クービビックの特徴
クービビック(一般名:ダリドレキサント)のメリットとしては、
- 自然な眠気を強くする
- 中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害に有効
- 入眠障害にも効果が期待できる
- 依存性が極めて少ない
- 持ち越し効果が少なく増量しやすい
があげられます。同じタイプのお薬の中でも半減期が短く、持ち越し効果が少なそうです。
入眠作用については、臨床研究でのデータを見る限りではデエビゴと同等の効果が期待できそうです。
それではクービビックの特徴を、
- クービビック・デエビゴ・ベルソムラの比較
- 効果
- 副作用
- 用法・用量
に分けてみていきましょう。
クービビック・デエビゴ・ベルソムラの比較
それではまず、DORAと呼ばれるデュアルオレキシン受容体拮抗薬の3剤の比較をしてみましょう。
入眠作用は、クービビックとデエビゴは同等と思われます。ベルソムラはデータとしても臨床実感としても、やや入眠効果に劣ります。
一方で半減期が最も短いのがクービビックで、翌朝への持ち越し効果は少ないため増量しやすく効果がでるまで十分つかいやすい点があります。
剤形としては剤形として分割もしやすく、3段階の用量があるデエビゴが最も使い勝手が良いです。
クービビックは転がりにくいように「おにぎり型」の三角をしていますが分割しにくく、またベルソムラは吸湿性の問題もあって分割できません。
薬の名称としては、「美しい眠り」を意味するベルソムラがもっとも眠りにつながりやすそうです。
またデエビゴやベルソムラの副作用として多い悪夢は、クービビックでは報告が少なくなっています。
クービビックの効果
次にインタビューフォームと呼ばれるお薬の詳しい説明書をもとに、臨床試験のデータを整理して効果についてお伝えしていきます。
患者さんの効果の実感を比較するには、「主観的総睡眠時間」と「主観的睡眠潜時」を見ると理解しやすいです。
- 主観的総睡眠時間:本人が感じた睡眠できたと感じた時間の合計
- 主観的睡眠潜時:本人が感じた入眠までにかかった時間
主観的総睡眠時間は、50mgまで使うとプラセボ(偽薬)と比較しても20分以上増えていることがわかります。
ベースラインとして5時間睡眠くらいの方を集めたデータですので、6時間弱まで睡眠時間が増える形となっています。
一方で睡眠潜時については、もともと50分ほど寝つきにかかっていた方が、クービビックやデエビゴでは35~40分くらいで寝つけるようになります。
ベルソムラはベースライン65分ほどですが、入眠に関してはプラセボと大きな差がついていません。
これらも、マイスリーやルネスタと呼ばれる従来の睡眠薬と比べてしまうと効果の実感は異なります。
50分ほど寝つきにかかっていた方が20分強と、時間としては半減する効果が認められています。
このようにクービビックは入眠効果は期待できますが、マイスリーやルネスタのような強引さはありません。
オレキシン受容体拮抗薬は、自然な眠気を強くするタイプの睡眠薬になります。
このような睡眠薬は、
- 依存性が極めて少ない
- 強引さがなくて、効果と副作用に個人差がある
という特徴があります。
また、クービビックは他のオレキシン受容体拮抗薬と同様に、
に対して、効果が期待できます。
クービビックの効果についての臨床研究
国内第Ⅲ相臨床試験では489例の不眠症患者を対象にダリドレキサント服用時の総睡眠時間と睡眠潜時を評価しており、28日目におけるベースラインからの変化をプラセボ群と比べて有意に改善したという報告となっています。
睡眠潜時: 消灯あるいは就床時刻から睡眠開始までの時間
投与群 |
総睡眠時間 |
睡眠潜時 |
ダリドレキサント50mg群 |
+41.01(+20.30) |
-16.81(-10.66) |
ダリドレキサント25mg群 |
+29.27(+9.23) |
-12.95(-7.16) |
プラセボ群 |
+20.3 |
-5.56 |
クービビックの副作用(海外データ)
クービビック(一般名:ダリドレキサント)の有害事象(副作用含む)として、国内の試験では以下が代表的な副作用報告でした。
- 傾眠:3.7/6.8
- めまい:0%/1.9%
(25mg/50mg)
が報告されています。
また、頻度は低いですが
の可能性が、オレキシン受容体拮抗薬では可能性があります。海外の試験では、以下のように報告されています。
これをみると、デエビゴやベルソムラといったオレキシン受容体拮抗薬で問題になることの多かった悪夢の副作用報告が少ないです。
|
QUVIVIQ25mg群 |
QUVIVIQ50mg群 |
プラセボ群 |
頭痛 |
6% |
7% |
5% |
傾眠または疲労 |
6% |
5% |
4% |
めまい |
2% |
3% |
2% |
吐き気 |
0% |
3% |
2% |
睡眠麻痺 |
0.5% |
0.3% |
報告なし |
幻覚および幻視 |
0.6% |
報告なし |
報告なし |
クービビックの用法・用量
クービビックの用法・用量は、国内第Ⅲ相臨床試験では以下のように設定されています。
- 開始用量:50mgまたは25mg
- 用法:1日1回就寝前
- 剤型:錠(25mg・50mg)
クービビックの併用禁忌・併用注意薬(海外データ)
クービビックは、CYP3A4という肝臓の酵素で代謝されて分解されていきます。
このためCYP3A4の働きに関係するお薬は、併用に注意が必要です。
【併用を避けること:CYP3A4を強く阻害するお薬】
- 抗生物質:クラリスロマイシン(クラリス)
- 抗真菌薬:イトラコナゾール(イトリゾール)
- 抗ウイルス薬:エンシトレルビル(ゾコーバ)・リトナビル(パキロビット)
その他はかなり特殊な抗HIV薬や抗がん剤が禁忌となっています。
また、アルコールとの併用は日中の機能障害をもたらすため、併用を避けることとなっています。