アリピプラゾール(エビリファイ)の効果と副作用
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アリピプラゾール(エビリファイ)とは?
アリピプラゾールは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)になります。
ドパミンの量を適切に調節してくれる作用があるため、DSS(ドパミン・システム・スタビライザー)と呼ばれています。
ドパミンが過剰な場合はその働きを抑え、不足している場合は働きを補ってくれるお薬になります。
このため、
- 統合失調症
の治療薬として開発されました。
それだけでなく、低用量では気分を持ち上げ、高用量では気分を抑える効果が期待できます。さらには気分の波を小さくして、気分や感情を安定させてくれます。このため、
- うつ病・うつ状態
- 双極性障害(躁うつ病)
- 自閉症スペクトラム障害での易刺激性
の治療薬としても使われています。
現在日本で発売されているDSSは1剤となります。
- エビリファイ(一般名:アリピプラゾール):2006年発売
アリピプラゾールのセロトニン作用を強めたSerotonin-Dopamine Activity Modulator(SDAM)と呼ばれるお薬が発売されています。
- レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)
当初はエビリファイという先発品のみでしたが、2017年よりジェネリック医薬品として、一般名(成分名)のアリピプラゾール錠として発売されています。
※以下では「エビリファイ」として、アリピプラゾールの効果や副作用をお伝えしていきます。
エビリファイの効果・効能が期待できる病気
エビリファイには、どのような効果・効能が期待できるのでしょうか。
エビリファイはドパミン部分作動薬として働き、ドパミンを適度な量に調整します。
過剰なドパミンを抑えて、不足しているドパミンの働きを強めます。
このため、ドパミンが過剰となって生じる幻聴や妄想の改善が期待できます。ドパミンをブロックしすぎないため、副作用も軽減されています。
それだけでなくエビリファイは、セロトニンへの作用と合わせて気分安定薬としても働きます。
- 抗躁効果(やや強い):気分の高まりを鎮める
- 抗うつ効果(やや弱い):落ち込みを改善する
- 再発予防効果(中程度):気分の波を小さくする
このためエビリファイでは、
- 統合失調症
- うつ病・うつ状態
- 双極性障害(とくに躁状態・混合状態)
- 自閉症スペクトラム障害での易刺激性
- 衝動のコントロールできない状態(認知症や青少年の行動障害など)
- チック(慢性的なチックであるトゥレット障害)
などに効果・効能が期待できます。統合失調症やうつ病・双極性障害については後述します。
エビリファイには穏やかな鎮静や気分安定が期待できるため、衝動性をコントロールしやすくするために使われることがあります。
副作用も比較的少なく、お子さんや高齢者などにも使いやすいお薬になります。過食の治療に使われることもあります。
チックはドパミンを抑えるお薬によって改善が認められるため、エビリファイの効果が認められることがあります。
エビリファイの統合失調症での効果
エビリファイは副作用が比較的少ないのですが、鎮静作用が弱いお薬です。鎮静作用とは、興奮や衝動を鎮める作用になります。
このためエビリファイは、統合失調症の興奮が目立たない方に使われることが多いです。統合失調症の患者さんでは、幻聴や妄想によって混乱してしまって、著しい興奮状態となってしまうことが少なくありません。
鎮静作用の強いお薬が使われることが多く、エビリファイを使うにしても鎮静作用の強いお薬と併用することが必要になります。
エビリファイは幻聴や妄想などの陽性症状だけでなく、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状、認知機能障害や感情障害にも効果が期待できます。
このため急性期というよりは、慢性期に使われることも多いです。他のお薬をつかって陽性症状が落ちついたのちに、エビリファイに変更していくこともあります。
エビリファイのうつ病・双極性障害での効果
エビリファイの気分に対する効果をみていきましょう。
エビリファイは、以下のように使われます。
- 低用量:うつ病・うつ状態
- 高用量:躁状態
エビリファイは低用量ではドパミンの働きを強め、高用量ではドパミンの働きを抑えます。
エビリファイでの気分に対する作用は、ドパミンとセロトニンが関係していると考えられています。
そのうちでも、ドパミンの影響が大きいと考えられています。
ドパミンは報酬系の機能に関係していて、やりがいや達成感を感じたときにドパミンが分泌されます。
そういったときは体が軽くなったり、眠気が取れたり、意欲や興味が自然とわいてくるかと思います。
ですからうつ病やうつ状態の方のうち、
- 気分反応性がある(良いことがあると体が軽くなる)
- 過眠症状がある
- 倦怠感が目立つ
- 興味がわかない
といった方に効果が期待できます。
一方で躁状態では、穏やかに気持ちを落ちつけていく効果が期待できます。躁状態に対しては、しっかりとしたエビデンスもあります。
落ちつける作用が強いお薬では、うつ状態に転じてしまうこともあります。
エビリファイはそうしたうつ転は少ないお薬になります。また、気分安定作用も期待できるといわれています。
エビリファイの適応が正式に認められている病気
エビリファイの適応が正式に認められている病気は、以下のようになります。
- 統合失調症(2006年)
- 双極性障害の躁状態(2012年)
- 抗うつ剤で効果が不十分なうつ・うつ状態(2013年)
- 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性(2016年)
エビリファイは統合失調症の適応が認められて発売されました。
海外では双極性障害をはじめとして気分安定薬として使われており、日本でも躁状態・うつ状態と続けて適応が認められました。
さらに2016年には、いわゆる発達障害といわれている自閉症スペクトラム障害の易刺激性にも適応が認められています。
自閉症スペクトラム障害の患者さんでは、コミュニケーションの質的な異常とこだわりの強さを大きな特徴とします。
こういった特徴があると環境に上手く適応できないことも多く、柔軟に対応することができません。
そして癇癪をおこしてしまったり、衝動性や攻撃性が目立つことも少なくありません。
エビリファイは穏やかに気持ちを落ちつけ、衝動性をコントロールしやすくします。
海外での適応からみるエビリファイの効果
多くのお薬で、日本よりも海外の方が広く適応が認められています。
エビリファイでは、日本でも同程度の適応が認められています。
アメリカでは、
- 統合失調症
- 双極Ⅰ型障害に伴う躁病エピソード及び混合性エピソードの急性治療
- 大うつ病性障害の補助療法
- 自閉性障害に伴う興奮性の治療
- トゥレット障害の治療
以上のような適応となっています。日本と異なるのは、トゥレット障害の治療として認められています。
エビリファイの特徴
<メリット>
- 陰性症状や認知機能の改善が期待できる
- 副作用が全体的に少ない
- 気分安定作用が期待できる
- 1日1回の服用で効果が期待できる
- 剤形が豊富に発売されている
- ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
<デメリット>
- 鎮静作用が弱い
- 陽性症状を悪化させることがある
- アカシジアが多い
それではエビリファイの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。エビリファイ以外の抗精神病薬との比較も行っていきます。
エビリファイの効果
エビリファイには、
- 幻聴や妄想を軽減
- 躁状態やうつ状態の改善
- 衝動性のコントロール
に効果が期待できます。
エビリファイの効果の特徴としては、
- 鎮静作用が穏やか
- 副作用が全体的に少ない
- 認知機能や陰性症状の改善が期待できる
- 気分安定作用がある
といったことがあげられます。
それではエビリファイは、抗精神病薬の中でどういった効果の位置づけなのでしょうか。
エビリファイの作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。
エビリファイは、
- ドパミンにしっかり作用するが、部分作動薬として働く
- ドパミンとセロトニン以外の作用は少ない
という特徴があります。このためドパミンをブロックしすぎてしまう副作用をはじめ、全体的に副作用が少ないです。
ですが効果としては鎮静作用の弱さにつながり、興奮を鎮める効果は期待しづらいです。
また陽性症状をコントロールしきれずに、悪化させてしまうこともあります。
抗精神病薬は気分安定作用が期待できるお薬もあります。エビリファイもその一つで、
- 抗躁効果:やや強い
- 抗うつ効果:やや弱い
- 再発予防効果:中程度
となります。
エビリファイの副作用
エビリファイの副作用は、比較的マイルドになります。
昔の抗精神病薬と比べると明らかに副作用は少なく、使いやすいお薬になります。新しい非定型抗精神病薬の中でも、副作用は全体的に少なめです。
エビリファイの副作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。
エビリファイは全体的に副作用が少ないことがわかると思います。エビリファイの副作用として最も多いのが、
- アカシジア(錐体外路症状)
になります。じっとしていられなくなる不快感が生じる副作用で、あまり用量に関係なく認められます。
用量を増していくと問題になることが多いのは、眠気の副作用になります。
うつでの適応承認時のエビリファイの副作用頻度は、
- アカシジア(28.1%)
- 体重増加(10.1%)
- 振戦(9.4%)
- 傾眠(9.0%)
- 不眠(7.3%)
- 便秘(5.6%)
このようになっています。
エビリファイの剤形と薬価
エビリファイのお薬としての特徴についてみていきましょう。
エビリファイにはジェネリックも発売されており、アリピプラゾール錠という名称で発売されています。ただし注意が必要なのは、統合失調症の病名の場合のみ、ジェネリック医薬品の適応となる点です。
さらにエビリファイは、豊富な剤形が発売されていることが特徴的です。それぞれについては後述しますが、
- 1mg錠・3mg錠・6mg錠・12mg錠
- 3mgOD錠・6mgOD錠・12mgOD錠・24mgOD錠
- 3ml内用液・6ml内用液・12ml内用液
- 散剤
- 持続性注射剤300mg・持続性注射剤400mg
このように豊富な剤形があります。
薬価はジェネリック医薬品のアリピプラゾール錠が発売されているため、比較的リーズナブルになってきています。
- 1mg錠:20.2円
- 3mg錠:44.7円(ジェネリック:7.1円)
- 6mg錠:85.4円(ジェネリック:13.1円)
- 12mg錠:160.2円(ジェネリック:25.3円)
- 3mgOD錠:44.7円(ジェネリック:7.1円)
- 6mgOD錠:85.4円(ジェネリック:13.1円)
- 12mgOD錠:160.2円(ジェネリック:25.3円)
- 24mgOD錠:332.4円(ジェネリック:53.4円)
- 内用液3mg分包:131.4円(ジェネリック:35.9円)
- 内用液6mg分包:262.8円(ジェネリック:70.1円)
- 内用液12mg分包:525.6円(ジェネリック:148.8円)
- 1%散・細粒:91.3円(ジェネリック:20.6円/ℊ)※2023年4月現在の薬価になります。薬価は少しずつ下がります。
錠剤に比べて内用液は、薬価が高いことがわかるかと思います。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。
薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
エビリファイの用法と効果のみられ方
エビリファイは、病気によって用法が異なります。
【統合失調症】
- 開始用量:6~12mg
- 維持量:6~24mg
- 用法:1日1~2回
- 最高用量:30mg
【双極性障害の躁状態】
- 開始用量:24mg
- 維持量:12~24mg
- 用法:1日1回
- 最高用量:30mg
【うつ病・うつ状態】
- 開始用量:3mg
- 用法:1日1回(朝が多い)
- 最高用量:15mg
【小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性】
- 開始用量:1mg
- 維持量:1~15mg
- 用法:1日1回
- 最高用量:15mg
エビリファイはこのように、病気によって使い方が異なります。
- 高用量:統合失調症・躁状態
- 低用量:うつ状態・易刺激性
となります。
エビリファイは副作用が比較的少なく、高用量から使いやすいお薬です。
とくに統合失調症や躁状態では、しっかりと使って症状を落ち着け、その後に少しずつ減量していくことが多いです。
エビリファイは1日1回の服用で効果は持続しますが、2回に分けて使っていくこともあります。
低用量の場合は朝食後、高用量の場合は夕食後などに処方されることが多いです。
食事の影響は少ないため、就寝前に使われることもあります。
【参考】エビリファイの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
エビリファイは、
- 半減期(T1/2):61時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):3.6時間
となっています。
エビリファイは3.6時間ほどでピークになり、そこから61時間で半分の量になるということになります。ですから1日1回の服用が可能になります。
そしてお薬の血中濃度は、飲み続けていくことで安定していきます。およそ半減期の4~5倍の時間で安定するといわれていて、このようになると定常状態と呼ばれます。
ですからエビリファイの血中濃度は、安定するまでに1~2週間ほどかかります。
エビリファイの剤形と効能の違い
エビリファイの特徴として、その剤形の豊富さがあげられます。
エビリファイは通常の錠剤だけでなく、様々なタイプが発売されています。
- OD錠
- 内用液
- 持続性注射剤
お薬の剤形によって、メリットとデメリットがあります。それぞれについて、ご紹介していきます。
エビリファイOD錠
エビリファイOD錠とは、Orally Disintegrating Tablet(口腔内崩壊錠)の略になります。
口の中に入れるとすぐに唾液で溶けるように作られたお薬になります。
エビリファイOD錠は、フリーズドライを応用したザイディズ技術を利用していて、通常の口腔内崩壊錠と比べてもすぐに口の中で溶けます。
エビリファイOD錠は、3mg・6mg・12mg・24mgの4規格が発売されています。
<メリット>
- 水なしでも服用が可能(推奨はされていない)
- 内服が苦手な方でも服用できる
- 飲み込みが悪い方でも服用しやすい
- 拒薬している人にも使える場合がある
- 服薬しやすい味になっている
<デメリット>
- 一包化ができない
- パッケージから出すと崩れやすい
- 濡れた手で触ってはいけない
- 他の薬を服用しているとメリットが少ない
エビリファイOD錠の一番のメリットは、その服用しやすさです。その一方でデメリットは、管理のしにくさです。
エビリファイOD錠は湿度が高いと崩れやすく、一包化(同じ飲み方の薬をまとめる)ができません。濡れた手で触ってしまうと溶け出してしまいます。
エビリファイ内用液
エビリファイ内用液は、液体のお薬になります。用量ごとにパッケージになっていて、封を切るとすぐに服用できる剤形です。
エビリファイ錠と内用液は、最高血中濃度はわずかに内用液の方が早いです。
このため、エビリファイ内用液は効果が多少早く感じられることがありますが、そこまで大きな差はありません。
エビリファイ内用液は、3mg・6mg・12mgの3規格が発売されています。
<メリット>
- 水なしですぐに服用できる
- 薬価が高い
<デメリット>
- 苦いオレンジのような味がする
エビリファイ内用液は、水なしですぐに服用できるのが一番の特徴です。
ベッドに起き上がれないほど調子が悪い場合は、枕元にエビリファイ内用液を置いて使っていただくこともあります。
エビリファイ内用液は、錠剤に比べると薬価が高いです。このためエビリファイ内用液は、頓服で使われることがほとんどです。
イライラが強いときや、動けないほどに体調が悪いときに使われます。
エビリファイ持続性注射剤(LAI)
エビリファイは、持続性注射剤が発売されています。
持続性注射剤は、Long Acting Injectionの頭文字をとって、LAIとも呼ばれています。その名の通り、効果が持続する注射剤になります。
肩かお尻(腰の下の方)を筋肉注射することで、お薬の有効成分が徐々に血中に溶け出していくことで、効果が1か月ほど持続します。
お尻の方が痛みが少ないため、1カ月に1度、左右を入れ替えて筋肉注射することが多いです。
<メリット>
- 服用の手間がなくなる
- 飲み忘れによる症状悪化を防げる
- 副作用が軽減する
- 減薬での身体の負担が少ない
<デメリット>
- 注射の痛みがある
- 薬価が高い
エビリファイ持続性注射剤のメリットは、お薬の服用の手間がなくなり、飲み忘れがなくなることです。
統合失調症では、お薬の服用を中断してしまうことが再発の一番のリスクです。これを防ぐことで再発を防ぎます。
そして副作用に関しても、血中濃度の変化が小さくなるために軽減されます。
飲み薬は腸で吸収されて肝臓で代謝されてから脳に作用しますが、持続性注射剤ではダイレクトに脳に作用します。
注射の痛みと、その薬価の高さがネックになるお薬です。
エビリファイ持続性注射剤を使う方は、自立支援医療の申請を行って負担軽減することができます。
これまでは統合失調症のみが適応となっていましたが、2019年9月より双極性障害の再発・再燃予防としても適応となりました。
躁状態の再発抑制についてのエビデンスがメインで、うつ状態の再発抑制は期待しにくいとされています。
エビリファイ持続性注射剤の用法・用量
エビリファイ持続性注射剤について、その用法と用量をみていきましょう。
エビリファイ持続性注射剤は、まずは内服薬のエビリファイを使って効果や安全性を確かめてから使っていきます。
いきなり持続性注射剤を使ってしまうと、お薬の成分が身体から抜けるまでに時間がかかってしまうからです。
どれくらいの量が必要かを錠剤で見定めてから、持続性注射剤に切り替えていきます。
エビリファイ持続性注射剤の用法は、以下のようになります。
- 適応:統合失調症・双極性障害の躁状態の再発再燃予防
- 開始用量:400mg
- 最初の2週間(安全に切り替えるならば4週間)は飲み薬と併用
- 4週間に1回の注射
- 300mgまで減量可 ※併用薬によっては、160mg~200mgまで減量可
補足していきましょう。
注射を打っても、いきなりは血中濃度は安定しません。2~4週間ほど、飲み薬と併用します。併用する量は、以下のようになります。
- 6~15mg服用していた方:6mg
- 18~24mg服用していた方:12mg
- 30mg服用していた方:15mg
エビリファイは用量が増えても副作用は目立たず、しっかりと使ってから減量していくことが多いお薬です。
ですからお薬を使って、多すぎたら減量していくという使い方になります。
エビリファイ持続性注射剤400mgを注射したときの有効成分の血中濃度は、エビリファイ6mg~24mgの間に収まり、およそ15mgを内服したのと同じような状態になります。
またエビリファイは、肝臓の酵素(CYP2D6・CYP3A4阻害薬)に影響を与えるお薬と併用すると、分解が遅れて効果が強くなってしまいます。
心の病気のお薬としては、抗うつ剤のパキシル(一般名:パロキセチン)などがあげられます。
エビリファイ持続性注射剤は4週間に1回の注射となりますが、通院期間が空いてしまった場合は、7週目まででしたら同じように注射します。8週間以上空いてしまったら、はじめからやり直しになります。
服用時期でみたエビリファイの副作用
エビリファイの副作用について、服用時期ごとにみていきましょう。
エビリファイの飲み始めに注意すべきなのは、アカシジア(錐体外路症状)になります。
アカシジアとは、「ソワソワしてじっとしていられない」「体を動かさずにはいられない」といった副作用になります。
この副作用は用量に関係なく認められ、低用量から開始しても認められます。
アカシジアが認められた場合は、抗不安薬・抗コリン薬・βブロッカーなどが副作用を和らげることがあります。可能であれば、他のお薬に変更していきます。
エビリファイは全体的に副作用は少ないですが、お薬を増量していくことで増加してくる副作用として眠気があります。
高用量にすると眠気が強まることがあります。一方で低用量では、不眠の副作用が認められることもあります。
服用を続けていく中で問題となるのが、
- 糖代謝異常
- 肝・腎機能障害
になります。定期的に採血をすることで、副作用をチェックしていく必要があります。
また頻度は少ないですが、高プロラクチン血症から生理不順や性機能障害の原因になることがあります。
お薬を減薬していく際には、離脱症状や悪性症候群に注意が必要です。
エビリファイでは離脱症状は少ないですが、長期に服用していると心身の不調が認められることもあります。
またお薬の増減によって、悪性症候群が起こることがあります。
悪性症候群は発熱や意識障害に加え、錐体外路症状(手足の震えやこわばり、嚥下障害)、自律神経症状、横紋筋融解症(筋肉の痛み)などが認められます。
お薬の増減の後に、咳や鼻水などがなくて高熱が認められた場合は、注意が必要です。
エビリファイの副作用の対処法
エビリファイの副作用が認められた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
エビリファイの副作用が認められた場合、
- 何とかなるなら様子を見る(経過観察)
が基本的な対処法となります。お薬を飲み続けるうちに身体が少しずつ慣れていき、落ちついてくることが多いためです。
しかしながらどうしても症状が改善しない場合は、無理せずに中止して主治医に報告してください。
エビリファイを使っていったほうが良い場合は、症状を和らげるお薬を併用してしばらく様子を見ることもあります。
生活習慣で改善ができる部分があれば、並行して行っていくことも大切です。
エビリファイの副作用で多くの方が気にされるのが、
- 眠気
- 太る
になります。
エビリファイの副作用で頻度が最も多いのは、
- アカシジア(錐体外路症状)
になります。対処法も含めてみていきましょう。
エビリファイと眠気・不眠
エビリファイ承認時の副作用頻度をみてみましょう。エビリファイの4つの適応ごとに比較してみましょう。
- 統合失調症
不眠:27.1%
眠気(傾眠):3.1% - 双極性障害の躁状態
不眠:9.9%
眠気(傾眠):12.5% - うつ病・うつ状態
不眠:7.3%
眠気(傾眠):9.0% - 自閉症スペクトラム障害
不眠:報告なし
眠気(傾眠):48.9%
このようにエビリファイは、眠気も不眠もどちらもとりうるお薬です。用量を増やすにつれて、眠気が強まる傾向があります。
エビリファイで眠気が生じる原因としては、
- わずかにある抗ヒスタミン作用や抗α1作用での直接的な眠気
- セロトニン2A遮断作用による深部睡眠の増加
こういったことが考えられます。
エビリファイはドパミンやセロトニンだけでなく、強くはないものの他の受容体にも作用します。
セロトニンに対しても、2A受容体をブロックすることで深部睡眠を増加させます。
エビリファイで不眠がみられる原因は、
- 興奮を高めてしまうことがある
- アカシジアやレストレスレッグ症候群を引き起こす
といったことがあげられます。
エビリファイは副作用が少ないですが、そのかわりに鎮静作用が少ないお薬になります。
エビリファイがドパミンを刺激してしまい、興奮や衝動を高めてしまうことがあります。
またエビリファイは、アカシジアやレストレスレッグ症候群(むずむず脚症候群)など、じっとしていられなくなる副作用を誘発します。
その結果として、不眠につながってしまうことがあります。
このようにエビリファイでは、眠気と不眠のどちらも生じることがあります。
エビリファイで眠気が認められた場合の対処法としては、
- 慣れるまで待つ
- 服用のタイミングをかえる(夕食後や就寝前)
- 服用を2回にわける
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
反対に不眠が認められている場合の対処法は、
- 慣れるまで待つ
- 睡眠の質の改善を図る(生活習慣やお薬)
- 服用のタイミングを変える(朝食後)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
エビリファイと体重(太る?痩せる?)
エビリファイと体重について心配される方も少なくありません。
食欲や代謝などは様々な影響があり、お薬だけでなく病状も関係してきます。このため一概にお薬の影響だけを評価していくことは難しいです。
エビリファイは基本的には太る傾向にあるお薬ではあります。
しかしながら他の抗精神病薬と比較すると太りにくいため、エビリファイに変更すると痩せたというイメージの方もいらっしゃいます。
エビリファイの承認時の副作用頻度としては、
- 統合失調症
体重増加:2.96%
体重減少:9.15% - 双極性障害の躁状態
体重増加:9.38%
体重減少:1.56% - うつ病・うつ状態
体重増加:10.06%
体重減少:0.21% - 自閉症スペクトラム障害
体重増加:18.18%
体重減少:1.14%
このように見れば、太る傾向のあるお薬であることがわかるかと思います。
ただしその増加幅は他の抗精神病薬と比べて小さい印象で、時には過食の治療にも使われることもあります。
エビリファイが太る原因は、
- 抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用の直接的な食欲増加
- 原因不明だが、非定型抗精神病薬が代謝を低下させるため
抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用は、いずれも食欲を増加させる働きがあります。これらが直接的に食欲増加を生じますが、エビリファイではこれらの作用は弱いです。
原因がよくわかっていませんが、昔からある定型抗精神病薬に比べて、非定型抗精神病薬は代謝が低下することが分かっています。
これらが合わさり、他の非定型抗精神病薬は少ないものの、エビリファイは太る傾向にはあるお薬です。
エビリファイで太ってしまった場合の対処法としては、
- 生活習慣を見直す
- 運動習慣を取り入れる
- 食事の際によく噛むようにする
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
エビリファイとアカシジア(錐体外路症状)
エビリファイで頻度が多い特徴的な副作用として、アカシジアがあります。
アカシジアは、日本語に訳すると静坐不能と呼ばれる症状で、
- じっとしていられない
- ソワソワして落ちつかない
- 足がむずむずする
- 貧乏ゆすりが止まらない
といった症状になります。心の落ちつかなさと、身体を動かしたいという衝動が合わさります。そして体を動かすと、その苦痛は軽減します。
アカシジアの原因は、
- 感情に関係する部分でのドパミンのブロック
が関係しているといわれています。
錐体外路症状の一つと考えられていますが、パーキンソン症状を生じる部分(黒質線条体のドパミンブロック)とは異なると考えられています。(アカシジアは中脳辺縁系や中脳皮質系のドパミンブロック)
エビリファイはアカシジアが多いといわれていて、他の抗精神病薬と比較しても多いです。
※左の緑が承認時、右の青が市販後調査でのアカシジアの頻度
エビリファイによるアカシジアの特徴として、
- うつ病>双極性障害>統合失調症の順で多い
- 低用量でも高用量でも大きな差がない
- 飲み始めが多いが、2~3か月たって生じることもある
といったことがあげられます。
エビリファイでアカシジアが認められた場合の対処法は、
- 慣れるまで待つ
- お薬を併用する(抗不安薬・βブロッカー・抗コリン薬)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
エビリファイの離脱症状と減薬方法
エビリファイは離脱症状が少ないお薬になります。
ですが離脱症状が認められることもありますので、長期で服用している場合は少しずつ減量していく必要があります。
エビリファイの離脱症状としては、
- ドパミン作動性:幻覚や妄想(過感受性精神病)・アカシジア・ジスキネジア
- コリン作動性:精神症状(不安・イライラ)・身体症状(不眠・頭痛)・自律神経症状(吐き気・下痢・発汗)
この2つの離脱症状が認められることがあります。
エビリファイはドパミンの部分作動薬になりますし、作用時間も長いためにドパミン作動性の離脱症状はおこりにくいです。
抗コリン作用もほとんどないのですが、副作用止めに抗コリン薬を服用しているときは注意が必要です。
これらの離脱症状は、薬が減って1~3日ほどして認められます。
2週間ほどで収まっていくことが多いですが、まれに月単位で続いてしまうこともあります。
こういった離脱症状を防ぐために、エビリファイの減量は少しずつ行っていきます。離脱症状がひどい場合は元のお薬の量に戻し、減量のペースを緩めていきます。
減量の方法は、以下の2つの方法があります。
エビリファイの運転への影響
心の病気の治療薬は多くが運転や危険作業が禁止となっていました。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
エビリファイの添付文章でも同様に、
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
という表現となっています。
統合失調症や双極性障害でも、症状がコントロールできていれば運転免許は取得することができます。(医師の診断書が必要)
ですがほとんど全てのお薬で運転禁止とされているのが実情です。運転ができないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
エビリファイの妊娠・授乳への影響
エビリファイの妊娠への影響から見ていきましょう。エビリファイのお薬の添付文章には、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
このように記載されています。もちろん妊娠中は、お薬を避けるに越したことはありません。
しかしながらエビリファイを中止したら病状が不安定になってしまう場合は、お薬を最小限にしながら続けていくことが多いです。
統合失調症や双極性障害は、お薬を減量していくと症状が不安定になるリスクが高まります。
ですからその場合は、エビリファイの服用を続けることが多いです。
エビリファイは、奇形のリスクに関して明かな報告はありません。
エビリファイが影響するのは、産まれた後の赤ちゃんになります。離脱症状や錐体外路症状が認められることがあると報告されています。
後遺症が残るたぐいのものではないので、産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、エビリファイの授乳への影響をみていきましょう。エビリファイのお薬の添付文章には、
授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。
このように記載されています。
しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。
母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
ご自身での判断にはなりますが、エビリファイを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。
母乳を通して赤ちゃんにエビリファイの成分が伝わってしまうことは、動物実験だけでなく人間でも確認されています。
母乳中には、およそ血中濃度の20%のお薬が移行すると報告されています。乳児検診で体重が増えていかないといったことがあれば、医師と相談したほうが良いでしょう。
海外の妊娠と授乳に関する基準
海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。
妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準
- A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
- B:ヒトでの危険性の証拠はない
- C:危険性を否定することができない
- D:危険性を示す確かな証拠がある
- ×:妊娠中は禁忌
授乳への影響:Hale授乳危険度分類
- L1:最も安全
- L2:比較的安全
- L3:おそらく安全・新薬・情報不足
- L4:おそらく危険
- L5:危険
エビリファイは、FDA基準で「C」、Hale分類で「L2」となっています。授乳に関しては、抗うつ剤の中でも安全性が高いと考えられています。
エビリファイ錠のジェネリック(アリピプラゾール錠)
エビリファイ錠は、2006年に発売されたお薬になります。お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)
エビリファイ錠のジェネリックは、この特許が切れた2017年に発売となりました。
薬価も先発品の半分以下となっているので、リーズナブルになっています。
ただし注意が必要で、ジェネリック医薬品の適応が認められているのは
- 統合失調症
のみになります。後から承認が追加された病気に関しては、いまだに特許が有効となっています。
先発品はお薬を開発した会社から発売されますが、ジェネリック医薬品は複数の会社から発売されます。エビリファイも、様々な製薬会社から発売されています。
これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
エビリファイは即効性を期待するお薬ではないため、変更しても効果に大きな差はないと推定されます。
理屈ではそうですが、心配になってしまう方もいらっしゃいます。そのような場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。
【参考】エビリファイの作用機序
最後に、エビリファイの作用の仕組みについてお伝えしていきたいと思います。
エビリファイが効果が発揮するのは、大きく2つの物質が関係しています。
- ドパミン
- セロトニン
ドパミンは脳の中で、大きく4つの働きをしています。
- 中脳辺縁系―陽性症状の改善(幻聴や妄想)
- 中脳皮質系―陰性症状の出現(感情鈍麻や意欲減退)
- 黒質線条体―錐体外路症状の出現(パーキンソン症状やジストニア)
- 視床下部下垂体系―高プロラクチン血症(生理不順や性機能低下)
統合失調症では、中脳辺縁系でのドパミンの分泌・活動の異常によって幻聴や妄想といった陽性症状が認められると考えられています。この中脳辺縁系のドパミンを抑えることで、陽性症状の改善が期待できます。(ドパミンD2受容体遮断作用)
しかしながらドパミンを全体的にブロックしてしまうと、他の部分では必要なドパミンの働きが抑えられてしまいます。
他の3つの部分ではドパミンの働きが抑えられてしまい、上記のような副作用が生じます。
そこで注目されたのが、ドパミンを抑制する働きのあるセロトニンです。このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待できます。
ですから、ドパミン(ドパミンD2受容体)とセロトニン(セロトニン2A受容体)を同時にブロックすれば、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待でき、副作用も軽減されます。
こういった作用メカニズムがあるお薬を非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)といいます。
エビリファイは非定型抗精神病薬に分類されます。エビリファイのドパミンとセロトニンへの働き方について、以下で詳しくお伝えしていきます。
ドパミンに対する作用
エビリファイは、
- D2受容体部分作動薬(パーシャルアゴニスト)
として働きます。
エビリファイは、ドパミン受容体に強力に作用します。他のお薬を併用しても押しのけてくっつくほどです。
そしてエビリファイはフルには作用せず、ほどほどに作用します。
その割合を固有活性といいますが、エビリファイの固有活性は17%ほどといわれています。
ドパミンが過剰な場合は、そのドパミンが作用できなくなるので働きが抑えられます。一方でドパミンが欠乏している場合は、エビリファイがドパミン受容体に作用して働きを強めます。
このようにエビリファイは、ドパミンの働きを適切に調節する働きがあります。
セロトニンに対する作用
エビリファイはセロトニンに対して、
- セロトニン1A受容体:部分作動(パーシャルアゴニスト)
- セロトニン2A受容体:遮断(アンタゴニスト)
- セロトニン2C受容体:遮断(アンタゴニスト)
の3つの働きがあります。セロトニン2C受容体遮断作用は、食欲増加などの副作用に関係します。
セロトニン2A受容体をブロックすることで、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを間接的に強めます。
これがエビリファイでの陰性症状の改善や副作用の軽減につながります。
セロトニン1A受容体に対しては、部分作動薬として働きます。セロトニン1A受容体は、抗うつ剤が作用するポイントです。
このためエビリファイは1A受容体の働きを強め、感情障害に対しても効果が期待できます。
エビリファイはうつ状態にも効果が期待できますが、その効果はセロトニンよりもドパミンの影響が大きいと考えられています。
当院の心療内科・精神科ご案内
田町三田こころみクリニックでは、「うつ病」、「双極性障害」、「統合失調症」など、心の不調を診療しています。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:エビリファイ(アリピプラゾール) 投稿日:2023年3月23日
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