レキサルティ(ブレクスピプラゾール)の効果と副作用
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レキサルティ(ブレクスピプラゾール)とは?
レキサルティは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)になります。
セロトニンとドパミンの量を適切に調整してくれる作用があるため、SDAM(セロトニ ン・ドパミン・アクティビティ・モジュレーター)と呼ばれています。
レキサルティは、セロトニン(1A受容体)とドパミン(D2受容体)の働きを適切に調節してくれます。
過剰な場合はそれぞれの働きを抑え、不足している場合は補ってくれるような、部分作動薬(パーシャルアゴニスト)としての作用があります。
すでに発売されているエビリファイを改良し、
- セロトニンに強く働く
- ドパミンの働きは控えめ(固有活性が低い)
という違いのあるお薬になります。
これによって副作用をより少なくするとともに、陽性症状に対するしっかりとした効果と、陰性症状や認知機能障害、感情障害の改善を期待したお薬になります。
そしてエビリファイと同様に、双極性障害やうつ病などの気分障害にも効果が期待されています。
ですから、
- 統合失調症
- うつ病・うつ状態(抗うつ薬との併用)
これらに正式適応となっています。
さらにはアメリカでは、認知症での暴言、暴力などの行動障害(アジテーション)に対する適応が認められました。
同じようなタイプのお薬は、
- エビリファイ(一般名:アリピプラゾール):2006年発売
- レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール):2018年発売
の2種類になります。
ジェネリック医薬品が発売されるのは当分先になりますが、発売される際は一般名(成分名)のブレクスピプラゾール錠として発売されるでしょう。
レキサルティの効果・効能が期待できる病気
レキサルティには、どのような効果・効能が期待できるのでしょうか。
レキサルティはドパミン部分作動薬として働き、ドパミンを適度な量に調整します。過剰なドパミンを抑えて、不足しているドパミンの働きを強めます。
このため、ドパミンが過剰となって生じる幻聴や妄想の改善が期待できます。
ドパミンをブロックしすぎないため、副作用も軽減されています。
それだけでなくレキサルティは、セロトニンにも強力に作用します。
抗うつ剤の作用ポイントであるセロトニン1A受容体に対して部分作動薬として働き、その働きを強めます。
このため、気分安定薬としての効果も期待されています。
このためレキサルティでは、
- 統合失調症
- うつ病・うつ状態
- 双極性障害(とくに躁状態・混合状態)
- 衝動のコントロールできない状態(認知症や発達障害など)
など、エビリファイと同じような病気での効果・効能が期待できます。統合失調症やうつ病・双極性障害については後述します。
レキサルティは、エビリファイに比べるとやや鎮静作用が強いといわれています。
ですが抗精神病薬の中では穏やかな鎮静作用で、衝動性のコントロールに効果が期待できます。
副作用も比較的少なく、お子さんや高齢者などにも使いやすいお薬になります。
レキサルティの統合失調症での効果
レキサルティは、鎮静作用はそこまで強くありません。鎮静作用とは、興奮や衝動を鎮める作用のことです。
作用メカニズムではエビリファイよりも鎮静作用は強そうですが、やや強い程度という印象です。
このためレキサルティは、統合失調症の興奮が目立たない方に使われます。
統合失調症の患者さんでは、幻聴や妄想によって混乱してしまって、著しい興奮状態となってしまうことが少なくありません。
そういった場合は鎮静作用の強いお薬が使われることが多く、レキサルティを使うにしても鎮静作用の強いお薬と併用することが必要になります。
レキサルティは幻聴や妄想などの陽性症状だけでなく、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状、認知機能障害や感情障害にも効果が期待できます。
このため急性期というよりは、慢性期に使われることも多いです。
他のお薬をつかって陽性症状が落ちついたのちに、レキサルティに変更していくこともあります。
エビリファイと同じような位置づけになるかと思いますが、エビリファイよりはドパミンをブロックする作用が強く、幻聴や妄想に対する効果が期待できます。
レキサルティのうつ病・双極性障害での効果
レキサルティは、気分に対する効果も期待されています。
レキサルティは、
- 低用量:うつ病・うつ状態
- 高用量:躁状態
に効果が期待することができます。
レキサルティは低用量ではセロトニンやドパミンの働きを強める目的で使われ、高用量ではその働きを抑える目的で使われます。
レキサルティの抗うつ作用にはドパミンの働きもありますが、セロトニンの影響が大きいと考えられています。
レキサルティは抗うつ剤のターゲットと同じであるセロトニン1A受容体に作用します。
部分作動薬として作用し、低用量ではセロトニンの働きを強めます。
一方で躁状態では、穏やかに気持ちを落ちつけていく効果が期待できます。
躁状態に対しては、レキサルティはエビリファイよりも鎮静作用が期待できます。
落ちつける作用が強いお薬では、うつ状態に転じてしまうこともあります。
レキサルティはエビリファイ同様に、そうしたうつ転は少ないお薬と思われます。また、気分安定作用も期待できます。
レキサルティの適応が正式に認められている病気
レキサルティの適応が正式に認められている病気は、
- 統合失調症(2018年)
- うつ病・うつ状態の増強療法(2023年)
になります。抗うつ剤で効果が十分でなかったうつ病・うつ状態に対して、治験で有効性が示されています。(海外ではすでに承認済み)
今後は、
- 躁状態
- 認知症のアジテーション(衝動のコントロール)
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
などに対して、適応拡大されていくことが予想されます。
海外での適応からみるレキサルティの効果
レキサルティはアメリカでは、
- 統合失調症
- 大うつ病性障害の補助療法
- 認知症のアジテーション
の適応が認められています。
統合失調症では、日本では2mgまでが原則となっていますが、海外では4mgまで使うことができます。
うつ病では、それよりも低用量で使われます。
1mgより開始して、2mgを維持療法とされています。最大用量として3mgまで使うことができます。
レキサルティの特徴
<メリット>
- 陰性症状や認知機能の改善が期待できる
- 副作用が全体的に少ない
- 気分安定作用が期待できる
- 1日1回の服用で効果が期待できる
<デメリット>
- 鎮静作用が弱い
- ややアカシジアが多い
- 薬価が高い(先発品しかない)
それではレキサルティの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。そして、レキサルティとエビリファイとの比較をしたいと思います。
レキサルティの効果
レキサルティには、
- 幻聴や妄想を改善
- 躁状態やうつ状態の改善
- 衝動性のコントロール
に効果が期待できます。
レキサルティの効果の特徴としては、
- 鎮静作用が穏やか
- 副作用が全体的に少ない
- 認知機能や陰性症状の改善が期待できる
- 気分安定作用が期待できる
といったことがあげられます。
それではレキサルティは、抗精神病薬の中でどういった効果の位置づけなのでしょうか。
レキサルティの作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。
レキサルティは、
- ドパミンにしっかり作用するが、部分作動薬として働く
- セロトニンにもしっかりと作用する
- 抗α1作用がやや強い
- 抗コリン作用がわずか
という特徴があります。
抗α1作用などが目立ちますが、ドパミンとセロトニンに対する作用が非常に強力で、相対的に見ればそこまで強くありません。
このため、全体的に副作用が少ないです。
抗α1作用は眠気を生じますが、レキサルティでは眠気の副作用報告はそこまで多くありません。
このことは、効果としては鎮静作用の弱さにつながり、興奮を鎮める効果は強いとはいえません。
またレキサルティは部分作動薬ですが、エビリファイに比べるとドパミンをブロックする方向に働きます。
このため、幻聴や妄想などの陽性症状に対して、より効果が期待されています。
抗精神病薬は気分安定作用が期待できるお薬もあります。レキサルティもその一つで、セロトニンの働きを強めることにより、特に抗うつ効果が期待できます。
レキサルティの副作用
レキサルティの副作用は、全体的にマイルドになります。
昔の抗精神病薬と比べると明らかに副作用は少なく、使いやすいお薬になります。
新しい非定型抗精神病薬の中でも、副作用は全体的に少なめです。
レキサルティの副作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。
このようにみてみると、レキサルティは全体的に副作用が少ないことがわかると思います。レキサルティの副作用として最も多いのが、
- アカシジア(錐体外路症状)
になります。
じっとしていられなくなる不快感が生じる副作用で、あまり用量に関係なく認められます。
用量を増していくと問題になることが多いのは、眠気の副作用になります。
レキサルティの承認時の副作用頻度は、
- アカシジア(5.7%)
- 頭痛(4.5%)
- 不眠(4.5%)
- 体重増加(3.1%)
- 振戦(2.8%)
- 傾眠(2.0%)
このようになっています。このように実際に報告されているのは、ドパミン関連の副作用が多いです。
しかしながらエビリファイと比べると、明らかにアカシジアの副作用は軽減されています。
レキサルティの剤形と薬価
レキサルティのお薬としての特徴についてみていきましょう。
レキサルティは発売をこれから控えているお薬のため、ジェネリックが発売されるのは当分先になります。
レキサルティは、
- 0.5mgOD錠
- 1mg錠・1mgOD錠
- 2mg錠・2mgOD錠
となり、通常の錠剤とOD錠の2剤形が発売されています。(将来的にはOD錠のみとなるとのことです)
2023年4月現在の薬価については、
- 0.5mgOD錠:131.0円
- 1mg錠・1mgOD錠:245.5円
- 2mg錠・2mgOD錠:469.1円
となります。
薬価に自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
レキサルティは発売して間もないため、先発品しか発売されていません。薬価は高くなってしまいます。
レキサルティとエビリファイの比較
レキサルティは、エビリファイが改良されて作られたお薬です。その違いは大きく2つあります。
- セロトニンに強く働く
- ドパミンの働きは控えめ(固有活性が低い)
このことがどのような違いをもたらすのか、みていきましょう。
まずセロトニンの働きですが、レキサルティはエビリファイと比較し、セロトニン1A受容体に強力に作用し、部分作動薬(パーシャルアゴニスト)として働きます。これによって、
- 統合失調症での陰性症状や認知機能障害の改善
- うつ状態での抗うつ効果
が期待できます。
セロトニン2A受容体に対してもエビリファイより強力に作用し、拮抗薬(アンタゴニスト)として働きます。これによって、
- 錐体外路症状の軽減
- 睡眠の質の改善
という特徴があります。
さらにレキサルティは、ドパミンに対しても部分作動薬として働きますが、その働きはエビリファイよりも控えめです。
このためエビリファイよりレキサルティでは、ドパミンの働きがブロックされます。これによって、
- 陽性症状への効果の増強
- 飲み始めに多いアカシジアや不眠といった副作用の軽減
といった特徴があります。
レキサルティの用法と効果のみられ方
レキサルティの用法は、以下のようになっています。
- 開始用量:1mg
- 維持量:2mg
- 用法:1日1回
統合失調症では高用量から、うつ病・うつ状態では低用量から使われることが多いです。
うつ病・うつ状態でも開始用量は1mgとなっていますが、実際には0.5mgから開始となることが多いです。
一般的に統合失調症では、5日目から2mgまで増量が可能となっており、2mgはしっかりと使うべきとされています。
海外では4mgまでの適応が認められているお薬ですが、日本では2mgまでが原則となっています。
レキサルティは肝臓の酵素であるCYP2D6とCYP3A4が中心となって分解されていきますが、これらの働きを邪魔するようなお薬を服用していたり、この酵素の働きが生まれつき弱い方では、慎重に使っていくこととなっています。
- CYP2D6阻害作用:抗うつ剤のパキシルなど
- CYP3A4阻害作用:一部の抗生物質や抗真菌薬など
- CYP2D6の活性が弱い:poor metabolizer(日本人の3%程度)
レキサルティは1日1回の服用で効果は持続しますが、2回に分けて使っていくこともできます。
低用量の場合は朝食後、高用量の場合は夕食後などに処方されます。食事の影響は少ないため、就寝前に服用しても問題ないでしょう。
【参考】レキサルティの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
レキサルティは、
- 半減期(T1/2):52~66時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):6時間
となっています。
レキサルティは6時間ほどでピークになり、そこから52~66時間で半分の量になるということになります。
ですから1日1回の服用が可能になります。
そしてお薬の血中濃度は、飲み続けていくことで安定していきます。
およそ半減期の4~5倍の時間で安定するといわれていて、このようになると定常状態と呼ばれます。
ですからレキサルティの血中濃度は、安定するまでに1~2週間ほどかかります。
服用時期でみたレキサルティの副作用
レキサルティの副作用について、服用時期ごとにみていきましょう。
レキサルティの飲み始めに注意すべきなのは、アカシジア(錐体外路症状)になります。
アカシジアとは、「ソワソワしてじっとしていられない」「体を動かさずにはいられない」といった副作用になります。
この副作用は用量に関係なく認められ、低用量から開始しても認められます。
アカシジアが認められた場合は、抗不安薬・抗コリン薬・βブロッカーなどが副作用を和らげることがあります。
可能であれば、他のお薬に変更していきます。
レキサルティは全体的に副作用は少ないですが、お薬を増量していくことで増加してくる副作用として眠気が懸念されます。
高用量にすると眠気が強まる可能性があります。一方で低用量では、不眠の副作用が認められることもあります。
そして服用を続けていく中で問題となるのが、
- 糖代謝異常
- 肝・腎機能障害
になります。定期的に採血をすることで、副作用をチェックしていく必要があります。
また頻度は少ないですが、高プロラクチン血症から生理不順や性機能障害の原因になることがあります。
お薬を減薬していく際には、離脱症状や悪性症候群に注意が必要です。
レキサルティでは離脱症状は少ないですが、長期に服用していると心身の不調が認められることも考えられます。
またお薬の増減によって、悪性症候群が起こることもあります。
悪性症候群は発熱や意識障害に加え、錐体外路症状(手足の震えやこわばり、嚥下障害)、自律神経症状、横紋筋融解症(筋肉の痛み)などが認められます。
お薬の増減の後に、咳や鼻水などがなくて高熱が認められた場合は、注意が必要です。
レキサルティの副作用の対処法
レキサルティの副作用が認められた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
レキサルティの副作用が認められた場合、
- 何とかなるなら様子を見る(経過観察)
が基本的な対処法となります。お薬を飲み続けるうちに身体が少しずつ慣れていき、落ちついてくることが多いためです。
しかしながらどうしても症状が改善しない場合は、無理せずに中止して主治医に報告してください。
レキサルティを使っていったほうが良い場合は、症状を和らげるお薬を併用してしばらく様子を見ることもあります。
生活習慣で改善ができる部分があれば、並行して行っていくことも大切です。
レキサルティの副作用で多くの方が気にされるのが、
- 眠気
- 太る
になります。
レキサルティの副作用で頻度が最も多いのは、
- アカシジア(錐体外路症状)
になります。対処法も含めてみていきましょう。
レキサルティと眠気・不眠
レキサルティ承認時の副作用頻度をみてみましょう。
- 不眠:4.5%
眠気(傾眠):2.0%
このようにレキサルティは、眠気も不眠もどちらもとりうるお薬です。用量を増やすにつれて、眠気が強まる傾向があります。
レキサルティで眠気が生じる原因としては、
- 抗α1作用や抗ヒスタミン作用での直接的な眠気
- セロトニン2A遮断作用による深部睡眠の増加
こういったことが考えられます。
レキサルティはドパミンやセロトニンだけでなく、他の受容体にも作用します。
セロトニンに対しても、2A受容体をブロックすることで深部睡眠を増加させます。
レキサルティで不眠がみられる原因は、
- 興奮を高めてしまうことがある
- アカシジアやレストレスレッグ症候群を引き起こす
といったことがあげられます。
レキサルティは、鎮静作用が少ないお薬になります。
レキサルティがドパミンを刺激してしまい、興奮や衝動を高めてしまうことがあります。
またレキサルティは、アカシジアやレストレスレッグ症候群(むずむず脚症候群)など、じっとしていられなくなる副作用を誘発します。
その結果として、不眠につながってしまうことがあります。
このようにレキサルティでは、眠気と不眠のどちらも生じることがあります。
レキサルティで眠気が認められた場合の対処法としては、
- 慣れるまで待つ
- 服用のタイミングをかえる(夕食後や就寝前)
- 服用を2回にわける
- お薬の量を減らす
- 他の抗うつ剤に変更する
といったことがあります。
反対に不眠が認められている場合の対処法は、
- 慣れるまで待つ
- 睡眠の質の改善を図る(生活習慣やお薬)
- 服用のタイミングを変える(朝食後)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
レキサルティと体重(太る?痩せる?)
体重について心配される方はとても多く、お薬を中止してしまう理由としても多いのが太る副作用です。
食欲や代謝などは様々な影響があり、お薬だけでなく病状も関係してきます。
このため一概にお薬の影響だけを評価していくことは難しいです。
ですがレキサルティは、どちらかといえば太りやすい傾向にあるお薬ではあります。
しかしながら他の抗精神病薬と比較すると太りにくいため、他の薬から変更して痩せると感じる方もいらっしゃいます。
レキサルティの承認時の副作用頻度としては、
- 体重増加:3.1%
- 体重減少:0.3%
このようになります。
ですからレキサルティは、太る傾向のあるお薬であることがわかるかと思います。
レキサルティが太る原因は、
- 抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用の直接的な食欲増加
- 原因不明だが、非定型抗精神病薬が代謝を低下させるため
抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用は、いずれも食欲を増加させる働きがあります。
これらが直接的に食欲増加を生じますが、レキサルティでは相対的にみると、これらの作用は弱いです。
また原因がよくわかっていませんが、昔からある定型抗精神病薬に比べて、非定型抗精神病薬は代謝が低下することが分かっています。
これらが合わさり、他の非定型抗精神病薬は少ないものの、どちらかといえばレキサルティは太る傾向にはあるお薬になります。
レキサルティで太ってしまった場合の対処法としては、
- 生活習慣を見直す
- 運動習慣を取り入れる
- 食事の際によく噛むようにする
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
レキサルティとアカシジア(錐体外路症状)
レキサルティで最も頻度が多い副作用として、アカシジアがあります。
アカシジアは、日本語に訳すると静坐不能と呼ばれる症状で、
- じっとしていられない
- ソワソワして落ちつかない
- 足がむずむずする
- 貧乏ゆすりが止まらない
といった症状になります。
心の落ちつかなさと、身体を動かしたいという衝動が合わさります。そして体を動かすと、その苦痛は軽減します。
アカシジアの原因は、
- 感情に関係する部分でのドパミンのブロック
が関係しているといわれています。
錐体外路症状の一つと考えられていますが、パーキンソン症状を生じる部分(黒質線条体のドパミンブロック)とは異なると考えられています。(アカシジアは中脳辺縁系や中脳皮質系のドパミンブロック)
レキサルティのもとになったエビリファイでは、アカシジアの副作用頻度が高いです。
エビリファイよりは抑えられたとはいえ、レキサルティでもその傾向は認められ、他の抗精神病薬と比較しても多いです。
※左の緑が承認時、右の青が市販後調査でのアカシジアの頻度
レキサルティによるアカシジアの特徴として、
- 低用量でも高用量でも大きな差がない
- 飲み始めが多いが、2~3か月たって生じることもある
といったことがあげられます。
レキサルティでアカシジアが認められた場合の対処法は、
- 慣れるまで待つ
- お薬を併用する(抗不安薬・βブロッカー・抗コリン薬)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
といったことがあります。
レキサルティの離脱症状と減薬方法
レキサルティは離脱症状が少ないお薬になります。
ですが離脱症状が認められる可能性もありますので、長期で服用していった場合は少しずつ減量していく必要があります。
レキサルティの離脱症状としては、
- ドパミン作動性:幻覚や妄想(過感受性精神病)・アカシジア・ジスキネジア
- コリン作動性:精神症状(不安・イライラ)・身体症状(不眠・頭痛)・自律神経症状(吐き気・下痢・発汗)
この2つの離脱症状が認められることがあります。
レキサルティはドパミンの部分作動薬になりますし、作用時間も長いためにドパミン作動性の離脱症状はおこりにくいです。
抗コリン作用もほとんどないのですが、副作用止めに抗コリン薬を服用しているときは注意が必要です。
これらの離脱症状は、薬が減って1~3日ほどして認められます。
2週間ほどで収まっていくことが多いですが、まれに月単位で続いてしまうこともあります。
こういった離脱症状を防ぐために、レキサルティの減量は少しずつ行っていきます。離脱症状がひどい場合は元のお薬の量に戻し、減量のペースを緩めていきます。
減量の方法は、以下の2つの方法があります。
レキサルティの運転への影響
心の病気の治療薬は多くが運転や危険作業が禁止となっていました。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。
そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
レキサルティの添付文章でも同様に、
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
という表現となっています。
統合失調症や双極性障害でも、症状がコントロールできていれば運転免許は取得することが可能です。(医師の診断書が必要)
ですがほとんど全てのお薬で運転禁止とされているのが実情です。運転ができないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
レキサルティの妊娠・授乳への影響
レキサルティの妊娠への影響から見ていきましょう。レキサルティのお薬の添付文章には、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
もちろん妊娠中は、お薬を避けるに越したことはありません。しかしながらレキサルティを中止したら病状が不安定になってしまう場合は、お薬を最小限にしながら続けていくことが多いです。
統合失調症や双極性障害は、お薬を減量していくと症状が不安定になるリスクが高まります。ですからその場合は、レキサルティの服用を続けるべきです。
レキサルティは、奇形のリスクに関して明かな報告はありません。
レキサルティが影響するのは、産まれた後の赤ちゃんになります。離脱症状や錐体外路症状が認められることがあると報告されています。
後遺症が残るたぐいのものではないので、産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、レキサルティの授乳への影響をみていきましょう。レキサルティのお薬の添付文章には、
授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。
このように記載されています。しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。
母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
ご自身での判断にはなりますが、レキサルティを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。
母乳を通して赤ちゃんにレキサルティの成分が伝わってしまうことは、動物実験だけでなく人間でも確認されています。乳児検診で体重が増えていかないといったことがあれば、医師と相談したほうが良いでしょう。
レキサルティ錠のジェネリック
レキサルティ錠は、2018年に発売されるお薬になります。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)
レキサルティのジェネリックは、この特許が切れた後に発売されます。(後発品)
ジェネリック医薬品の名称は、近年は薬の一般名がつけられます。レキサルティ錠であれば、ブレクスピプラゾール錠になるかと思います。
ジェネリック医薬品になると、様々な製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。
というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
レキサルティは即効性を期待するお薬ではないため、ジェネリック医薬品が発売されれば、変更しても効果に大きな差はないと推定されます。
【参考】レキサルティの作用機序
最後に、レキサルティの作用の仕組みについてお伝えしていきたいと思います。
レキサルティが効果が発揮するのは、大きく2つの物質が関係しています。
- ドパミン
- セロトニン
ドパミンは脳の中で、大きく4つの働きをしています。
- 中脳辺縁系―陽性症状の改善(幻聴や妄想)
- 中脳皮質系―陰性症状の出現(感情鈍麻や意欲減退)
- 黒質線条体―錐体外路症状の出現(パーキンソン症状やジストニア)
- 視床下部下垂体系―高プロラクチン血症(生理不順や性機能低下)
統合失調症では、中脳辺縁系でのドパミンの分泌・活動の異常によって幻聴や妄想といった陽性症状が認められると考えられています。
この中脳辺縁系のドパミンを抑えることで、陽性症状の改善が期待できます。(ドパミンD2受容体遮断作用)
しかしながらドパミンを全体的にブロックしてしまうと、他の部分では必要なドパミンの働きが抑えられてしまいます。
他の3つの部分ではドパミンの働きが抑えられてしまい、上記のような副作用が生じます。
そこで注目されたのが、ドパミンを抑制する働きのあるセロトニンです。
このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待できます。
ですから、ドパミン(ドパミンD2受容体)とセロトニン(セロトニン2A受容体)を同時にブロックすれば、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待でき、副作用も軽減されます。
こういった作用メカニズムがあるお薬を非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)といいます。
レキサルティは非定型抗精神病薬に分類されます。
レキサルティのドパミンとセロトニンへの働き方について、以下で詳しくお伝えしていきます。
ドパミンに対する作用
レキサルティは、
- D2受容体部分作動薬(パーシャルアゴニスト)
として働きます。
レキサルティは、ドパミン受容体に強力に作用します。他のお薬を併用しても押しのけてくっつくほどです。
そしてレキサルティはフルには作用せず、ほどほどに作用します。
その割合を固有活性といいますが、エビリファイ17%に対してレキサルティ10%と、固有活性は低くなっています。
およそエビリファイの2/3で、エビリファイよりもドパミンを抑える方向に働きます。
ドパミンが過剰な場合は、そのドパミンが作用できなくなるので働きが抑えられます。
一方でドパミンが欠乏している場合は、レキサルティがドパミン受容体に作用して働きを強めます。
このようにレキサルティは、ドパミンの働きを適切に調節する働きがあります。
セロトニンに対する作用
レキサルティはセロトニンに対して、
- セロトニン1A受容体:部分作動(パーシャルアゴニスト)
- セロトニン2A受容体:遮断(アンタゴニスト)
- セロトニン2C受容体:遮断(アンタゴニスト)
の3つの働きがあります。セロトニン2C受容体遮断作用は、食欲増加などの副作用に関係します。
セロトニン2A受容体をブロックすることで、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを間接的に強めます。
これがレキサルティでの陰性症状の改善や副作用の軽減につながります。
セロトニン1A受容体に対しては、部分作動薬として働きます。セロトニン1A受容体は、抗うつ剤が作用するポイントです。
レキサルティは、エビリファイと比べても強力に1A受容体に作用し、その働きを強めることで感情障害に対しても効果が期待できます。
エビリファイもレキサルティもうつ状態に効果が期待できますが、
- エビリファイ:ドパミンの作用が優位
- レキサルティ:セロトニンの作用が優位
と考えられています。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:レキサルティ 投稿日:2023年3月23日
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