エチゾラム(デパス)の効果と副作用
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エチゾラム(デパス)とは?
エチゾラム(商品名:デパス)は、1984年に発売されたベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬・睡眠薬になります。
気持ちを落ち着ける効果だけでなく、催眠作用も期待できるお薬です。
筋弛緩作用も強いため、肩こりなどの筋緊張を和らげる目的でも使われています。
エチゾラムは2016年10月まで向精神薬としての指定を受けておらず、処方制限がなかったために安易な処方が問題となりました。
このため悪しきイメージも強いお薬ですが、うまく使えばとても有用なお薬になります。
このためデパスは、
- 体の緊張が強い方
- 不安からの不眠が目立つ方
- 他のお薬で効果が乏しい方
に使われることが多い抗不安薬になります。
エチゾラムは効果の実感が期待できるお薬があるがゆえに、漠然と使い続けるとお薬がやめられなくなってしまうことがあります。
減薬すると離脱症状が生じてしまい、お薬を中止するのが難しくなってしまうことがあります。
このため、出口を見据えながら使っていく必要があります。
作用時間は短いため、効果を持続して期待する場合は1日3回使っていきます。頓服(必要なときに使うお薬)として使うこともあります。
エチゾラムは、先発品としてデパス錠として発売されました。
デパス錠は発売から年月もたっており、ジェネリック医薬品として一般名(成分名)のエチゾラム錠が発売となっています。
※以下では「デパス」として、エチゾラムの効果や副作用をお伝えしていきます。
デパスの特徴
<メリット>
- 即効性が期待できる
- 抗不安作用が強い
- 筋弛緩作用が期待できる
- 催眠作用が強い
- ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
<デメリット>
- 副作用に注意が必要(眠気・ふらつき)
- 依存性に注意が必要
- 作用時間が短い(服薬回数が必要になる)
それではデパスの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。
デパスの効果
デパスは、脳の機能を低下させることで不安や緊張を落ちつけるお薬になります。このようなお薬は、
- 即効性が期待できる
- 依存性に注意が必要である
という特徴があります。
その中でもデパスの特徴は、
- 作用時間が短いこと
- 抗不安作用が強いこと
- 筋弛緩作用が期待できること
- 催眠作用が強いこと
があげられます。
作用時間が短く、効果を持続させるためには1日3回の服薬が必要になります。作用が強いために効果の実感も期待できる抗不安薬です。
筋弛緩作用が強いために、肩こりや体のこわばりが認められるなど、筋肉の緊張が高まっているときには効果が期待できます。
緊張型頭痛の治療薬として使われることもあります。
また後述しますが、催眠作用も強いです。
不安が強くて寝付けないといった入眠障害、緊張から中途覚醒や早朝覚醒が認められる場合には、デパスが使われることがあります。
デパスの副作用
デパスは効果の実感も強いのですが、副作用にも注意が必要です。
眠気やふらつきといった副作用が認められることがあり、生活への支障や転倒などにも気を付ける必要があります。(過鎮静)
また作用時間の短さと効果の強さのために、デパスは依存性は高いお薬になります。
漫然とした服用を続けると効果がうすれてしまったり、中止しようとすると離脱症状により不調になってしまうことがあります。
デパスの副作用報告をみると、
- 眠気(3.60%)
- ふらつき(1.95%)
- 倦怠感(0.62%)
- 脱力感(0.37%)
となっています。(再審査終了時12,328例)
デパスの剤形と薬価
デパスのお薬としての特徴についてみていきましょう。
デパスの先発品としては、
- 0.25mg錠
- 0.5mg糖
- 1mg錠
- 1%細粒
の4剤形が発売されています。
後発品であるジェネリック医薬品も含めて、それぞれの薬価をみていきましょう。
- 0.25mg錠:9.2円(ジェネリック:5.9円)
- 0.5mg錠:9.2円(ジェネリック:6.4円)
- 1mg錠:10.1円(ジェネリック:6.5~9.8円)
- 1%細粒:41.2円/g(ジェネリック:18.6円/g)
※2023年4月現在の薬価になります。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
デパスの睡眠薬としての特徴
デパスの睡眠薬としての特徴をみていきましょう。抗不安薬としての特徴に共通する部分は省いています。
<メリット>
- 即効性が期待できる
- 入眠障害に有効
- 中途覚醒にも有効(早朝覚醒にも一定の効果)
- 抗不安効果が強い
- 睡眠薬としてカウントされない
(睡眠薬2剤で効果が不十分な場合に、医者側が処方しやすい)
<デメリット>
- 眠気やふらつきの副作用に注意が必要
- 筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
- 高齢者でせん妄を生じることがある
デパスの睡眠薬としての特徴は、抗不安効果と筋弛緩作用の強さになります。
不安や緊張が強くて寝つきが悪かったり、中途覚醒や早朝覚醒が認められる方に有用な睡眠薬となります。
その一方で、眠気やふらつきの副作用が認められることがあり、夜中に目覚めたときや翌日への持ち越しに注意が必要です。
筋弛緩作用のために、睡眠時無呼吸が悪化して睡眠効率が悪化してしまうこともあります。
高齢者では、せん妄(一過性の意識障害)にも注意が必要です。
睡眠薬としてのデパスは、診療報酬制度の関係もあって使われることが多い現状があります。
現在は睡眠薬が3剤以上処方されると、原則的には診療報酬が減額されてしまいます。
デパスは睡眠薬としてカウントされず、抗不安薬としてカウントされます。
このため2剤の睡眠薬で効果が不十分な場合に、デパスが追加されることがあります。
平成30年の診療報酬改定によって、抗不安薬と睡眠薬の合計4剤以上で減額されてしまうように変わったため、このような目的でデパスが使われることも減ってきました。
デパスの用法と作用時間
デパスの適応は、
- 神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
- うつ病における不安・緊張・睡眠障害
- 心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
- 統合失調症における睡眠障害
- 下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張(頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛)
となっています。不安や緊張に対して、幅広く使われている抗不安薬です。
デパスの用法は、以下のようになっています。
- 開始用量:0.5~1.5mg
- 用法:1日3回毎食後
- 最高用量:3mg(高齢者は1.5mg)
デパスは0.5mg~1.5mgから開始されることが一般的です。
作用時間が短いため、効果を持続させたい場合は、1日3回の服用する必要があります。
デパスは効果の実感も早く、頓服として使うことも多いです。
その場合は、1回の服用で1mgまで可能のため、0.25mg~1mgで効果の実感をもとに調整していきます。
【参考】デパスの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
デパスは、
- 半減期(T1/2):6.3時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):3.3時間
となっています。
最高血中濃度に至るまでは3時間ほどかかりますが、急激に立ち上がるために効果の実感は早いです。
デパスの作用時間は短く、持続的な効果を期待したい場合は1日3回の服用が必要になります。
【参考】デパスとアルコール(お酒)
リーゼの添付文章では、
中枢神経系の抑制作用を有するアルコールとの併用により、相加的な中枢神経系抑制作用が増強されることがあるので注意を要する。
本剤投与時には飲酒させないことが望ましい。
となっており、併用注意となっています。
禁忌というわけではありませんが、できるだけ控えるべきとされています。
アルコールとデパスは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。
このためデパスとアルコールを併用すると、
- 薬やお酒が効きやすくなる
- 効果が不安定になる
といったことに気をつける必要があります。
デパスもアルコールも、どちらも肝臓で分解されます。このためお薬の効果が強まると同時に、アルコールに酔いやすくなることに注意が必要です。
そして飲酒習慣があると、肝臓の機能が変化していきます。このためお薬の血中濃度が不安定になり、効果も不安定になります。
そしてデパスとアルコールを併用することでの最大の問題は、
- 双方に依存しやすくなってしまう
という点になります。
デパスとアルコールは、近しい作用があります。このため、デパスもアルコールもすぐに身体に慣れてしまい(耐性)、効果が悪くなってしまいます。
体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。
このように、心身に依存が形成されてしまいます。ですから、デパスを服用しながらの習慣的な飲酒は避けるべきです。
ですが飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければデパスを使うことは可能ではあります。
デパスの安定剤としての役割
抗不安薬の役割は、
- 作用時間
- 4つの作用へのバランス
によって決まります。
作用時間の観点では、大きく分けて2つの効き方があります。
- 不安を即効性に抑える効果・・・短時間型~長時間型
- 不安になりにくい土台をつくる効果・・・長時間型~超長時間型
このため、患者さんの不安の程度によって3つの段階に分けて使っていきます。
- 時おり強い不安におそわれる・・短い薬を頓服
- 常に不安があり、時おり強い不安・・・長い薬を常用+短い薬を頓服
- 常に強い不安・・・短い薬を常用
※この場合は、抗うつ剤を主剤にしていくことが多いです。
そして抗不安薬の4つの作用の点では、
- 抗不安作用
- 筋弛緩作用
の強さが重要です。
抗不安作用が強いお薬の方が、不安が強い方に使われます。頓服としても、効果の実感があることが重要になります。
そして不安が強いと、筋緊張が強い場合が多いです。
肩こりや頭痛などの過緊張状態が認められる場合は、筋弛緩作用が強い抗不安薬を使っていきます。
このような観点でデパスを見ると、
- 作用時間:短時間型
- 効果の強さ:抗不安作用と筋弛緩作用は強め
になりますので、即効性を期待し、緊張と不安が強い方に対して使われることが多いです。
以下ではデパスと他剤を、作用時間と効果の強さの観点で比較していきます。
デパスと他剤の比較(作用時間)
抗不安薬は作用時間によって、期待される役割が変化します。作用時間で、デパスを他剤と比較したいと思います。
抗不安薬の作用時間は、4つのタイプに分類されています。代表的な抗不安薬もあわせてご紹介していきます。
- 短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は3~6時間
(グランダキシン・リーゼ・デパス) - 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は12~20時間
(ワイパックス・ソラナックス/コンスタン・レキソタン) - 長時間型:効果のピークは1~8時間、作用時間は20~100時間
(セルシン/ホリゾン・セパゾン・リボトリール/ランドセン) - 超長時間型:作用時間は100時間~
(メイラックス・レスタス)
短時間型や中間型のお薬は、即効性を期待して使うことが多い抗不安薬になります。
デパスも、即効性を期待して使っていくことが多いです。
それに対して超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ちつかせていくお薬です。
日中は不安や緊張を、夜間は寝付きやすい土台となることを期待して使っていきます。
長時間型は即効性を期待して使っていくこともありますし、飲み続けていくことで全体的に落ちつかせる目的で使っていくこともあります。
デパスと他剤の比較(効果の強さ)
抗不安薬には、4つの作用が認められます。それぞれに対する強さのバランスについて、デパスを他剤と比較したいと思います。
よく使われている抗不安薬をまとめると、以下の表のようになります。
デパスは、
- 抗不安作用:強
- 催眠作用:強
- 筋弛緩作用:中
- 抗けいれん作用:ごくわずか
となります。他の抗不安薬と比較しても、抗不安作用や催眠作用が強いです。
ですから、睡眠薬としても使われます。また筋弛緩作用も比較的に強いので、緊張が強い方にも向いています。
抗不安薬は非常にたくさんの種類があるので、発売はされているものの、あまり使われていないお薬もあります。
参考までに、一覧にしておきます。
デパスの副作用と対処法
デパスをはじめとした抗不安薬の副作用としては、大きく以下の3つを考えていく必要があります。
- 眠気
- ふらつき
- 依存性
またお薬は肝臓で代謝されるものが多いため、肝機能障害についても注意が必要です。必要に応じて、採血にて肝機能を確認していきます。
ここでは、デパスでよくみられる副作用についてみていき、それぞれの対処法についてお伝えしていきます。
デパスと眠気
デパスの副作用として多いのが、眠気になります。デパスは催眠作用があるため、眠気が強く表れてしまうこともあります。
不安や緊張が強まっているときは眠気どころではないかもしれませんが、過ぎ去った後に眠気が強まることがあるので注意が必要です。
抗不安薬の中では催眠作用が強いために、逆手にとって睡眠薬として使われることも多いです。代表的な抗不安薬の催眠作用を比較してみましょう。
デパスによる眠気が強い場合は、以下のような対処法があります。
- 慣れるまで様子を見る
- 減量する
- 服用時間を変更する(朝や昼は控えるなど)
- 他のお薬に変更する
デパスは、メリットとデメリットの兼ね合いで使っていくお薬です。
デメリットが上回る場合は、量を減らす分には自己調整していただいて構わないことも多いです。(主治医の先生にご確認ください。)
眠気の副作用は、服用を続けていると少しずつ薄れていくことも少なくありません。お薬によるメリットの方が多ければ、少し我慢して様子を見るのも方法です。
服用方法の工夫をしても眠気が改善されない場合は、他の眠気が少ない抗不安薬に変更を検討していきます。
デパスとふらつき
抗不安薬には、筋弛緩作用もあります。緊張が強くて頭痛や肩こりなどがある方にはプラスに働きます。
ですが筋肉の緊張を緩めることで、ふらつきや脱力感となってしまうこともあります。
デパスは筋弛緩作用が強く、ふらつきの副作用に注意が必要な抗不安薬です。代表的な抗不安薬の筋弛緩作用を比較してみましょう。
ふらつきは、高齢で足腰が弱っている方には注意が必要な副作用です。デパスによるふらつきが強い場合も、眠気と同じ対処法になります。
- 慣れるまで様子を見る
- 減量する
- 服用時間を変える
- 他のお薬に変更する
デパスと依存性
抗不安薬を長期的に服用していると、お薬をやめていくときに離脱症状が生じることがあります。
これは身体依存といって、身体がお薬に慣れてしまったために、急に体からなくなるとバランスが崩れてしまうのです。
このように、デパスなどの抗不安薬には依存性があります。依存には3つのポイントがあります。
- 身体依存:薬がなくなると離脱症状が生じること
- 精神依存:薬に精神的に頼ってしまうこと
- 耐性:効果が薄れてしまうこと
こういった特徴があるため、
- どんどんとお薬の量が増えてしまう
- 本当はよくなっているのに、やめられなくなる
このようになってしまうことがあります。
前者は依存の一般的なイメージに近いかと思います。同じ量で効かなくなるから薬の量が増えていってしまい、依存の深みにはまってしまいます。
抗不安薬では後者の方がとても多く、本来はよくなっているのに、お薬を減らそうとすると身体依存が出現してやめられなくなります。かといって量が増えていくわけではないので、常用量依存といったりします。
依存しやすく離脱症状が生じやすいお薬には、以下の2つの特徴があります。
- 作用が強い
- 作用時間が短い
ですから、矢印の下にいくほど離脱症状を生じにくいお薬といえます。ですからデパスは、抗不安薬の中でも依存しやすいといえます。
さらにはデパスの使い方として、以下の2つが重要になります。
- できるだけ少量・短期間で使う
- アルコールと一緒に服用しない
デパスの離脱症状と減薬方法
デパスをしばらく使い続けていくと、身体依存(身体がお薬に慣れること)が形成されていきます。その状態でいきなりお薬を中止すると、離脱症状が出現してしまうことがあります。
デパスは作用時間は短いお薬で、効果もある程度しっかりとしたお薬です。このためデパスは実感の強いお薬で、依存性も高いです。
作用時間の短さから、離脱症状も起こりやすい抗不安薬になります。
ですから急に中止してしまうと、以前よりもひどい不安や不眠が認められたり、これまではなかった焦りや苛立ち、発汗やふるえなどが認められることもあります。
離脱症状を和らげるためには、お薬が減っていくスピードをゆっくりにしていく必要があります。
このために行われる減薬方法として、以下の3つがあります。
まずは漸減法を行っていくことが多いです。お薬の服用量が少なくなってくると、より慎重に減量を行って行く必要があります。
1.5mg→1mgでは2/3の減量ですが、1mg→0.5mgでは1/2の減量になります。減量の割合が増えてくると、離脱症状が起こりやすい傾向にあります。
患者さんによっては、漸減法よりも隔日法の方が取り組みやすいこともあります。
デパスは作用時間が短いため、0.25mg~0.5mgとなったときに、いきなり中止するのではなく隔日法をとっていくことが多いでしょうか。
この二つの方法での減薬が難しかった場合、作用時間の長いお薬に少しずつ置き換えて、その後に減薬を行っていきます。
その代表的なお薬がメイラックスやセルシン/ホリゾンです。作用時間が長いため、減薬しても体から抜けていくのがゆっくりなのです。
このようにして、計画的に減量を進めていく必要があります。
デパスの運転への影響
抗不安薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
デパスの添付文章でも同様に、
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
という表現となっています。
しかしながら、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。
不安がコントロールできないままで運転する方が危険が大きいという意見もあります。
デパスは睡眠薬としても使われるため、催眠作用もあるお薬になります。
ですが自己責任のなかで、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えてください。薬の服用の有無に関わらずですが、眠気を感じた場合は運転は行わないでください。
デパスの妊娠・授乳への影響
妊娠中や授乳中は、お薬はできるだけ控えたほうが良いことは言うまでもありません。
しかしながらお薬をやめてしまうと不安定になってしまうこともあり、最低限のお薬を続けていかなければいけないことも少なくありません。
デパスの妊娠への影響から見ていきましょう。デパスのお薬の添付文章には、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
妊娠への影響を考えていくにあたっては、
- 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
- 薬の成分が胎児に届くことによる影響
を考えていく必要があります。
デパスをはじめとした抗不安薬はこれまで、口唇口蓋裂の奇形リスクが高くなるといわれていました。
しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、現在は奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。
デパスは、出産後に気を付ける必要があります。出生直後に離脱症状が生じてしまったり、赤ちゃんが鎮静が認められることがあります。
産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、デパスの授乳への影響をみていきましょう。デパスのお薬の添付文章には、
授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。
このように記載されています。
しかしながら授乳についても、発達に影響を及ぼすといった明らかな報告はありません。
母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
ご自身での判断にはなりますが、どうしてもデパスを服用しなければ安定しない場合、授乳を続ける方がメリットが大きい部分もあります。
ですがデパスが母乳を通して赤ちゃんに伝わることは事実で、それによって赤ちゃんの眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。
赤ちゃんの成長がとまってしまうこともあるため、注意が必要です。
その場合は、以下のような対処法があげられます。
- 人工乳哺育にする
- 作用時間が短いものにする
- 服用してからの間隔をあける(服用の直前に哺乳する)
- 量を減らす
デパス錠のジェネリック医薬品(エチゾラム錠)
デパスは、1984年に発売されたお薬になります。
日本と韓国とイタリアでの未発売されているマイナーなお薬ですが、日本では幅広く処方されているお薬です。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できます。これが先発品のデパス錠になります。
デパスのジェネリックは、この特許が切れた後に発売となりました。(後発品)
従来は様々な名称のジェネリック医薬品が発売されていましたが、近年は薬の一般名をつけることに統一されてきています。
ですからデパス錠のジェネリックとしては、エチゾラム錠となっています。
かつては、
- パルギン錠
- メディピース錠
- エチセダン錠
- エチカーム錠
- セデコパン錠
- デゾラム錠
- エチゾラン錠
- モーズン錠
- ノルネルブ錠
- デムナット錠
- グペリース錠
- カプセーフ錠
- アロファルム錠
などが発売されていました。
このようにジェネリック医薬品では、様々な製薬会社が製造販売しています。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。
というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
デパスは即効性を期待するお薬なので、理論的には大きな差がないとしても、効果に違いを感じる方もいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品を使っていくことも可能です。
【参考】デパスの作用機序
それではデパスはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、GABAが関係しています。
GABAは脳の神経と神経の情報を伝える役割のある物質(神経伝達物質)で、神経細胞の活動を抑える働きがあります。
お薬がGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)と呼ばれる受け皿にくっつくと、このGABAの働きを強めてくれます。
GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。GABAはこのCl-チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。
神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。
このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。
ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、このGABAの働きを強めて神経活動の働きを抑えます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、大脳辺縁系と呼ばれる脳の内側に選択的に作用します。大脳辺縁系は記憶や情動などに関係していて、この部分の働きが抑えられることで効果があらわれます。
【参考】ベンゾジアゼピン系睡眠薬と抗不安薬の違い
お薬が作用するGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)には、おもにω1とω2の2種類があります。
- ω1受容体・・・催眠作用や抗けいれん作用
- ω2受容体・・・抗不安作用や筋弛緩作用
抗不安薬も睡眠薬も、同じベンゾジアゼピン系のお薬が使われています。
- 睡眠薬・・・ω1>ω2
- 抗不安薬・・・ω1<ω2
このように、催眠作用が強いものが睡眠薬、抗不安作用が強いものが抗不安薬になります。
デパスは催眠作用と抗不安作用のどちらでも効果が実感できるため、両方の目的で使われています。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:デパス(エチゾラム) 投稿日:2023年3月23日
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