抗うつ剤によくある副作用と対策とは?

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抗うつ剤の副作用が気になる方へ

2000年をすぎてから発売された抗うつ剤は、従来の三環系・四環系抗うつ剤に比べ、明らかに副作用は軽減されています。

しかしながら、新しい抗うつ剤ならではの副作用というのもあります。

効果のあるお薬ほど、どうしても副作用が生じてしまいます。

抗うつ剤の副作用はなぜおこるのでしょうか?どのように考え、対策していけばいいのでしょうか?

※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。

抗うつ剤の副作用と5つの物質の関係

抗うつ剤は、

  • セロトニン
  • ノルアドレナリン

などの脳内物質を増加させることで脳内のバランスを整え、落ち込み、意欲の低下、不安、焦燥感などの辛い症状をやわらげていってくれます。

しかしその反面、その作用が身体に影響を与え、副作用として現れてしまうことがあるのです。

また、セロトニン・ノルアドレナリンに作用しようとすれば、それに関わる他の物質に作用してしまうことも避けられません。

抗うつ剤は、

  • コリン
  • アドレナリン
  • ヒスタミン

という3つの物質に対しては、これらの働きをブロックする性質があります。

ですから、抗うつ剤の副作用は、5つの物質との関連に分けて考えていきます。

<5つの物質と起こりやすい副作用>

  • セロトニン:嘔吐・下痢・不眠・性機能障害
  • ノルアドレナリン:動悸・尿閉
  • 抗コリン:口渇・便秘・尿閉
  • 抗アドレナリン(α1):眠気・立ちくらみ
  • 抗ヒスタミン:眠気・体重増加

これ以外に、まれではありますが、注意すべき副作用が2つあります。

  • 賦活症候群(アクチベーションシンドローム)
  • 不整脈

お薬の開始初期や急激に増やした場合に認められることがあるのが、賦活症候群(activation)になります。

稀ではありますが、抗うつ剤によって中枢神経が刺激され、不安や焦燥感、イライラが急に高まってしまうことがあります。

双極性障害の方では、軽躁状態などが誘発されてしまうこともあります。

若い人や希死念慮が強い方には注意が必要で、異様な精神状態になってしまった場合はすぐに中止してください。

もうひとつ、命に関わる副作用として不整脈があります。

抗うつ剤が心臓の電気活動に影響し、1回の心臓収縮にかかる電気活動時間が延長します。

これが心電図のQT時間の延長という形であらわれます。

それによって致死的な不整脈が出現しやすくなるので、必要に応じて心電図をチェックしていく必要があります。

抗うつ剤の副作用への対策

  • 身体がお薬に慣れると、副作用は軽減していくことが多いですので、我慢できる範囲ならしばらく様子をみましょう。
  • 生活改善などで対応できることは、積極的に試してみてください。
  • 様子を見ても軽減されず、生活への支障が大きいときはお薬を調整します。
  • 万が一、不整脈など、不安な変化があったときは主治医へ報告してください

多くの副作用は飲み初めに現れ、身体が慣れるにつれて軽減していきます。なんとかなる範囲でしたら、しばらく様子をみてください。

生活改善(便秘なら水分を摂る・軽い運動をしてみる・消化の良いものを食べるなど)で対応できそうなものは積極的に行ってみましょう。

眠気などは服用のタイミングで対応ができることもありますので、主治医に相談してみてください。

その上で、時間が経っても副作用が軽減せず、生活への支障が大きいときは

  1. 減薬する
  2. 他の抗うつ剤に変える
  3. 副作用をやわらげるお薬を使う

の3つのいずれかで改善を目指していきます。

どの方法にするかは、効果と副作用の兼ね合いで考えていきます。基本的には、

  • 効果が十分→減薬
  • 増やしても効果の期待が少ない→変更
  • 副作用があってでもそのお薬を続けるメリットが大きい→副作用対策のお薬を追加

このような対応になります。

生活習慣による副作用対策

様子を見ている間、「生活習慣による副作用対策」は、ぜひ積極的に行ってみてください。

  • 便秘:排便習慣・食物繊維・水分・運動習慣
  • 口渇:唾液腺マッサージ・鼻呼吸
  • ふらつき:朝食をしっかり・ゆっくりと立つ
  • 眠気:睡眠をしっかり・昼寝習慣
  • 体重増加:食事管理・運動習慣
  • 吐き気:食事を控えめに
  • 不眠:睡眠に良い生活習慣・自律訓練法

などになります。

便秘・口の乾き

便秘や口の乾きは、抗コリン作用の強い三環系・四環系抗うつ剤でよくみられます。

便秘はお薬の影響だけでなく、食生活や運動習慣もかかわります。

  • 排便習慣
  • 食物繊維
  • 水分
  • 運動習慣

などを意識してみましょう。

ふらつき

ふらつきの副作用は、抗アドレナリン(α1)作用の影響で三環系・四環系抗うつ剤に多くおこります。

新しいNaSSA(リフレックス/レメロン)では、眠気の副作用にともないふらつきが現れることがあります。

  • 朝食をしっかりとる
  • ゆっくりと立つ

ことを心がけてみてください。慣れるまでは足元の不安定な場所などではとくに注意しましょう。

眠気

眠気も三環系・四環系・NaSSA(リフレックス/レメロン)に多い副作用です。デジレル/レスリンも眠気が強くなる抗うつ剤です。

不眠ぎみの方にはかえっていい作用となるため、服用を夜にするなど飲み方によって対応できる場合も多いです。

日中に眠気が残る場合は、

  • 夜の睡眠改善を考える
  • 短い昼寝習慣をとる

などの対策があります。

※詳しくは、『抗うつ剤の眠気と7つの対策』をお読みください。

体重増加

これも三環系・四環系・NaSSA(リフレックス/レメロン)によくみられます。

  • 食事管理
  • 運動習慣

に注意していきましょう。

※詳しくは、『抗うつ剤は太る?体重増加と5つの対策』をお読みください。

吐き気・下痢

SSRIでよくみられる副作用です。慣れることが多いですが、それまでは

  • 食事を控えめにする
  • 消化のよいものを食べる

などを心がけてみましょう。

※詳しくは、『抗うつ剤の吐き気・下痢と5つの対策』をお読みください。

不眠

SSRIやSNRIにおこりやすい副作用です。症状や、元々の睡眠の浅さによって不眠がおきていることもあるため、

  • 睡眠に良い生活習慣
  • 自律訓練法

などを取り入れてみてください。

※詳しくは、『抗うつ剤の不眠と8つの対策』をお読みください。

性機能障害

SSRIのパキシルやジェイゾロフトでとくに頻発する副作用で、

  • 性欲低下
  • 勃起障害
  • オーガズム障害

などが7~8割の方におこると言われています。

この副作用は診察でも打ち明けづらいかもしれませんが、飲み方のタイミングや、お薬の種類を変えるなどで改善することがありますので、悩んでいる方は主治医に相談してみてください。

※詳しくは、『抗うつ剤の性欲低下・性機能障害と5つの対策』をお読みください。

副作用をやわらげるお薬

様子を見ても副作用の改善がみられず、それでもそのお薬を継続するメリットが大きいときは、副作用をやわらげるお薬を使います。

  • 便秘:センノサイド・マグミット・大黄甘草湯など
  • 口渇:白虎加人参湯など
  • ふらつき:メトリジン・リズミックなど
  • 吐き気:胃薬・ガスモチン・ナウゼリン・プリンペランなど
  • 下痢:セレキノンなど
  • 不眠:鎮静系の抗うつ薬・睡眠薬など

辛いときは我慢せず、主治医と相談してください。

まとめ

新しい抗うつ剤は、従来のものに比べ副作用が軽減されていますが、それでもやはり何らかの副作用がみられることはあります。

多くの場合は身体が慣れるにつれ軽減していきますので、耐えられる範囲なら様子をみてください。

生活習慣で対応できるものは積極的に行ってみましょう。

それでも軽減せず、生活に支障が大きいときには、減薬・変更・副作用をやわらげるお薬の追加などを検討します。

抗うつ剤は、基本的に長期間飲み続けていくことが多いお薬です。副作用が辛いときには主治医とよく相談をしてください。

※抗うつ剤ごとに出やすい副作用や、安全性の比較などを知りたい方は、『抗うつ剤のよくある副作用と安全性の比較』をお読みください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:抗うつ剤(抗うつ薬)  投稿日:2023年3月27日

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