ブロナンセリン(ロナセン)の効果と副作用
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ブロナンセリン(ロナセン)とは?
ブロナンセリンは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)になります。
ドパミンだけでなくセロトニンもブロックすることで、過剰なドパミン遮断を和らげるお薬になります。
このため、SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)に分類されています。
ドパミンの働きを抑える働きがあるため、
- 統合失調症
の治療薬として開発されました。
幻聴や妄想といった陽性症状にしっかりとした効果が期待でき、陰性症状(意欲減退や感情鈍麻)や認知機能の改善に効果が期待できます。
そしてブロナンセリンは眠気や体重増加といった副作用が少なく、とくに代謝に悪影響を及ぼさないという特徴があります。
その一方で、ドパミン遮断作用による副作用が目立ちます。
現在日本で発売されているSDAは5剤となります。
- リスパダール(一般名:リスペリドン):1996年発売
- ルーラン(一般名:ペロスピロン):2001年発売
- ロナセン(一般名:ブロナンセリン):2008年発売
- インヴェガ(一般名:パリペリドン):2011年発売
- ラツーダ(一般名:ルラシドン):2020年発売
当初はロナセンという先発品のみでしたが、2019年にジェネリック医薬品が発売となりました。一般名(成分名)のブロナンセリン錠として発売されています。
また同年に、ロナセンテープという新しい剤形が発売となっています。
※以下では「ロナセン」として、ブロナンセリンの効果や副作用をお伝えしていきます。
ロナセンの効果・効能が期待できる病気
ロナセンには、どのような効果・効能が期待できるのでしょうか。
ロナセンはドパミンとセロトニンに作用して、その働きをブロックすることで効果を期待します。
このためドパミンが過剰となって生じる幻聴や妄想の改善が期待できます。そして、ドパミンを過剰にブロックしてしまうことでの副作用が緩和されています。
このためロナセンは、
- 統合失調症
に効果・効能が期待できます。統合失調症に関連する妄想性障害などについても、ロナセンが使われることがあります。
ロナセンはドパミンをブロックする作用が強いため、幻聴や妄想などの陽性症状に対しての効果が期待できます。
その一方で鎮静作用は強くないため、あまり興奮などが目立たない統合失調症の患者さんに使われることが多いです。
それ以外にロナセンは、
- チック
- 自閉症スペクトラム障害の易怒性や興奮
に使われることもあります。
チックは子供に多い病気で、ひとりでに体が不自然な動作をしてしまったり、声を上げてしまう病気です。ドパミンの過活動が原因と考えられており、ロナセンが少量でつかわれることもあります。
抗精神病薬の中での特徴としては、代謝への影響の少なさがあげられます。
このため、副作用を抑えることを意識して使われることが多いです。
ロナセンの適応が正式に認められている病気
ロナセンの適応が正式に認められている病気は、
- 統合失調症
となっています。
ロナセンは他のお薬のように適応外で使われることは少なく、統合失調症で使われることが基本となります。
ロナセンはドパミンをブロックする作用が強いことから、
- チック
- 自閉症スペクトラム障害の易怒性や興奮
など、ドパミン過活動が原因と考えられている病気に使われることもあります。
海外での適応からみるロナセンの効果
ロナセンは日本で開発されたお薬で、海外ではあまり発売されていないお薬になります。
中国や韓国でしか発売されておらず、世界的にみれば一般的なお薬ではありません。いずれの国においても、
- 統合失調症
の適応となっています。
ロナセンの特徴
<メリット>
- 幻覚や妄想などの陽性症状に効果がしっかりしている
- 陰性症状や認知機能の改善にも効果がある
- 眠気や代謝系の副作用が少ない
- 高プロラクチン血症が少ない
- テープという独自の剤形が発売されている
<デメリット>
- ドパミン系の副作用のうち、錐体外路症状が多い
- 陰性症状の改善がマイルド
- 鎮静作用が弱い
- 食後に飲まないと効果が弱くなる
それではロナセンの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。ロナセン以外の抗精神病薬との比較も行っていきます。
ロナセンの効果
ロナセンは、
- 幻聴や妄想を軽減
に効果が期待できます。
それではロナセンは、抗精神病薬の中でどういった効果の位置づけなのでしょうか。ロナセンの作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。
ロナセンは、
- ドパミンにしっかりと作用する
- ドパミン遮断作用>セロトニン遮断作用
という特徴があります。
このため、ドパミン過剰による幻覚や妄想といった陽性症状に対しての効果が期待できます。
その一方で、ドパミンをブロックしすぎてしまうことでの副作用(錐体外路症状)が認められます。
そして鎮静作用はマイルドなため、
- メリット:眠気やふらつきが少ない
- デメリット:興奮を抑える効果が期待しにくい
となります。
ロナセンは食事の影響がお薬の吸収に大きく影響し、空腹時に比べて食後だと、ロナセンの血中濃度が2.7倍、最高血中濃度到達時間も2.5倍となります。
このためロナセンは、食後に服用することが必要になります。
ロナセンの副作用
ロナセンの副作用としては、
- ドパミン遮断の副作用:錐体外路症状
が目立ちます。
高プロラクチン血症については、ロナセンが脂に溶けやすいお薬であるために少ないです。
脳にしっかりと成分が届くために、脳の外にある下垂体には作用しにくいためです。
そしてロナセンは、以下のような副作用が少ないという特徴があります。
- 鎮静による副作用:眠気やふらつき
- 代謝系の副作用:体重増加や高血糖
- 抗α1作用による副作用:ふらつき・立ちくらみ・射精障害
これはロナセンが、ドパミンとセロトニン以外の作用が少ないためです。
抗精神病薬で副作用を比較すると、以下のようになります。
ロナセンの承認時の副作用報告では、
- パーキンソン症候群(35.0%)
- アカシジア(24.1%)
- 不眠(22.4%)
- プロラクチン上昇(14.0%)※高プロラクチン血(1.3%)
- ジスキネジア(14.0%)
- 眠気(11.8%)
- 不安・焦燥感・易刺激性(11.2%)
このようになっています。
ドパミン遮断作用による副作用が目立ち、鎮静作用が弱いことが副作用報告からもうかがえます。
ロナセンの剤形と薬価
ロナセンのお薬としての特徴についてみていきましょう。
2019年にジェネリック医薬品が発売となりました。合わせて、テープという独自の剤形が発売されました。
ロナセンは、以下のような剤形となっています。
- 錠(2mg・4mg・8mg)
- 散(2%)
- テープ(20mg・30mg・40mg)
ロナセンの剤形ごとの薬価をご紹介します。
- 2mg錠:51.6円(ジェネリック:10.3~12.7円)
- 4mg錠:96.8円(ジェネリック:23.4円)
- 8mg錠:179.5円(ジェネリック:33.3~44.8円)
- 2%散:475.7円/g (ジェネリック:131.7~148.8円)※20mg相当
- 20mgテープ:248.7円
- 30mgテープ:361.5円
- 40mgテープ:462.7円
※2023年4月現在の薬価になります。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
ロナセンテープについて
ロナセンは、「テープ」という独自の剤形が発売となりました。
とくに統合失調症の治療では、お薬を継続的に服用することが大切になります。
錠剤ではどうしてものみ忘れがでてしまいますが、テープでは貼ってないことに気づきやすく、飲み忘れを防げることが期待されています。
また、経皮吸収されるために、吸収時に肝臓で代謝されてしまわない(初回通過効果をうけない)ために、お薬の併用での影響も受けにくく、血中濃度が内服薬よりも安定することが考えられています。
40mgのテープから開始し、最高用量は80mgとなっています。ロナセン錠8mg≒ロナセンテープ40mgとなっています。
ロナセンの用法と効果のみられ方
ロナセン錠は、以下のような用法となっています。
- 開始用量:8mg
- 維持量:8~16mg
- 用法:1日2回
- 最高用量:24mg
ロナセンの用量はこのようになっていますが、患者さんによっては2~4mgから開始することもあります。
ロナセンは1日2回の用法となっていますが、服用を続けていくと作用時間が延びていくことがわかっています。
このため、1日1回の服用でも効果が安定します。
【参考】ロナセンの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
ロナセンは、
- 半減期(T1/2):10.7~16.2時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):1.5時間
となっています。
このため1日2回の服用で、1日効果が安定するお薬となっています。しかしながらロナセンには、2つの特徴があります。
- 食後:最高血中濃度↑・最高血中濃度到達時間↑
- 連日の服用:半減期↑
ロナセンは食事の影響が大きく、
- 最高血中濃度:2.7倍
- 最高血中濃度到達時間:2.5倍(3.8時間)
となります。
また連日服用を行っていくことで、薬が身体から抜けにくくなっていきます。
- 半減期:67.9時間
まで延びていきます。
ですからロナセンは、1日1回の服用でも効果が安定する場合があります。食後に服用することにも注意する必要があります。
服用時期でみたロナセンの副作用
ロナセンの副作用について、服用時期ごとにみていきましょう。
ロナセンの飲み始めに注意すべきなのは、錐体外路症状になります。ドパミンを遮断しすぎてしまうことでの副作用で、
- アカシジア:ソワソワして落ちつかない
- ジストニア:異常な筋肉の緊張
- パーキンソニズム:筋肉のこわばりや振戦(ふるえ)
などの副作用が起こることがあります。
そして服用を続けていく中で問題となるのが、
- 高プロラクチン血症:乳汁分泌や生理不順(性機能障害)
- 糖代謝異常:高血糖や糖尿病
- 肝・腎機能障害:肝機能障害や腎機能障害
になります。ロナセンは高プロラクチン血症や糖代謝異常は少ないといわれていますが、注意はしていく必要があります。
ドパミン遮断作用によってプロラクチンが上昇してしまい、出産直後の状態と同じような高プロラクチン血症が認められることがあります。
女性では生理不順(生理がこない)、男性では性機能障害が認められます。
そして糖代謝に悪影響を与えて高血糖になりやすくなり、糖尿病に進行してしまうこともあります。
また、肝臓や腎臓に負担がかかってしまって機能が低下してしまうことがあるため、あわせて定期的に採血して行く必要があります。
お薬を減薬していく際には、離脱症状や悪性症候群の可能性があります。
ロナセンは少ないですが離脱症状が認められることがあり、減薬の際に心身の不調が認められることがあります。
またお薬の増減によって、悪性症候群が起こることがあります。
悪性症候群は発熱や意識障害に加え、錐体外路症状(手足の震えやこわばり、嚥下障害)、自律神経症状、横紋筋融解症(筋肉の痛み)などが認められます。
お薬の増減の後に、咳や鼻水などがなくて高熱が認められた場合は、注意が必要です。
ロナセンの副作用の対処法
ロナセンで副作用が認められた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
ロナセンで副作用が認められた場合、
- 何とかなるなら様子を見る(経過観察)
が基本的な対処法となります。お薬を飲み続けるうちに身体が少しずつ慣れていき、落ちついてくることが多いためです。
しかしながらどうしても症状が改善しない場合は、主治医に報告して相談してください。
ロナセンを使っていったほうが良い場合は、症状を和らげるお薬を併用してしばらく様子を見ることもあります。
生活習慣で改善ができる部分があれば、並行して行っていくことも大切です。
ロナセンの副作用で多くの方が気にされるのが、
- 眠気
- 太る
になります。
ロナセンで特徴的な副作用は、
- 錐体外路症状
になります。
これらのロナセンの副作用について、対処法も含めて詳しくお伝えしていきます。
ロナセンと眠気・不眠
ロナセンの承認時での副作用報告をみてみましょう。
- 眠気(傾眠):11.8%
- 不眠:22.4%
このようにロナセンは、眠気と不眠のどちらも認められます。
ロナセンは眠気は少ないお薬ではあります。
むしろ不眠が多いですが、精神病症状が改善していないことが原因の不眠も含まれているため、お薬の直接的な副作用での不眠は少ないかと思います。
ロナセンで眠気が生じる原因としては、
- 抗コリン作用の直接的な眠気
- セロトニン2A遮断作用による深部睡眠の増加
こういったことが考えられます。
ロナセンは抗α1作用や抗ヒスタミン作用はわずかで、直接的な眠気は強くありません。
抗コリン作用が認められますが、そこまで強くありません。
セロトニン2A遮断作用によって深い睡眠が増加する傾向にはありますが、ロナセンはセロトニンよりもドパミンが強く、他の抗精神病薬と比べると睡眠への効果はうすいです。
ロナセンで眠気が認められた場合の対処法としては、
- 慣れるまで待つ
- 服用のタイミングをかえる(夕食後や就寝前)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
ロナセンと体重(太る?痩せる?)
ロナセンは他の抗精神病薬に比べると、代謝への影響は少ないお薬になります。
とはいえロナセンも、どちらかというと代謝を悪化させる方向に働くお薬ではあります。このため、体重や血糖について注意していく必要はあります。
食欲や代謝などは様々な影響があり、お薬だけでなく病状も関係してくるため、一概にお薬の影響だけではありません。
ですから、食生活と合わせてお薬の影響の程度を考えていきます。
ロナセン承認時での副作用頻度は、
- 体重増加:2.7%
- 体重減少:1.9%
このように報告されています。
ロナセンで太る原因は、
- 抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用の直接的な食欲増加
- 原因不明だが、非定型抗精神病薬が代謝を低下させるため
が考えられます。
抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用は、いずれも食欲を増加させる働きがあります。しかしながらロナセンは相対的にドパミン社団作用が強く、これらの副作用は少ないです。
また原因がよくわかっていませんが、昔からある定型抗精神病薬に比べて、非定型抗精神病薬は代謝が低下することが分かっています。
ロナセンは非定型抗精神病薬の中ではマシですが、太る傾向にはあるお薬になります。
そしてロナセンで太ってしまった場合の対処法としては、
- 生活習慣を見直す
- 運動習慣を取り入れる
- 食事の際によく噛むようにする
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
ロナセンと錐体外路症状
ロナセンでは、お薬を増量していく過程で錐体外路症状が認められます。
錐体外路症状とは、運動調節に関係する神経系の異常による症状のことをいいます。私たちは、特に意識せずにスムーズに体を動かすことができます。
その背後には、錐体外路を通っている神経が、筋肉の働きなどを勝手に微調整してくれています。
錐体外路の働きにはドパミンが重要な役割をしていて、ドパミンが過剰にブロックされてしまうことで、以下のような症状が認められます。
- アカシジア:ソワソワして落ちつかない
- ジストニア:筋肉の異常な緊張(眼球上転・首がつっぱる)
- パーキンソニズム:筋肉のこわばりや振戦(ふるえ)
服用をはじめて増量するにつれて、副作用のリスクが高まります。いずれもお薬の飲み始めが多いですが、服用を続けて行く中で少しずつ症状が目立ってくることもあります。
ロナセンで錐体外路症状が認められた場合の対処法は、
- 慣れるまで待つ
- お薬を併用する(抗不安薬・βブロッカー・抗コリン薬)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
ロナセンの離脱症状と減薬方法
ロナセンは服用を続けていくと作用時間が長くなるため、そこまで離脱症状は多くありません。ですが長期で服用している場合は、少しずつ減量していく必要があります。
ロナセンの離脱症状としては、
- ドパミン作動性:幻覚や妄想(過感受性精神病)・アカシジア・ジスキネジア
- コリン作動性:精神症状(不安・イライラ)・身体症状(不眠・頭痛)・自律神経症状(吐き気・下痢・発汗)
この2つの離脱症状が認められることがあります。
ロナセンはドパミンをブロックするお薬ですので、ドパミン作動性の離脱症状が起こることがあります。
コリン作動性の離脱症状としては、直接的にロナセンが引き起こすことは少ないです。ですが、錐体外路症状の副作用止めに注意が必要です。
ロナセンは錐体外路症状が問題となることが多く、抗コリン薬(アキネトンやアーテン)を副作用止めに使うことがあります。
ロナセンの離脱症状だけでなく、副作用止めのコリン作動性離脱に注意する必要があります。
コリン作動性の離脱症状とは、抑え込まれていたアセチルコリンが急に解放されることで、リバウンドによりアセチルコリンの活動が一気に高まってしまうことでの症状です。
アセチルコリンは副交感神経という自律神経の調整をしているので、吐き気や下痢といった胃腸症状などの自律神経症状、不眠や頭痛などの身体症状、不安やイライラなどの精神症状が認められます。
これらの離脱症状は、薬が減って1~3日ほどして認められます。
2週間ほどで収まっていくことが多いですが、まれに月単位で続いてしまうこともあります。
こういった離脱症状を防ぐために、ロナセンや副作用止めの減量は少しずつ行っていきます。離脱症状がひどい場合は元のお薬の量に戻し、減量のペースを緩めていきます。
減量の方法は以下の2つの方法がありますが、漸減法を行っていくことが一般的です。
ロナセンの運転への影響
心の病気の治療薬は多くが運転や危険作業が禁止となっていました。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
ロナセンの添付文章でも同様に、
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
という表現となっています。
統合失調症でも、症状がコントロールできていれば運転免許は取得することができます。(医師の診断書が必要)
お薬を服用せずに病状が良くない方が運転に悪影響があるかもしれませんし、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。
ロナセンだけでなく、ほとんど全ての統合失調症治療薬で運転禁止となっています。運転できないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
ロナセンの妊娠・授乳への影響
ロナセンの妊娠への影響から見ていきましょう。ロナセンのお薬の添付文章には、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
もちろん妊娠中は、お薬を避けるに越したことはありません。
しかしながらロナセンを中止したら病状が不安定になってしまう場合は、お薬を最小限にしながら続けていくことが多いです。
統合失調症は、お薬を減量していくと症状が不安定になるリスクが高まります。ですからその場合は、ロナセンの服用を続けることが多いです。
ロナセンは、奇形のリスクに関して明かな報告はありません。むしろロナセンが影響するのは、産まれた後の赤ちゃんになります。離脱症状や錐体外路症状が認められることがあると報告されています。
後遺症が残るたぐいのものではないので、産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、ロナセンの授乳への影響をみていきましょう。ロナセンのお薬の添付文章には、
授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。
このように記載されています。
しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
ご自身での判断にはなりますが、ロナセンを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。
母乳を通して赤ちゃんにロナセンの成分が伝わってしまうことは、動物実験で確認されています。乳児検診で体重が増えていかないといったことがあれば、医師と相談したほうが良いでしょう。
海外の妊娠と授乳に関する基準
海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。
妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準
- A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
- B:ヒトでの危険性の証拠はない
- C:危険性を否定することができない
- D:危険性を示す確かな証拠がある
- ×:妊娠中は禁忌
授乳への影響:Hale授乳危険度分類
- L1:最も安全
- L2:比較的安全
- L3:おそらく安全・新薬・情報不足
- L4:おそらく危険
- L5:危険
ロナセンは海外では使われておらず、妊娠や授乳に関する基準もありません。
ロナセン錠のジェネリック
ロナセン錠は、2008年に発売されたお薬になります。お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。
ロナセン錠のジェネリックは、2019年に一般名のブロナンセリン錠として発売となりました。
先発品はお薬を開発した会社から発売されますが、ジェネリック医薬品は複数の会社から発売されます。ブロナンセリン錠も、様々な製薬会社から発売されています。
これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
ロナセンは継続して服用することで効果を期待していくことが中心で、頓服として即効性を期待して使うことは少ないお薬になります。
ですからジェネリックのブロナンセリン錠は、先発品と大きな違いはないかと思います。
とはいえ、お薬が先発品から変化することに心配になってしまう方もいらっしゃいます。そのような場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。
【参考】ロナセンの作用機序
最後に、ロナセンの作用の仕組みについてお伝えしていきたいと思います。
ロナセンが効果が発揮するのは、大きく2つの物質が関係しています。
- ドパミン
- セロトニン
ドパミンは脳の中で、大きく4つの働きをしています。
- 中脳辺縁系―陽性症状の改善(幻聴や妄想)
- 中脳皮質系―陰性症状の出現(感情鈍麻や意欲減退)
- 黒質線条体―錐体外路症状の出現(パーキンソン症状やジストニア)
- 視床下部下垂体系―高プロラクチン血症(生理不順や性機能低下)
統合失調症では、中脳辺縁系でのドパミンの分泌・活動の異常によって幻聴や妄想といった陽性症状が認められると考えられています。
この中脳辺縁系のドパミンを抑えることで、陽性症状の改善が期待できます。(ドパミンD2受容体遮断作用)
しかしながらドパミンを全体的にブロックしてしまうと、他の部分では必要なドパミンの働きが抑えられてしまいます。
他の3つの部分ではドパミンの働きが抑えられてしまい、上記のような副作用が生じます。
そこで注目されたのが、ドパミンを抑制する働きのあるセロトニンです。
このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待できます。
ですから、ドパミン(ドパミンD2受容体)とセロトニン(セロトニン2A受容体)を同時にブロックすれば、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待でき、副作用も軽減されます。
こういった作用メカニズムがあるお薬を非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)といいます。
ロナセンはこの2つの作用がメインのため、非定型抗精神病薬のうちSDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)に分類されます。
その中でもロナセンはドパミン遮断作用が強く、DSA(ドパミン・セロトニン拮抗薬)とも呼ばれています。
非定型抗精神病薬の中では、定型抗精神病薬のセレネースに近い作用メカニズムになります。
ロナセンのドパミンとセロトニンへの働き方について、以下で詳しくお伝えしていきます。
ドパミンに対する作用
ロナセンは、
- D2受容体遮断薬(アンタゴニスト)
- D3受容体遮断薬(アンタゴニスト)
として働きます。
ロナセンはドパミン受容体にしっかりと結合して、ドパミンの働きを抑えます。
このためドパミンをブロックする作用はしっかりとしており、ドパミンD2受容体をブロックすることで、幻聴や妄想などの陽性症状の改善が期待できます。
それだけでなく、ロナセンはドパミンD3受容体をブロックする作用が強く、これによって中脳皮質系のドパミンを増加します。
このためロナセンは、陰性症状に対する効果も期待することができます。
セロトニンに対する作用
ロナセンはセロトニンに対して、
- セロトニン2A受容体:遮断(アンタゴニスト)
- セロトニン2C受容体:遮断(アンタゴニスト)
の2つの働きがあります。
セロトニン2C受容体遮断作用は、食欲増加などの副作用に関係します。ロナセンでは中程度認められますが、ドパミンに対する作用と比べると相対的に小さいです。
セロトニン2A受容体をブロックすることで、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを間接的に強めます。
これによって、ロナセンでの陰性症状の改善や副作用の軽減につながります。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:ロナセン 投稿日:2023年3月23日
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