塩酸ドネペジル(アリセプト)の効果と副作用
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認知症には治療ができないというイメージをもたれることもありますが、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症には有効な治療薬があります。
とりわけアリセプト(一般名:塩酸ドネペジル)は、軽度から高度までのアルツハイマー型認知症ならびにレビー小体型認知症に適応のある薬です。
本記事ではドネペジルの有効成分・効果・作用機序・用法・注意事項・副作用・臨床成績について、わかりやすく解説します。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症を治療する際に役立ててみてください。
1.効能・効果
効果は「アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制」です。
ただしアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の、病態そのものを防ぐことはできません。
また精神症状・行動異常などに対する有効性は確認されていません。
さらに2つのタイプ以外の認知症における有効性は確認されていません。
2.作用機序
アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症では、脳内コリン作動性神経系の顕著な障害が認められます。
ドネペジルは、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳内アセチルコリンを増加させ、脳内コリン作動性神経系の働きを活発にします。
3.用法および用量
1日1回3mgの経口投与から開始し、1~2週間後に5mgに増量します。ただし3mgは有効な用量ではなく、副作用である消化器症状を抑えるのが目的です。
高度のアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症には、さらに4週間以上経過後、10mgに増量します。
また症状によって適宜減量が必要です。とりわけレビー小体型認知症の場合、本剤の服用によって錐体外路症状が悪化することがあります。
ですからベネフィットがリスクを上回るかどうかを判断しながら、継続するかどうかを判断しなければなりません。
4. 有効成分・性状・薬価
エーザイ株式会社の製造したアリセプト(先発品)の有効成分・形状・薬価を示します。
有効成分
ドネペジル塩酸塩
アリセプトの形状・薬価
アリセプトには以下のような形状があります。
カッコ内はドネペジル(ジェネリック)の薬価になります。
ゼリーなど、認知症の高齢者に飲んでいただきやすい剤形工夫がなされています。最近では、アリドネパッチという貼り薬が先発品として発売されています。
- アリセプト錠3mg:86.5円/錠(35.9円)
- アリセプト錠5mg:125.4円/錠(53.7円)
- アリセプト錠10mg:215.2円/錠(91.7円)
- アリセプトD錠はアリセプト錠と同じ薬価
- アリセプト細粒0.5%:123.4円/g(50.8円)
- アリセプト内服ゼリー3mg:117.7円/個(89円)
- アリセプト内服ゼリー5mg:171.4円/個(124.6円)
- アリセプト内服ゼリー10mg:295円/個(261.1円)
- アリセプトドライシロップ1%:303円/g(なし)
5. 服用する際の一般的な注意事項
食事による吸収への影響はなく、食事時間に関係なく服用できます。アリセプトの有効性が認められない場合、漫然と服用せず、継続するかどうかを検討することが必要です。
眠気・めまい・意識障害を起こすことがあるため、自動車等の運転、危険を伴う機械の操作は禁忌です。
6.注意すべき合併症・状態
以下の病気あるいは状態がある場合は注意してください。
- 心臓病:不整脈などが悪化することがある
- 消化性潰瘍の既往:潰瘍が悪化することがある
- 気管支喘息・閉塞性肺疾患:症状が悪化することがある
- 錐体外路障害(パーキンソン病など):症状が悪化することがある
- 妊婦または妊娠している可能性がある女性:ベネフィットがリスクを上回ると判断させる場合のみ服用可
- 授乳婦:治療の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続を検討
7. 併用に注意すべき薬
- スキサメトニウム塩化物水和物:筋弛緩作用が増強することがある
- コリン賦活剤・コリンエステラーゼ阻害剤:迷走神経刺激作用などが増強されることがある
- イトラコナゾール・エリスロマイシン・イストラデフィリン・キニジン硫酸塩水和物等:アリセプトの作用を増強させることがある
- カルバマゼピン・デキサメタゾン・フェニトイン・フェノバルビタール・リファンピシン等:アリセプトの作用を減弱させることがある
- 中枢性抗コリン剤・アトロピン系抗コリン剤:アリセプトと抗コリン剤それぞれの作用を減弱させることがある
- 非ステロイド性消炎鎮痛剤:消化性潰瘍を起こすことがある
認知症の他の治療薬であるメマリーとの併用が可能
です。
8.副作用
重大な副作用とその他の副作用について解説します。
特によく起きるのは、消化器症状になります。
重大な副作用
よくみられる副作用と対策
よくみられる副作用(頻度1~3%未満)として食欲不振・嘔気・嘔吐・下痢などの消化器症状があります。
この副作用は、消化管における作用によって生じると考えられています。
アリセプトの内服開始後および増量後にみられることが多いです。
症状が軽い場合は、様子をみているうちに自然に
症状がおさまらなければ、吐き気止めなどを併用して続けることもあります。
それでもおさまらなければ、別の薬(メマリーなど)に変更していくことが多いです。
重大な副作用
- QT延長、心室頻拍、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈、心ブロック、失神(出現頻度0.1~1%未満)
- 心筋梗塞・心不全(0,1%未満)
- 消化性潰瘍・消化管出血(0,1%未満)・十二指腸潰瘍穿孔(頻度不明)
- 肝機能障害(0.1~1%未満)・肝炎・黄疸(頻度不明)
- 脳性発作(0.1~1%未満)・脳出血・脳血管障害(0,1%未満)
- 錐体外路症状害(アルツハイマー型認知症:0.1~1%未満、レビー小体型認知症:9.5%)
- 悪性症候群(0,1%未満)
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 呼吸困難(0,1%未満)
- 急性膵炎(0,1%未満)
- 急性腎障害(0,1%未満)
- 原因不明の突然死(0,1%未満)
- 血小板減少(0,1%未満)
その他の副作用
- 食欲不振・嘔気・嘔吐・下痢(1~3%未満)
- 発疹・搔痒感(0.1~1%未満)
- 腹痛・便秘・よだれ(0.1~1%未満)
- 興奮・不眠・幻覚などの精神症状(0.1~1%未満)
- 徘徊・振戦・頭痛・めまいなど(0.1~1%未満)
9.臨床試験成績
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症の患者に対して、アリセプトがどのくらい効果があるのかを示します。
9-1.軽症および中等症のアルツハイマー型認知症の場合
268例を対象にアリセプト3mgを1週間、5mgを23週間投与、またはプラセボを24週間投与して二重盲検比較試験を実施した結果を示します。
- 改善以上:5mg投与群で17%、プラセボ群で13%
- 軽度悪化以下:5mg投与群で17%、プラセボ群で43%
24週後において5mg投与群では悪化する確率が比較的に低くなっています。5mg群投与はプラセボ群と比較して有意に優れているといえます。
9-2.高度のアルツハイマー型認知症の場合
302例を対象にアリセプト10mg、5mg、プラセボを24週間投与して二重盲検比較試験を実施した結果を示します。
- 改善以上:10mg投与群で8%、5mg投与群で4%、プラセボ群で6%
- 軽度悪化以下:10mg投与群で31%、5mg投与群で40%、プラセボ群で47%
10mg投与群では悪化する確率が低くなっています。10mg投与群はプラセボ群と比較して有意に優れているといえます。
9-3.レビー小体型認知症の場合
140例を対象にアリセプト10mg、5mg、プラセボを24週間投与して二重盲検比較試験を実施した結果を示します。
- 改善以上:10mg投与群で16%、5mg投与群で36%、プラセボ群で4%
- 軽度悪化以下:10mg投与群で4%、5mg投与群で14%、プラセボ群で48%
10mg群ならびに5mg群はプラセボ群と比較して有意に優れていました。
またレビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症と比べると、アリセプトにより症状が改善する群が比較的多いことが分かります。
10.まとめ
アリセプトは、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬です。
アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳内アセチルコリンを増加させ、脳内コリン作動性神経系の働きを活発にします。
1日1回3mgの経口投与から開始し、1~2週間後に5mgに増量します。
高度のアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症には、さらに4週間以上経過後、10mgに増量します。
食欲不振・嘔気・嘔吐・下痢などの副作用がみられることがありますが、適宜減量すれば軽快することが多いです。
本剤の有効性が認められない場合、漫然と服用せず、継続するかどうかを検討することが必要です。
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カテゴリー:認知症治療薬 投稿日:2023年11月30日
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