認知の歪みはどうすれば治る?ストレスに対処する方法を解説!
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リワークで行われている認知行動療法の中で「認知の歪み」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
- 「うまくいっても悪いところが気になってしまう」
- 「失敗したから、これからもずっとうまくいかない」
- 「自分のせいで迷惑をかけたように思う」
このように考えてしまい、気持ちが落ち込む状態が続く場合は、認知の歪みが生じている可能性があります。
認知の歪みとは、考え方の癖にとらわれて物事を解釈し、他の解釈をすることが難しくなっている状態です。
認知の歪み自体は悪いものではなく、誰にでもあるものです。しかし、歪みが強いと自分を苦しめ、心の健康を損なってしまう可能性もあります。
リワークで行われる認知行動療法では、認知の歪みに気づき、捉え方のレパートリーを増やすことが目的の1つです。
本記事では、認知の歪みの種類と対処方法を解説します。
認知行動療法で有名なデビッド・D・バーンズは、10個の認知の歪みパターンを挙げていますが、以下の3つのグループに分けて紹介します。
【マイルールによる歪み】
- 白黒志向
- べき思考
【フィルターによる歪み】
- 心のフィルター
- マイナス化思考
- 拡大解釈と過小評価
- レッテル貼り
【予測と判断の歪み】
- 過度の一般化
- 結論の飛躍
- 感情的決めつけ
- 自己関連付け
マイルールによる歪み
物事を判断するときの基準が極端であることが原因で生じる認知の歪みです。
極端な「マイルール」によって判断してしまい、「全て悪い」「どんなときでも○○するべき」といった認知の偏りが生まれます。
白黒思考
『できた/できなかった』『いい人/悪い人』というように、極端な捉え方をしてしまう認知の歪みの1つです。
少しのミスをしただけで、「何事も完璧にできないと意味がない」と考えてしまい、自分を責めてしまうことがあります。
完璧主義な傾向がベースにあり、少しの失敗やミスをすると全てがダメだと考えることが特徴です。
べき思考
自分の中で「~すべき」というルールを作り、どんな状況であってもルールを守らなければならないという考え方です。
例えば、「みんなに好かれないといけない」と考えて、周囲の顔色をうかがいすぎて疲れてしまうといったことが起こります。
また、「上司だったらもっと配慮すべきだ」と他人にマイルールを当てはめることもあります。
相手の行動がルール通りでないとイライラしたり落ち込んだりしてしまうのです。
マイルールによる歪みの対処方法
マイルールに縛られない行動をしてみて、その結果を検証してみることが大切です。
「~すべき」というマイルールを守ろうとするのは、守ることでその後に起こることをコントロールしようとしていることが多いでしょう。
例えば、「みんなに好かれないといけない」というルールを守れば、人間関係がうまくいく確率が高くなります。
一度、自分の意見を表現してみて、相手の反応をみてからその後の行動を考えるとよいでしょう。
実際に行動してみて、「どこまではOKか」という境界線を知れると柔軟に対応できるようになります。
フィルターによる歪み
ネガティブな情報にばかり注意が向いてしまうことによる認知の歪みです。
身の回りに溢れている全ての情報に反応することは不可能です。空腹状態の時には、飲食店から漂ってくるいい匂いに注意が向くというように、注意の対象は心の状態に左右されます。
うつや不安といったネガティブな気持ちのときには、ネガティブな情報に注意が向きやすくなります。
与えられる情報を歪んで捉えてしまうことがフィルターによる歪みです。
心のフィルター
悪い結果だけに注目してしまい、良い結果に目を向けられないことです。
例えば、テストで90点を取れても「10点も間違ってしまった」と捉えてしまうような考え方です。
マイナス化思考
良い結果が起きたときにも、「これはまぐれだ」「運よく成功しただけだ」と喜ばないような捉え方です。良いところを含めて自分を正しく評価できず、悪いところに注目しやすくなります。
レッテル貼り
自分や他人の行動の一部分だけを見て、否定的なイメージを植え付けてしまうことです。
例えば、仕事で1度ミスをしたとき、「私はダメ人間だ」と自信を失くしてしまうようなパターンです。
また、相手から冷たくされると「あの人は冷徹な人間に違いない」と評価してしまうこともあります。
拡大解釈と過小評価
成功を小さく、失敗を大きく評価してしまう認知の歪みです。
「うまくいったのはまぐれだ」と成功を自分の努力ではないと判断します。また、「失敗したら人生おしまいだ」と失敗すると最悪の事態につながると考えてしまいます。
フィルターによる歪みへの対処法
情報をネガティブな方向へ受け取りすぎてしまうときは、「情報は常に変化するものだと認識する」とよいでしょう。
例えば、人の評価は評価する人やタイミング、環境が違うと変わることがあります。
仕事でミスをして「ダメ人間」だとその時点では思っても、うまくこなせるようになれば評価は変わります。
一時点だけで評価して決めつけるのではなく、「今後変えていけるものだ」という認識をもつと良いでしょう。
予測と判断の歪み
将来の予測と判断が極端になってしまう認知の歪みの種類です。「フィルターによる歪み」があり、情報をネガティブに受け取ってしまうと、その後の予測や判断も偏ったものになってしまいます。
過度の一般化
実際には1~2回しか起きていない出来事を、いつも起きていることだと解釈する認知の歪みです。
例えば、「新しい業務でミスしてしまった。今後もミスし続けるだろう」と考えてしまうことです。「いつも」「絶対」「常に」という言葉をよく使う人に多いでしょう。
結論の飛躍
他人の心を深読みしすぎたり、将来を悲観的に捉えたりすることです。
例えば、「うつ病なんてどうせ治らない」と将来を悲観してしまうようなパターンです。
また、愛想の良い上司が挨拶を返してくれなかった場合、「挨拶を返してくれないのは、何か悪いことをしたからだ」と解釈し、相手を避けてしまうこともあります。
いずれも、根拠なく判断してしまうことで生じる歪みのパターンです。
感情的決めつけ
感情を根拠に決めつけてしまうことです。
例えば、「Aさんと話しているとむかつく気持ちになったから私のことが嫌いなんだ」と判断するような場合です。
自分が○○と感じたことは事実なのだと考えてしまい、極端な対応をしてしまいます。
自己関連付け
自分でコントロールできない出来事を自分の責任だと考えることです。
例えば、「同僚がミスしたのは自分の伝え方が悪かった」と考えて罪悪感を抱くことが自己関連付けだといえるでしょう。
伝え方が悪かった可能性もありますが、不明点があれば同僚から質問があるはずです。分からないことを質問するというのは同僚の責任ですが、その責任まで負おうとします。
予測と判断の歪みの対処法
自分にコントロール可能な範囲とそうでない範囲を分けて考えることが重要です。
歪みが生じることが多いテーマとして、「将来」「人の気持ち」が挙げられますが、2つとも「絶対にこうだ」と言い切れるものではありません。
例えば、「将来の不安」に対して、「食いっぱぐれないようにスキルを身に付ける」「節約する」といった行動はできます。
しかし、「将来ずっと安泰でいる」ことはできません。将来の結果をコントロールすることは不可能です。
このように、自分にコントロールできる範囲とそうでない範囲を切り分け、そうでない範囲は考えないといった姿勢が大切です。
認知の歪みは1人ひとりのストレス対処パターン
認知の歪みは、極端になるとストレスにうまく対応できず、心身のバランスを崩してしまう可能性があります。
復職に向けて取り組んでいくためにも、認知の歪みに気づき、ストレス対処パターンを増やしていくことが大切です。
認知の歪みは、1人では気づけないことも多くあります。リワークプログラムを通して、専門スタッフや利用者の方と一緒に、自分の考え方の癖を見直してみましょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
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