GAF尺度とは?得点のつけ方も解説!

今回は、精神科訪問看護に必要な書類シリーズ~精神科訪問看護記録書Ⅱ~の記事の中で紹介した「GAF尺度」についての解説をします。
これから精神科訪問看護師として働きたいと考えている看護師さんにとっては、必須の知識なので、しっかり習得していきましょう。

GAFとは?

GAFとは、Global Assessment of Functioningの略で、日本語では「機能の全体尺度」と表します。
また、読み方は「ギャフ」「ガフ」と読みます。
成人の社会的・職業的・心理的機能を評価するのに用いられている数値スケールで、1~100点の間で評価します。
点数が高いほど、精神面での健康状態が良いことを示します。

精神科訪問看護とGAF尺度の評価

令和2年度の診療報酬改定において、月の最初の訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を必要書類に記載することが必須となり、令和2年4月から適用となっています。
GAF尺度の評価を記載することになった背景として「精神障害を有する者への適切かつ効果的な訪問看護の提供を推進する観点から、利用者の状態把握等を行うことが可能となるよう」と厚生労働省が示しています。
精神科訪問看護師として、客観的に利用者の状態を評価し、連続的な看護サービスを提供するために、GAF尺度の評価が重要というわけです。
「先月と比べて今月のGAF尺度の得点はどうか?」「直近のGAF尺度の評価よりも状態が悪くなっている」等とアセスメントの材料の1つになります。
利用者への適切な対応ができるように、しっかりとGAF尺度の評価の方法を理解することが大切です。

GAF尺度の評価をするときのポイント

ここからは、GAF尺度の評価をするときのポイントを解説していきます。
GAF尺度は「精神症状の重症度」と、社会や職業へ適応できているかを判断する「機能レベル」の2つの要素で構成されています。

引用 厚生労働省GAF(機能の全体的評定)尺度
※引用 厚生労働省GAF(機能の全体的評定)尺度(PDF)

GAF尺度で評価するとき、3つのポイントに注意しましょう

①精神機能についてのみ評価する

GAF尺度は、精神症状に対する評価です。身体機能や環境面での制約については考慮しません
例)右片麻痺があることによって外出ができない場合など

②1週間の精神状態のうち、最も精神症状が悪かったエピソードに対して評価する

GAF評価をするのは、月初めの訪問日ですが、当日の精神状態を評価するのではありません。
1週間前まで遡り、最も精神症状が悪かったエビソードについて評価します。
その為、利用者に1週間の様子を情報収集し、アセスメントしていく必要があります。家族が同居している場合は、家族に話を聞いてみても良いでしょう。

③「精神症状の重症度」と「機能レベル」のうち低い方の得点で評価する

GAF尺度は「精神症状の重症度」と「機能レベル」のうち低い方の得点で評価していきます。
例えば、70~61点の欄を見てみましょう。

70~61 いくつかの軽い症状がある(例:抑うつ気分や軽い不眠)。または、社会的、職業的または学校の機能に、いくらかの困難はある(例:時にずる休みをしたり、家の金を盗んだりする)が、全般的には、機能はかなり良好であって、有意義な対人関係もかなりある。

青色で示しているのが「精神症状の重症度」で、赤色で示しているのが「機能レベル」です。
はっきりと2つの項目が分かれているわけではないので少しわかりにくいですが、2つの要素は「または」で区切られています。
評価をした時に、精神症状の重症度は70~61点の間だけれども、機能レベルは60~71点となった時は、点数が低い60~71点の間で評価します。

GAF尺度の評価手順

GAF尺度の評価は以下の手順で行います。

①利用者の1週間の状態を情報収集する。

一番精神状態が良くなかったエピソードについて、100〜91点の水準から順に比較し、「精神症状の重症度」または「機能レベル」のどちらかが当てはまる低い水準を選択する。

②選択した水準のすぐ下の水準と比較する

選択した水準のすぐ下の水準と比較し、その水準には当てはまらないことを確認する。
※選択した水準よりも低い得点にならないかどうか、不十分な評価とならないように、必ず選択した所のすぐ下の水準と比較する。

③1の位を評価する

1の位を評価するために、10点の範囲のうち、どの範囲で機能しているかを考える。
高いと判断した場合は6,7,8,9,0点のいずれかで判定し、低いと判断した場合には1,2,3,4のいずれかで判定する。中間と判断した場合は5で判定する。

例)慢性期の統合失調症の利用者で幻聴はあるものの、幻聴に左右されて行動することはない場合の考え方

GAF尺度のうち、「精神症状の重症度」は40~31点の「現実検討か意思伝達にいくらかの欠陥(例:会話は時々、非論理的、あいまい、または関係性がなくなる)で判定します。
幻聴の程度が週に1回以下程度であれば、40又は39点位が妥当ですが、1日中幻聴がある場合は31,32点とするのが妥当とでしょう。

まとめ

今回はGAF尺度の評価方法について解説しました。
慣れてくるとスムーズに評価できますが、初めのうちは点数のつけ方に悩むことがあると思います。積極的に実践していき、GAF尺度についてマスターしましょう。

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カテゴリー:訪問診療/訪問看護  投稿日:2023年11月17日