鳴りがし、電気が流れたようにビリビリとしびれた感じがすること
があります。
このような離脱症状が起こってしまったら、どのようにすればよいでしょうか?
離脱症状がみられたときの対策は大きくは2つしかありません。慣れるまで耐えるか、元に戻すかです。
自己判断で減薬した場合は、元に戻してください。
※抗うつ剤の離脱症状について詳しく知りたい方は、『抗うつ剤の離脱症状と4つの対策』をお読みください。
まとめ
薬を減らして調子が悪くなるのは、「症状の再発・離脱症状・薬を減らした不安」のどれかです。
本当に減薬してもよいタイミングですか?落ち着いてから半年以上たっていて、「何とかなる」と思えているなら減薬を検討するタイミングです。
ただし、もともと心配性な方は、焦ってはいけません。主治医に確認しましょう。
抗うつ剤は、少しずつ減薬してくことが基本です。
最後の1錠が、なかなかやめられません。断薬するには以下の方法があります。
- 飲まない日を少しずつ増やしていく
- 生活習慣や自律訓練法などを意識する
- 漢方薬に置き換える
- やさしい安定剤に置き換える
離脱症状が起きてしまったら、慣れるまで耐えるか、元に戻すかです。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:抗うつ剤(抗うつ薬) 投稿日:2023年3月24日
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