前頭側頭型認知症とは?症状・原因・治療・ケアのポイントを解説

「前頭側頭型認知症のことを知りたい」
「前頭側頭型認知症の原因を教えてほしい」
そういった方のために、前頭側頭型認知症についてお伝えしていきます。
認知症も様々な種類にわけることができますが、前頭側頭型認知症というタイプではどのような特徴があるのでしょうか。
この記事では、前頭側頭型認知症の意味、症状、原因、治療、ケアのポイントについて解説します。認知症患者のケアをする際に役に立ててみてください。
前頭側頭型認知症とは?
大脳の前頭葉・側頭葉を中心に神経細胞の変性・脱落を起こすことにより、人格変化・行動異常・言語障害・認知症などがみられる病気です。
脳の神経細胞やグリア細胞(神経細胞以外の細胞の総称)の内部に異常タンパク質が蓄積して封入体の形成が認められる場合を前頭側頭葉変性症といいます。
また脳の神経細胞にPick球が見られる場合がピック病であり、前頭側頭葉変性症の約8割はピック病です。
以上の病名は、死後の剖検によって確定診断が下されます。そして確定診断までの間、便宜上つけられる病名が前頭側頭型認知症です。
前頭側頭型認知症の症状は?

初老期に発症することが多く、以下のような症状がみられます。
- 人格変化
- 行動異常
- 言語障害
- 認知症
- 運動障害
初期症状:人格変化
初期症状として以下のような人格の変化がみられます。
- 抑制が効かない・反社会的行動
- 注意障害
- 非刺激性の亢進
- 自発性の低下・無関心
- 共感・感情移入の困難
礼儀・マナーがなくなり、万引・盗み食いなどの社会的に不適切な行動をとります。
あちこちに注意が散乱して、衝動的で分別がなくなるのも特徴です。
周囲の目に無関心となり、わが道を行きます。風邪で寝込んでいる妻に対して、平然と食事を要求することもあります。
行動異常
常同行動、食事・嗜好(しこう)の変化がみられます。
常同行動
極端に同じ行動・言葉をくり返します。
- 毎日、同じコースばかりを散歩
- 極端に時間通りの生活
- 同じ食事のメニューにこだわる
食事・嗜好の変化
過食となり、濃厚な味付けを好みます。例えば以下のような有様です。
- ご飯にしょうゆや塩をかける
- 極端に甘いものを好む
- まんじゅうばかりを何個も食べる
言語障害
物の意味が分からなくなり、物の名前が言えなくなります。例えば以下のような有様です。
- 富士山の写真を見せても、山と分かるが富士山と分からない
- 信号機を見ても信号機と言えない
発語量が減少し、会話のリズム・アクセントがおかしくなることもあります。
認知症
行動異常・言語障害が主な症状であり、初期には認知症の主な症状である記憶障害が目立ちません。
進行してくると記憶障害も目立ち始め、認知症と分かります。
運動障害
パーキンソニズムの症状が見られることがあります。
- 体のふるえ
- 動作がゆっくり
- 関節が固い
- 転びやすい
運動ニューロン症状が見られることもあります。
- 筋力の低下
- 筋の委縮
- 体のつっぱり
末期症状・余命
前頭側頭型認知症が進行すると、人格の変化、常同行動が弱くなることがあります。
これは病気が進行した結果であり、良くなったわけではありません。
運動障害が進むと寝たきりとなり、余命は6~10年といわれています。
ただし進行に個人差があり、数年で亡くなられたり、10年以上長生きしたりすることもあります。
前頭側頭型認知症の原因について
タウ・TDP-43・FUSと呼ばれるたんぱく質が変性して蓄積することが発症に影響するといわれています。
ただしなぜ起こるかは分かりません。
原因はストレス?
ストレスはアルツハイマー型認知症、脳血管型認知症の発症原因に関連します。
しかし前頭側頭型認知症では定かでありません。
原因はアルコール?
アルコール依存症は早期発症型認知症のリスクです。
アルコールを常に大量摂取して起こるアルコール性認知症は、前頭側頭型認知症と症状が似ています。
しかしアルコールは前頭側頭型認知症の直接的な原因ではありません。
遺伝することもある?
欧米では家族の中で同じ前頭側頭型認知症にかかることがよくみられます。
その場合は遺伝子に変異が見つかっています。
しかし日本ではあまり同じ家族の中では認められません。
前頭側頭型認知症の治療
前頭側頭型認知症に根本的に効く薬はありません。したがって根本的には治すことはできない病気です。
代わりに症状を和らげる対症療法で治療します。
薬を使うこともある
症状に合わせて、薬を投与することがあります。
例えば盗み癖や食べられないものを口に入れる異常行動に対して、鎮静作用のあるお薬をつかっていきます。
高齢者になりますので、負担の少ないものを最小限で使っていくことが基本です。
前頭側頭型認知症のケアのポイント
人格の変化や行動異常から、過大な介護負担を感じることがあります。
しかし症状の理解と適切な対応により、ご家族の負担が軽くなる場合もあるようです。
まだ失われていない機能を活かすことにより、介護負担が改善します。
嚥下障害による誤嚥性肺炎、運動ニューロン症状による呼吸不全や四肢筋力低下に注意が必要です。
前頭側頭型認知症は指定難病であり、公的支援で助成金を受けられます。
まとめ
前頭側頭型認知症は、人格変化・行動異常・言語障害・認知症などがみられる病気です。
原因はまだ解明されておらず、対症療法で治療しています。
人格の変化や行動異常から、過大な介護負担を感じることがあります。
しかし症状の理解と適切な対応により、ご家族の負担が軽くなる場合も少なくありません。
病気の理解ならびに許容により、有意義なケアを行うことが望まれます。
参照サイト
- https://www.nanbyou.or.jp/entry/4841
- https://www.nanbyou.or.jp/entry/4840
難病情報センター – 前頭側頭葉変性症
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カテゴリー:認知症 投稿日:2023年5月2日