ワイパックス(ロラゼパム)の効果と副作用
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ロラゼパム(ワイパックス)とは?
ロラゼパム(商品名:ワイパックス)は、1978年に発売されたベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬になります。
不安感や緊張感を和らげる効果が期待できるため、安定剤と呼ばれることもあります。
ロラゼパムの特徴は、即効性があるしっかりとした効果になります。
その一方で、肝臓への負担が少なかったり、効果のわりには眠気や筋弛緩作用が少ないお薬になります。
このためロラゼパムは、
- 発作的な不安が認められる場合
- 身体の緊張がそこまで強くない方
- 肝機能が低下している方(高齢者や脂肪肝)
に使われることが多い抗不安薬になります。
作用時間は比較的短いため、効果を持続して期待する場合は1日3回となります。
頓服(必要なときに使うお薬)として使うことも多い抗不安薬になります。
ロラゼパムは、先発品としてワイパックス錠として発売されました。
発売から年月もたっており、ジェネリック医薬品として一般名(成分名)のロラゼパム錠が発売となっています。
※以下では「ワイパックス」として、ロラゼパムの効果や副作用をお伝えしていきます。
ワイパックスの特徴
<メリット>
- 即効性が期待できる
- 抗不安作用が強い
- 肝臓への負担が少ない
- ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
<デメリット>
- 眠気の副作用がある
- 依存性がある
- 作用時間が短い(服薬回数が必要になる)
それではワイパックスの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。
ワイパックスの効果
ワイパックスは、脳の働きの一部を低下させることで不安や緊張を落ちつけるお薬になります。このようなお薬は、
- 即効性が期待できる
- 依存性に注意が必要である
という特徴があります。
そのなかでもワイパックスの特徴は、
- 作用時間が比較的短いこと
- 作用がしっかりとしていること
があげられます。
作用時間が短めであるため、効果を持続させるためには1日3回の服薬が必要になります。
作用がしっかりとしているため効果も期待しやすく、即効性が期待できます。
筋弛緩作用は弱いため、身体の緊張が強い方には向かないこともあります。
ワイパックスの副作用
ワイパックスは作用がしっかりしている割には、副作用が少ないお薬になります。
ワイパックスの承認時と承認後調査(計10808例)の副作用頻度を集計すると、
- 眠気(6.9%)
- ふらつき(3.2%)
- 倦怠感、脱力、疲労感(1.5%)
となっています。
ワイパックスの剤形と薬価
ワイパックスのお薬としての特徴についてみていきましょう。
ワイパックスの先発品としては、
- 0.5mg
- 1mg
の2剤形が発売されています。
後発品であるジェネリック医薬品も発売されています。
それぞれの薬価をみていきましょう。
- 0.5mg錠:5.9円(ジェネリック:5.1円)
- 1mg錠:7.2円(ジェネリック:5.7円)
※2023年4月現在の薬価
ワイパックスは古くから発売されているお薬であるため、先発品の薬価もジェネリックに近い水準まで下がっています。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
ワイパックスの舌下投与
ワイパックスは、水で服用するのが一般的です。
ですが外出先などで突然の不安に襲われた場合など、舌下投与することもあります。
正式な飲み方ではないのですが、ワイパックスは味としても服用しやすいこともありますし、口腔粘膜から吸収されて効果が早くなる可能性があります。
製薬会社のデータでは効果の早まりは否定的で、内服と変わりないとされています。
しかしながら安心感も加わって、より不安が落ち着きやすいと実感される方も少なくありません。
※詳しく知りたい方は、『ワイパックスの舌下投与は効果的?』をお読みください。
ワイパックスの用法と作用時間
ワイパックスの適応は、
- 神経症における不安・緊張・心気・抑うつ
- 心身症(自律神経失調症、心臓神経症)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ
となっています。不安や緊張に対して、幅広く使われている抗不安薬です。
ワイパックスの用法は、以下のようになっています。
- 用量:1~3mg
- 用法:1日2~3回食後
- 最高用量:3mg
ワイパックスは、0.5mg~1.5mgから開始することが一般的です。
作用時間が短いため、効果を持続させたい場合は1日3回の服用する必要があります。
頓服として使う場合は、1回の服用で1mgまで可能なため、0.5mg~1mgで効果の実感をもとに調整していきます。
【参考】ワイパックスの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
ワイパックスは、
- 半減期(T1/2):12時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):2時間
となっています。
ワイパックスの作用時間は短く、持続的な効果を期待したい場合は1日3回の服用が必要になります。
【参考】ワイパックスとアルコール(お酒)
ワイパックスの添付文章では、
- 相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下を増強することがある。
となっており、併用注意となっています。
禁忌というわけではありませんが、できるだけ控えるべきとされています。
アルコールとワイパックスは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。
併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。
このためワイパックスとアルコールを併用すると、
- 薬やお酒が効きやすくなる
- 効果が不安定になる
といったことに気をつける必要があります。
ワイパックスは肝臓での代謝をあまりうけず、水に溶けやすい形となって腎臓から排泄されるお薬です。
このため、他のお薬に比べると相互作用は少ないお薬ではあります。
ワイパックスとアルコールを併用することでの最大の問題は、
- 双方に依存しやすくなってしまう
という点があげられます。
抗不安薬のワイパックスとアルコールは、近しい作用があります。
このため、ワイパックスもアルコールもすぐに身体に慣れてしまい(耐性)、効果が悪くなってしまいます。
体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。
このように、心身に依存が形成されてしまいます。
ですから、ワイパックスを服用しながらの習慣的な飲酒はできるだけ避けるべきです。
ですが飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければワイパックスを使うことはできます。
ワイパックスの安定剤としての役割
抗不安薬の役割は、
- 作用時間
- 4つの作用へのバランス
によって決まります。
作用時間の観点では、大きく分けて2つの効き方があります。
- 不安を即効性に抑える効果・・・短時間型~長時間型
- 不安になりにくい土台をつくる効果・・・長時間型~超長時間型
このため、患者さんの不安の程度によって3つの段階に分けて使っていきます。
- 時おり強い不安におそわれる:短い薬を頓服
- 常に不安があり、時おり強い不安:長い薬を常用+短い薬を頓服
- 常に強い不安:短い薬を常用
※この場合は、抗うつ剤など他のお薬を主剤にしていくことが多いです。
そして抗不安薬の4つの作用の点では、
- 抗不安作用
- 筋弛緩作用
の強さが重要です。
不安が強さによって、使い分けていきます。頓服としては、効果の実感があることが重要になります。
不安が強いと、筋緊張が強い場合が多いです。
肩こりや頭痛などの過緊張状態が認められる場合は、筋弛緩作用が強い抗不安薬を使っていきます。
このような観点でワイパックスを見ると、
- 作用時間:中間型
- 効果の強さ:抗不安作用は強く、筋弛緩作用は弱め
になります。このためワイパックスは、即効性を期待しつつも緊張がそこまで強くない場合に適しているといえます。
即効性があって抗不安作用もしっかりとしているので、頓服として使われることがとても多いです。
パニック発作など急激な不安に襲われる場合に、ワイパックスを頓用で使っていくことは多いです。
以下では、ワイパックスと他剤を作用時間と効果の強さの観点で比較していきます。
ワイパックスと他剤の比較(作用時間)
抗不安薬は作用時間によって、期待される役割が変化します。作用時間で、ワイパックスを他剤と比較したいと思います。
抗不安薬の作用時間は、4つのタイプに分類されています。代表的な抗不安薬もあわせてご紹介していきます。
- 短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は3~6時間
(グランダキシン・リーゼ・デパス) - 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は12~20時間
(ワイパックス・ソラナックス/コンスタン・レキソタン) - 長時間型:効果のピークは1~8時間、作用時間は20~100時間
(セルシン/ホリゾン・セパゾン・リボトリール/ランドセン) - 超長時間型:作用時間は100時間~
(メイラックス・レスタス)
短時間型や中間型のお薬は、即効性を期待して使うことが多い抗不安薬になります。
ワイパックスも、即効性を期待して使っていくことが多いです。
それに対して超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ちつかせていくお薬です。日中は不安や緊張を、夜間は寝付きやすい土台となることを期待して使っていきます。
長時間型は即効性を期待して使っていくこともありますし、飲み続けていくことで全体的に落ちつかせる目的で使っていくこともあります。
ワイパックスと他剤の比較(効果の強さ)
抗不安薬には、4つの作用が認められます。それぞれに対する強さのバランスについて、ワイパックスを他剤と比較したいと思います。
よく使われている抗不安薬をまとめると、以下の表のようになります。
ワイパックスは、
- 抗不安作用:強
- 催眠作用:中
- 筋弛緩作用:弱
- 抗けいれん作用:中
となります。
他の抗不安薬と比較して、しっかりとした抗不安作用が期待できるお薬になります。そのわりに副作用が少なく、よく使われている抗不安薬になります。
抗不安薬は非常にたくさんの種類があるので、発売はされているものの、あまり使われていないお薬もあります。参考までに、一覧にしておきます。
ワイパックスの副作用と対処法
ワイパックスをはじめとした抗不安薬の副作用としては、大きく以下の3つを考えていく必要があります。
- 眠気
- ふらつき
- 依存性
またお薬は肝臓で代謝をうけるのですが、CYPと呼ばれる肝臓の酵素の影響をほとんどうけない特徴がワイパックスにはあります。
グルクロン酸抱合されることで水溶性になり、腎臓から尿として排泄されていきます。
このため他のお薬と飲み合わせの影響を受けにくく、肝臓への負担も少ないお薬になります。
とはいえ、肝機能障害や腎機能障害には注意が必要で、必要に応じて採血にて肝機能を確認していきます。
ここでは、ワイパックスでよくみられる副作用についてみていき、それぞれの対処法についてお伝えしていきます。
ワイパックスと眠気
ワイパックスの副作用として、もっとも問題となることが多いのが眠気です。
ワイパックスは効果の割には少ないのですが催眠作用があります。体質によっては眠気が強く出てしまい、日常生活にも支障がでてきてしまいます。
眠気が夜に強まる分には良いので、逆手にとって睡眠の安定のためにワイパックスが使われることもあります。
代表的な抗不安薬の催眠作用を比較してみましょう。
不安や緊張が強まっているときは眠気どころではないかもしれませんが、過ぎ去った後に眠気が強まることがあるので注意が必要です。
ワイパックスによる眠気が強い場合は、以下のような対処法があります。
- 慣れるまで様子を見る
- 減量する
- 服用時間を変更する(朝や昼は控えるなど)
- 他のお薬に変更する
ワイパックスは、メリットとデメリットの兼ね合いで使っていくお薬です。
デメリットが上回る場合は、量を減らす分には自己調整していただいて構わないことも多いです。(主治医にご確認ください。)
眠気の副作用は、服用を続けていると少しずつ薄れていくことも少なくありません。お薬によるメリットの方が多ければ、少し我慢して様子を見るのも方法です。
ワイパックスとふらつき
抗不安薬には、筋弛緩作用もあります。緊張が強くて頭痛や肩こりなどがある方にはプラスに働きます。
ですが筋肉の緊張を緩めることで、ふらつきや脱力感となってしまうこともあります。
ワイパックスは筋弛緩作用が少なく、ふらつきは少ない抗不安薬です。
代表的な抗不安薬の筋弛緩作用を比較してみましょう。
ふらつきは、高齢で足腰が弱っている方には注意が必要な副作用です。ワイパックスはふらつきの副作用が少ないため、抗不安薬の中では高齢者に処方しやすいお薬です。
ワイパックスによるふらつきが強い場合も、眠気と同じ対処法になります。
- 慣れるまで様子を見る
- 減量する
- 服用時間を変える
- 他のお薬に変更する
ワイパックスと依存性
抗不安薬を長期的に服用していると、お薬をやめていくときに離脱症状が生じることがあります。
これは身体依存といって、身体がお薬に慣れてしまったために、急に体からなくなるとバランスが崩れてしまうのです。
このように、ワイパックスなどの抗不安薬には依存性があります。依存には3つのポイントがあります。
- 身体依存:薬がなくなると離脱症状が生じること
- 精神依存:薬に精神的に頼ってしまうこと
- 耐性:効果が薄れてしまうこと
こういった特徴があるため、
- どんどんとお薬の量が増えてしまう
- 本当はよくなっているのに、やめられなくなる
このようになってしまうことがあります。
前者は依存の一般的なイメージに近いかと思います。同じ量で効かなくなるから薬の量が増えていってしまい、依存の深みにはまってしまいます。
抗不安薬では後者であることが一般的で、本来はよくなっているのに、お薬を減らそうとすると身体依存が出現してやめられなくなります。
かといって量が増えていくわけではないので、常用量依存といったりします。
依存しやすく離脱症状が生じやすいお薬には、以下の2つの特徴があります。
- 作用が強い
- 作用時間が短い
ですから、矢印の下にいくほど離脱症状を生じにくいお薬といえます。
ワイパックスは、抗不安薬の中では依存性にはある程度の注意が必要なお薬になります
ですからワイパックスの使い方として、以下の2つが重要になります。
- できるだけ少量・短期間で使う
- アルコールと一緒に服用しない
ワイパックスの離脱症状と減薬方法
ワイパックスをしばらく使い続けていくと、身体依存(身体がお薬に慣れること)が形成されていきます。
その状態でいきなりお薬を中止すると、離脱症状が出現してしまうことがあります。
ワイパックスは作用時間は短く、効果もしっかりとして実感の得やすいお薬です。
このためワイパックスは依存性は低くはなく、離脱症状に注意が必要な抗不安薬です。
といっても、すぐに依存していくわけではありません。
みなさんが何気なく飲まれているアルコールの方が依存しやすく、アルコールよりはマシです。
休肝日ならぬ休薬日を設けたり、用法を守って使っていくことが大切です。毎日服用していることが続くと、少しずつ依存が成立していきます。
ですから長期にわたって服用していた方が急にワイパックスを中止してしまうと、以前よりもひどい不安や不眠が認められたり、これまではなかった焦りや苛立ち、発汗やふるえなどが認められることがあります。
離脱症状を和らげるためには、お薬が減っていくスピードをゆっくりにしていく必要があります。
このために行われる減薬方法として、以下の3つがあります。
まずは漸減法を行っていくことが多いです。患者さんによっては隔日法の方が取り組みやすいこともあります。
この2つの方法での減薬が難しかった場合、作用時間の長いお薬に少しずつ置き換えて、その後に減薬を行っていきます。
その代表的なお薬が、メイラックスやセルシン/ホリゾンです。
作用時間が長いため、減薬しても体から抜けていくのがゆっくりなのです。
このようにして、計画的に減量を進めていく必要があります。
ワイパックスの運転への影響
抗不安薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
ワイパックスの添付文章でも同様に、
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
という表現となっています。
しかしながら、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。
運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。不安がコントロールできないままで運転する方が危険が大きいという意見もあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです
ワイパックスの妊娠・授乳への影響
妊娠中や授乳中は、お薬はできるだけ控えたほうが良いことは言うまでもありません。
しかしながらお薬をやめてしまうと不安定になってしまうこともあり、最低限のお薬を続けていかなければいけないことも少なくありません。
ワイパックスの妊娠への影響から見ていきましょう。ワイパックスのお薬の添付文章には、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
そして母体の0.76~1.05倍の濃度で赤ちゃんの血中に移行することがわかっています。動物実験でも、30分後までには母体と同程度の濃度で移行することがわかっています。
妊娠への影響を考えていくにあたっては、
- 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
- 薬の成分が胎児に届くことによる影響
を考えていく必要があります。
ワイパックスをはじめとした抗不安薬はこれまで、口唇口蓋裂の奇形リスクが高くなるといわれていました。
しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、現在は奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。
ワイパックスは、出産後に気を付ける必要があります。
出生直後に離脱症状が生じてしまったり、赤ちゃんに鎮静がかかって元気がなくなってしまうことがあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、ワイパックスの授乳への影響をみていきましょう。ワイパックスのお薬の添付文章には、
授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。
このように記載されています。
しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。
母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
ご自身での判断にはなりますが、ワイパックスを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。
ですがワイパックスが母乳を通して赤ちゃんに伝わることは事実で、それによって赤ちゃんの眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。赤ちゃんの成長がとまってしまうこともあるため、注意が必要です。
その場合は、以下のような対処法があげられます。
- 人工乳哺育にする
- 作用時間が短いものにする
- 服用してからの間隔をあける(服用の直前に哺乳する)
- 量を減らす
ワイパックス錠のジェネリック医薬品(ロラゼパム錠)
ワイパックスは、1978年に発売されたお薬になります。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売(先発品)できるようになります。
ワイパックスのジェネリックは、この特許が切れた後に発売(後発品)となりました。
従来は様々な名称のジェネリック医薬品が発売されていて、ユーパン錠などはよく使われていたかと思います。
近年は薬の一般名をつけることに統一されてきています。
ですからワイパックス錠のジェネリックとしては、ロラゼパム錠として統一されて発売されています。
ジェネリック医薬品になると、様々な製薬会社が製造を行います。
これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
ロラゼパムは即効性を期待するお薬なので、理論的には大きな差がないとしても、効果に違いを感じる方はいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品を使っていくことも可能です。
【参考】ワイパックスの作用機序
それではワイパックスはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、GABAが関係しています。
GABAは脳の神経と神経の情報を伝える役割のある物質(神経伝達物質)で、神経細胞の活動を抑える働きがあります。
お薬がGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)と呼ばれる受け皿にくっつくと、このGABAの働きを強めてくれます。
GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。
GABAはこのCl-チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。
神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。
ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、このGABAの働きを強めて神経活動の働きを抑えます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、大脳辺縁系と呼ばれる脳の内側に選択的に作用します。
大脳辺縁系は記憶や情動などに関係していて、この部分の働きが抑えられることで効果があらわれます。
【参考】ベンゾジアゼピン系睡眠薬と抗不安薬の違い
お薬が作用するGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)には、おもにω1とω2の2種類があります。
- ω1受容体・・・催眠作用や抗けいれん作用
- ω2受容体・・・抗不安作用や筋弛緩作用
実のところ睡眠薬も、ベンゾジアゼピン系のお薬が多く使われています。
- 睡眠薬・・・ω1>ω2
- 抗不安薬・・・ω1<ω2
催眠作用が強いものが睡眠薬、抗不安作用が強いものが抗不安薬になります。
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医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:ワイパックス 投稿日:2023年3月30日
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