食事の影響が大きいお薬とは?

お薬は食事によって効果や副作用が変化する?

お薬を飲むとき、「食前」「食後」など、飲むタイミングが決められていることがありますね。漢方薬などは、「食前」や「食間」に飲むものが多いです。

「胃に入っちゃえば同じでしょ?」と、あまり気にせず飲んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが、お薬によっては食前・食後によって吸収率などが大きく変化してしまうことがあるのです。

とくに精神に働くお薬は影響を受けやすいため、注意が必要です。

食事とお薬の関係

食事を摂ると、身体には様々な変化が生じます。主な変化をあげると、

  • 胃がいっぱいになって腸へ運ばれるのがゆっくりになる
  • 胃の酸度がアルカリ性にかたむく
  • 胃の中の分子系率が変化する

これらの変化により、お薬の吸収率は変化します。吸収が良くなるか悪くなるかはお薬の特徴により異なってきます。

また、食事内には

  • 脂肪
  • 炭水化物(糖質)
  • タンパク質

の3大栄養素や、カルシウムなどのミネラル分が含まれています。これらもお薬の吸収に影響し、とくに脂肪分は大きなかかわりを持っているのです。

(※詳しくは、『食前薬や食後薬は守らなきゃダメ?お薬と食事の関係』をお読みください。)

通常、用法を変えることで、お薬の効果が強まることはありません。お薬が効きすぎてしまうことは、副作用につながるためです。

しかし、せっかくのお薬が上手く効果を発揮できず、治療効果もわかりにくくなるので注意しましょう。

食事の影響が大きなお薬とは?

  • 精神科のお薬のように脂溶性が高いお薬は、食後に服用することで吸収効率が増します。
  • とくに、向精神病薬のロナセンやルーランは大きく変化します。

食事がお薬に与える影響は、お薬によってまちまちです。

通常、脂溶性が高い(脂になじみやすい)お薬では、脳にある関門(脳血液関門:BBB)を通過しやすくなるため吸収効率がよくなります。

精神科のお薬は脳に作用しなければ意味がありませんから、脂溶性が高いものが多く、食後に飲むことで効果が増すお薬が多いのです。

とくに、向精神病薬の

  • ロナセン
  • ルーラン
  • セロクエル
  • インヴェガ

では、空腹時と食後ではお薬の薬の累積血中濃度(トータルでお薬がどれくらい吸収されたかを示す数値=AUC)が大きく変わることがわかっていて、空腹時に飲むと効果が弱まってしまいます。

それぞれの累積血中濃度の変化率は、

  • ロナセン(269%)
  • ルーラン(243%)
  • セロクエル(149%)
  • インヴェガ(137%)

となっています。これらのお薬の効果は基本的に「脂肪分を摂った食後」を基準に考えられていますので、食欲のないときは牛乳を飲んだ後に服用するなどしたほうが良いでしょう。

多くのお薬は脂肪分によって累積血中濃度は上昇します。中には下がるお薬もありますが、その種類はかなり少なく、免疫抑制剤のプログラフなど一部のお薬に限られています。

酸の影響を受けやすいお薬

酸の影響についてみてみると、

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬(とくにハルシオン)
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬
  • 乳酸菌製剤(ミヤBMを除く)

などは、酸によってお薬の成分が分解されてしまいます。

ご高齢の方などで飲みこみが悪い方は、服薬補助ゼリーを用いることがあるかと思います。服薬補助ゼリーの中には酸性のものもあるので、注意が必要です。

漢方薬は食後より空腹時に飲む方がいい?

一般的なお薬の多くが食後薬であるのに対し、漢方薬は「食前や食間(空腹時)」の服用が基本です。

その理由は、空腹時の胃酸によって生薬成分が影響を受け、

  • 作用のキツい塩基性(アルカリ性)の成分をやわらげる
  • 作用がおだやかな酸性成分の効果を上昇させる

という2つのバランスがちょうど良くなり、結果的に

  • 副作用の軽減
  • 効果の高まり

の調整が期待されるのです。

(※詳しくは、『漢方薬はなぜ「食間」の服用になっているの?』をお読みください)

まとめ

お薬は食事によってさまざまな影響を受けます。指定された服用時があるときは、できる限り守るようにしましょう。

とくに脂肪分の影響を受けて効果が大きく変化する

  • ロナセン
  • ルーラン
  • セロクエル
  • インヴェガ

などでは、食欲のないときは牛乳を飲んでから服用するなどの工夫をするといいかもしれません。

また、お薬の効果を安定させるためにも、心身の調子を整えるためにも、食事時間もなるべく一定にし、バランスよく食べることが大切です。

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カテゴリー:お薬の基礎知識  投稿日:2019年12月24日