抗うつ剤の眠気での対処法
抗うつ剤の眠気で困ったとき。どう対処すればよいのでしょうか?
具体的には、以下のように対処していきます。順番にみていきましょう。
いずれにしても自己判断はせず、主治医と相談しながら行ってください。
- 様子をみる
- お薬を分割して飲む回数を増やす
- 寝る前に服用する量を増やす・就寝前に服用する
- 鎮静系の抗うつ剤を追加する ※十分に睡眠がとれていない場合
- 抗うつ剤を増やすペースを落とす
- 減量する
- 他の抗うつ剤に変える
①様子をみる
お薬の副作用は、飲みはじめに強く出る傾向があります。眠気も飲み続けるうちにおさまっていくことがほとんどです。
このため、
ことで、次第に慣れていくことが多いです。
②お薬を分割して飲む回数を増やす
「飲んでしばらくすると、眠気が強くなる」という場合に向いている方法です。
お薬の副作用は、血中濃度のピークに一番強くでます。
お薬を分割して飲む回数を増やすと血中濃度は安定しますから、眠気の副作用も軽減します。
ただ、飲む回数を増やすと飲み忘れのリスクが高まります。
抗うつ剤は飲み忘れてしまうと効果が発揮できませんので、飲み忘れのときは多少ずれても服用するようにしてください。
③寝る前に服用する量を増やす・就寝前に服用する
抗うつ剤を服用して眠気がでてしまうのであれば、
のも一つの方法です。
効果の持続が長い抗うつ剤でしたら、就寝前に1回服用するだけで大丈夫なこともあります。
効果の持続が短いお薬では、夕方や寝る前の量を増やすなどして工夫をしてみましょう。
④鎮静系の抗うつ剤を追加する
抗うつ剤には、強いセロトニン作用がありますが、セロトニンの受容体のひとつである5HT2は、刺激すると睡眠が浅くなってしまいます。
その結果、夜間の睡眠の質が低下し、日中の眠気を引き起こすことがあるのです。
そのような場合、鎮静系の抗うつ剤(NaSSAのリフレックス/レメロンなど)を就寝前に追加するのも一つの方法です。
鎮静系の抗うつ剤は抗5HT2作用をもっているため、睡眠が深くなり、生活のメリハリがついて日中の眠気が改善することがあります。
⑤抗うつ剤を増やすペースを落とす
抗うつ剤は、少しずつ増量して効果をみていきます。
もしも薬を増量したタイミングで眠気が出てきてしまった場合、増やすペースを遅らせるのも一つの方法です。身体を徐々に慣らすようにしていきます。
⑥薬の減量をする
抗うつ剤の効果がしっかりと出ているならば、少し減らして様子をみてもいいかもしれません。
けれど、それは必ず主治医と相談してください。減量しても大丈夫かどうかは、これまでの経過をみて判断しなくてはいけません。
減量して眠気がとれたことで活動的になる方もいらっしゃいますが、眠気がなくなった途端、症状が悪化する場合もあります。
症状が十分と落ち着いていない時期に焦って減薬してしまうと、結果として病気が長引き、お薬を飲む期間も増えてしまう可能性があるため、注意しましょう。
⑦他の抗うつ剤に変える
抗うつ剤の眠気が強くて服薬が続けられない場合、減薬して他の抗うつ剤に切り替えます。
などのSSRIは、眠気も含めて副作用が全体的に少ないです。また、眠気の少ないSNRIの
に切り替えていくのも方法です。
SNRIではノルアドレナリンを増加させる作用もあるので、SSRIよりさらに眠気が少ない傾向にあります。
いずれの場合も、効果を含めて総合的に考え、お薬を選んでいくことが大切です。
※抗うつ剤による眠気の強さを詳しく知りたい方は、『眠くなりやすい抗うつ剤はどれ?眠気の副作用比較』をお読みください。
眠気が治療につながることも
抗うつ剤による眠気は、必ずしもデメリットとは限りません。上手く使えば睡眠薬を使わずに不眠治療できることがあります。
上でもご説明しましたが、「鎮静系抗うつ剤」と呼ばれる
- リフレックス/レメロン(NaSSA)
- レスリン/レジレル
- テトラミド、ルジオミール(四環系)
などの抗うつ剤は、眠りを浅くしてしまう抗うつ剤の補助として相乗効果を期待することもできます。
また、休養が必要なのに焦りが強くて落ち着かない患者さんに対しても、鎮静系抗うつ剤は有効です。
そのようにして、副作用も上手く使うと治療の助けとなることがあるのです。