ダリドレキサントの効果と副作用
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ダリドレキサントとは?
ダリドレキサントは、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。
日本では薬価未収載のため製品名がまだ決まっていません。海外では、「quviviq(キュビビック)」として発売されています。
覚醒の維持に必要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬になります。
オレキシンは生理的に変動している物質で、日中は増加して夜間は減少しています。
ダリドレキサントは睡眠と覚醒に関係する生理的な物質に働くことで、睡眠を促していくお薬になります。
ダリドレキサントは他のオレキシン受容体と同様、
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
をメインに使われる睡眠薬となりそうです。
オレキシン受容体拮抗薬は、
- ベルソムラ(一般名:スボレキサント):2014年発売
- デエビゴ(一般名:レンボレキサント):2020年発売
- ダリドレキサント:2023年承認申請
と三種類になります。
ダリドレキサントの特徴
ダリドレキサントが分類されるオレキシン受容体拮抗薬のメリットとしては
- 自然な眠気を強くする
- 中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害に有効
- 入眠障害にも効果が期待できる
- 依存性が極めて少ない
があげられます。ダリドレキサントにも同様のメリットがあると思われます。
それではダリドレキサントの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 用法・用量
に分けてみていきましょう。
ダリドレキサントの効果
オレキシン受容体拮抗薬は自然な眠気を強くするタイプの睡眠薬になります。
このような睡眠薬は、
- 依存性が極めて少ない
- 強引さがなくて、効果と副作用に個人差がある
という特徴があります。
また、ダリドレキサントは他のオレキシン受容体拮抗薬と同様に、
- 中途覚醒
- 早期覚醒
- 熟眠障害
に対して、効果が期待できそうです。
国内第Ⅲ相臨床試験では490例の不眠症患者を対象にダリドレキサント服用時の総睡眠時間と睡眠潜時を評価しており、28日目におけるベースラインからの変化をプラセボ群と比べて有意に改善したという報告となっています。
睡眠潜時: 消灯あるいは就床時刻から睡眠開始までの時間
投与群 | 総睡眠時間 | 睡眠潜時 |
---|---|---|
ダリドレキサント50mg群 | プラセボ群と比べて有意に改善(p<0.001) | プラセボ群と比べて有意に改善(p<0.001) |
ダリドレキサント25mg群 | プラセボ群と比べて有意に改善(p=0.042) | プラセボ群と比べて有意に改善(p=0.006) |
ダリドレキサントの副作用(海外データ)
QUVIVIQ(一般名:ダリドレキサント)の有害事象(副作用含む)として、
- 頭痛
- 傾眠
- 疲労
- めまい
- 吐き気
が報告されています。
また、頻度は低いですが
- 睡眠麻痺
- 幻覚
- 幻視
が報告されています。
QUVIVIQ25mg群 | QUVIVIQ50mg群 | プラセボ群 | |
---|---|---|---|
頭痛 | 6% | 7% | 5% |
傾眠または疲労 | 6% | 5% | 4% |
めまい | 2% | 3% | 2% |
吐き気 | 0% | 3% | 2% |
睡眠麻痺 | 0.5% | 0.3% | 報告なし |
幻覚および幻視 | 0.6% | 報告なし | 報告なし |
※:QUVIVIQはアメリカにおけるダリドレキサントの販売名です。
ダリドレキサントの用法・用量
ダリドレキサントの用法・用量は、国内第Ⅲ相臨床試験では以下のように設定されています。
- 開始用量:50mgまたは25mg
- 用法:1日1回就寝前
- 剤型:錠(25mg・50mg)
また、プレスリリースによると、2024年下半期を目標に10mg錠も併せて販売する準備が勧められているようです。
ダリドレキサントの併用禁忌・併用注意薬(海外データ)
ダリドレキサントは、CYP3A4という肝臓の酵素で代謝されて分解されていきます。
このためCYP3A4の働きに関係するお薬は、併用に注意が必要です。
【併用を避けること:CYP3A4を強く阻害するお薬】
例:
抗真菌薬:イトラコナゾール
【QUVIVIQの用量を通常量より減量することを推奨:CYP3A4を中等度に阻害するお薬】
例:
降圧薬・抗不整脈薬:ジルチアゼム
【併用を避けること:CYP3A4を強く誘導するお薬・CYP3A4を中等度に誘導するお薬】
例:
抗結核薬:リファンピシン
抗ウイルス薬:エファビレンツ
これら以外に、アルコールとの併用は日中の機能障害をもたらすため、併用を避けることとなっています。
上記の海外データと他のオレキシン受容体拮抗薬のデータを元に、ダリドレキサントの国内使用における併用禁忌・併用注意薬が設定されると思われます。
ダリドレキサントの運転への影響
睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。
ダリドレキサントが分類されるオレキシン受容体拮抗薬の添付文書には「本剤の影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。」と記載されています。(ベルソムラ錠添付文書第9版及びデエビゴ錠添付文書第5版を参照)
海外の臨床試験では、50~79歳の健康成人を対象に、QUVIVIQの服用が翌朝の運転に及ぼす影響を検討しており、
初回投与後は翌朝の運転能力の低下がみられましたが、推奨用量の2倍を投与したデータであり、4日間連続投与後には統計学的に有意な能力低下はみられませんでした。
この結果を踏まえ、アメリカの添付文書では「翌日の運転に注意すること」と記載されています。
ダリドレキサントの妊娠・授乳への影響(海外データ)
ダリドレキサントの妊娠への影響から見ていきましょう。
ダリドレキサントが分類されるオレキシン受容体拮抗薬の添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」と記載されています。(ベルソムラ錠添付文書第9版及びデエビゴ錠添付文書第5版を参照)
ダリドレキサントの妊娠中の服用に関する臨床データはまだ集積されていないようです。
動物実験では、臨床用量の10倍のQUVIVIQを投与したときに、母体の体重増加および摂食量の減少が認められたという報告があります。
次に、ダリドレキサントの授乳への影響をみていきましょう。
他のオレキシン受容体拮抗薬の添付文書には「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。」と記載されています。(ベルソムラ錠添付文書第9版及びデエビゴ錠添付文書第5版を参照)
ダリドレキサントの授乳中の服用に関する臨床データはまだ集積されていないようです。
動物実験では、ダリドレキサントとその代謝物は授乳期のラットの乳汁中に存在したという報告があります。
しかし、アメリカの添付文書では「お母さんのQUVIVIQの必要性と赤ちゃんへの薬の影響のバランスを見て検討する」という記載となっています。
【参考】オレキシンとは?
ダリドレキサントの作用メカニズムには「オレキシン」という覚醒を維持する物質が大きく関係しています。
オレキシンには生理的な変化があり、日中に増加していき、夜間になると減少しています。このようにオレキシンは、睡眠状態と覚醒状態を切り替えるスイッチのような役割を果たしています。
【参考】ダリドレキサントの作用機序
ダリドレキサントの不眠症治療における作用機序は、オレキシン受容体の拮抗作用によるものと推測されています。
ダリドレキサントは、覚醒を促すオレキシンA・オレキシンBという物質が作用するオレキシン1および2受容体への結合を妨げることで、覚醒を促す欲求が抑制されると考えられます。
オレキシン受容体への親和性を比べると、
- ダリドレキサント:OX1R>OX2R
- ベルソムラ:OX1R≦OX2R
- デエビゴ:OX1R<<OX2R
となりそうです。
ダリドレキサントはオレキシン1受容体への作用が強いお薬と言えそうです。
オレキシン受容体拮抗薬のオレキシン受容体に対する親和性(Ki値)
薬品名 | Ki値 | |
---|---|---|
オレキシン1受容体(OX1R) | オレキシン2受容体(OX2R) | |
ダリドレキサント | 0.47nM | 0.93nM |
ベルソムラ | 0.55nM | 0.35nM |
デエビゴ | 8.1nM | 0.48nM |
Ki値:阻害定数。 受容体に対する親和性が高いほど低い値を示す
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カテゴリー:ダリドレキサント 投稿日:2024年3月19日
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