レビー小体型認知症の症状・診断・治療

レビー小体型認知症とは?

レビー小体型認知症について、精神科医が詳しく解説します。

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症に並び一般的に見られる認知症の1つです。

αシヌクレインという蛋白の異常な蓄積によるレビー小体の形成によって神経細胞が障害され、症状が現れます。

神経難病として有名なパーキンソン病も、レビー小体の形成によって引き起こされる疾患です。

どの部位が中心的に障害されるか、どのような症状があるかによって、レビー小体型認知症またはパーキンソン病に区別されます。

包括して、レビー小体病と呼ばれることもあります。

レビー小体型認知症の症状

それではレビー小体型認知症の症状をみていきましょう。

レビー小体型認知症では、認知機能低下とあわせてパーキンソン症状が認められます。

  • 幻視

初発症状になることも多いのが幻視です。

実際にはなにもないものが、本人には見えてしまっている症状です。

別の物と見間違えるような錯視が認められることもあり、ちょっとした壁の模様などを錯覚してしまうこともあります。

幻聴が聞こえることもあります。

  • 認知機能低下

レビー小体型認知症においても認知機能低下を認めますが、アルツハイマー病と比べれば記憶障害は軽度であることが多いです。

症状は動揺しやすく、良いときと悪いときがあり、注意力や実行機能、視空間機能などの早期障害を認めることが多いです。

初期の症状には、運転困難(道に迷う、距離を見誤る、一時停止の標識や他の車が見えないなど)や、仕事のパフォーマンス低下などがあります。

  • 認知機能の変動

正常な状態と認知機能低下状態が交互に繰り返されます。

傾眠傾向になったり、理解不能な言動などがあったと思えば、比較的これまでと変わりない日もあったりします。

認知機能低下状態は、数日続くこともあります。

  • レム睡眠行動障害

レム睡眠中に夢と関連した発声または運動行動を、現実の動作として起こしてしまうといった症状です。

追いかけられたり、暴力を振るわれるような夢を見て、手を動かしたり蹴ったりすることがあります。

そのため、ベッドから落ちたり、パートナーにぶつかったりということが起こる可能性があります。

  • パーキンソニズム

動作緩慢、安静時振戦、固縮、歩行障害といった、パーキンソン病の症状に類似した症状を伴うことがあります。

  • その他

自律神経機能障害や抑うつ状態、嗅覚機能低下、抑うつなど症状を伴うことがあります。

抗精神病薬に対する過敏性が認められることもあり、興奮が目立つ場合も極力抗精神病薬は控え、使うにしても慎重を期す必要があります。

レビー小体型認知症の診断

いくつかの診断基準がありますが、病歴・認知機能検査・画像検査などから総合的に診断することが一般的です。

他疾患を除外することも重要です。

  • 認知機能検査

初期の段階でも、注意や実行機能、視空間認知(図形の模写など)の障害を認めることが多いです。

  • CT/MRIでの海馬の委縮(アルツハイマーより軽度)
  • SPECT/PETでの基底核のおけるドパミントランスポーターの取り込み低下
  • MIBG心筋シンチグラフィーでの取り込み低下
  • ポリソムノグラフィーでの筋緊張を伴わないレム睡眠の確認

レビー小体型認知症の診断基準をご紹介します。

レビー小体型認知症の治療

根本的な治療法はなく、対症療法が中心となります。

  • 認知機能障害

ドネペジルやリバスチグミンなどのコリンエステラーぜ阻害薬が用いられます。

メマンチンを使用することもありますが、その根拠は不明確です。

  • 精神症状

過敏反応が引き起こされる可能性があるため、抗精神病薬の使用には注意が必要です。

使用する場合はオランザピン、クエチアピン、クロザピンなどの非定型抗精神病薬を非常に少量で使用する必要があります。

ハロペリドールなどの定型抗精神病薬は、緊急に必要でない限り避けるべきです。

抗うつ薬やベンゾジアゼピン系薬剤は、一般的には避けるべきです。

  • レム睡眠行動障害

レム睡眠行動障害の治療では、安全な睡眠環境を確立することを優先します。

メラトニンまたはクロナゼパムによる薬物療法も、症状の改善に有用です。

  • パーキンソニズム

抗パーキンソン薬が用いられますが、その効果はパーキンソン病に比べるとやや限定的です。

レボドパはドーパミン作動薬よりも効果的で、副作用が少ないです。

認知機能を悪化させる可能性があるため、抗コリン薬は一般的に避けられます。

まとめ

レビー小体型認知症は多彩な症状があり、その対応もとても複雑なものとなります。

専門職(医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、ケアマネージャーなど)と患者・家族がチームとなって最善の治療を一緒に考えていくことが重要です。

参考文献

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カテゴリー:認知症  投稿日:2023年3月30日